だって、好き
連れてこられたのは女子トイレ。
定番だなと思わず突っ込んでしまいました。
心の中で、だけど。
「よっし誰も居ないね。さてと、何で呼ばれたか分かってる?七瀬円」
「そりゃもう、身に覚えがありすぎて……」
「だよねー。勿論飛鳥の事で呼び出したし?」
「逃げようなんて思わないでよ。てか逃がさないから」
「…………………」
トイレの奥の壁に背中を付けた私の前を囲む、派手なお姉様方。
これで逃げれたら私忍者になれる気がする。
あー忍者。
なりたい、今だけでも。
「まぁ話は簡単、これから私達の言う命令に従ってくれればいいの」
真ん中に立つロングストレートの茶髪な美人さんが、無表情にそう言った。
分かっております今後一切久瀬飛鳥に近付くなでしょう。
心配しなくても近付きません。
寧ろ向こうも近付いてこないようカバディーしてください。
「まず命令その1。このお弁当を持つ。はい」
「………?」
奪われていた私の弁当を渡される。
お帰りお弁当。
じゃなくて、何?
「その2。ここを出て2年4組に直行する事」
「………は?」
「その3。中に入って窓際最後尾に向かいなさい」
「ちょっと……」
「その4。何かカビ生えそうなくらいジメジメしてる男が居るからお昼に誘う事。以上」
え、嫌だ。
何カビ生えそうなくらいジメジメしてる男って。
お弁当にカビ生えたらどうすればいいの。
てかあれ?
何かおかしくない?
色々とおかしくない?
間違ってますよ、先輩達。
そう思っていると先輩達はムーッと表情を歪ませる。
口を開いたのはやっぱりロングストレートの、真ん中の人だった。
「飛鳥はさー、何て言うか奥手なのよね」
「………………」
「友達としてなら女とも普通に接せれるんだけど、好きな子になると臆病ってか、ライオンの檻に投げ込まれた子羊みたいになんのよ」
「いやいやそうじゃなく……」
そんな情報要らない。
子羊って何それ可愛い。
…どうしよう、予想外な事がありまくりで頭が追い付かないです。