第1話 思い立つそして、北へ
この前、花見に行ってきました。
行こうと思ったきっかけは、4月初旬のことです。何の気なしにウェザーニュー○の情報をチェックしていたところ、日本屈指の桜の名所の満開予想が、私の休みとぴったり被っているではありませんか!
少し前の予想では、早い休みは『五分咲き』、次の休みは『散り始め』で、私の週休日を思いっきり避けるように満開期間を迎える見込みでした。
「今年は駄目か~⤵」と半ば諦めていたのですが、どうやら、4月に入って急に温かくなったせいで、一気に開花が進んだようです。
これは行くしかありません。私は早速ネットでレー○&レンタカーの予約をかけ、車で30分ほどかかる駅まで行き、みどりの窓口でチケットを取ってきました。もう後戻りはできません(笑)
ちなみに、レー○&レンタカーは、レンタカーを借りることでJRの乗車券が1割、特急券が2割割引されます。これは、旅行会社のツアーパックや、特別な周遊券等を除けば、かなりお得なチケットと言えるでしょう。しかし、一つ看過できない大きなネックがあります。それは、チケットが駅のみどりの窓口でしか発行してもらえないことです。
みどりの窓口なんか、ちょっとした駅ならどこにでもあるだろ?
とんでもない! ちょっと調べてみてください。ここ数年で、みどりの窓口は激減してるんです。『駅員が常駐してる』って油断してませんか? みどりの窓口の看板が出てない駅では、その駅員さんたち、切符や定期券の販売は一切してくれませんよ? それらは全部、自動券売機や指定席券売機の仕事になってるんです。
指定席券売機は遠隔でオペレーターが対応してくれるものも存在するんですが、そんな『話せる指定席券売機』でもレー○&レンタカーチケットは受け取れません。はっきり言って”不便”以外の何者でもないです。
私の町も、去年までは徒歩5分の最寄り駅にみどりの窓口がありました。ところが、この1年間で近隣の駅のみどりの窓口は次々と閉鎖され、ことごとく指定席券売機に置き換えられてしまいました。おかげで、10km以上離れた駅まで車で行くハメに……。
駅レンタカーだってJRグループだろ!? 「みどりの窓口を復活させろ!」っては言わないけど、せめて、レー○&レンタカーを指定席券売機対応にするとか、ちっとは企業努力しろよ!!
閑話休題
さて、そんなこんなでチケットを入手した私は、4月某日、9時47分、まだ肌寒い新青森駅に降り立ったのです。最寄り駅を早朝4時台に発ち、約5時間かけての列車旅でした。
今回の旅の目的は、弘前公園で満開の桜を見ることです。
さて、私は最初に『日本屈指の桜の名所』と言いましたが、これは正直なところかなり遠慮したセリフで、個人的には、総合的な見地から言って『日本一』だと思っています。敢えていいますが、比肩しうるのは、総数3万本ともいわれる吉野山ぐらいではないかと。
弘前公園の桜は約2600本。これでもかなり多いですが、同じぐらいの本数の名所は他にもありますし、先ほどの吉野山に比べれば数は一桁落ちます。しかし、その凄みは桜の本数や種類のみに由来するわけではありません。最大のアドバンテージは『弘前方式』と言われるその管理方式にあります。
日本で最も一般的な桜の品種であるソメイヨシノの寿命は、過去には60年~80年程度と言われてきました。品種によっては1000年を超える古木も存在する桜の寿命としては随分短いですが、これは、ソメイヨシノが全て挿し木で生産される、言わば『クローン木』であることも関係しているようです。
ところが、その、『寿命の定説』は、弘前公園の管理者たちの手によって突き崩されました。なんと、現在、弘前公園には樹齢100年を超えるソメイヨシノが300本以上存在し、現存する最古のソメイヨシノ(※樹齢130年以上)も弘前公園で見ることができます。この、『古木が非常に多い』のも、弘前公園を唯一無二の名所にしている所以であると言っても過言ではありません。
ちなみに、なぜ、そのようなことができているかと言うと、青森県が日本一のリンゴの産地であることと大変関係が深いそうです。
皆さんは、『桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿』ということわざを聞いたことがあるでしょうか?
桜は剪定すると枯れてしまい、梅は剪定しないと実が付かなくなってしまうことから生まれた言葉で、『その人の個性に応じて支援の仕方を変えることが大切だ』という意味を持っています。
ことわざにも取り上げられるくらいですから、『桜は剪定しない』というのが以前の“常識”だったのですが、弘前公園では60年以上前から、桜の剪定を実施してきました。これは同じバラ科であるリンゴの木の管理と、桜の管理で共通点があることに気付いたためでした。
そして、リンゴの管理で培った技術を基に、適切に剪定をし、且つ、切り口からの雑菌の侵入を防いでやることで、逆に樹勢を回復する事に成功したのです。
さらに、その適切な管理は、花自体の絶対量にも表れています。
初めて弘前公園に行った人は、桜を見て必ず違和感を覚えます。「あれ? この桜、普段見てるのとなんか違う!」って。そして、さらに、よーく観察すると気付くはずです「この花、なんかモコモコしてない!?」って。
実は、普通のソメイヨシノは1房に3、4輪の花を付けます。ところが、弘前公園のソメイヨシノは5~7輪も花が付きます。この高密度の花が、他の追随を許さない存在感となって見る人を圧倒するのです。
※こんな感じ
この他では見られない高密度の花を実現しているのも、リンゴ栽培で培った技術を基にした日頃の管理の妙ということになります。
さて、長々と語ってしまいましたが、弘前公園の桜にはそれだけの魅力があります。夜桜も良いし、花吹雪を経て、堀を埋め尽くす花筏も素晴らしい。青空、白い岩木山、天守閣、石垣、朱塗りの橋、松の老木……。公園内の様々な物とのコントラストを愛でるのも楽しい。
まだ行ったことのない方は、一度は訪れてみることをオススメします。桜のイメージが変わりますよ。
興奮して随分と語ってしまいました。話を戻しましょう。
9時47分、新青森駅に降り立った私は、まっしぐらに駅レンタカー新青森営業所を目指しました。正直なところ、このシーズン、弘前近辺は必ず渋滞します。また、青森-弘前間の国道7号線も一部渋滞する区間があります。ですから、本当は弘前まで電車で行ってから、バスと徒歩で市内を巡り、その後、弘前営業所でレンタカーを借りて、郊外の穴場を散策しようと思ってました。
ところがです。レンタカーを借りようと、青森県内の駅レンタカー営業所リストを見たところ……。
「弘 前 営 業 所 が 無 く な っ た だ と ! !」
数年前まではあったのに! 駅とシティホテル間のあの場所や、そこから効率よく大通り行く道、渋滞を回避して郊外へ抜けるのにいい裏道とかまで完璧に覚えてるのに!!
なに俺の許可無く勝手に潰してんだ! JR!!!!
この時点で他のレンタカー屋の存在も頭を過ぎりました。しかし、駅レンタカーには勝てませんでした。ええ、トータル5,000円ぐらい割り引かれるレー○&レンタカーの魅力にはね。
長くなったので連載にします。
さて、この選択が、吉と出るか凶と出るか。続きは次回!