第21章『オレにできる事は』
静香が精神崩壊し、再び学校に来なくなって落ち込む涼介。
練習は喧嘩騒ぎの為、できなくなってしまう。
クラスメートに謝罪する涼介。そこへ現れたのは、涼介を心配して見に来た修吾だった。
静香がいない今、どうしたらいいか分からない涼介。そんな彼に投げ掛けた修吾の言葉とは─?
どうなる第21話!
オレと鈴木が揉めた事により、オレ達のグループはしばらく活動停止となった。
お互いの関係が修復しない限り、練習は再開させない、との事だ。
「本当にすみません…みんなの前で、あんな事してしまって…」
「まあ鈴木と喧嘩したのはやり過ぎだけどね。でも、ほとんどあいつのせいよ。ラジカセに関しては予備がウチにあるから、どうにでもなるけど…」
翌日、オレはクラスメート全員に謝った。
オレを擁護する声がある一方で、教室で喧嘩騒ぎした事に非難をする声もあった。
しかし、これだけはみんな共通していた。
「それよりもあたしは、いつもおとなしい藤田くんがあんなにキレるとは思わなかったわ」
クラス中がうんうん、と頷いた。
「いや、本当に申し訳ないです…あんな見苦しいとこを見せちまって…」
「もういいわよ。藤田くんが深く反省してるのは分かったから。問題は…あの2人ね」
佐久間さんは2つの空席を顎でしゃくった。
静香と鈴木は学校を休んだ。
静香は今朝迎えに行こうと、アパートに寄ったのだが、
「悪ぃな、迎えに来てもらって。でも静香、しばらく学校に行きたくないそうだ。ホントにごめんな」
と優人さんに謝られ、仕方なく修吾と2人で行くことにした。
「オレが静香に、ダンス教えなきゃなんねーのに…『一緒に頑張ろう』って言ったのに…」
「藤田くん、あんまり自分を責めないで。その気持ちは、ホントはあたし達が持つべきだったの。藤田くん1人のせいじゃない、あたし達全員の責任でもあるの。だから、もうこれ以上落ち込まないで」
涙が止まらなかった。
今度は静香を救う事ができなかった。
それが悔しくて、ずっと泣き続けた。
「涼介、いるか?」
突然、修吾が教室に入ってきた。
「大西くん…」
「俺も涼介が、あんなにキレる声を聞いた事がなかったよ。それだけ滝さんを大切にしたかったんだ。コイツの怒りは鈴木という人のだけじゃない。滝さんを救いきれなかった、自分への怒りでもあるんだろうな」
修吾はオレの隣に座った。
「どうする、涼介。お前は滝さんがあのままでいいのか?」
「…嫌だ」
「だったらどうする?」
「オレに今できる事を…でも、何をすればいいのか…」
「練習、すればいいだろ」
「できねぇよ…オレが揉めたせいで、今は練習できねーのに…」
「学校では、な。でも、家ならできるだろ?」
オレは修吾の顔を伺った。
修吾はニッと笑った。
「構わないよね、みんな」
「ええ、家でするなとは言わないけど…」
佐久間さんはぎこちなく頷いた。
「滝さんがいないからって、何もしない訳にはいかないだろう。お前しかいないんだよ、滝さんを変えられるのは。お前が今ここで頑張らなければ、滝さんは戻ってこないぞ。それでいいのか?」
オレは拳を握り締め、立ち上がった。
「いい訳ねーだろ!!」
心が滾ってきた。
魂が再び燃えるような気がした。
「やってやるさ、静香がいつか戻ってくるまで!オレはまだ、諦めてねぇ!!」
すると、修吾が拍手をした。
「よく言った、涼介。それでいい、お前はそうでなくてはな」
「やろうよ、藤田くん。静香の分まで!」
頑張ろう!
やってやろうぜ藤田!
いくらでも付き合うよ!
