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第一話 気づかされた恋心

この春”新社会人”になった主人公が、赴任した先の学校で先輩教師に恋をするお話です。

この話だけで読み切りにする予定で書いてみたのですが、ChatGPTに校正を頼んだ時に”続編が書けそうな終わり方ですね”と言われ、もう少し書いてみる気になりました。

私の名前は上条やよい。三月生まれだから、両親がこの名前をつけてくれた。


この春、東京の音楽大学を卒業し、地元・長野県の山間部にある小さな中学校に教員として採用された。初めて耳にする言葉も多く、右も左もわからないまま、無我夢中で一か月が過ぎたところだ。


音楽の授業に加え、数人の支援学級の担任も任され、毎日が目まぐるしく過ぎていく。


今日は親友の紗月さつきと会う約束で、駅ビルMIDORIのエレベーター前で待ち合わせをしている。

紗月とは小・中・高と同じ学校に通い、気づけば何でも話せる仲になっていた。彼女は地元の短大を卒業し、希望どおり松本市の保育園で保育士として働いている。


先々月には、私の誕生日と就職祝いを兼ねて、市内の居酒屋で久しぶりに語り合ったばかりだ。


今日も時間どおりに彼女が現れ、予約してある店へ向かう。ゴールデンウィークのせいか観光客が多く、外国人の姿も目立ち、店内は大盛況だった。


とりあえずビールで乾杯し、お互いの近況をあれこれと話し込む。

二時間ほど経った頃だろうか。酔いも回り、お腹も満たされたころ、紗月がいたずらっぽい目で言った。


「やよい、さっきからずっとその先生の話ばかりしてるよ。好きなんでしょ? 花の季節は恋の季節だからね」


“その先生”とは、体育の中田先生のことだ。


彼は東京都出身で、都内の体育大学を卒業後、この学校に二年早く赴任している。年上のせいか、どこか落ち着いた雰囲気が感じられる。


子どもの頃に観た映画『岳』に憧れ、日本アルプスに囲まれた長野県で教師になったのだという。今でも時々、小さな登山を楽しんでいるらしい。

私が担任を務める支援学級の副担任でもあり、この一か月、本当にお世話になった。何もわからない私に、手取り足取り丁寧に教えてくれた。


紗月に指摘されるまで気づかなかったけれど、思い返してみれば、私は確かに彼のことをよく考えていた。


突然、自分の恋心を言い当てられたようで、一瞬パニックになりながらも、

「そういう紗月こそ、最近どうなの?」

と話題をそらす。


紗月は市役所の職員と一年近く交際している。


案の定、彼女は照れながらも次々とのろけ話を披露してくれた。その話を聞きながらも、私は半分ほど中田先生のことを考えていた。


毎日の仕事に追われていたせいもあるが、私は彼のプライベートをほとんど知らないことに気づく。


知っているのは、ジムニーに乗っていること、趣味が登山であること、お酒はそこそこ飲めて、シュークリームが好きだということくらい。


交際している女性はいるのだろうか。好きなタイプはどんな人なのだろう。


そんなことを考えていると、胸の奥がじんわりと熱くなり、心臓が早く脈打つのを自分でも感じた。


紗月とは「また六月に会おうね」と約束し、私は先にタクシーを降りた。


走り去るテールランプを見送りながら、六月に会うとき、私も恋の進展を報告できるのだろうかと考える。


ふと見上げた満月は、どこか微笑んでいるように見えた。


――今回は彼へのお土産に、マサムラのシュークリームを買っていってみようかな。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

続編も書いていきたいと思いますので、主人公”やよい”の恋が実るように応援してください。

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