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序章:思ひ出ぽろり
以前私には、「同居モノ」がいた。
「同居モノ」というと少し乱暴な表現に聞こえてしまうかもしれないけど、「同居人」と表現を変えてしまうと、《彼ら》の代名詞するにはあまりに普通な言葉になってしまうから、ここは「同居モノ」でとおさせてもらうことにする。
(へんじそう)
さて、私の住んでいた片仁荘106号室には、私を含む7人が住んでいた。
果たして「…人」っていう数え方を《彼ら》にあてはめていいのかはおいておくとして、私はあの狭い4畳半と6畳の一室に、《彼ら》と住んでいたのだ。
思い返せば、何の、とまでは言えなくても、あまり変哲のない日々だったように思う。
どう考えても世間の一般常識からはかけはなれた環境の中で生活していたのは確かだけど、それでもあの日々が、私にとっての日常であったのも確かだ。
《彼ら》はもういない。
思い出すのは寂しくて、あれから振り返りもせずにきたけれど、あの日々を忘れてしまうのはそれよりもずっとずっと勿体ないから。
ここに、書いて残しておこうと思う。
《彼ら》と過ごした、思い出を。