第18章『いったれ修吾』
いよいよ文化祭に向けての練習が本格的に始まる回です。
自分が涼介達と同じ学年だった頃、当時はモザイクアートと並行して、残っていた夏休みの宿題に苦戦してました笑
同じく宿題を溜めてた悪友と、夜な夜な屋上で無双OROCHIをしたりしてました。
文化祭当日に差し入れを持ってきた姉を見たクラスメートが騒ぎ出して、
『あの人ホントにお前の姉ちゃんか!?お前橋の下で拾われたヤツじゃねーのか!?』などと酷い言われようでした笑
ついでに文化祭後のHRでコッソリBASARAに興じてましたが、実は担任含めクラス全員に見られてました笑
小噺が長くなりましたが、今回は初めてのダンスに悩む静香と、ある決意を固めた修吾がメインの回です。そんな彼に背中を押すのは…?
第18話、どうぞ!
それからというものの、オレ達は毎日放課後に残り、ダンスの練習をしていた。
あれから結局他の案も出なかった為、当初オレが提案した『Believe』、それから『Realize』、『Reason』の玉置成実メドレーに決まった。
てか、読者に分かんのかなこの曲…。
オレは、帰宅後も自室のパソコンで動画を見ながら、ダンスの練習を重ねた。
最初こそ振り付けが分からず、フラフラとヘンテコな動きになってはいたものの、徐々にパート毎に自信がついてくると、ある程度踊れるようになった。
しかし、オレやリーダーである佐久間さんなどはあくまでバックダンサー。
メインはなんと、静香だった。
「違う違う。ここのパートはもっとこう、上半身だけを回す感じで」
「こ、こう?」
「うーん…なんかちょっと違うな〜」
1人だけ振り付けが若干違う為、静香は佐久間さんに個別指導してもらっていた。
まだグループが結成してからほんの1週間しか経っていないにも関わらず、佐久間さんはメイン、バック両方の振り付けを完璧にマスターしていた。
やはりイベント命だからだろうか、にしても凄すぎる。
対して静香は、ダンス初心者だった。
体を動かすのは好きでも、リズムに合わせるのは苦手なのだろう。
それでもメインダンサーに立候補したのはなぜだろうか…?
「ちょっと休もうか。ほら、彼氏が待ってるよ」
「う、うん」
静香は息苦しそうに顔をしかめながら、オレのもとに駆け寄ってきた。
「ハイよ」
「ありがと」
静香に冷えたスポーツドリンクを渡した。
静香は受け取ると、半分ほど一気に飲んだ。
「メイン難しいわ…あたしにできるかな…」
「良かったらオレもメインの振り付け手伝おうか?」
「んー…いや、しなくていいよ。涼くんは涼くんの振り付けを覚えて。あたしはひろみに付き合ってもらうから 」
「佐久間さんは分かってると思うけど…無理はすんなよ」
「うん…」
言いながら静香は、葛藤をごまかしきれていない表情だった。
オレにはそれが、嫌な予感に思えた。
夜7時過ぎ。
さすがにこれ以上の練習は許してもらえず、オレ達はやむなく下校した。
静香は教室を出てからも、浮かない表情だった。
「どうしたんだ?」
耐えられなくなったオレは問いかけた。
「あたし…ダンス向いてないのかな…」
「そんな事ねーよ。オレなんか静香と違って運動音痴なのに、始めた時は全然ついていけなかったよ。誰だって最初はそんなもんだし、まだ練習は始まったばっかだよ」
「そうだけど…」
静香は首を横に振った。
「なんでできもしないのに、『メインやりたい』だなんて言っちゃったのかな。ひろみにやらせた方が良かったのかな。バッカみたい…」
静香がこんなに落ち込む姿を見た事が無かった。
オレは胸が張り裂けんばかりに苦しかった。
ふと、オレは気になっていた事を訊いた。
「そもそも、どうしてメインに立候補したんだ?」
「それは…一度でも目立ってみたかったし、あたし自身を変えたくて…」
「そっか」
それを聞いて、オレは少し安心した。
オレや来島さん、そして修吾の姿を見て、静香も思い立ったんだろうか。
自分も何かを変えたい、と。
そう思うと、尚更オレは応援したくなってきた。
「なあ、静香」
「なに?」
