だって、好き
抗議も虚しくトイレから追い出され、下に降りる階段を三人の内二人によって封鎖された。
廊下にポツネンと立ち尽くす私。
(……なぜに?)
行き交う2年の先輩達がチラチラとこちらを見る。
中には光速の4度見を披露する輩も居て、どんだけだよと思わず口に出してしまった。
「いい七瀬さん、紳士な態度でね!相手はか弱いレディーだと思うのよっ」
遠くでロングストレートの彼女が叫ぶ。
私、女ですけど。
これでも一応。
「………。はぁ、今日は厄日だな」
次の休みにでもお祓い行こっと。
休日に行う最優先事項を決め予定を組みながら、本当に渋々廊下を歩き2年4組を目指す。
もう諦めた、なるようになれだ。
2-4と書かれたプレートを見上げ、次いで中を覗き見る。
「………………」
何かジメッとした空気が流れてます。
キノコ生えそうな、そんな嫌~な空気。
「飛鳥ー、元気出せって」
「何度も言ってるじゃん!別に断られたわけじゃないんだしさぁ、ね?」
窓際最後尾に集う、2-4のクラスメイトさん達。
どうやら男女が入り乱れ立ち替わりになり、とある人物を慰めている。
「いやでも、マッハで逃げたんだろ?それってやっぱ…」
「ばっ、やめろ言うな!口を慎めアホッ」
「違うからね飛鳥!そんな事ないからっ、てか飛鳥が嫌われる筈ないじゃん!自信持ってっ!」
「………うっ、俺やっぱ嫌われたんだっ……じゃなきゃあんな残像残るくらい駿足で逃げたりしないもんっ。うわあぁん円ちゃああああんっ!!」
ん?
あ、先輩の声だ。
何か賑やか。
楽しそう。
邪魔しちゃ悪いかな。
「ああああああ飛鳥っ、待って落ち着いて!ちょっと男子窓!窓封鎖ぁっ!」
「やだやだもう死ぬ円ちゃんにフラれたら俺生きてる意味ない!はーなーしーてーっ!てかいっそ死んで幽霊になって円ちゃんの傍にずっと居るーっ!!」
え、やだ何それ怖い。
めっちゃ怖いやめてホント。
「泉里いぃっ!何とかしろよお前ぇーっ!!」
蜜に群がる蟻みたいに先輩達が久瀬先輩を取り押さえる。
開けられそうになった窓は数人の男子が壁になって塞いだ。
そうすると床に崩れ落ちてオイオイ咽び泣く、通称【白凰の狂犬】様。
白凰の泣き虫わんこに改名すればいいのにと、切実に思う。