表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガイド妖精を初手でぶん殴ったら、俺だけ正規ルートから外れました  作者: sixi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/2

第2話 封印された門と、正規システムの番犬

廃都の空に浮かんだ赤い光点は、ゆっくりと数を増やしていった。


 一つ、二つ、三つ――いや、十や二十では利かない。


 霧の向こう、崩れた屋根の上、折れた塔の先、通りの奥。

 まるでこの街そのものが俺を見つけたみたいに、無数の赤が灯っていく。


「来るぞ、解封師……!」


 片目の巡回兵が、ひび割れた槍の柄を強く握った。声が震えている。

 怯えと焦り、それから長く押し殺していた何かが、一気に噴き出したような震え方だった。


「“門番”だ。正規導線の番犬……俺たちのような、消されたものを、二度と表へ出さぬための監視だ」


「その説明、だいぶ物騒だな」


 軽口のつもりで返したが、喉は少し乾いていた。


 さっき出た表示はこうだった。


《REGULAR SYSTEM INTERFERENCE PREPARING...》


 ただの演出メッセージではない。

 このゲームは、俺が何かを“開ける”ことを明確に嫌がっている。


 VRMMOでプレイヤーがイベントを始めたら敵が湧く、くらいなら珍しくもない。

 だが、これはそれよりもっと直接的だ。


 正規システムが、俺を排除しようとしている。


「なあ、一応聞くけど」


 俺は視線を空に向けたまま、巡回兵へ声をかけた。


「その“門番”って、普通に倒せる相手か?」


「普通、ならな」


「今の“間”が嫌なんだが」


「……解封師が現れた時だけ、奴らは仕様を変える」


「は?」


「封印維持のためなら、数も、強度も、性質も変わる。少なくとも、私が知る限り――まともに相手をして勝てた者はいない」


「おい」


「だが、おまえはここに来た」


 巡回兵は、俺をまっすぐ見た。

 名前も持たないくせに、その目だけは妙に必死だ。


「なら、できるはずだ。いや……できてもらわねば困る」


「他人任せがすごいな」


「我らは、もう長く“自分では開けないもの”になってしまった」


 その一言で、冗談が返しづらくなる。


 なるほど。こいつらはただの廃NPCじゃない。

 “消された側”として、この街と一緒に封じられている。


 そして俺だけが、その鍵穴に指をかけられる。


 腰の《解封具・第一式》が、じわりと熱を持った。

 握ると、見た目に反して手に馴染む。金属とも骨ともつかない手触り。表面には細い筋が何本も走っていて、脈みたいに淡く光っていた。


 武器に見えなくもないが、剣や槍の類ではない。

 どちらかと言えば――


「……工具、か?」


 俺のつぶやきに、視界の端で小さな通知が出る。


《解封具・第一式》

分類:解封補助端末

効果:封印痕への接触補正/低位解錠/欠損情報の読取り補助


「便利そうで、全然具体的じゃねえ……」


 説明のふわっと感がすごい。

 いや、隠し職の初期装備なんてこんなものかもしれないが。


 そのとき、空にあった赤い光の一つが、強く明滅した。


 直後、通りの向こうにノイズが走る。


 空間が、縦に裂けたみたいに歪む。

 そこから現れたのは、犬だった。


 ただし、普通の犬じゃない。


 狼に似た四足獣。体高は大型バイクくらい。毛並みは黒ではなく、黒い立方体の集合みたいにガタついている。顔の中央には目が一つだけあり、その赤い光がぎらりと俺を捉えた。口が開くと、中に牙ではなく白いバーコードみたいな歯列が並んでいる。