クラス中が声援を送ってくれた。
拍手はクラス全員にまで広がった。
「みんな、静香が戻ってくるまで、力を貸してくれ!!」
「異論は認めないわよ?みんな!」
クラス中が吠えた。
オレはやる。静香の為に、いくらでも。
練習は学校から少し離れた、駅近くの公共広場で再開した。
「それじゃ、音楽かけるよ?構えて」
佐久間さんが新たに用意したラジカセのボタンを押し、曲が流れる。
佐久間さんはセンターに立ち、一斉に踊り始めた。
とにかく、オレに今できることを精一杯やらなきゃ。
オレがここで頑張らねーと、静香に合わせる顔がない。
静香の分も、オレが頑張らなきゃ。
「藤田くん、ちょっと遅れてるよ!」
「す、すみません!」
ダメだ。もっと集中しなきゃ。
今は何も考えず、練習に集中しよう。
応援してくれるみんなの為にも。
オレは俯いていた顔を上げ、正面をまっすぐに見据えながら、一心不乱に踊り続けた。
夕方6時になると、だんだん辺りが暗くなってきた。
常に明るい教室とはちがう屋外の為、これ以上は通行人の妨げになるだろう。
「今日の練習はここまで。暗くなるのが最近早いから、あとは自主練習して。じゃあ解散!」
佐久間さんはそう言ってブレザーを羽織り、ラジカセを片付け始めた。
「藤田くん、ちょっとこれ持ってくれる?」
「は、はい」
オレは佐久間さんからラジカセを受け取った。
「一旦学校に置いておこ?大西くんもまだ練習してるだろうし、待ってあげたら?」
「そうッスね…」
オレは佐久間さんと並んで歩いた。
風が少し冷えてきた。
「ちょっと寒くなってきたね」
「はい…」
「静香の事、心配?」
佐久間さんが訊いてきた。
オレは小さく頷いた。
「静香、男性恐怖症なんだってね?もうクラスのみんなは知ってるはずなのに…」
「そうなんスか?」
「ええ。別に本人から聞いた訳じゃないけど、何となく気づいてた。それから広まったみたい」
「マジスか…」
半年も同じクラスにいるのだから、さすがにみんな気づいてるだろうな。
オレは1人で合点した。
「鈴木のバカも知ってたはずなのに…あの態度は無いわ、ほんっとに。藤田くんはアイツの事、まだ怒ってる?」
「ええ。静香をあそこまで追い込んどいて、なんでアイツまで休むのか分かんないッス」
オレは鈴木を許していなかった。
今でも心底憎かった。
オレ一人が貶されるのは、慣れているから別に構わない。
でも、静香だけは誰にも貶してほしくなかった。
他の男子の事はたしかに苦手だけど、静香はクラスのアイドルのような存在だった。
そして、オレ個人にとって大切な人だった。
だからこそ、静香を馬鹿にした鈴木が許せなかった。
「アイツはまた学校来た時に言うわ、『アンタはもうグループ抜けて』ってね。静香だけじゃない、みんなの事まで馬鹿にしてきたんだもん。あたしだって許せないわ」
「………」
オレはしばし無言でいた。
とにかく、今は静香の事が心配でならなかった。
オレは一刻も早く静香のもとへ向かいたかった。
「静香の事ならきっと大丈夫よ」
オレの表情を察したのか、佐久間さんが励ました。
「あのお兄さんが、きっと何とかしてくれるよ。静香がまた来るまで、今はとりあえず練習頑張ろ?」
「はい」
オレ達は学校に着いた。
修吾のクラスはまだ明かりが点いていた。
「ねえ、大西くんってカッコよくない?」
「佐久間さん、あなたもですか…」
「もう学年中の女子が注目してるんだもん、あんなイケメン優等生。あたし、狙っちゃおっかなー」
「アイツ、彼女いますよ」
「えっ!?嘘でしょ…」
佐久間さんは激しく落胆した。
明日からの練習、佐久間さんまでモチベーション下がってたらどうしよう…。
続く




