いつぞやの勝者は属する
量多くなっちゃいました!
気づけば、俺が住んでいるアパートの前に来ている。
大学から徒歩で10分ほど。高校の時、高校と最寄駅でも10分ほどだったので大して変わらないはずなのに、今日に限ってなぜか近く感じてしまった。
秋人はよく俺の家でだらだら過ごすので慣れている。夏美は物珍しそうにキョロキョロと周りを見ていた。ていうかほんとに来るんですね……
ここは俺の1人暮らしの部屋だ。実家から通うと1時間半以上かかってしまう、というもっともらしい理由だ。しかし、男子校育ちだから家事全般できないことを両親に見透かされ猛反対された。しかしなんとか押し切って今こうして1人で暮らしている。
そして後悔はしてない……はずなのに、今だけはめちゃくちゃ後悔している。
「ここ?」
夏美が俺に確認するように聞いてきた。しかし答えたのは、
「そうだよ。ここ」
「お前が答えるのね?秋人。その言葉普通家主が言うからな」
いつもと変わらない会話をしながら中に入った。
部屋は1人暮らし用のよくある間取りだ。ベッドと机、本棚。そして少し散らばった服とゲーム機がある。
少し他の人より広いかもしれないが綺麗でもない。
The 普通である。生活する分には全く困らない。
「思ったより普通だね冬馬くん」
「君は大学生の1人暮らしに何を期待してるのん……?」
彼女は家に入る時と同じように俺の部屋をキョロキョロと見ていた。そこまで物珍しいものはないと思いますよ……多分
棚の一角には、やけに大事そうに置かれた小物が並んでいる。アクスタ、キャラクターのキーホルダー何年も前に買ったままのグッズ。
視線に気づいたのか、秋人がニヤついた。
「相変わらずだな」
「実家の自部屋はもっとすごいの知ってんだろてめえ。そんでお前も人のこと言えないだろうが」
秋人はそんなことないです笑みたいな顔をしている。お前からもらったものもここにあるんですが?
「なんか他の友達の1人暮らしの部屋より大きくない?」
「あーそれはねこいつの家金持ちなのよ」
「そうなの!?!?」
彼女は驚きながらこっちを向いた。そして、秋人くん。さっきから俺の情報を君が答えるのそろそろやめない?
「その話はいつか話すわ。で、俺の部屋まできてなに話すの?」
俺は机に座り、秋人と夏美に対して顎でベットの方を示した。
秋人は自慢げに鼻を鳴らし、そして目の奥をギラつかせながら言った。
「もちろんサークルを作ること。」
「私も授業前に聞いて面白そうだと思って。あーあとその前に。」
夏美は少し間をおいた後に、ニコッと笑いながら、
「私のこと夏美でいいからね。さん付けじゃなくていいよ!」
この子の笑顔に惚れて告白して振られた男子がたくさんいることがなんとなくわかった。危なかったぜ。
「わーった。とりあえず俺も冬馬でいい。秋人もそうだろ?」
「もちろん」
「ふふ、ありがとう!」
こうして仲良くなれました。めでたしめでたしってしたいところだけど、どうも現実はうまくいかない。サークルで、何やるかを決めないと。
「細かいことはあとで。とりあえずやる内容と名前を決めよう。」
「だから名前は奉仕部だって……!」
その迫真な顔でこっち見ながら言うのやめて?無理だって色々と。ちゃんと考えよう。ほら夏美とか見て?めっちゃ真面目に考えてくれてる。
「ん〜まずやる内容決めない?そうじゃないと名前も決まらないと思う。」
夏美はゆっくりと考えながら答えてくれた。この場にいる全員が役職持ちだというのに夏美がいなかったらゼミほんとどうなってたんだろう。
「私が一旦司会みたいなことするね。まずは整理から」
夏美は手を叩いて、空気を変えた。
「何かやりたいことある人!」
「奉仕部」
すると、彼女は間髪入れずに、
「それ、人助けでしょ?具体的じゃないから却下」
「はやくね!?!?」
そうだぞ秋人。奉仕部に執着したい気持ちは、わかる。痛いくらいにな。でも夏美の言う通りだ。……ん?ちょっと待て。俺と秋人は別に奉仕部の説明をしていない。なぜ内容を知ってる?