「うわ、趣味悪っ」


「監視獣……!」


 巡回兵が一歩下がった。


 犬――いや監視獣は、俺たちを交互に見たあと、空気を震わせるような低音を発した。


《TARGET:UNSEAL CLASS》


 機械音声。

 やっぱり“番犬”という表現は正しかったらしい。


「来るぞ!」


 巡回兵が叫ぶ。


 同時に監視獣が石畳を砕き、一直線に突っ込んできた。


「っ!」


 反射で横に飛ぶ。


 俺がいた場所を、巨大な前脚が叩き潰した。石が砕け、破片が頬をかすめる。痛覚軽減が入っていても分かる。まともに食らったらヤバい。


「初手の圧が重いな!?」


「門番は容赦しない!」


「知ってる!」


 二度目の突進が来る。

 今度は左右の揺さぶり付き。こいつ、見た目のわりに動きが妙に洗練されている。


 剣もない、盾もない、職業スキルも把握してない。

 この状態で真正面からやれる相手じゃない。


 俺は通りの脇へ転がり込み、崩れた荷車を盾代わりにした。監視獣の爪が木材をまとめて引き裂く。木片が雨みたいに降ってくる。


「おい巡回兵! こっちで何か戦える要素ないのか!」


「あるなら私はとっくに使っている!」


「役に立たなさすぎる!」


「だから解封師を待っていたのだ!」


「開き直るな!」


 だが、叫び合いながらも頭は動く。


 監視獣の狙いは一貫して俺だ。

 巡回兵は脅威判定が低い。つまり、敵AIは“解封師の排除”を優先している。


 そして、その行動はあまりにも直接的だ。


 この手の監視システムには、たいてい中核がある。

 侵入者を排除するにしても、優先順位、検知、干渉条件、何かしらのルールがあるはずだ。


 なら――ルールに触れれば崩せる。


 俺は視線を監視獣へ固定した。


 その瞬間、視界の輪郭に薄い青白い線が浮かび上がる。

 獣の体表をなぞるように、いくつものひび割れに似た筋が見えた。


「……見える?」


 自然に口から漏れた。


 特に目を凝らしたわけじゃない。

 だが、分かる。あの獣の“継ぎ目”みたいなものが、ぼんやり視認できる。


 視界の端に通知。


《封印痕を検知しました》

対象:監視獣・低位門番端末

干渉可能箇所:咽頭部/前脚関節/核紋部


「おお、急に職業らしいこと出してきたな……!」


 ようやく解封師の強みが見えた。


 つまり俺には、敵の“封印痕”――封じられた制御点や、構造上の継ぎ目みたいなものが見えるらしい。

 普通に殴るより、そこを狙えってことか。


「咽頭部、前脚、核紋……核紋はどこだ」


 監視獣が低く唸り、再び跳ぶ。


 その瞬間、胸の中心に赤い紋様がちらりと光った。

 黒い立方体の毛皮の隙間に、一瞬だけ現れる赤い円環。たぶんあれだ。


 ただし、一瞬しか見えない。

 避けながら狙うには、俺の初期ステじゃ厳しい。


「おい巡回兵!」


「なんだ!」


「こいつを一瞬でも止められるか!」


「無茶を言うな!」


「無茶じゃない! 三秒でいい!」


「三秒が無茶だと言っている!」


 言い返しながらも、巡回兵は前へ出た。

 折れた槍を両手で構え、監視獣の横合いへ踏み込む。


「――旧都守備兵の名残として、命じる! 止まれ、門番!」


 槍の柄が、監視獣の首へ叩きつけられた。


 乾いた音。

 ダメージは浅い。だが、獣の動きがほんのわずか止まる。


