第6話:結晶強奪と、二人の管理者の衝突
停止した一瞬の奪取
東京大学、起源魔力研究室。神崎零司と座標術士・シドの壮絶な魔術戦の真っ只中。
刹那は、リナが開いた結晶の真上の『時空の穴』から、『時間停止』を放った。彼の魔力は、結晶とその周囲の空間を、時間的に孤立させた。
キュン……!
時間が停止した領域の中で、刹那は自身の『時間跳躍』で結晶に到達し、それを手に取る。千年前の魔力を固定化したその結晶は、触れた瞬間に、彼の『時間法則のノイズ』と共鳴し、強い熱を放った。
刹那は、時間停止を解除すると同時に、結晶を懐に収め、リナが開いた『時空の扉』へと引き返す。この一連の動作にかかった時間は、外界の時間の流れで、わずか0.5秒だった。
零司とシドは、刹那が結晶を奪取したことには気づかなかった。彼らは、お互いの魔術が激しく衝突し、相殺された反動に気を取られていた。
「くそっ!固定陣が……持ちこたえろ!」
零司は、シドの『時空断層』によって空間が引き剥がされるのを必死で防御していた。
その隙に、リナは時空の扉を閉じた。刹那とリナは、再び『時空の狭間』へと消え去る。
シドの感知と怒り
シドは、零司の反撃で、一時的に魔術を後退させた。しかし、彼の時空魔術師としての第六感が、結晶の魔力の「消失」を感知した。
「馬鹿な……!結晶が、座標から消えただと!?」
シドは、周囲に残留する魔力の痕跡を分析し、リナの時空魔術と、刹那の『時間干渉』の複合的な痕跡を発見した。
「リナ……!裏切り者の分際で、協会の資源を横取りしたのか!」
シドの怒りの矛先は、零司から刹那とリナへと移った。
零司は、シドの動揺を見て、結晶の「消失」を悟った。
「奪われた……!九条刹那の仕業か!」
零司は、冷徹な表情でシドに問いかけた。
「貴様の目的は、結晶。九条刹那の目的も、結晶。貴様らは、やはり『時の協会』か」
「そうだ。そして、私には、お前たち魔法庁の『法』よりも、先に裁かなければならない『裏切り者』がいる」
シドは、零司に背を向け、『時空の扉』を開いた。その魔力は、結晶が最後に存在した座標を追跡していた。
「逃がすか!」
零司は、シドの『時空の扉』が完全に開く前に、『広域空間断裂』を放った。
しかし、シドの『時空の扉』は、時間と空間の両方に存在する次元を切り開くため、零司の空間のみを切り裂く魔術は、シドに届かない。シドは、零司への嘲笑を最後に、時空の扉の奥へと消えた。
零司は、歯噛みした。
「九条刹那……。君の存在は、常に、私に『法』の限界を突きつける!」
零司は、自身が構築した『自動時間干渉感知器』のデータを全て抽出するよう指示を出した。刹那の『法則のノイズ』のパターンを分析し、次の『法の壁』を構築する必要があった。彼の追跡は、もはや公的な使命と個人的な執念が入り混じったものとなっていた。
管理者たちの対立
『時空の狭間』。刹那は、結晶を握りしめ、リナに向き直った。
「結晶を確保した。君の言った通り、協会の刺客が来たな」
リナは、安堵の色を見せつつも、表情を引き締めた。
「シドは、私の『時空の扉』の痕跡を読み取れる唯一の人間です。彼は、必ず私たちを追って、『時空の狭間』へ入ってきます」
「彼をどうする?君の元同僚だ」
「彼は、協会の『絶対的な時間支配』という思想に心酔している。容赦は不要です。彼は、あなたの『時間法則の守護』を、『時空の法則』を乱す最大の異物として排除しようとするでしょう」
リナは、刹那に協会の真の目的を明かした。
「協会の目的は、この『過去の魔力結晶』を集め、『起源の魔力』がこの世界に誕生した『過去の分岐点』を改変すること。その分岐点が改変されれば、あなたの『時間魔術』も、私の『時空魔術』も、存在そのものが否定されます」
刹那は、自身の存在、そして世界の法則を守るために、シドを排除する必要性を理解した。
「では、僕が、この『狭間』で、彼を『時間の檻』に閉じ込める」
狭間での決戦の予兆
刹那とリナが対話している、その時。
『時空の狭間』の静寂が、紫色の激しい歪みによって破られた。シドが、強引に『狭間』への扉を開き、空間に乱入してきたのだ。
「リナ!裏切り者の末路は、時空のゴミとして消えることだ!」
シドは、殺意に満ちた瞳で二人を睨みつけた。
「シド!やめなさい!あなたの『時空の法則』は、協会の『悪意』に利用されているだけだ!」
「黙れ!お前と、その『時間停止の異物』を、この『狭間』で、時空の断層へと叩き込む!」
シドは、『狭間』の持つ不安定な時空のエネルギーを利用し、『広域時空切断』を発動させた。周囲の歯車が回り、刹那とリナの立つ空間が、時間軸ごと切り離されようとする。
「リナ!僕の『時間法則のノイズ』で、シドの座標術を攪乱しろ!」
刹那は、結晶を握りしめ、『時空の狭間』での、管理者同士の壮絶な法則の衝突へと、身を投じた
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