第14章『女の勘って怖ぇ』
女の勘って、ホント鋭いんです。
良くも悪くも人をよく見てて、思ってる事がすぐ分かっちゃうんです。
まぁ、私はかなり分かりやすいヤツなので、余計に笑
そんな今回は、涼介が久々に菜月と1対1で話す回です。
静香は残念ながら、今回は出番がありません。
メインヒロイン不在でお送りする、主人公とサブヒロインのストーリー回、第15話をどうぞ!
夏祭りから数日後。
この日は静香が優人さんと出かける為、オレは修吾と来島さんに夏休みの宿題を手伝ってもらっていた。
「珍しいな。まさかこんな早い段階で、俺達に救いを求めるとは」
「早く静香と遊びたいんだよオレは」
オレはシャーペンを走らせながら言った。
「でも、それは静香だって同じでしょ?藤田くんが終わっても、静香が終わらなきゃ意味無いでしょ?」
「あ、それは大丈夫ッス。優人さんがいるんで」
「え?どういう事?」
「あの人国立大行ってて、塾の講師もやってるんスよ」
「え、何そのギャップ。かっこいい」
「なるほど。なら安心だな」
修吾はワークブックに方程式を書き込んだ。
「そういえば涼介。滝さんの事、優人さんから聞いたぞ。なんでもっと早く教えてくれなかったんだ?」
修吾達が静香の過去を聞いた時、いつか訊いてくるだろうとは思っていた。
だが、オレはもう答えを準備していた。
「『過去のトラウマから修吾の事を避けてる』なんて言えるかよ。それでオレ達の距離が開いちまったら、辛いだろ?だから言わなかったんだ」
「そうか…すまない、野暮な事を訊いたな」
「気にすんなよ。そもそもオレの口から言えない事だし」
「じゃあ…俺は今後どう接していけばいい?」
「いつも通りでいいだろ。変に気を遣うなよ。余計静香が悲しむだけだぞ?」
「そうだな」
修吾は深いため息をついた。
オレはやれやれ、と肩を落とした。
「ところでさ…」
今度は来島さんが口を開いた。
「藤田くん、そこ間違えてるよ?」
「マジすか?」
「てゆーか、やり始めたとこから全部」
「えっ!?」
見ると、回答が全て1問ずつズレていた。
「うわ、だりぃ…」
「あ、まだ消さないで。写メ撮ってから消して、それを写せばいいじゃん」
「ふぇーい…」
オレはスマホを取り出し、間違えたページを撮った。
「てか藤田くん、何かあったの?」
「へ?」
オレはギクッとした。
消しゴムを擦る手が止まった。
「その反応は当たりかな?」
「何だ何だ?俺達にまだ話してない事でもあるのか?」
修吾が囃し立てる。
「な、何もねぇよ」
「手が震えてるよ。ホント分かりやすいのね」
来島さんはニヤニヤしながら言った。
「何があったのか、教えてくれるかな?」
「ここまで来て、守秘義務はもう通じないぞ?さあ、早く言え」
「ぐっ…!」
口が裂けても言えねぇ。
あの日の深夜に、静香とあんな事したなんて。
一応事後処理したとはいえ、常識ある2人がもし知ってしまったら、オレはもうおしまいだ…。
「………」
だんまりを決め込もうとしたが、来島さんはふとオレの部屋を眺め回した。
そして、ベッドに目を留めた。
「なーるほど…」
来島さんはますますニンマリ笑った。
終わった…。
来島さん、さては気づいたな…。
「ちょっと修吾、一旦部屋出てもらえる?藤田くんと2人だけで話したいの」
「えっ、なんで?」
「お願い。お金渡すから、これで好きなスイーツでも買ってきて。3人分ね」
来島さんは修吾の手を取ると、1000円札を握らせた。
「なるべく時間かけてね。ダッシュで往復して、盗み聞きとかはしないでね」
「わ、分かった…」
修吾は顔をひきつらせると、すごすごと部屋から引っ込んだ。
ドアが閉まり、修吾が階下へ降りたのを確認すると、来島さんはオレに向き直った。
「怒らないから正直に言って。静香とシたんでしょ?ベッドに赤いシミがあったわよ」
あ、やっぱバレた…。
オレは放心状態で頷いた。
「別に咎めはしないわよ。それで…どうだったの?」
来島さんは至って真面目な表情だった。
オレは観念して話した。
「…最後まで笑ってました。その…入れた時、めっちゃ痛そうだったけど…」
「それで?」
「逆にオレがずっと泣いてました。なんか、オレの手で静香を傷つけたみたいで…すっげぇ申し訳なくなって…」
「藤田くんも初めてだったの?」
「そりゃそうッスよ…てか、お互い初めて同士の相手だから、責任感半端なかったッス…」
「そっか…」
来島さんは表情を変えず呟いた。
「やっぱ初めてって、痛いんだね。普通に考えて男の人って、それを分かっていながら、相手の覚悟を受け止めて奪うものよね。たしかにそのプレッシャーは、ズッシリ来るのね」
「ホントにもう…オレでよかったのかな、ってずっと思ってて…」
「よかったと思うよ、私は」
来島さんはフッと微笑んだ。
「静香の事だから、『涼くんがいい』とか『涼くんならあげてもいい』って、言ってくれたんでしょ?」
なんでそこまで分かっちゃうんだろうか。
エスパーかよこの人。
「言葉のままを受け止めればいいのよ。藤田くんだって、静香になら初めてを奪われても良かったんでしょ?
2人とも相思相愛なんだから、素直に受け入れ合えばいいのよ」
来島さんは優しく笑いかけた。
オレは俯きつつも、フッと笑みを漏らした。
「ますます羨ましいなぁ。修吾は私の初めて、いつ奪ってくれるのかなぁ」
「ホント修吾の事好きなんスね。いつか叶うといいッスね」
「そうよ。ホントいつになるやら」
来島さんは呆れつつも、満更でもないようだった。
「まだまだ決め手に欠けるのよね。こないだの祭りだって、私けっこう恥ずかしかったのよ?頑張ったと思わない?」
「そうッスね。あの時は『かなりがっついたな』とか思ってました」
「好きな人をオトす為なら、手段を選んでらんないわよ。私からがっつかなきゃ」
そう言う来島さんから、どれほど本気かがひしひしと伝わってきた。
「とりあえず、童貞卒業おめでと」
「いや、ストレートッスね」
オレは思わず吹き出した。
つられて来島さんも笑った。
修吾が戻ってくる頃には、来島さんは何事も無かったように振舞っていた。
冷静を装って、食い気味に聞いてたさっきとは全然違った。
「菜月、涼介と何を話してたんだ?」
「なーいしょ。藤田くんとの秘密。ね?」
来島さんは悪戯っぽく笑った。
修吾は納得がいかない表情をしていたが、結局買ってきたプリンアラモードを貪る事で妥協した。
こりゃ修吾より来島さんの方が、勘が鋭くて隠し事できねーや。
続く




