第11話:時間と空間の共闘、そして調律者の敗北
共同戦線の開始
魔法庁本部地下の『起源の魔力貯蔵庫』。九条刹那の『時間収束』によって『調律者』の広域魔術が打ち破られた瞬間、『法』と『法則』の奇妙な共同戦線が開始された。
「監査チーム!『空間収束陣』を展開せよ!調律者の移動座標を封じ込めろ!」
零司は、即座に空間魔術による包囲網を構築し、調律者の行動を制限しようとした。
「零司!奴の『調律術』は、時間軸の座標を操作する。空間の封鎖だけでは、時間のズレを使って脱出する!」
刹那は、『時間法則のノイズ』を最大展開し、調律者が『時間跳躍』を使う際の魔力の予兆を読み取ろうとした。
リナは、刹那の隣で、自身の時空魔術の知識を提供する。
「調律者は、必ず『時間逆行』を応用した『時間回復』で、魔力の負荷をリセットしようとします。その『逆行の波長』を狙ってください!」
調律者は、彼ら三人の連携に苛立ちを見せた。
「たかが『現在』に生きる雑音どもが……!私の『調律』を乱すな!」
時間回復の罠
調律者は、銀の杖を床に打ち付けた。
「――『時間音階・反転』!」
貯蔵庫内部の時間軸が、調律者を中心として逆方向に流れ始めた。これは、彼自身の魔力負荷を『過去の状態』に戻し、全快させるための魔術だ。
「予測通りだ!刹那!」
零司は、刹那に叫んだ。彼は、刹那の時間魔術師としての才能を、戦いの中で瞬時に信頼した。
刹那は、自身の『時間収束』の魔力を、『時間逆行』によって発生する『時の波紋』の中心点、すなわち調律者の魔力回路に向けて放った。
「――『時空の絶対固定』!」
特訓で完成させたばかりの時間と空間の法則の統合が、『時間逆行』という『時間法則の応用』に対して、完璧に機能した。調律者の魔力回路の『時間の流れ』だけが、『現在』に絶対的に固定された。
「ぐっ……!魔力が『逆行』できない!?これは、『時間法則』の絶対的な上書き……!」
調律者は、魔力が回復しないどころか、時間固定によって魔力回路が完全に停止させられ、激しい苦痛に襲われた。
空間断裂の断罪
調律者の動きが止まった、この決定的な一瞬を、零司は見逃さなかった。
零司は、刹那の『時間固定』が『空間の層』を乱すことなく機能していることを確認すると、自身の『空間断裂』の魔力を、貯蔵庫全体の空間座標に収束させた。
「刹那!その固定を0.5秒だけ維持しろ!『法』の執行を完了する!」
「任せろ!」
刹那は、『一秒の破片』の固定魔力をもって、調律者の『時間固定』を維持した。
「――『零距離・空間断裂』!」
零司は、調律者の四肢と主要な魔力経路を、空間座標ごと切り裂く『断罪の刃』を放った。彼の魔術は、調律者の生命を奪うのではなく、魔術師としての能力を完全に奪うことを目的としていた。
バキィン!
調律者の身体が、空間的な切断によって崩れ落ちた。彼は、もはや魔術を行使できず、ただの人間となった。
「馬鹿な……裏切り者の『時間』と、法の番人の『空間』の連携……私に、『時間の終焉』が訪れるとは……」
調律者は、絶望の言葉を吐き、意識を失った。
法の執行と、次の危機
戦闘が終結した瞬間、零司は、監査チームに指示を出し、調律者の身柄と、彼が携行していた『時間魔導具』の保全を命じた。
零司は、刹那に向き直った。彼の表情は、もはや敵意だけではない、複雑な感情を帯びていた。
「九条刹那。君の『法則』は、今回の危機を救った。それは事実として認める」
「君の『法』は、協会の刺客を断罪した。それは、秩序の回復だ」
刹那は、淡々と応じた。
リナは、零司に詰め寄った。
「零司!調律者は、協会の中堅幹部です。彼の時空魔導具を解析すれば、協会の『起源の魔力』の次の目標が分かるはず!」
零司は、無言で調律者の魔導具(銀の杖)を受け取り、監査チームに厳重な警備を命じた。
「この魔導具は、私の『法』の下で、厳密に解析される。君たち、『法の破壊者』に、その情報が渡ることはない」
零司の『法』は、危機を救った刹那を、未だに信用しない。彼は、協会の魔導具を公的な秩序の下に置き、刹那との一時的な共闘を、ここで打ち切った。
「刹那。君は、『法』を無視した罪を負っている。次に君が『時間法則のノイズ』を発生させた時、私の『時間監視網』は、容赦なく君を断罪する」
刹那は、零司の冷徹な決断に、静かに頷いた。
「分かった。だが、零司。君の『法』が、協会の『時間の改変』のスピードに追いつけるか、僕が見届ける」
刹那とリナは、零司の空間封鎖が展開される前に、リナの『時空の扉』で、貯蔵庫から姿を消した。
零司は、誰もいなくなった貯蔵庫で、手元の銀の杖を見つめた。彼の『法』は、銀の杖の解析と協会の追跡を命じている。しかし、彼の頭には、刹那の『時間法則の力』、そして彼らの連携の可能性が、深く刻み込まれていた。
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