砂漠の夢
夢の中で、僕は砂漠にいた。
何もない、殺風景な場所だった。
空には星が一つだけあって、月は見えなかった。
小さなさそりがいた。
はさみとかぎづめを持っていた。
さそりは毒を持っていた。危険な毒だった。その毒は、周りにいるものも侵した。
僕は、さそりを踏み潰した。はさみもかぎづめも、小さすぎて役には立たなかった。
踏み潰した後で気付いた。このさそりは、僕のことを心配して近づいて来たのだ。
でも、もう遅かった。さそりはぺしゃんこに潰れていた。
さぼてんがあった。さぼてんには針があった。
夢の中で、僕はさぼてんが好きだった。
さぼてんも、僕のことが好きだった。でも、さぼてんは何も知らなかった。
針が僕の手に刺さった。夢なのに、痛かった。
僕はさぼてんに近寄れなかった。それに、本当は僕はさぼてんが必要じゃなかった。
さぼてんは遠くへ行きたがっていた。僕は、そこから動きたくなかった。
だから、僕はさぼてんに足をあげた。これでさぼてんは歩けるようになった。
さぼてんはいなくなった。僕は泣いた。
僕は一人で星を見た。
星はきれいだった。
でも、遠すぎた。
僕は惨めな気持ちになった。
夢なのに、僕は星に触れることができなかった。
夢の中で、僕は砂漠にいた。
何もない、殺風景な場所だった。
空には星が一つだけあって、月は見えなかった。
僕は泣いた。
でも、ただそれだけだった。