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第3話ー祝福

先導するノアが腰ぐらいの黒髪を揺らしながら、人通りがまったくない真っ暗で陰気な雰囲気の路地を進む。不意にノアが足を止める。


人差し指を口の前でたてて、静かにしろとジェスチャーしてくる。


「ここ、あいつらのアジトだから静かに。」

壁沿いに隠れながら見る、建物3つ分位の距離にある酒場がアジトのようだ。


言い方が冷たい気がするが、気にしないことにしよう。助けてくれるだけで100点。いや120点。 かわいいし


ノアの横顔が月明かりに照らされる。真紅の目が美しい。

見とれているとノアが話し始めた。


「この人数一気に相手するのは流石に無理....だから裏口から回りましょう。」


確かに5人を相手するのはいくら強くても難しいだろうと思いながら、

酒場の裏手に回り込み、裏口の鍵が開いていたのでそのまま侵入する。

ヤストとノアは慎重に足音を殺して進む。

暗い廊下を進むとスマホを奪ったやつが、正面入口の近くの席に座っているのが見えた。そのことをノアに伝える。

「あいつだ...俺の持ち物を奪い取ったやつ。あの入口の近くの顔に傷がある。」


ノアは静かに頷き、手のひらをこちらに向けて言った。

「待ってて。」


その瞬間、ノアの華奢な体からは想像もつかない速度でスマホを持った男に向かっていった。一瞬だった ノアの飛び膝蹴りが男の顎を砕いていた。

これには周りの仲間も同様しているが、悪いことをやっているだけはある。こちらを的だと認識すると、酒場の椅子や隠し持っていたナイフやらを構えた。


ノアは無言で飛び出し、敵の攻撃を軽やかにかわしながら反撃を開始する。

落ちていた棒を使った一撃が相手の肋骨を折り、蹴りが膝を貫く。


だが、背後から忍び寄った男がナイフを振りかざし、ノアの左肩甲骨の下を深く突き刺した。


「……っ!」


ノアは激痛に顔を歪める。鋭い刃が筋肉を貫き、内側から熱く焼き切られるような痛みが走る。だが彼女は声を発することなく、苦悶の表情のまま、なおも戦い続ける。

刺した男の手首を掴んでねじり上げ、動きを封じる。

急に盗人の一人が叫ぶ

「おい、こいつ見たことあるぞ、確か不死の」


その瞬間、男たちの表情が変わった。

それは獲物を見る目から、まるで地獄を覗いたような恐怖に染まった目へ。


「な、なんだ……あれ……」


男たちの視線の先、ノアの左肩から流れていた血が、みるみるうちに止まり始める。

皮膚が再生し、肉が閉じ、裂けた傷口はまるで最初から何もなかったかのように塞がっていく。


「傷が……消えた!?……まさか……」


「こいつ……祝福者だ! 不死の……!!」


一人がそう叫んだ瞬間、まるで決壊したダムのように全員が一斉に後ずさりし、蜘蛛の子を散らすように路地裏の奥へ、闇へ向かって逃げ出した。


「無理だ! 無理無理無理!」「あんな化け物知らねえ!!」「関わるな、死ぬぞ!!」


転びそうになりながら、悲鳴のような叫び声を上げて次々に闇へ消えていく。


ヤストはその光景を、まるで現実感がないかのようにぽかんと口を開けたまま見送っていた。


——何が……起きた?


ヤストは目を見開き、呆然とその光景を見送る。


「ノア! 大丈夫か!」

ようやく声が出たとき、ノアは肩を押さえ、まだわずかに血の滲む服を見下ろしながら、ヤストの方をゆっくりと振り返った。


だが、その顔には意外なほどの冷静さと、少しだけ……呆れたような表情が浮かんでいた。


「……本当に……私のこと……知らなかったんだね。」


ノアは少し肩をすくめ、疲れたように、だが優しく微笑んだ。


「私は大丈夫。不死だから。」


その言葉は、まるで「少し風邪をひいただけ」とでも言うかのような軽さだった。


ヤストの脳は、一瞬でフリーズする。


どうやら、目の前のこの少女は……不死らしい。










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