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第20章『テメーはオレを怒らせた』

前回に比べ、今回はかなり落差の激しい回になっております。


涼介の個人レッスンのお陰で、少しづつ上達してきた静香。しかし、まだセンターで活躍するには程遠いレベル。

そんな彼女に、1人のクラスメートが心無い言葉を放つ。

徐々に情緒不安定になっていく静香に、突然アクシデントが─。


どうなる第20話!

放課後。


「はいもっとリズム良く!そこまたズレてる!」


佐久間さんによるスパルタ式ダンスレッスンが再び始まった。


「いいよ、藤田くん!その調子!」

「ウィッス!」

「静香!また肘下がってる!」

「ご、ごめん!」


曲に合わせて手拍子をしながら、佐久間さんが声を張り上げていた。


「完璧に踊るのも大事だけど、一番肝心なのはみんなとシンクロする事!初めての文化祭だからって、手は抜かせないわよ!」


さすがイベント至上主義者。

こりゃ怒らせたらまずいな…。


かれこれ10分程度とはいえ、本気で踊った俺達はヘトヘトだった。特にオレを含め、元々運動が苦手なメンバーにとっては、かなりハードだった。


「どう?調子は」


スポーツドリンクを一口飲むと、オレは静香に訊いた。


「涼くんがこないだ教えてくれたお陰で、先週よりは上手くなったかな。ひろみが求めてるレベルには、程遠いけどね」

「いやレベル高過ぎだよあの人のは。でもまぁ、たしかに初めてだからって、しょぼいダンス見てほしい訳でもねーしな」

「そーだよなぁ」


ふと、後ろから声がした。

静香がビクッとした。


鈴木(すずき)…」


セミロングの髪を後ろで束ね、凍りつくような三白眼のクラスメートは、静香をジロリと見下ろした。


「なかなか難しい曲だが、やってみるとけっこうやり甲斐あるよな。ま、誰かさんが足引っ張らなきゃいいけどよ」

「誰に言ってんだ?静香に言ってんのなら、黙ってねーぞ?」


オレは鈴木を睨みつけた。

鈴木は嘲るような薄ら笑いを浮かべた。


「俺は『誰かさん』としか言ってませーん。彼氏気取りも大概にしろよ、おチビさん」

「てんめぇ…っ!!」

「すーずーき。いくらダンス上手いからって、仲間を侮辱しないの」


佐久間さんが腕組みをしながら割り込んだ。


「2人とも真面目にやってんだから、それくらいは認めてあげなさいよ」

「ケッ、どうだかな。滝が一番下手くそじゃねーか。この数日何やってたんだ、って話だよ」

「鈴木、いい加減に─」

「ご、ごめんなさい!」


静香が叫んだ。

みんなが何事かと、こちらに注目してきた。


「もっと…もっと頑張るから…」

「じゃあさっさと上達しろよ。来月末までには完璧にできるようになって来い」

「鈴木!!」

「わ─分かった…」


静香は小刻みに震えていた。

そろそろまずい…。


「悪ぃ。オレ、静香連れて帰るわ」

「はあ!?てめぇ、何言っ─痛え!!」

「分かった。静香のこと、頼むわね」


鈴木をビンタで鎮めた佐久間さんを尻目に、荷物をまとめたオレは静香の手を引き、足早に退散した。




「…ったく、あのヤロォ」


静香の手を握りながら、足早に歩く。

さっきの鈴木の態度が気に食わなかった。


「教えもせずメンバーに入るぐらいなら、1人でやってろって感じだよ。なあ、静香」

「うん…」


静香はか細い声で言った。


「ごめん。あたしがもっと頑張らなきゃいけないのに…」

「何言ってんだよ」


オレは静香の二の腕を掴んだ。


「静香は何も悪くない。悪いのはあのいけ好かない態度の鈴木のヤローなんだ。あんなやつの言うことなんか真に受けんなよ」

「でも、あたしセンターとしての自覚がないのかな…ちょっとできるようになったからって、気持ちが浮ついていたのかな…」

「そんな事ねーよ。静香が頑張ってるのは、オレが一番見てるから知ってるんだ。佐久間さんだってそれを知っている。てゆーか浮ついてんのは、明らかに鈴木の方だろ?ちょっとダンス上手いからって、アイツが一番調子に乗ってんだよ。いい加減あんなやつほっといて、オレ達のペースで練習頑張ろうぜ?」


