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第7話 大白温泉と御所温泉

 だけ温泉では、「昼食を摂り温泉に入る」と言う予定だったのですが、まさかそれが2つとも達成できないとは思ってもいませんでした。このままでは不完全燃焼です。


 折角来たからには、きちんとした温泉に入りたいですし、青森らしいものも食いたい。


 その場合の選択としては、「嶽温泉か湯段ゆだん温泉に入り、山越えで鰺ヶ沢に下って『海の駅』で海鮮料理!」って言うのが無難なところかと思います。


 でも、嶽温泉(ここ)って硫黄臭がきつくて、入ると服が硫黄臭くなるんですよね。それに、眼鏡をかけて入ると傷みそうだし……。まあ、マタギ飯があればそんなの気にしないんですけど、もう無くなっちゃったし……。


 湯段温泉も嶽温泉(ここ)から1kmちょいの場所にあるんですが、湯段温泉(ここ)は、どこの宿も湯船が小さくて、「温泉に来てる!」って気分になりません。



 迷ったんですが、結局今回は「海鮮は青森でも食えるから良いか!」と、すっぱり諦め、隣村である西目屋村を目指すことにしました。


「西目屋村の道の駅で食事を摂る。その前に、道の駅に向かうルート上にある『大白たいはく温泉』で入浴する」


 これが新たな計画です。




 さて、嶽温泉から大白温泉までは8kmちょっと。車で10分ちょっとの道のりです。


 来た道を3kmほど戻った後、岩木山総合公園の手前で右折するのですが、この道がなかなか凄い。何が凄いって、岩木山の裾野を谷底に向かって真っ直ぐに下っていくんです。ですから、気を付けないと、勝手にかなりスピードが出ます。


「気持ちよく走れるぜ!」と思った方、それは甘い。最後まで直線だったら良いんですが、この道、意地が悪いことに最終最後にカーブしており、ここでコースアウトしよう物なら川に向かって一直線です。スピードの出し過ぎにはくれぐれも御注意を!




 谷底まで下りた後、ちょっとした峠を越えると、急に目の前が開け、小さな盆地(?)が現れます。この盆地、どうやら河川争奪の影響でできた無能谷らしく、幅は広く平坦なのですが、中はその広さに不釣り合いな小川(※大秋たいあき川)が1本流れているだけです。ここに至るコースのことを考えると、桃源郷のような趣があります。


 目的地である大白温泉は、この小川のほとりに建っています。その建物の外観は田舎の公民館か集会所のようで、看板が出ていなければ温泉だとは気づけないかもしれません。


 そんな大白温泉ですが、その地味な見た目に反して温泉自体のポテンシャルは非常に大きな物があります。お湯は当然の如く『源泉掛け流し』。湧出量が大変豊富なため、数キロ離れた村営宿泊施設の源泉が涸れたとき、大白温泉からの導水で急場をしのいだこともあるそうです。


 実は、ここ、筆者のお気に入りスポットなんです(※だから選んだという話もw)。来るたびに立ち寄ってるんですが、今回は「日景温泉に行くんでスルーかな?」と、思ってました。だから、予定外に寄ることができたって点では、ちょっと嬉しいかも。


挿絵(By みてみん)

※年季の入ったポイントカード。あと5回で1回無料になります!




 大白温泉は、普段通りのたたずまいで私を出迎えてくれました。私は券売機でチケットを購入し、受付のおねえさんに手渡すと、そこから5歩ほど歩いて脱衣場の暖簾をくぐりました(近い!)。昔懐かしい鍵付きロッカー(※学校のプールにあったようなヤツ)に貴重品を入れると、すぐに浴場へ向かいます。


 なお、さっきもちょっと触れましたが、私はかなりの近視で、温泉に入るときも眼鏡が欠かせません。ですから、扉を開けた瞬間、温泉の熱気で視界が真っ白に(笑)


 すぐに洗い場に向かうと、桶にお湯をんで、眼鏡を放り込みました。そして、眼鏡がなじむ間に体を洗います。


 あ、忘れてました。北東北(この地域)の日帰り入浴施設には、石けんを含めたアメニティグッズはほぼ置いてありません。ですから、ホテルの外来入浴のつもりで訪れると、洗い場で途方に暮れることになりかねません。いつもバックの中にトラベルセットを準備しておくと無難ですよ。



