第9章『ついに念願の…ッ!!』
無印良品って、何でもあるみたいですね。
作中にも登場するゲテモノの袋菓子は、某YouTuberの動画で紹介された、実際に売ってある商品です。
ちなみにカブトムシは、めちゃくちゃ臭いらしいです。
そんな訳で主人公初デート回の第9話をどうぞ!
「遅いな…」
日曜日。
静香の住むアパート付近で、オレはソワソワしながら静香を待っていた。
黒いVネックのTシャツに黒のジーパン。
白の革ベルトからぶら下げたチェーンの先端には、尻ポケットにしまわれた財布を繋げていた。
夢にまで見たデートの当日。
だが、不思議と緊張はしなかった。
まぁ、いつものゲーセンに行くだけだしな。
やがてドタバタと音がしたかと思うと、勢いよく開いたドアから静香が現れた。
「ご─ごめん、お待たせ!」
胸元の大きく開いたボーダー柄のキャミソールに白いブラウス、生脚にデニムのホットパンツという、夏とはいえ露出度の高い姿だ。
「静香…ひょっとして誘ってる?」
「ないない!そういう目的じゃないし!」
そう言いつつ、前屈みで息をつく静香の胸元から、見事な谷間が覗いていた。
「じゃあ、行こ?」
「あ、うん。そだな」
慌てて視線をそらすと、オレは静香と手を繋いだ。
で、訪れたのは、以前に来島さんや修吾も合わせ4人で来たゲーセンだった。
日曜日なだけあって、流石に子連れ客や学生で店内はごった返していた。
「うわー、あたし達できるかな〜」
店内を見回しながら、静香は言った。
「ほかの店、何件か回る?」
「じゃあこっち行ってみよ」
静香の手を引き、オレは別の店へ向かった。
「…もうコレ無理じゃない?」
「無理だな」
あれから2時間、可能な限りゲーセンを一緒に粗探しした。
しかし、どの店も満員で、なかなか入れる状態ではなかった。
加えて季節は夏。あちこち歩き回ったお陰で、汗びっしょりだった。
「あっつぅ…静香、喉乾いてない?」
「カラッカラだよ…」
「じゃあそこのカフェで休もう」
結局、いつものカフェで落ち着くことになった。
「あ〜、生き返った〜」
「いや、ジュース飲みすぎじゃね?腹壊すよ?」
「お腹強いから大丈夫〜」
ソファーでリラックスしながら、静香は言った。
「それにしても、来島さんと修吾、今頃どうしてんだろうな」
「ねえ、涼くん」
「わっ」
静香は急に身を乗り出してきた。
キスしそうなぐらい顔が近かった。
「今日はあたしを見て。2人の事は、心配しないでいいから」
「ご、ごめん…てか、顔近い」
「んっ」
「わわっ!ごめんごめん!」
ソファの背もたれにぶつかる。
幸い、後ろのテーブル席に人はいなかった。
「今日のあたし、どう?かわいい?」
「か、かわいい…よ」
「もうっ、また目を逸らしてる。ちゃんと見てよっ」
静香は拗ねたように言った。
「てゆーか、今朝からあたしの胸ばっかり見てない?」
「えっ」
オレはギクッとした。
「あたしが気づいてないとでも思ったの?」
「すいません。見てました、ハイ」
「涼くんのエッチー」
静香はジト目でニヤニヤ笑った。
オレは恥ずかしくなって顔を背けた。
「そんなにジロジロ見なくても、『揉ませてくだ─』」
「原因作って申し訳ないけどやめようぜこの話」
オレはそっぽを向いたまま、冷えた抹茶ラテを飲みながら言った。
「てか、もうゲーセン諦めね?多分、どこ行っても変わんねーと思うよ?」
「どうして?」
「ゲーセン以外にも、一緒に色々見てみたくなった。
そこのショッピングモールで涼みながら、ウィンドウショッピングってのはどう?」
「そだねー。さすがに暑い中外歩き回るのは疲れたし、そうしようか」
「じゃあ、まずは腹拵えでもすっか。すいませーん、クラブサンド4つ」
「4つ?あたしそんなに食べれないよ?」
「オレが3つ食うんだよ」
「よく食べれるね…」
今度はオレがニヤッと笑った。
駅前の大型ショッピングモールで、オレ達は色々巡った。
たとえば、家電コーナーでマッサージチェアに癒されたり。
「ああ〜、気持ちいい〜」
「静香、そんな大股開かないの」
あるいは、書店でマンガやラノベを漁ったり。
「涼くん、新巻出てるよ」
「おっ、ナイス静香。確保だ」
雑貨屋でゲテモノの袋菓子を見つけたり。
「え、サソリ?コオロギ?もうなんでもアリね…買っとこ」
「いや買うのかよ」
駄菓子屋コーナーで、袋いっぱいにお菓子を買ったり。
「涼くん、乾き物ばっか買いすぎ。呑んべぇのおツマミじゃん」
「そういう静香も、う○い棒どんだけ買ってんだよ」
ゲームが出来なくても、静香と回るだけで十分楽しかった。
いろいろな発見に恵まれた。
そして、お互いの知らなかった一面が見られた。
そんな楽しい時間もあっという間に過ぎ、オレンジがかった空がだんだん暗くなってきた。
屋上のベンチで、オレ達は一息ついた。
「知らなかった…ゲーセン以外にも、こんなに楽しい見どころスポットあったんだね」
「そだな…2人だから楽しめたのかな、ショップ巡り」
「涼くんとだから楽しめたと思うよ、あたしは」
「ありがと。オレも静香と一緒だから楽しめた」
オレと静香は笑った。
「涼くん、目をつむって」
「うん」
オレはそっと目を閉じた。
すると、両頬にほっそりとした指の感触がした。
唇に柔らかい感触がした。
オレはそれに応えるように、顔を上げて唇を重ね合わせた。
アパートで別れるまで、オレと静香は照れ臭くて目を合わせられなかった。
お互いに、あの唇の感触が忘れられなかった。
続く




