第8章『語りながらひと狩り行きますか』
アイスボーンでボイチャしながら狩りするの楽しいですね。
ちなみに私は双剣、スラアク、チャアク、操虫棍、ガンスをたまに使う抜刀大剣使いでした。
ミラボレアス倒したかったなぁ…。
そんなアイスボーンを涼介達もやる第8話をどうぞ!
「涼介、ちょっといいか?」
ある日の昼休み、修吾がオレのクラスに来た。
「どしたよ修吾」
「あー…ちょっとな」
「あたしは?」
「構わないよ」
修吾に連れられ、オレと静香はいつもの踊り場に来た。
「で、何の話?」
手すりにもたれ掛けながらオレは訊いた。
修吾は照れ臭そうに頬をかいた。
「その…来島さんに『今度の日曜、スイーツ巡りに行かない?』って訊かれて…」
「マジか、良かったじゃん」
てゆーか来島さん、よく修吾誘えたな…。
「涼介と滝さんも誘おうとしたけど、来島さんは俺と2人だけで行きたいらしくて…どうしたらいいんだ?」
オレは静香を振り返ると、目配せし合った。
─デートだよな?
─デートだよね?
─『どうしたらいい』って、どうしたらいいんだ?
─あたしにも分かんないわよ。
─オレも分かんねーよ。つーかデートした事ねーし!
─それを言ったらあたしもよ!
─だーもう!キリがねーよ!
─だったら何かアイデア無いの?
─あるかー!静香も考えろよ!
─あたしだって考えてるわよ!出てこないけど!
─出てこねーのかよ!
「あの、2人とも…」
修吾が声を掛けて来たので、オレ達は我に返った。
「分からなかったら、無理しなくていいんだぞ?」
オレと静香は目配せどころかジェスチャーでやりとりした為、ちょっと疲れてきた。
「あー…うん、さっぱり分からん」
「あたしもお手上げ。よく考えたらあたし達、デートした事ないんだった」
「そっか。すまない、急に難しい事訊いて」
修吾はバツが悪そうに頭をかいた。
オレはニヤーッと笑った。
「しっかし…来島さんとデートか。いいんじゃねーの?秀才カップル」
「ば、馬鹿言え!来島さんは友達だぞ?そういう関係ではない!」
「とか言って、ホントは意識してんだろ?ワンチャン期待してんだろ?」
「してない!断じて!!」
修吾はムキになって声を荒げた。
顔が真っ赤に火照っていた。
「俺は来島さんの事は、涼介や滝さんと同じぐらい大切な友人だと思っている。そんな彼女を異性として意識などしたくない。たとえ、過去にお前が好きだった人であってもだ。
俺は別に恋人などいらない。仲間さえいれば、それで十分だ」
「それは、フラグとして受け取っていいのか?」
「好きにしろ。余計な時間を取らせた、じゃあな」
修吾は肩を怒らせて立ち去った。
「静香」
「なあに?」
「これ、フラグ立つんじゃね?」
「あるかもね」
ま、あとは来島さん次第か。
「…とまあ、そんな感じッス」
その夜。静香も交えて3人でオンラインゲームをしながら、ボイスチャットで来島さんに報告した。
「来島さんとしては、デートのつもりで誘った感じスか?」
『まぁ、そんなところ。大西くんと距離を縮める第1歩としてね』
ハンマーでモンスターの頭をボカボカ殴りながら、来島さんは事も無げに言った。
『でも大西くん、菜月のこと友達としか思ってないって。「異性として意識したくない」とまで言ってたよ?』
「典型的なツンデレかっての。良かったッスね、来島さん。こりゃフラグ立つかもしんないッスよ」
『そう簡単にいかないでしょ、現実というクソゲーは。はい、スタン取った』
「ナイス〜」
オレはめまい状態になったモンスターの頭に、容赦なく大剣の一撃を与えた。
『「恋人などいらない」、「異性として意識したくない」かぁ…。随分な言われようだなぁ。尚更落としたくなっちゃうじゃない』
「うわーぉ。来島さん、黒い部分出てますよ」
『なんか菜月怖い…』
『あら、ごめんあそばせ』
取り繕ったような上品な口調が、余計恐ろしさを増してるなんて言えない。
『それにしても、大西くんはなんで彼女を作らない事にこだわるんだろ』
「なんででしょうね。あそこまで突っ張る理由が、オレにも分かんねッス」
『まだ涼くんをサポートする立場にこだわってんのかな』
「ワンチャンありそう」
オレはモンスターのブレス攻撃を紙一重で避け、間合いを詰めた。
「女子と付き合った事無いのはお互い様なのに、何をアドバイスする必要があんだろーな」
『あんなにモテてたのに勿体ないわね』
「ホントッスよ」
オレの振り下ろし攻撃でモンスターが怯む。その隙に、静香の双剣乱舞が炸裂した。
「まぁとりあえず日曜に、うまいこと修吾をその気にさせてみては?」
『投げやりになってきたわね…あ、終わった』
『やたー』
いつの間にかモンスターが討伐されていた。
多分トドメは静香が刺したんだろう。
「長い付き合いでも、オレにも分かんねー事はあるんスよ。やっぱ直接聞かないとね」
『そっか…ところで2人とも、そっちはいつデートするの?』
「『あ!』」
すっかり忘れていた。
『まったく…ホントにあなた達付き合ってるの?大西くんの事ばっかり気にして、自分達の事を忘れちゃダメでしょ』
「やっべぇ…静香、行きたいとこある?」
『あたしはどこでもいいよ?』
「じゃあゲーセン行かね?」
『いいよ〜』
『割とあっさり決まるのね、そっちは。ホント羨ましいわ…』
来島さんの呆れたようなため息が聞こえたような気がした。
続く