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狼少女と一匹狼の僕  作者: なつのひ
第一章
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1.死人からのメッセージ

 人と関わるのが嫌いなわけじゃないし、友達なんていらないと思っているわけでもない。ただ、思ってもいないことを無理して共感したり、誰かや何かを傷つけたりしてまで誰かと一緒にいたいとは思わない。そういう過共感な奴にはなりたくない。そんな捻くれた考えを持っているからか、高校ニ年生の吉岡宗弥(よしおかそうや)には友達と呼べる人はいない。


 新年を迎えてから5日がたった今日、なんとなくインスタグラムを開くと初詣や旅行など正月に関する投稿で埋め尽くされていた。ふと右上のメッセージ欄を見てみると、届くはずのない相手からのメッセージが届いていた。

 日付は3日前、最初はアカウントが乗っ取られでもしたのかと思った。もし、詐欺サイトへの誘導だとしたらあまりにもタイミングが悪い。

  しかし、メッセージの内容を確認すると僕の考えは一蹴された。そして送られてきたメッセージに思わず息を呑む。


吉岡宗弥(よしおかそうや)さんのアカウントですよね、このメッセージを読んだら返信してください。」


 どうやら送り主は僕の名前を知っているらしい。単なる乗っ取りではないのか。僕に友達と呼べる人なんていないのでフォローしているのは好きなバンドやスポーツチームなどのオフィシャルアカウントがほとんどで実際の知り合いは少ししかいない。

 ユーザー名は自分の名前と関係ないし、学校の生徒はほとんど誰もフォローしていない。それこそメッセージを送ってきたアカウントの持ち主である『桜庭陽和(さくらばひより)』くらいだった。彼女からメッセージが来ることはもうない。

 彼女はもうこの世界にいない。

 メッセージの送り主について、一度冷静になって考えてみる。相手は僕のことも桜庭のことも知っている人間になるので、学校にいる誰かだろうか。

 しかし、相手は彼女のアカウントにログイン出来るか、彼女のスマホを持っているということになる。彼女が誰かにパスワードでも教えてない限り、そんなことができるのは彼女の家族くらいだろう。

 結局いくら考えても答えが出せるほどの要素を持ち合わせていないので、直接聞いてみる。


桜庭陽和(さくらばひより)は亡くなった。今メッセージを送っているのは誰なの?」


「返信をくれたと言うことは、吉岡(よしおか)さんであってると言うことでかすね。」


 僕の質問を平然と無視するあたり、相手は相当いい性格をしているらしい。そもそも人のアカウントを勝手に使っている時点で、まともな人間ではないのかもしれない。

 次のメッセージはすぐに届いた。


桜庭陽和(さくらばひより)が何で死んだのか知りたいの、あなたには協力者になってほしい。」


 桜庭(さくらば)は新年を迎えることなく亡くなった。校舎の屋上から転落したらしい。それがニュースで知らされたことであり、彼女の死の真相と呼ぶべき事実だろう。


桜庭(さくらば)は校舎からの転落事故で死んだ。それ以上は知らない。」


「本当は事故じゃなかったとしたら、桜庭陽和(さくらばひより)はなんで死んでしまったのだと思う?」


 相手は何が言いたいのだろうか、誰かに殺されたとでも言うのだろうか。でもその可能性はかなり低いだろう。警察が調べた結果、屋上には争った形跡や他に人がいた形跡はなく、事故であったと断定された。僕を含め、誰もがそれを疑ってはいない。


「あなたが何を意図して言っているのかは分からないが、彼女は事故死で間違い無いだろう。」


「どうしてそう言い切れるの?」


 どうしてと言われても困る、強いて言うならば疑う余地がないからだろうか。思考を巡らせてるうちに相手は次のメッセージを送ってきた。


「調べたいことがあるの、だから手伝って。」


「調べたいこと?」


「死ぬ前に彼女に何があったのか、何で死んだのか。」


 そんなことどうやって調べると言うのだろうか。僕は警察でも探偵でも、ましてや彼女の親友や恋人でも無い。それに彼女の死をむやみやたらに掘り返すようなことはしたくない。


「私は彼女のスマホを持っている。スマホ自体のロックは解除できるが、中には個別にロックがかかったものもある。きっとその中に彼女の死についての秘密が隠されてるはず。」


 相手は彼女のスマホから送ってきているようだ。勝手に他人のスマホを開き、プライバシーを覗き込むなんて行為をやっていいはずがない。しかも相手はもう亡くなっている。悲しみや怒りも、死者は何も伝えることができない。僕は手をぎゅっと握りしめた。沸々とした怒りが自分の中から込み上がってくるのを感じる。


「そんなことに協力するつもりはない。誰だか知らないが彼女がロックをかけていたなら、それは見られたくないからだ。それをわざわざ開けようなんて言うのは、彼女に対する冒涜だ。」


 返信は少したってから届いた。


「ただただ転落事故でした、では納得できないことがある。何で陽和(ひより)は学校のない日にわざわざ立ち入り禁止の屋上にいたのか。それが分からないかぎり、彼女の事故死を受け入れることはできない。だから協力して、それがわかれば陽和(ひより)のスマホを開く必要はなくなるから。」


 こちらも少し時間をかけて、どう返信するのかを考える。送られてくるメッセージはだんだんと相手の感情が込もってきている気がした。きっとメッセージの相手は、彼女と深い関わりがあったのだろう。

 このまま放って置くわけにはいかない。


「わかった、できることは協力する。でも僕は何をすればいいんだ?」


「ありがとう。あの日、12月19日に陽和(ひより)が何をしていたのか調べたい。何で学校にいたのか。彼女はあの日、友達と会うって言って午前中に家を出たらしい。だからその日、彼女と会っていた人なら何か知っていると思う。」


 12月19日、彼女の命日だ。その日の彼女の足取りを辿れば何かわかるかも知れない。警察もやっていそうだと思ったがきっと聞いても何も教えてくれないだろう。僕らにできることはなんだろうか。

「わかった。でもどうやって探すんだ?」

「君は学校で情報を集めて、あの日桜庭陽和(さくらばひより)と会っていそうな人に。」


 学校であまり誰とも関わらない僕にとって聞き込みは、最も難しいミッションの一つだ。


「他の方法はないの?」


「ない。私は他のルートから探ってみる。」


「じゃあ最後に教えてほしい。君はなんで僕に声をかけたの?」

 

 結局これが一番の謎だ。相手が誰であり僕と桜庭に深い繋がりがあると思っている人はいないだろう。我ながら、情報を集めるのに適しているとも思えない。桜庭のことが知りたければもっと適任がいくらでもいるはず。


「君は陽和(ひより)と同じクラスだったし、あまり関わりなさそうだから。」


そうか、あえて何も知らなそうな人をあえて選んだのか。協力者は白確できた方がいい。



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