「今だ、解封師!」


「十分!」


 俺は地面を蹴った。


 監視獣の正面じゃない。少し斜め。

 視界に浮かぶ青白い線を追い、狙いを前脚関節へ絞る。


 武器はない。

 だが手には《解封具・第一式》がある。


「使い方、たぶんこうだろ!」


 半ば勘で、それを突き出した。


 解封具の先端が、監視獣の関節に走る青い線へ触れる。


 瞬間、火花の代わりに青白い文字列が散った。


《LOW SEAL RELEASE》


 監視獣の前脚が、ぐしゃりと崩れた。


「ギァアアアアアッ!?」


 機械音声と獣の咆哮が混ざったみたいな絶叫。

 前脚の構造が、ブロックごと組み直しを失ったように崩壊していく。


「うお、効いた!」


「それが解封……!」


 巡回兵が目を見開く。


 監視獣は一度距離を取り、壊れた前脚を引きずりながらこちらを睨んだ。赤い単眼が明滅する。


《ERROR》

《JOINT SEAL BROKEN》

《PRIORITY SHIFT:ERASE TARGET》


「“消去対象”って言ったか今!?」


 次の瞬間、獣の背から細い赤光が何本も伸びた。鞭のようにしなり、周囲の建物を薙ぐ。壁が切断され、石の粉が舞い上がる。


「二段階目あるのかよ!」


「門番は一体では終わらんこともある!」


「最悪の情報を小出しにするな!」


 空の赤い光点がまた増えた。

 嫌な予感しかしない。


 この敵を一体ずつ相手にしていたら、物量で詰む。

 なら、やることは一つだ。


 俺は背後の黒い門を見る。

 鎖に巻かれた巨大な扉。表面を走る青白い封印文字。

 こっちこそ、本命だ。


「巡回兵!」


「なんだ!」


「俺が門を触る。お前はあれを引きつけろ!」


「正気か! 解封には時間がかかるぞ!」


「戦ってたらもっとかかる!」


「……っ」


 巡回兵が歯を食いしばる。

 迷っている時間はない。監視獣はすでに三度目の突進に入っている。


「行け!」


 最後は半分命令だった。


 巡回兵は吼えるように声を上げ、折れた槍を振り回して監視獣の進路へ飛び込んだ。


「こちらだ、門番! 旧都はまだ、終わっていない!」


 獣の赤い目が一瞬そちらを向く。

 その隙に、俺は門へ駆けた。


 近づくにつれ、その巨大さがよく分かる。

 高さは三階建ての建物を越え、表面には無数の擦り傷と古い紋章。封印文字は近くで見ると単なる模様じゃない。文字列が何層にも重なって、鎖と一体化している。


 そして、見える。


 門全体に、青白い“継ぎ目”が走っていた。

 解封できる箇所が、線となって浮いている。


《解放対象:旧都外縁門》

封印形式:多重鎖式

必要手順:第一鍵/封印文の読み取り/中核の解放

推定干渉時間:180秒


「長えよ!」


 三分。

 この状況で三分は長すぎる。


 だが、次の表示が続けて出た。


《補助条件を満たした場合、短縮可能》

・欠損NPCとの共鳴

・対象の由来認識

・解封文の手動読取り


「手動読取り……?」


 門の表面に手を当てる。

 すると頭の奥へ、文字とも音ともつかない情報が流れ込んできた。


 ――閉ざせ。

 ――記すな。

 ――出すな。

 ――忘れさせよ。


「……そういう封じ方か」


 この門は単に物理的にロックされているんじゃない。

