世界で一番
「--好きです」
…体中の震えが止まらない。
怖い、もしも、受け取ってくれなかったらーー
…考えたくも無い、だけど、考えずにはいられない。
怖い、どうしよう、止めとけば良かった…
…震える手。
その両手にしっかりと持った、四角い小さな箱ーー
私の全部の気持ちが詰まった、ハート型のチョコレート――…
下げた頭をちょっとだけ上げると、私の大好きな彼が、驚いた顔をして立っていた。
「…え――…」
それだけポツリと呟いて、目を見開く。
たった数秒の事なのに、何時間にも感じられた。
「…前、から…好きで、した…ずっと…」
震える声。
落ち着け、落ち着け、と自分に言い聞かせるのに、震えは大きくなるばかり。
目から熱いものがこみ上げてきた。
「…それ、…俺に…?」
「……は、は、…い…。」
…駄目だ、緊張しちゃう。
泣きそう。
駄目だ。
こらえなきゃ。
……ちゃんと告白するって、決めたんだから……
……
---彼に恋をしたのは一年前。
私はまだ中学一年生で、新しい学校に入ってドキドキしていた。
--…入ったばかりの頃は、彼と同じクラスだという事もしらないくらい、彼は目立たない男だった。
…はっきりいっちゃうと、顔も普通だし、クラスの人気者というわけでも、無い。
…けど、私が花瓶の水を取り替える時には必ず手伝ってくれたり、黒板で届かない所を消してくれたり。
最初は「親切な人」だったけど、だんだんと「気になる人」になって、「好きな人」、そして、「大好きな人」に変わっていった。
--…きっと彼は私の事なんて名前も知らないと思う、けど・・。
私にとって彼は毎日の支えだから。
…彼に会えるから学校に行く。
…彼が手伝ってくれるから花瓶の水を替える、黒板だって毎時間消す。
…だから、今日、女の子が勇気を出せる、この日に、私は彼に告白する事に決めた。
……そう、二月十四日に。
…この日の為に、何十回も練習を重ねたチョコレート。
何回も失敗して、泣きそうになった事も度々あった。
…でも、彼が食べてくれる事を想像しながら、一人、夜中になっても何度も何度も作り続けた。
…ラッピングを選ぶのにも何時間もかけた。
乙女チックすぎたらひかれちゃうかな、とか、シンプルすぎるのも駄目かな、とか。
ひかれない程度に豪華なものを選んで、それでもまだ選びきれなくて。
友人の助言やアドバイスももらいながらいろんなお店に何度も何度も行った。
…そして、今、私は彼の前で、その想いが詰まったチョコレートを渡している。
…正直、受け取ってくれるかも分からない。
…だって、全然喋った事無いし。
私なんかより仲良さそうな女の子たくさんいるし。
彼は良い人だから、手伝ってくれているだけだろうし…。
…ううん、ダメダメ!
うじうじしないって、決めた…から!
--…そう自分に言い聞かせて、もう一度、勇気を出して彼に言った。
「…受け取って…下、さい…」
……
「ーー好きです」
…前から好きだった女の子。
…何故か、彼女が俺の前でこんな非現実的な事を言っている。
…って、いやいやいや、そんなはず、無ぇだろ!
…きっと、俺の後ろにイケメンが立っていて、そいつにいってるんだ、うん、そうだ…って、そうじゃねぇぇぇぇえ!
…半ば、テンション急上昇中。
まさか、由美ちゃんが俺にチョコレートをくれるなんて…。
……これ、バツゲームとかじゃないよね?
うん、そうだよね?
「…前、から…好きで、した…ずっと…」
…さらに続ける由美ちゃん。
ぎゃー、何ナノこの可愛さ!
この子の存在自体奇跡でしょ。
「…それ、…俺に…?」
・・念のため確認として聞いてみる。
「……は、は、…い…。」
…由美ちゃんの可愛い返事。
…し、信じらん無ぇ。
…ふつふつと湧き出てくる喜び。
…何か俺、今、世界で一番幸せな男なんじゃね?
「…受け取って…下、さい…」
…由美ちゃんのかぼそくて細い、可愛い声。
もう、何か抱きしめちゃっていいですか、この子。
…そんな感情を必死で堪えて…って、堪えられるか!
