いつぞやの勝者は拒否れない
昼飯を食べ終え、食堂を出た。
中庭では、誰かを待つ人と、誰かを呼び止める人が入り混じっている。俺と秋人は、どちらにも当てはまらず、ゼミに向かいながら、人混みを分けて進んだ。
歩いている最中、ふと気になったことがある。
さっき秋人はサークルを作るとか言ってたけど、その場合なんのサークルを作るつもりなんだ…?やるにしても大抵のものは揃っている気がするが。
「サークル、やるやらないは内容次第だからな」
「んーそうだな……」
秋人は少し考え、顎に手を当て考え込んでいる。
くだらない話をしているうちにいつのまにか東棟に着いてしまった。そこにはこれから授業がある生徒が吸い込まれていくように入っていく。
「冬馬、奉仕部とかは?いいと思うよこれ」
「色々まずいから速攻でやめてくれ」
確かにそのアニメめっちゃ好きだけど…!俺と秋人が1番好きなアニメでそこで盛り上がって、仲良くなれたきっかけだ。だけどそれは色々とまずい。
「奉仕部?そんな部活ってこの大学あったっけ?」
俺たちは後ろを振り返ると同じゼミの女の子が立っていた。
白いブラウスに落ち着いた色のスカート。清楚そのものの格好なのに、体のラインだけはやけに誤魔化しきれていなかった。
「お疲れさま。夏美さん」
彼女の名前は榎本夏美。ゼミが同じ子でもう1人の副ゼミ長だ。正直関わりがないからどういう性格なのかも全くわからない。
ハーフアップにまとめられた髪がやけに印象に残った。男子校出身の俺からすると、ああいう髪型は反則だと思う。あの髪型、高校の同期からも人気だもんなぁ
「お疲れ様。冬馬くん、彰人くんそれでさっき言ってた奉仕部っていうのは??」
「あーいや、秋人が新しくサークル作りたいとか言い始めててそれでちょっと話が脱線して、その話に」
「へぇ結構面白そうだったのに。やらないの?」
彼女はそう言って、楽しそうに首を傾げた。
男子校6年間収監されてた身としては、これ以上異性と話すのはまずい。体がアラート出してやがる。
俺が言葉を返すのに詰まっていると秋人が助け舟を出してくれた。
「奉仕部ってのは架空のやつだからやらないよ。やるにしてももうちょい楽しくて、面白そうなものをやる予定だよ。」
「え、なにそれ。後で詳しく話を聞かせてよ」
その言い方が妙に断りづらく俺はつい首を縦に振ってしまった。
ゼミの授業が始まった。もっとも内容に集中する気はさらさらない。というか普段から授業聞いてない。今更だ。隣の席に座っている秋人は案の定というかすでにがっつり寝ている。一応ゼミ長だよな?
さっきからずっと榎本夏美が言った言葉が頭から離れない。普段の俺なら適当に会話を流したり、はっきりと断ることができたはずだった。男子校6年間の後遺症みたいなものがまだ残っているのかもしれない。
そうこうしているうちに終わりのチャイムがなり教室では皆、帰る準備をしている。俺は授業中に出していたiPadを片付けつつ秋人を起こした。
「なんか終わってるやん」
秋人は欠伸を噛み殺した後、背中を伸ばしている。
背中からバキバキと音がなってるけど大丈夫なのか?
「お前、めっちゃ寝てたもんな」
「いやーおかげですっきりだわ。課題出てる?」
「課題は出てないよ。ゼミ長さん」
からかうような声と一緒に榎本夏美がこちらへ歩み寄ってきている。
「2人とも全然授業聞いてなかったでしょ。秋人くんはがっつり寝てたし、冬馬くんは全然集中してないし」
思った倍見られていたらしい。正直驚きが隠せなかった。しかも俺が集中してないことしっかり気づかれている。
「2人とも役職付きなんだからもうちょい授業しっかり受けなよ」
あれこれ正論では?何も言えなくなってしまった。そして俺と秋人は怒られている感じで少し萎縮している。
「次から気が向いたら気をつける」
「俺も冬馬と同じく気が向いたら気をつける」
「……冬馬くん?秋人くん?」
彼女は可愛い顔をしながらニコニコ笑っているものの目が笑っていない。あれこれ少し怒ってませんか?
さっきから寒気がする。5月のはずなのに変だな。気のせいだろう。そういうことにしよう。
「ま、今回は許してあげる」
彼女は呆れた顔をしながら笑っていた。今回はどうやら免れたらしい。
秋人はいつのまにか机の上の荷物を片付けており、
もう帰れる準備ができていた。
「夏美さんこれで授業終わりなら一緒に冬馬の家寄って帰らない?」
「は?なんで俺の——」
俺が抗議の声を上げる前に、被さるように夏美が食いついた。
「授業前に話してたやつの続きならいいよ!」
ありえない速度での即答。俺でなきゃ見逃しちゃうね。彼女の目を見ると輝いている。いや輝きすぎだろ。
秋人の方を見てみると、知らん顔をしてスマホを見ていた。視線すら交錯しない。
……あれ?俺の部屋行くこともう確定してない?
いかがだったでしょうか??
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