 “ここに何があったかを忘れさせるため”の封印だ。


 気味が悪い。

 だが意味が分かれば、手順も見える。


「巡回兵! お前、この門の向こうに何があったか知ってるか!」


 離れた位置で監視獣を引きつけていた巡回兵が、苦しげに叫び返す。


「本来なら、旧都の中央へ続く道だ! 王城へ至る最短路! だが封鎖の際、すべて失われた!」


「門の正式名称は!」


追想封鎖門ついそうふうさもんエル=ラディア!」


 その瞬間、門に刻まれた文字の一部が、ぴしりと音を立てて剥がれた。


《由来認識:成功》

《干渉時間を短縮します》

180秒 → 90秒


「よし!」


 半分になった。まだ長いが、現実味が出た。


 俺は《解封具・第一式》を門の鎖へ差し込む。

 鍵穴なんて見当たらないのに、解封具は吸い込まれるように鎖の隙間へ収まった。


 ごり、と嫌な感触。

 同時に青白い文字列が俺の腕へ這い上がる。


「うっ……!」


 痛みというより、冷たい水を血管に流し込まれるみたいな感覚。

 視界にカウントが出る。


《解封進行度:03%》


 遅い。

 とんでもなく遅い。


 背後で轟音がした。振り返ると、巡回兵が吹き飛ばされて石壁に叩きつけられるところだった。


「ぐ、ぁっ……!」


「おい!」


 監視獣は片脚を壊してなお、十分に速い。

 しかも空の赤光が二つ、地上へ降りてくる。ノイズの裂け目が増え、新たな影が形になりかけていた。


「増援かよ……!」


 解封進行度はまだ08%。


 間に合うか、これ。


 そのとき、門に触れている俺の脳裏へ、誰かの声が流れ込んだ。


『……開けて』


 女の声だった。ひどく遠い。

 門の向こうから聞こえるみたいな声。


『まだ、終わっていないの』


『忘れないで』


『わたしたちは、ここにいた』


 直後、視界に新たな表示。


《欠損記憶との共鳴を確認》

《解封進行を加速します》

08% → 27%


「……記憶も鍵になるのか」


 この職、想像以上にやることが多い。

 ただの鍵開けじゃない。封印の理由、由来、記憶、存在そのものを拾って、噛み合わせていく必要がある。


 面倒だ。だが、嫌いじゃない。


 俺は門へ片手を当てたまま、もう片手で地面の石片を拾った。


 狙いは監視獣じゃない。

 巡回兵の近くに落ちていた、折れた槍の穂先だ。


「巡回兵! 起きろ!」


 石片を投げる。

 カン、と音がして、穂先が転がる。


 巡回兵が片目を見開いた。俺の意図を理解したらしい。

 這うように穂先を掴み、立ち上がる。


「まだ、やれるか!」


「旧都兵を、見くびるな……!」


 血は出ていない。ゲームだからだろう。

 でも、その立ち姿にはちゃんと消耗が見えた。


 新たな二体の監視獣がノイズから這い出る。

 一体は犬型、もう一体は鳥に近い。翼ではなく赤い板状の光を広げ、空中で停止している。


「飛ぶのまで来たか……!」


 解封進行度31%。


 巡回兵一人では持たない。

 だが門から手を離せば、進行が止まる気がする。


「何か、何かないのか……!」


 焦った瞬間、腰の解封具から細い音が鳴った。

 視界に補助表示。


《簡易解放:可能》

対象選択により、周辺の封印残滓を一時解放できます。

使用回数:1


候補:

