第2章『凹んだ…』
クラスメートの女子と一緒に登校したい高校生活でした涙
だからといって、女子と登校した事がない訳ではありません
施設生活ゆえ、同い年や歳の近い女子とはたまに途中まで一緒に行ってました
そんな訳で、第2話をどうぞ
週末明けの朝。
「おっはよ、涼くん!」
「おはよ…静香」
駅に着くと、静香が待ってくれていた。
オレは照れながらも、おずおずと手を振った。
「大西くんも、おはよ!」
「おはよう」
修吾は愛想笑いをして挨拶を返した。
静香はオレの反対隣りについた。
「昨日何してたの?」
「ずっと狩りゲーしてた」
「涼くんもやってたんだ。フレ申請していい?」
「いいよ」
静香はスマホを何度かタップした。
20秒後、オレのスマホに通知が来て、『滝つぼ姫』というアカウントからのフレ申請を許可した。
「ありがと。帰ったら、一緒にやろ?」
「うん」
静香は二ヒヒ、と笑った。
「大西くんはゲームするの?」
「時々ね。下手の横好きだけど」
「一緒に行くと大抵すぐ乙るから、あんまり誘わねーけどな」
「お前が高難度クエしかやらないからだろ」
修吾は噛みついた。
静香はまた笑った。
「そういえば、2人とも幼なじみなんだって?」
「うん、もう11年ぐらいになるかな」
「へぇ〜、長いんだね」
「まあね」
修吾はため息をついた。
「滝さんはさ、涼介のどこが気に入ったんだ?」
修吾が唐突に訊いた。
オレはドキッとした。
「んー…何てゆーか、あたし好みのタイプだから、かな?あたし、涼くんみたいなショタ系って、可愛がりたいタイプなの」
「お、おう…」
え?今『好みのタイプ』って言った?
オレが静香の好みのタイプって言った?
「滝さん、涼介が勘違いしないよう聞くけど、告白している訳じゃないよな?」
「違う違う、友達としてってこと」
ですよね〜。
半ば期待したオレがバカだった…。
「…ちなみに、修吾は?」
「王道系のイケメンって感じだけど、ごめんね、タイプじゃないの。友達としてはいいけど」
「あ、そうですか…」
修吾が明らかに落ち込むのが分かった。
初めて言われたんだろうな…。
「ご、ごめんごめん!あたしそんな、2人を落ち込ませるつもりはなかったの!」
「いや、いいんだ…」
「野暮なこと訊いて申し訳ない…」
「2人とも元気出してーーーーー!!」
朝の通学路で、静香の悲鳴が響いた。
教室に入ると、そこそこクラスメートが来ていた。
オレと静香は、とりあえず席についた。
「涼くん、ごめんね。あたし、ひどいこと言っちゃった?」
「いいよ。修吾は勝手に訊いただけだし、オレも勝手に期待してただけ。別に気にしてねーし」
「そう言われちゃうと…余計申し訳ないよ〜」
「てゆーかさ」
オレは静香に向き合った。
「静香は彼氏いたことないの?」
「え、どしたの急に」
「別に深い意味は無いよ」
「んー」
静香は顎に手を当てた。
「ないよ。あたし、誰かと付き合うなんて、考えた事ない」
「そっか。静香、モテそうな感じしたんだけど」
「全然無いよ。中学の頃は兄貴の友達とつるんでたけど、全くそういうの無かった」
「どんな人達?」
「兄貴を見れば大体想像つくけど…見た感じチャラいけど、すっごい良くしてくれた。一緒にゲームしたり、アスレチックやアウトドアスポーツもやったし、楽しかったよ」
「けっこうアウトドア派なんだな」
「じっとしてるの、あの頃は嫌だったからね。今はウチでゲームするのが楽しいけど」
「そっか」
オレは机に頬杖をついた。
「てかさ」
「うおわっ」
静香はずいっと顔を近づけた。
途端にオレは、椅子から落ちそうになった。
「逆に涼くんはないの?誰かと付き合ったこと」
「お、オレ?」
何とか体を支えながら、オレは座り直した。
「お、オレも無いよ。告白すら成功したこと無いし…」
「なんで?」
オレは先月、修吾に言われた事を思い出した。
「…自己主張が激しすぎて嫌われた」
「あー、そりゃダメだよ。ちゃんと相手の事も考えてあげなきゃ」
「だよな。修吾にも同じ事言われた」
ため息をつくと、オレは机に突っ伏した。
「いっつもこうなんだ、オレ。一度誰かを好きになると、周りが見えなくなって、気がついたら猛アタックして玉砕して、その繰り返し。バカだよな…」
自分で言って、だんだん凹んできた。
そういえばオレは、いつも玉砕して落ち込む度に思うのは、結局自分の事だった。
『どう誘えばよかったか』とか『どう振り向かせればよかったか』とか、それぐらいしか考えてなかった。
今になって思うと、今まで告白してきた人に申し訳なくなってきた。
「オレって恋したらエゴイストだな…しなきゃよかった」
ぽつりと呟くと、静香が頭を撫でてきた。
「そんな事ないよ」
静香は優しく言った。
「好きになるのは簡単だけど、そこから告白までどう行くかは、考え方次第で変わるんだよ。
難しい道のりになるかもしれないけど、そこへ相手の気持ちをちゃんと加えてあげたら、きっとうまくいくよ。
もし、その人が別の人を好きになって、その想いが変わらなかったら、その時はキッパリ諦めればいい。未練がましいかもだけど、一方的に気持ちをぶつけるよりは、お互いの為になると思う。相手だって、そこは感謝してくれるよ。
そうした思いやる優しさが、大事なんじゃないかな?」
静香はオレに笑いかけた。
「大丈夫だよ、自分の過ちに気づけたんだし。あたしで良ければこれからの恋、応援するよ」
「静香…」
もうとっくに恋に落ちてるよ、君に。
と言いたかったが、オレは辛うじて飲み込んだ。
今は伝えるべきじゃない。
彼女の事をもっと知らなきゃ。
今のオレに言えるのは、これだけだ。
「ありがとう」
オレは予鈴が鳴るまで、静香に頭を撫でられ続けた。
続く