だって、好き
結局まずは久瀬先輩の食料調達をしないといけないから、一階の購買へ向かった。
そこで彼が食料を買い、そのまま外に出て体育館裏に誘導する。
「ここで食べましょう」
「へっ?あ、うんっ!」
これでもかって嬉しそうな顔をして、とことん犬属性な彼はいそいそと私の隣に腰を下ろす。
架空の尻尾がブンブン揺れてるのが見える気がした。
「…ま、円ちゃんがご飯に誘ってくれるなんて夢みたいっ……どうしよう、ねぇ俺心臓口から飛び出してない?さっきから飛び出そうなくらいバクバクしてるんだけどっ」
「出てたらビックリ人間確定ですね、それで喋れたらモンスターの域ですよ?」
「そ、そっか。だよね!良かったぁ~」
何が。
「………。あの、先ぱi」
「何っ?!」
「!?」
何となく呼んだら間髪入れず返事が返ってきて、私がビックリする。
ちょ、速い。
まだ言い切ってないから私。
久瀬先輩の目はキラキラしてて、犬耳がピコピコ動いてた。
勿論架空の。
何、何と先をねだる先輩にたじろぎそうになる。
「……いえ、別に何もないです」
訂正した。
で、自分の膝に乗せてる弁当を開いて黙々と食事を開始。
何か調子狂う。
そんな私の制服をチョイチョイと引っ張る、微弱な引力。
……………?
「ね、ね、円ちゃん円ちゃん」
「…はい?」
「好き、大好きっ」
「ぶっ……!」
乙女よろしく恥らいながらいきなりそんな事言うもんだから、米を噴いた。
ヤバい鼻に入ったかも。
「っ、ゲホッ……いきなり何を」
「駄目、円ちゃん見てたら好きが溢れてくるの!言わなきゃ喉に詰まって窒息死しそうっ!」
「はぁ?」
またこの人は妙な事を。
いいからさっさとご飯食べなさい。
「先輩の気持ちは分かりましたから。気持ちだけ頂きます。なのでとっととお昼を済ませましょう、ほら早く」
「ホッ、ホント?!じゃあ付き合ってくれるっ?」
「いやだから、何でそうなる」
何かもうね、うん。
この短時間でとにかく分かった事。
私この人苦手だわ、つくづく。