・崩壊街灯

・旧式防壁

・埋没兵装庫

・欠損鐘楼


「……そういうのは早く言えよ!」


 使える。

 しかも“埋没兵装庫”なんて、いかにも助かりそうな名前だ。


 ただし一回きり。

 ここで切るか、もっと奥まで温存するか――迷う時間は一秒もない。


 空中の監視鳥が赤い光条を絞り、巡回兵へ照準を合わせた。


「今しかない!」


 俺は視界の候補から、旧式防壁を選んだ。


《簡易解放:旧式防壁》


 地面が震える。


 通りの両脇、石畳の下から巨大な壁がせり上がった。

 半壊していた防壁が、封じられていた形を一瞬だけ取り戻し、巡回兵の前へ滑り込む。


 次の瞬間、監視鳥の赤い光条が防壁へ突き刺さった。


 轟音。

 石が吹き飛ぶ。だが、直撃は防げた。


「助かった……!」


 巡回兵が息を呑む。


「礼は門が開いてからでいい!」


 俺は解封具に力を込める。

 文字列が腕を這い、門の鎖をほどいていく。

 進行度が上がる。


44%

52%

61%


 いける。

 このまま押し切れる――と思った、そのとき。


 空に浮かぶ赤い光点すべてが、一斉に明滅した。


 嫌な予感が、確信に変わる。


 監視獣たちが一斉に動きを止め、門の前へ向き直った。

 俺ではなく、門そのものを見ている。


「……なあ巡回兵」


「なんだ」


「これ、まさか」


「最悪だ」


 巡回兵の顔色が、さらに悪くなった。


「奴ら、解封の阻止を諦めた。門ごと破壊する気だ」


「は!?」


 次の瞬間、犬型も鳥型も、そして最初の監視獣も、すべての赤い核が同時に発光する。

 門へ向けて、収束が始まった。


《ERASE BY FORCE》


「雑になってきたな、おい!」


 解封進行度は67%。

 まだ足りない。


 巡回兵が叫ぶ。


「解封師! どちらかを選べ! 門を開けるか、身を守るかだ!」


「そんな二択あるかよ!」


 門が壊れれば、この先は消える。

 だが防御しなければ、俺が終わる。


 詰みかけた、そのとき――

 門の向こうから、さっきの女の声が、今度ははっきり聞こえた。


『鍵を、逆に回して』


「……は?」


『解封具を、逆へ』


『その門は“開く”ためのものじゃない。“思い出す”ためのものだから』


 俺は息を呑む。


 逆に回す?

 普通の解錠じゃないってことか。


 直感が告げていた。

 たぶんこれが正解だ。


 俺は解封具を握り直し、門の鎖に差し込んだまま、逆方向へひねる。


 ばきん、と。

 何かが外れる音がした。


 同時に、門全体の封印文字が一斉に裏返る。


《Hidden Procedure Accepted》


「当たりか!」


 解封進行度が、一気に跳ねた。


67% → 100%


 監視獣たちの収束光が放たれる。

 それと同時に、黒い門が内側から眩く発光した。


 鎖が弾け飛ぶ。


 封印文字が砕け散る。


 門が、ゆっくりと――そして確かな重みをもって、開いた。


 その隙間の向こうには、滅んだはずの街の中心部と、遠くにそびえる白い塔が見えた。

 そして、その門の前に立つ俺の視界いっぱいに、新しい表示が現れる。


《解封成功》

《追想封鎖門《エル=ラディア》を解放しました》

初回解放報酬を付与します


獲得:スキル《封印痕看破・初級》

獲得:称号《旧都に招かれし者》

獲得:旧都巡回兵の仮名解放


 隣で、巡回兵が息を呑んだ。


 その頭上に、今までなかった名前が浮かび上がる。


《旧都巡回兵 ラド》


「……名前が」


 男――ラドが、自分の頭上を見上げるように呟いた。


「俺の名が、戻った……」


 だが感動に浸る暇はない。


 門を開いた瞬間、監視獣たちの赤い光が不安定に揺れ始めた。

 処理落ちみたいにノイズを撒き散らし、苦しむようにのたうつ。


《ERROR》

《SEAL TARGET LOST》

《HIGHER AUTHORITY NOTIFIED》


「上位権限に通知……?」


 直後、門の向こう――旧都の中心から、どくん、と脈打つような音が響いた。


 白い塔の上空に、巨大な魔法陣じみた紋様が浮かぶ。

 いや、魔法陣じゃない。もっと無機質だ。都市全体を覆う管理式のような、巨大な制御紋。


 ラドの顔が凍りつく。


「まずい……」


「今度は何だ」


「門番程度ではない。もっと上だ」


 塔の方角から、女の声が聞こえた。

 さっき門越しに聞いた声と同じだ。だが今度は切迫している。


『解封師、逃げて!』


『“管理者”が起きる――!』


 その瞬間、白い塔の頂上から、こちらへまっすぐ光が落ちた。


 世界が、真昼みたいに白く染まる。


 そして視界の中央に、ただ一つの名が表示された。


《管理個体を確認しました》

《第一管理者 アリア・セヴェラン》


 サービス開始から、たぶんまだ十分も経っていない。


 なのに俺はもう、

 チュートリアル妖精を殴って、隠し職を拾って、封印都市の門を開けて、管理者に見つかったらしい。


「……最高に面倒で」


 白光の中、俺は思わず笑った。


「最高に面白くなってきたな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