 さて、体を洗った後は、お楽しみの温泉です。大白温泉はアルカリ性単純泉。いわゆる『美人の湯』です。実際、入浴中に肌を触るとぬめりを感じます。これは、アルカリ性の湯が皮膚の老廃物を溶かしてくれているためで、入っていると肌がツルツルになっていくのが実感できます。


 透明でありながらも薄く茶褐色に染まる湯は、45度と比較的熱めですので、今回もあまり長く入っていることはできませんでした。が、浴槽への出入りを数回繰り返しながら、温泉を十分に堪能することができました。私が入ったときの先客は2人いたのですが、次々と上がってしまい、最終的には私1人になりましたので、ちょっと『トド寝』を楽しむこともできました。


 残念なのは、露天風呂が閉まっていた(※5月~11月開放)ことと、サウナに水風呂がないことです。露天風呂は季節的な物があるんで仕方ありませんが、サウナはなぁ……。



 ちょっとしたモヤモヤを抱えつつ、十分にさっぱりしましたので、次の目的地である道の駅を目指し、出発しました。



 道の駅までは3kmちょっと。しばらくは、左右に田畑の広がる平坦な道を進みますが、『田代』の看板を左折すると、すぐに様相は一変します。いきなり山肌を縫って下るワインディングロードに突入するのです。


 ここの高低差は120mほど。距離的にはそれほどでもありませんが、いきなりの変化に驚く方は多いと思います(※ちなみに過去はもっとカーブが多く、場所によっては砂の浮いた逆バンクの部分もあり、ライダー泣かせの坂としても有名でした)。



 10分弱で道の駅『津軽白神ビーチにしめや』に到着したときには、時刻は既に15時を回っていました。中に入り、レストランに向かうと……。


L.O(ラストオーダー) 14:30」



 お ま え も か ! ! !



 もうヤケです。コーラを一気飲みすることで、糖分と炭酸で満腹感を偽装し、『温泉のはしご』としゃれ込むことといたしましょう!


「次はサウナで水風呂だ!!」


 こう考えて選んだのが、道の駅から10kmほど離れた『御所温泉』でした。ここは、旧相馬村役場(現弘前市相馬支所)に併設された温泉です。施設の老朽化に伴って数年間閉鎖されていたのですが、数年前にリニューアルされ、支所と一体の複合施設として営業を再開しています。


 15分ほど車を走らせて着いた御所温泉の駐車場には車も多く、繁盛している様子。早速入館すると、310円を払って入浴券を買い、広いホールを通って脱衣場に向かいました。


 100円返却式の貴重品ロッカーに財布等を預け、浴場へ。

 そこで顔を上げれば、正面に映るのは雄大な岩木山の姿です。

挿絵(By みてみん)

※こんな感じに見えます(イメージ)



 この御所温泉。相馬川の河岸段丘の上に立てられています。目の前が崖で、遮る物が何もないことを活かし、岩木山を借景としたロケーションを作り上げたのです。湯船につかりながら岩木山を楽しむ。これが御所温泉最大の魅力だと思います。


 なお、以前でしたら、『笹濁りして金気があり析出物も多い濃厚な湯』も魅力だったのですが、リニューアルに伴って源泉が変わったらしく、現在は大白温泉と同じような透明で薄い茶褐色の色合いになっています。


 泉質は以前と変わらずナトリウム塩化物泉に分類されています。ただ、塩気が強く、肌を刺すような熱さを感じた以前と比べると、随分と大人しくなった印象です。



 ゆったりと岩木山を楽しみながら湯船につかり、体が火照ってきたところで、サウナへ。92度のサウナで存分に汗を流して、目の前の水風呂に突撃です。これがまた冷たい! その冷たい水に、ずずずずずっと身を沈めていきます。つま先、すね、もも、腹、胸、首とじわじわかり……。本当は『頭』まで行きたいところですが、『潜らないでください』と注意書きがあるので我慢しました。


 水風呂から上がり、頭から水を浴びると、体が芯からぽかぽかしてきます。


 しばらく洗い場の椅子に座って体を休めた後、もう一度湯船へ。先ほどは熱く感じた湯が、いつまでも入っていられそうに感じてくるのが不思議です。本当はもう少し繰り返したいところですが、そろそろタイムリミットですので、後ろ髪を引かれながらも上がることにしました。