オレは静香を抱き寄せた。

少しでも気持ちを落ち着かせたかった。


「ありがとう…涼くんってホントに優しいね」

「静香だからだよ。まだ落ち着かないなら、落ち着くまでハグしててあげるけど」

「ううん、大丈夫」


そう言って静香は、珍しく自分からオレを離した。


静香の目を見たオレは愕然とした。


いつもの目の輝きが全くなかった。


「あたしなりに…もうちょっと頑張ってみるから…」

「静香…」

「ごめん、今日は1人で帰らせて。明日はまた一緒に行こ?」

「…うん」


静香は踵を返し、駅に向かった。

その背中を見送るオレは、ただただ胸が苦しかった。


「どこがだよ…全然大丈夫じゃねーじゃねぇかよ…」




また翌日の放課後。


「ほらほら、静香。どうしたの今日。全然集中できてないよ?」

「ご、ごめん…次はちゃんとやるから…」


静香は情緒不安定さ明るみになっていた。


「静香、そろそろ休めよ。さっきから1人でぶっ通しじゃねーか」

「大丈夫。大丈夫だから…」


どこがだよ…。


オレの胸の苦しさが増していく。


そろそろ我慢の限界だった。


「なあ、静香─」

「おい、もう下がってろ。見てらんねーんだよ下手くそが」


鈴木が冷ややかな声を投げ掛けた。


「邪魔だ、どけ」

「お願い!もうちょっとだけでいいから!」

「いいからどけ」


懇願する静香を一蹴する鈴木。

折れた静香は、悲しげに教室の外へ出ようとした。


その時だった。


「あっ─」


足元のコードに引っかかった静香は、うつ伏せに転倒した。

その直後、ガシャン、と音がした。


コードの根元は、佐久間さんの持参したラジカセだった。

ディスプレイとスピーカーがひしゃげて、破損していた。


「あっ、あああ…ああああああああぁぁぁ…」


振り返った静香はガタガタと震えた。


「静香、大丈夫か─」

「おい何やってんだ下手くその癖によォ!!」


静香に駆け寄ろうとした時、鈴木の怒号が飛んだ。


「お前のせいでラジカセ壊れたじゃねーか!練習できねーだろうが!弁償しろ!!」


その時、静香の何かが切れた。


「あああああああああああああああああ!!」


静香が発狂した。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」


何度も呟くように謝る静香は、その場にへたり込んだ。

見開かれた目は虚ろで、焦点が合ってなかった。




すると、オレの中でブチッと理性がキレる音がした。


「おい…鈴木…」


オレはゆらりと鈴木に歩み寄った。


「謝れよ…静香に…」

「あ?勝手に滝が壊れたんだろ─」

「『謝れ』って言ってんだろうがあああああああああああああああああああああ!!!!」


怒りに任せて、オレは鈴木に拳を振りかぶった。




その後の事は、よく覚えてない。

佐久間さんから聞いた話では、オレは鈴木と殴り合いの喧嘩を繰り広げたそうだった。

佐久間さんと、騒ぎを聞き駆けつけた修吾が止めに入った。

その頃にはオレは、鈴木に馬乗りにされてボコボコにされていたらしい。

連絡を受け、遅れて現れた優人さんが静香を迎えにやって来て、オレと修吾も乗せて家まで送ってくれたそうだ。


目を覚ました時には、オレは自分のベッドにいた。

顔中が、体中が痛かった。

けど、それ以上に心に深い傷を負った静香が気がかりだった。


「静香…ごめん…」


たった1人の空間に、オレのすすり泣く声が響き渡った…。




続く

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