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第10話

「秋祭り?」

ある日の夕食での会話。


「次の満月の晩ね。やっぱりチセの居た町ではやってなかった?」

「ううん。お祭り自体はあったけど、満月の夜とかじゃ無かったわ。何か特別な事があるの?」

「町の方の広場で神様に豊かな実りを感謝する儀式があるのよ。出店とかも出て賑やかよ。皆、おめかししていくから、チセも明日また一緒にミーシャさんのお店に行きましょう。」

ミーシャさんとは、以前にもお世話になった洋装店の黒猫のおばさんのことだ。

「え、私は今の服で充分よ…。」

「それはダメ!皆、チセが着飾ってる姿、見たいに決まってるわ! それに、秋祭りではチセは主役みたいなものだから、思い切り素敵なドレス作らなきゃ!!ね、あなた。」

テディがモーリスに同意を求める。

「…そうだな。この村と町には伝統的なドレスがあるんだ。秋祭りは、女性が着飾る数少ない機会だから、チセも一着作るといい。」

モーリスも穏やかに頷く。

だけど。

但し、と急に声色が凄みを増した。


「チセ、誘われても気軽に返事はするなよ!」




(主役って、村の新顔だから? それとも年頃の女の子だからって意味かしら? )

独りで首をかしげたが、モーリスの醸し出す雰囲気に、聞きそびれてしまった。


チセの前には今日もスープとパン、新鮮なサラダとフルーツが並んでいる。

なんと今朝のパンは実はチセ作。

今ではここでの生活リズムにもずいぶん慣れて、パン も焼けるようになったの。

我ながら、かなりの自信作。

って言っても、小麦粉も水も全部村で採れたものだし。良い材料使ってるお陰とも言えるんだけど。


食事と言えば、この村に来たばかりの頃のこと。

テーブルに並んだ鳥肉の余りに美味しそうな匂いに、つい手を伸ばしたことがあったんだけど。

予想通りというか、モーリスにもテディにも、思いっきり「え??」という顔されて、慌てて手を引っ込めたことがあった。間違えちゃった、エヘ、て感じで直ぐ誤魔化して。

(やっぱりウサギがお肉食べたらまずいのね。)

そう学習してからは実はお肉はずっと我慢している。

モーリスもテディも、恐らくジークやハルも、私はベジタリアンだと思ってるんだと思う。



その代わりに、というか、モーリスたちは狩りの時には森で木の実や、自生している果物、キノコなんかも一緒に採って来てくれるようになったのだった。


家族にお腹いっぱい食べさせる、というのが、どうもこの村の獣人さんたちの、特に男性のプライドらしい。

本当に、モーリス一家は素敵な家族だ。

それに今は私もその一員に入れて貰ってると思うと本当に嬉しくなる。


(家族ってこういうもんなのかなぁ。おじさんの家と全然雰囲気違うから最初は戸惑ったけど。パパもママも小さい時に死んじゃったから想い出少ないし。…おじさんとおばさん、探してるかなぁ?うーん、多分勝手に居なくなって怒ってるでしょうけど、やっぱり探してくれたりはしないでしょうね…。モーリスたちのルーやフィリィへの接し方と全然違うし…。)



「チセ?もうお腹一杯?」

はっと気づくとテディが心配そうな顔をしている。

いけない、いけない…。

「ううん。テディの作ったスープとサラダも、モーリスが採ってきてくれた梨もサイコーよ!おかわりしちゃおうかしら?」

「…おう!いくらでも食え!沢山あるからな。」

「そうよ。それに明日は朝からミーシャさんのとこ行くのよ。忘れないでね。」

…、テディったら。

そんなに楽しみにされちゃ、もう断れないじゃない。

(明日の朝も頑張って早起きしなきゃ。)



そして夕食後。

せめてものお礼にと、頑張ってた皿洗いの後ろで。

「お前もドレス新調してきたらどうだ?」

「いいの? 」

「もちろんだ。」

「大好きよ、あなた。」

っていう会話が繰り広げられているのが聞こえてしまって。

勝手に反応しちゃうこのウサ耳を恥ずかしく思いながらも、皿洗いするより早めに部屋に退散してあげるほうが良かったかも?…なんて変な反省をしちゃったのでした。

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