第19章『涙の結末』
『俺ァただ、惚れた女には幸せになって欲しいだけだ』
『銀魂』の登場人物、土方十四郎の名ゼリフの1つです。
涼介も、第6話で菜月に修吾への恋を手伝うと告げた際、同じ思いでした。
たとえ今付き合っている相手だろうと、過去にフラれた相手だろうと、その人の幸せを望むのは涼介自身の本望です。
突然のLINEで駆けつけた、涼介と静香を駅で待ち受ける菜月。
彼女は『修吾に告白された』と告げる。
果たしてその結果は─?
どうなる第19話!
練習を終えて帰ろうとした時、来島さんからLINEが来た。
今すぐ来て
駅前広場で待ってる
「静香、一緒に来て」
「どしたの?」
「来島さんがお呼びだ」
「分かった」
オレ達は駅まで駆け出した。
到着すると、来島さんがベンチに座って待っていた。
目が真っ赤に泣き腫らしていた。
「どうしたの菜月?何かあったの?」
「あ…静香、藤田くん…」
来島さんは急に静香に抱きつき、泣き出した。
「来島さん、何があったんスか?まさか、修吾が─?」
そんな事はないと思いつつも、まさかと思って問い質す。
すると、来島さんが口を開いた。
「し、修吾が、告白してきた…」
「アイツから聞きました。修吾、何て言ってました?」
「『こんな俺で良ければ、君がもし良ければ、俺と付き合ってください』って…」
「え?じゃあ…返事は?」
オレと静香は胸を高鳴らせた。
来島さんは頷いた。
「うそっ!やったじゃん!!」
「マジスか!おめでとうございます!!」
2人して歓声を上げた。
「良かったぁ…来島さんが報われて、ホント良かった…」
「おめでとう菜月。これで憧れの人と、ようやく付き合えるね」
「うん…うん…」
静香は来島さんの背中を撫でた。
オレはベンチにへたりこんだ。
「露骨過ぎないか、ウンザリされないか、すっごく怖かった…いつか近いうちに、私から告白しようと思ってた…でも、修吾から告白してくるなんて思わなかった…不意打ちすぎるよホント…私の今までが無駄にならなくて、ホント良かった…」
「ホントッスよ…ホントに、ホントに報われて良かった…」
もらい涙を何度も拭うが、止まらなかった。
いつまでもポロポロ流れてきた。
来島さんは静香から離れると、泣きじゃくるオレの肩に手を置いた。
「藤田くん、ありがとう。あの日私を引き止めて、修吾に合わせてくれて。藤田くんがいなかったら、修吾の事で一生後悔してたと思う。諦めかけてた私の恋を応援してくれて、本当にありがとね」
来島さんはふと静香を振り返り、言った。
「ごめんね、静香。今日だけは許して」
なんと来島さんは、オレの首の後ろに両腕を回し、抱き締めてきた。
「藤田くんありがとう…本当にありがとう…」
「いえ…来島さんが報われて、オレはもう満足ッス…」
「良かったね、菜月…本当に良かったね…」
オレと来島さんごと抱き締める静香も、いつの間にかその目に涙を浮かべていた。
3人で抱き合いながら、ただただ泣き続けた。
来島さんにフラれてから約半年。
それがこうして、喜びを分かち合える仲になるなんて、あの頃のオレは想像もつかなかっただろう。
オレの事ばかり心配して、なかなか彼女を作ろうとしなかった修吾。
取り巻きに混ざりつつも、なかなか踏み出せないでいた来島さん。
ようやく2人が結ばれて、オレは心から安堵した。
来島さんにはオレなんかじゃ勿体ない、やっぱり修吾というパートナーが相応しいや。
ホント、2人が結ばれて良かった…。
週が明けて月曜日の朝。
「おはよう、菜月!」
プラットホームで待ち合わせしていた来島さんに、修吾が元気よく声をかけた。
来島さんは修吾の顔を見るなり、笑いかけてきた。
「おはよ、修吾。2人もおはよ」
「おざーす」
「おはよ、菜月」
来島さんはオレ達にも笑顔を向けた。
愛想ではない、心からの笑顔だった。
「ねえ、修吾」
「なんだ?」
「えいっ」
来島さんは上目遣いで修吾を見つめると、突然抱き締めた。
「こ、こら菜月!」
「今まで我慢してた分、今日からは遠慮なくさせてもらうわね」
「まったく…まあ嫌いじゃないよ、菜月のそういうところ」
やれやれ、と修吾は満更でもなさそうだった。
来島さんはオレが今まで見た事がないぐらい、とても幸せそうな満面の笑顔だった。
続く




