第7話:時間法則の応用と、座標術士の敗北
狭間での法則の衝突
『時空の狭間』。座標術士・シドが放った『広域時空切断』は、刹那とリナの立つ空間を時間軸ごと切り離し、時空の彼方へ葬り去ろうとしていた。
シドの魔術は、リナの転移魔術と同じく時空の交点を操るが、その本質は「切断」。狭間の不安定なエネルギーを増幅させ、二人の管理者(刹那とリナ)を時空のゴミに変えようとしていた。
「刹那!シドの魔術は、この狭間の『時間変動』を利用している!空間が固定されていないため、防御壁が通用しない!」
リナは、刹那のそばで、砂時計型の魔導具を高速で調整し、シドの魔術が切り裂こうとする座標の微細な修復を試みた。
「修復ではない、リナ。『法則の上書き』だ」
刹那は、懐から『一秒の破片』を取り出し、その魔力を自身の『時間法則のノイズ』と融合させた。結晶の持つ千年前の固定された時間の魔力が、刹那の魔力に『絶対的な安定性』を与えた。
「――『時間収束』!」
刹那は、シドの魔術が広域に展開された時空の切断面に対し、『時間法則のノイズ』を一点集中で叩き込んだ。
彼の魔力は、切断面の『時間変動』を強制的に『安定した現在』へと引き戻した。シドの魔術が依拠していた『不安定な狭間の時間』が、一瞬で無効化されたのだ。
ドオンッ!
シドの『広域時空切断』は、自らの魔力に逆行され、爆発的な反動エネルギーとなって彼自身を襲った。
座標の封鎖
シドは、反動で全身に激痛が走り、驚愕に目を見開いた。
「馬鹿な……私の『時空の法則』が、『時間停止の異物』に上書きされただと!?あの魔力結晶を、もう利用しているのか!」
「君の法則は、破壊に特化しすぎている、シド」
刹那は、冷静に告げた。
リナは、その隙を見逃さなかった。
「今です、刹那!彼の『座標』を封鎖してください!」
刹那は、魔力収束でシドを打ちのめした直後、すぐさま『時間法則のノイズ』をシドの身体の周囲に展開した。
「――『零距離・時間封鎖』!」
それは、前作で影山に使用した『時間の檻』だが、今回は『時空の狭間』という特殊な場所での発動。シドの『時空の扉』を開くための座標感覚、そして魔力回路を、永遠に『時間の流れの無い状態』に固定した。
シドは、恐怖に顔を歪ませた。
「この感覚は……!時間だけでなく、時空の座標が、私から切り離された!リナ、貴様……!」
シドは、時間の流れから永遠に隔離され、『時空の狭間』の奥へと、緩やかに漂っていく。刹那の『法則の守護』は、『法則の破壊者』を冷徹に排除した。
リナの真意
「ありがとう、刹那。これで、『時の協会』は、しばらく私たちを追跡できない」 リナは、安堵の息を漏らした。
刹那は、シドの消えた空間を見つめながら、リナに問うた。
「シドは、君を『裏切り者』と呼んだ。君の協会の目的は、本当に『法則の維持』ではないのか」
リナは、静かに頷いた。
「私の本来の任務は、『起源の魔力』の収集と、協会の絶対的な支配を確立することでした。ですが、私は、協会の『時間の改変』が、無数の『現在』を破壊することに耐えられなかった」
リナは、自らの過去を話し始めた。
「私は、『時空の狭間』で生まれ、『時間の流れ』そのものを管理するよう訓練されました。そのため、『現在』に生きる人々の『感情』や『時間』の価値を、誰よりも知っています」
「君が盗んだ『一秒の破片』は、君の協会の『支配の鍵』ではなかったのか」
「あの破片は、協会の『時間改変』のターゲットを示すものです。もし協会がこれを手に入れれば、次に狙うのは、あなたの家族の事件の『分岐点』だったでしょう」
リナは、協会の真の目的の一つが、刹那の『時間魔術』を生み出した『特異点』、すなわち彼の家族の事件を、協会の都合の良いように改変することにあったと明かした。
「私の家族の事件が……」
刹那の表情に、微かな動揺が走る。
「はい。あなたの『時間魔術』は、『起源の魔力』の中でも最も強力な『特異性』を持っています。協会は、その魔力を、『歴史の改変』のエネルギーとして利用しようとしている」
新たな目標と師への連絡
刹那は、自身の復讐の果てが、新たな「時間戦争」の始まりであったことを悟った。彼は、『一秒の破片』を強く握りしめた。
「協会の次の目標は、どこだ」
「シドを排除したことで、協会は大規模な行動を控えるでしょう。しかし、彼らは必ず『起源の魔力』の別の収集源を狙います。それは、新生魔法庁の『技術』、特に風見が残した『空間理論』に関わる場所です」
「風見さんか……」
刹那は、『時空の狭間』から、『時間跳躍』の魔力を利用し、外界の一点に、極めて微細な魔力のシグナルを送った。それは、師である霧島冴子にだけ伝わる、『緊急時連絡』の魔術波だった。
場所は、風見の隠れ家がある、極秘研究棟の廃墟。
「リナ。我々は、一度『現在』に戻り、『法則』の真の維持者である冴子さんと風見さんに連絡を取る必要がある。『時間法則』と『空間法則』の連携。それが、『時空』を操る協会に対抗する、唯一の手段だ」
リナは、刹那の冷静な判断と、師への信頼に満ちた表情を見て、静かに頷いた。
「了解です。『時間跳躍の守護者』。私たちの次の目的地は、『過去の裏切り者』が築いた、『空間の安定点』です」
二人は、『時空の狭間』に隠された、古い通路へと向かった。彼らの新たな戦いは、「時間」だけでなく、「空間」をも巻き込んだ、壮大なスケールへと拡大する。
お読みいただき、ありがとうございます!
よろしければ、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!