由美ちゃんだって俺の事好きなんだし、いいだろ、抱きついても。
……俺は、そのまま由美ちゃんの小さな小さな細い身体を抱きしめた。
あんまり抱きしめるとそのまま折れちゃいそうだったので、ちゃんと優しくしたのだが。
…俺って何て優しいんだろう、・…何てな。
…そんな浮かれ状態の俺。
由美ちゃんは「…えっ…?!」と言って驚きを隠せない声色を出している。
…ほんと、可愛い…。
……
…いきなりだった。
彼が、私をそっと抱きしめてくれたのだ。
…ふっと香る彼の匂い。
心臓が、ドキドキする。
…え、こ、これって、もしかして、か、彼も…私の事を…?!
「…えっ…?!」
ついそんな声が漏れる。
彼が私を抱きしめる力が強くなった。
「…俺も、由美…ちゃんの事、好きだから…。」
…そうボソリと呟く彼。
…え、え、え!
…い、今なんていったの?!
か、彼も私の事…?!
…しかも、名前、覚えててくれたんだ…。
…嬉しくて、嬉しすぎて、瞳から涙が零れ落ちる。
今の私、きっと世界中で一番幸せな女の子だろうな…。
…嬉しい、嬉しい、嬉しいっ!
…きゅっと、私も強く彼の背中に手を回す。
彼の背中は大きくて、男の人なんだなぁ、って思わせられる。
胸が熱くなった。
……
「…俺も、由美…ちゃんの事、好きだから…。」
そう言うと、由美ちゃんは俺の背中に小さな手を回してきた。
…なんか、良い香り…って俺、変態か、何いってんだ!
…あ、でもやっぱ変態でもいいわ。
もう、何か由美ちゃん可愛すぎる。
…って、えええぇぇぇええ?!
由美ちゃん泣いてね?
え、な、何で?!
「…ど、どしたの?」
そう言うと、由美ちゃんは俺から少し離れて、俺に向かって、むちゃくちゃ可愛いエンジェルスマイルを送ってきた。
…なんていうか、この子、小悪魔…?
天使の様な可愛い顔しときながら実は俺を困らせて楽しんでんじゃね?
…でも、そんな由美ちゃんもいいかも…。
……
「…ど、どしたの?」
…私が泣いている事に気が付いたのか、彼が声をかけてくれた。
…やっぱり優しいなぁ…。
…私は彼の体から少し体を離した。
…なんていうか、ずっとこのまんまって、心臓に悪い…。
彼は平気かもしれないけど、私、男の人と抱き合った事なんか、は、初めてだしっっ!
…私が離れたのが傷ついたのか、彼が少し寂しそうな顔をする。
…あー、な、何か可愛いカモ…。
男の人にこんな事いっちゃ失礼かもしれないけどさ…。
…私は、顔をあげて、彼に笑ってみせた。
「好きだよ。」
そう言うのには勇気がいるので、この笑顔にその言葉を入れて。
…届いているといいんだけど。
……
…帰り道…。
…繋いだ手。
彼の手は、温かくて、大きくて、私の手なんか簡単に包んでしまった。
「……好きだよ。」
彼は、私にそう言って、優しく笑いかけた。
……夕日が彼を照らしていて、その笑顔は…本当に……
「…私も…。」
…そう、ポツリと、小さな、本当に小さな声で返事をした。
…気づいてくれたのかは分からないけど、彼は私の手に込める力を強くした。
…大好…。
そう心の中で言ったら、また、泣きそうになった。
…よく分からないけど、幸せで、泣きそうになった。
……
…由美ちゃんと繋いだ手。
小さくて、少しひんやりしていて、気持ちがいい。
…何より、こうして由美ちゃんが隣にいて、歩いている事自体、幸せすぎる。
「……好きだよ。」
そう言って笑いかけると、由美ちゃんは顔を赤くした・・といっても、夕日のせいもあると思うが。
「…私も…。」
そう、ポツリと聞こえたのは気のせいなのか、それとも本当なのか。
でも、とりあえず、握った手だけは離すつもりは無い。
…由美ちゃん、好きだよ、大好きだよ。
可愛くて、小さくて、照れ屋で、頑張り屋で。
君が俺を嫌いになっても、俺が君を嫌いになる事は、絶対無いから。
有難う、これから宜しく。
…夕日をバックに小さく口付け。
将来までの、予約。
・・ど、どどどどどうだったでしょうか?!(〟><〟)
・・なんていうか、めちゃくちゃ流れで打ってしまったので、おそらく文章ハチャメチャっだと思います(--;)
これも一応直したつもりなのですが・・((汗
・・それでは、ここまで読んで下さり、本当に有難うございました!!
感想・御意見等を頂けると、執筆スピードがあがるので、宜しければ一言書いていってやって下さい!!(←図々しいやつ)
・・そ、それでは本当に本当に、ここまで読んで下さり有難うございましたっ!!m(_ _)m