だって、好き
突き刺さる周りの視線が痛い中で、ズイッと差し出される久瀬先輩。
ああ、泣きそうな顔してる。
「………あのー。好きって、先輩が私を…ですか?」
「う、うん、もーね、大好きっ。超好きヤバいくらい好きなの!好きすぎておかしくなりそうなくらい円ちゃんが好きで俺どうしたらいいか分かんなくて、あ、あのね、変な意味じゃなくて純粋に好きだから!ホント、信じて円ちゃんっ!」
「分かった分かったから落ち着け落ち着け、どうどう。……まぁ早い話お前に一目惚れってのをしてだな、あんまり円ちゃん円ちゃん煩ぇからそんなに好きなら告白しろって助言をしてやったんだが、まさかこんな公の場でするとは…………目立たせてすまんな」
「はぁ、まったくです」
頷いたら久瀬先輩がこの世の終わりみたいな顔してた。
この人本当に白凰の狂犬だろうか。
何か、狂犬って言うよりは寧ろ…
「久瀬先輩って、あれですね」
「えっ……?」
「生まれたてのバンビみたい」
「!!?」
「ぶっ………!」
ビクビクしてるしプルプルしてるし、ああ小型犬でもいいや。
チワワとかそんなの。
純粋に思った事を口にした私に対し、久瀬先輩は顔を真っ赤にして狼狽えてる。
片や芹崎先輩は大爆笑。
豪快な人だなとつい感心した。
「バ、バンビ………俺ってバンビなの?」
「はい、生まれたての。満足に立てなくてプルプルしてるやつです」
「はははっ!違ぇねぇわ!つーかまんまじゃねぇかよっ!」
「…………バンビ……」
ズンッと沈んだ久瀬先輩の頭に無い筈の耳が見える。
へにゃっとした犬耳。
何か……可愛いかも。
「それで、この小鹿の面倒を是非見てほしいんだが」
「………あー、えーっと。そう言われてもあの、急には…」
本題に戻された私は久瀬先輩から視線を外し、芹崎先輩を見る。
うん、正直困ってしまう。
大体私は彼をよく知らないし。
いきなり付き合えなんて言われて、はい分かりましたと言うのはちょっと。
そう言う意味で断ろうとしたら、何故か久瀬先輩が顔を覆ってメソメソし始めた。
ええー………。
「うっ……ぐすっ、駄目じゃんやっぱフラれんじゃんっ、泉里の嘘つき老け顔!あー円ちゃんにフラれた俺生きてけない、やだ死にたいどうしたらいいのでもホント好き、可愛いギューしたいちくしょう泉里テメェ後でぶっ潰す」
ん?
何か最後とてつもなく不穏な発言が聞こえたんですが、気のせい?