 車に戻った私ですが、温泉で汗を流したせいか、コーラマジックが解けかかっていました。


 時間は16時過ぎ。流石にここから昼飯にするのは現実的とは言えません。とりあえず、パンでも食って誤魔化すことにします。


 ここで選んだのは、あの『イギリストースト』です。


 知らない人のために解説すると、このパン、青森市に本社がある『工藤パン』のロングセラー商品で、発売から50年以上、青森県民に親しまれています。マーガリンとグラニュー糖を食パン2枚で挟んだだけの商品です。ちなみに、焼いてもいないのに『トースト』と言いはる理由は良くわかりません。


 青森贔屓の私ですが、あまりのチープさと、元来甘いパンがあまり好きではなかったこともあって、今まで一度も口にしたことがありませんでした。


 しかし、この空腹状態なら、すんなり入るのではないか? こう考えて口にしてみたんです。


 結果は、予想どおりの味でした(笑) でも、糖分が脳に『ずーん!』と来て、空腹にはかなり効きましたね。


 正直なところ、「青森まで来て食べる物か?」と問われれば疑問符が付きますので、今後、旅先で食べることは多分ないでしょう。でも、日常生活の中でだったら「有り」な気がします。自分用のお土産として持ち帰るってのもいいかも。そしたら、文字通り『トースト』してみるんですけどね。



 この後は、再び青森方面へ。ナビは黒石IC経由のコースを案内しますので、乗っかってみることにしました。その感想は……。



「往路もこっちから来れば良かった!!」



 通称『十和田道』とも呼ばれる国道102号の弘前-黒石間。通ってみたら、片側3車線が普通で、なんと! 場所によっては片側4車線の場所もあったんです!!


 そんなわけで、この区間は、めっちゃ車の流れがスムーズでした。市内をバイパスするルートはそれなりに知ってますんで、こっちを通ってたら、1時間ぐらい早く公園についてたかも!? 後悔役立たず……。次回の反省にしたいと思います。



 さて、折角ここまで来ましたので、宿泊についても語っておきたいと思います。


 この時期は、県内外から花見客が殺到するため、弘前市内の宿は非常に混雑します。確実に予約を取るためには、相当な早期から動いておく必要がありますが、桜の開花予想は大変難しいです。前年の開花時期や天気予報各社の予想をあてに宿の予約を取っても、外れてしまうことは珍しくありません。


 行っても咲いてなかったorほとんど葉桜だった。こんな悲劇を防ぐためには、ある程度予想が固まってから予約を取れば良いのですが、その頃には、既に全て満室だった。なんてことはざらです。


 じゃあどうすれば良いの?


 その悩みを解消するには、私は青森市内への宿泊をオススメします。


 青森市内の桜も開花時期は弘前とほぼ一緒ですが、幸か不幸か弘前ほどメジャーではありませんので、競争率が低いんです。しかも、青森は県都でもありますのでビジネス需要もあり、弘前よりもホテルの絶対数が多い。


 また、青森-弘前間は、普通列車でも自動車でも1時間程度。仮に21時まで夜桜を堪能しても、十分に宿まで戻ることが可能です。さらに言えば、青森は港町。海産物という弘前にはない魅力も持っています。来年、弘前桜祭への来訪を考えている皆さん。ぜひ一度御検討ください。

※逆側の秋田県大館(おおだて)市に宿を取るのもアリです。しかし、大館は都市規模が小さいため市街地のホテルが少ないのと、県境の矢立峠付近が災害に弱いのがネックですので、青森ほどはオススメできません。







 さて、こんなことを書いておいて何ですが、17時半ぐらいに新青森駅に着いた私は、そのまま18時半の新幹線で帰宅したのでした。


 その通り! 日帰り旅行です。これなら宿が取れなくても全く問題ございません。


 ……でも、こんなの他人ひと様には勧められませんねぇ(笑)


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― 新着の感想 ―
[一言] よい旅行記をありがとうございました。 何かあっても、すぐにプランBが出てくるというのは、やはり色々と事前知識があるから、なんでしょうね。 いつかは、行けたら、いいなあ…
[一言] やっぱり日帰りでしたか! 京都のアレも凄かったですもんねぇw 予定が狂っても即次善プランに移行する決断の速さはさすがです。 『嶽きみ』は桃鉄で存在だけは知ってましたw
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