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#1

 僕は忘れ物のA級常習犯だ。僕以上のツワモノにはいまだかつてお目にかかったことがない。(自慢するようなことでは決してないのだが)


 家に貴重品の類を忘れてくるのはもちろんしょっちゅうのことだけれど、それだけなら別段問題はない。厄介なのは、外でやらかす忘れ物だ。


 僕が忘れ物をする場所は、トイレの個室と大方相場が決まっている。それも、鞄を丸ごと置き忘れてしまうケースが大半なのである。 


 どれだけ気をつけていても、年に一、二回は必ずやらかす。その理由は他でもない、僕の妄想癖が度を越して激しいからだ。


 特に催している最中は、心ここにあらず、なんて生易しいものではなく、意識が別次元へ転移してしまっていることがままある。


 妄想の内容は本当にとりとめもないものばかりなのだが、今、頑張って頭を捻ってみても、全然思い出せない。つまり、それほどまでにとりとめもない内容なのだ。


 大慌てでお店に取って返している間中、それはもう、生きた心地がしない。


 祈るように個室のドアを開け、鞄がそのままの状態で置いてあるのを確認した時の安堵感といったら、筆舌に尽くしがたいものがある。 


 稀に鞄がなくなっていることもあって、そんな時はもう本当に、生きた心地が一ミリたりともしない。


 しかしありがたいことに、店員さんに事情を説明すると、毎回、鞄は心優しい誰かの手によってちゃんと届けられているのだ。


 そんなわけで、実のところ、これまで盗難に遭った経験はただの一度もない。


 現金なもので、日本に生まれて良かった、と心の底から思うのはこんな時だ。落ち目といわれて久しいけど、日本もまだまだ捨てたものじゃないな、と。


次回に続く

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