俺と秋人が顔を合わせ、そして夏美の方を恐る恐るゆっくり見ると彼女は「あっ」と小さな声を出して、頬を赤らめた。一瞬気まずい空気が流れたものの、彼女は誤魔化すように咳払い話を続ける。
「コホン……そんなことはいいの。人助けをしたいことはいいことだとだけど、人助けしたいです!だけじゃ無理だと思うよ。」
彼女の言う通りだ。実際高校の部活でさえ、そんな理由では成立しない。できるかもしれないが大学のサークルだとハードルが上がる。
「それじゃあ人員もお金もない、俺らができることを一旦候補に上げていくのは?」
俺は自分の中で考えていたことを口に出した。
みんなそれぞれ少し考えたものの、あまりいい案が出て来ず。どうしましょうかね。そして少し時間が経った後に秋人が
「できることって例えばだけど勉強教えたりとか?じゃね。冬馬とか出身高校偏差値72とかだろ?それでなんとかできそうだけど」
「俺が大学受験の勉強始めたの高3の12月だからな……共通テスト1ヶ月前から勉強始めた人間に教わりたくないだろ普通」
夏美は驚いた顔をして俺の方を見てくる。しかもその顔でいいたいことがなんかもう「なぜこの大学に……?」みたいなことを言いたげな感じがする。
「それで受かっちゃうんだ……ここ一応世間的には日東駒専以上なんだけどね。すごいね冬馬」
夏美は感心した声で言ってくれた。しかし、
「……え?逆に怖いんだけどそれ」
あれ?なんか評価が手のひらくるくる変わってませんか?すると夏美は俺から半歩引いた位置に座るような感じでさりげなく距離を取った。
「え、なにそのエピソード。才能タイプ?」
「いや本番までに共通テストの点数だって各科目で40点しかあがんなかったし。」
これって高校同期の奴らにはだろうなみたいな感じだったのに……もしかして結構普通じゃないのか?
「しかもこいつ。40点上がることが普通だと思ってるから、なおこのエピソード好きなんだよな。聞いた人みんなドン引きするから」
秋人が肩をすくめながら笑う。夏美は話を聞きながらドン引きしている最中だ。秋人は考えを少しまとめていたようで、
「でもさ、勉強教えるとかいうのは悪くないんじゃね。金かからんし、人も集めやすいし。ガクチカに強い。」
最後がなかったら完璧だったね。ガクチカになることは確かに強いけど。
「大学生が勉強教えるって、それもうただの塾じゃない?」
夏美の言う通りだ。だったら俺ら3人で、塾講師のアルバイトに応募した方がよっぽど効率がいい。
「確かにそれだと塾の方がいい。俺らは金はかからないけど、実績が無さすぎる。」
「うん……だったらもっと規模を大きくして勉強だけじゃなくて、大学生活とか進路とかの相談になるとかはどうだろう?」
いい案だ。確かにそれだと責任を取らなくてもいいし、サークル感がある。
「……それ奉仕部じゃね!?」
秋人は身を乗り出す。
「却下って言ったでしょ秋人」
「ひどくない!?!?扱い雑すぎない!?」
「名前がだめなだけ。内容問題ないとは思うけど。」
夏美は大きく深呼吸した。その拍子に、視線のやり場に困るものが揺れる。そして、俺たちを交互に見ながら
「内容は決まったから名前ね。私は相談研究会がいいと思うんだけど。2人ともどうかな?」
「俺は特に思いつかないからいいよ。」
「実質奉仕部じゃん。」
だから違うってもう諦めてるからいいけど。
「名前は相談研究会ね。長いから言う時は相研にするけど」
名前と活動内容が決まった。授業が終わったらこいつらと過ごす時間がこれから増えるのだろう。なんとなく、そう思った。まるで高校の時のように。
どんな相談が持ち込まれるのか。不安もある。でも、それ以上に少しだけ楽しみでもあった。
夏美と秋人はサークルの方針をどうするかまだ話し合っている。それを横目に見ながら俺は新たに始まる日常のことをぼんやり考えていた。
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