だって、好き
て言うかさっきはいきなり抱き締めてきたのに、この豹変振りは何だ。
そんじょそこらの奥手全開な乙女女子より女々し………いや乙女ですよ。
久瀬先輩って、こんなキャラだったんだな。
もっと怖い人かと思ってた。
んー…何にしても困る。
そもそも付き合うとか分かんないもん。
経験の浅さとか以前に誰かと付き合う事自体億劫って言うか、面倒って言うか。
いやもう、ホント何で私?
「久瀬先輩カッコいいんですから、私じゃなくてももっと綺麗で美人で可愛い人が居ますよ。まさか下手物好き?」
「っっ!?ま、円ちゃんにカッコいいって言われたっ……うあ~ヤバいヤバいヤバいぃ!泉里助けて泉里っ、俺死んじゃう!幸せすぎて死んじゃうっ!!」
え、そこ?
それくらいの幸せで死ぬって、貴方普段どれだけ薄幸人生送ってるんですか。
ドキがムネムネ~ッと恥じらう先輩に若干引いていると(や、可愛いけども)芹崎先輩も頬をピクピクさせてる。
「やめろキショイ」
「キュンてなる~……っ」
「周りは先輩の可愛さにキュン死にしかけてますね」
「もー………円ちゃん、好きっ」
ギャラリーの中には悶絶してる人が何人か。
好き好きと頬を染めて訴えてくる久瀬先輩は本当に可愛かった。
癒し系?天使系?
いや小悪魔っぽい。
これで背が低かったら、まさに完璧な男の娘になれただろうに。
てかきっと性別間違えて生まれてる。
うん。
「あのー……な?出来れば快い返事を期待したいんだが」
芹崎先輩が嘆息混じりに私を見て言った。
何だか眼力が凄いです。
念でも送ってるのかってくらいビシビシと覇気が伝わってきて、とにかく視線が痛い。
これはあれだ。
イエスと言わなきゃうんたらかんたらの下りだ、絶対。
ああ面倒……。
「コイツさ、ホント救えねぇ馬鹿だし思考回路もぶっ飛んだ馬鹿だし行動も馬鹿だし馬鹿が付く程ウジウジしてるし総合的に言うならやっぱ馬鹿だけどそれなりには良い奴なんだよ、だから貰ってくれこの馬鹿を」
「ごめんなさいどう聞いても久瀬先輩が馬鹿だと言う事しか伝わってきませんでした。もし他に伝えたい事があったならもう一度、今度は言い方を変えてお願いします」
「馬鹿な子程可愛いって言うだろ?」
「……ああ」
なるほど、そういう意味か。
こりゃ一本取られた。
そうこうしてる内に予鈴が鳴り響く。
おっといかん、HRが始まる。