「やっぱりオレ、メインのパートも覚えるよ。そんで、オレも静香が自信持って踊れるように、最後まで手伝うよ」
静香は顔をさらに激しく横に振った。
「だ、ダメだよ涼くん。言ったじゃん、『涼くんは涼くんのパートを覚えて』って。あたしに気を遣わないでよ」
「そうだな。でも、オレがそうしたいんだ。オレが今のオレでいるのは、静香のお陰なんだ。だから手伝わせてよ」
「でも…」
「静香と出会わなきゃ、今のオレは昔と同じように、奥手で陰キャな廃人ゲーマーのままだった。今まで過ごしてきた楽しい時間も、きっとなかった。
こんなオレを変えてくれたのは、修吾でも来島さんでもない、静香だけなんだ。入学式の日から惚れて、そんでオレを好きになってくれた静香以外の、誰でもないんだ。
オレに手伝わせてくれよ。静香が自分を変えたいなら」
オレは静香の手を握った。
静香は唇を震わせながらも、黙ってオレを見つめた。
「オレのこと好きになってくれて、ありがとな。オレも静香が大好きだ。一緒に頑張ろう」
「…うん」
静香は溢れる涙を拭いながら、力強く頷いた。
土曜日。
学校が休みな為、オレは近所の空き地で静香と練習する事にした。
「静香、ここは肘をもっとこう、水平にあげて。ステップは腕と逆に」
「うん」
静香に手取り足取り丁寧に教える。
静香は少し照れながらも、振り付けを直した。
オレはあの後、練習後に自室でメインの振り付けを覚えることにした。
3日ほどかかったが、それでも静香に教えてあげられるレベルには達した。
「ちょっと休もう?」
「うん」
オレは静香を木陰に誘い、木の根元に腰を下ろした。
「まだまだ暑いな…静香は大丈夫?」
「大丈夫。あたし、体力は人一倍あるから」
「無理はすんなよ。はい」
「ありがと」
オレが差し出したタオルとジュースを受け取ると、静香はオレの頬にキスした。
「ちょっ、静香」
「涼くん、やっぱこーゆーのに弱い?」
「不意打ちだと尚更だよ…」
静香は悪戯っぽく笑った。
「あ、大西くん」
「やあ」
偶然通りがかった修吾が歩み寄って来た。
「練習はどうだ?」
「涼くんに教えてもらってる。教え方が上手いんだ」
「そ、そんな事…」
「流石だな、涼介」
修吾がフッと笑った。
「2人とも…少しだけ時間いいか?」
「少しでいいのか?」
「ああ」
修吾はオレの目の前に座り、真剣な面持ちで告げた。
「俺、菜月に告白するよ」
「お、ついにか」
「え、どういう事?」
「あ…」
そういえば、静香にはまだ話してなかった。
「修吾さ、来島さんの事好きなんだと」
「そうなんだ!」
オレは始業式の日の夕方にあった出来事を話した。
聞き終わった静香は、深いため息をついた。
「そっか…うん、大西くんならきっと大丈夫だと思うよ。だって、今も昔もみんなの憧れだもん」
「そ、そうかな…」
修吾は少し困った表情をした。
「やっぱり、単純なのかな?菜月のその…可愛さというか、魅力に気づいたというきっかけというのは…」
「そういうモンだよ」
静香は屈託のない笑顔を浮かべた。
ついこの間までネガティブになっていたとは思えないほどだった。
「あたしが涼くんの事好きになったのも、ただ単に好みのタイプだからじゃなくて、常にあたしの事を考えてくれてる優しさに気づいたからだもん。誰かの魅力に気づく事だって、立派な恋につながるんじゃないかな?」
「滝さん…」
修吾は徐々に口元が緩んだ。
「菜月、かわいいもんね!」
「ああ、何もかもな」
修吾がクシャッと笑った。
「ありがとう、2人とも。これで腹を括る事ができたよ。行ってくる」
修吾は勢いよく立ち上がり、駆け出した。
その背にオレは、精一杯の声援をぶつけた。
「ぶちかませ、修吾ーーーーー!!」
修吾は片手を振って応えた。
その背が見えなくなるまで見送ると、静香が頭を肩にもたれかけた。
「2人とも、うまくいくといいね」
「そうだな。『誰かの魅力に気づくのが恋につながる』、か…。また1つ勉強になったよ、静香」
「えへへ。じゃあ、練習やろ?」
「ああ!」
オレは静香に続いて立ち上がり、練習を再開した。
頑張れよ、修吾…。
続く




