i世界、E
みなさんこんにちはzろuです。
10月に突入しまして夕方から夜にかけて大分くなりましたね。
昼間暑いと思って薄着で寝たら今度は夜が思ったより涼しくて翌朝なんか調子悪いなんて日もありました。
季節の変わり目なのでみなさんもお身体には気おつけて下さい。
と言うわけで今回は前回に引き続き異編第2話となります。
謎の少女キーによって異世界に飛ばされた紘、その目的は異世界からの脱出。
紘が飛び込んだ光の扉の先で紘を待ち受けるものは一体何なのか?
今回エンディングトークコーナーでは新企画もスタートです、それでは本編をお楽しみ下さい!
森
「うわああああぁぁぁぁぁ!!!!」
ドボーン!!!
紘が光の出口を抜けた先にあったのは大きな川の上だった。
その川のど真ん中に出口を作られては当然落ちる以外無い。
「ウッ!ブハッ!!クソ!」
紘は踠きながらもなんとか水面に顔を出す。
しかしこの川の流が早く、両岸は滑る苔で覆われた岩場で簡単に上がれそうな場所も無い。
(流れが速い、この先に滝があるのか?だとしたら最悪だ!どちらにせよ早くなんとかして陸に上がらないと…)
突然川に叩き落とされた紘だったが冷静にやるべき事を見極め何としても陸に上がる事に全集中する。
ひとまず川のふちまで泳いで行く事にした。
「お!」
すると河岸から伸びる大きな木、その太い枝から太い蔓が何本か垂れ下がっているエリアが見えた。
「あれだ!!」
紘は流されながら急いで蔓に向かって泳ぐ。
川の流れに逆らって泳ぐのはまず不可能、これを逃せば次に何処で上がれるか分からない、紘は必死になって垂れている蔓の一本を掴んだ。
「よし!?」
ザバッ!
(頼む…切れるなよ?)
紘は掴んだ蔓を腕と足の力を頼りに精一杯登る、そして紘はそのまま蔓が巻き付いた木の幹まで登り切った。
「やった!」
ガッ! ドサッ!
そしてそのまま蔓をつたって木を下り、何とか陸に上がる事に成功した。
手足が疲労していたため地上に降りた瞬間足から崩れ落ちて地面に仰向けに倒れ込んだ。
ドサッ!
「だはぁッ!!!死ぬかと思った…!クソ…放るならせめて湖とかに放ってくれよ!」
と言いつつ紘は自分がまだどうにか生きている事に安堵した。
「スゥ〜…ハァ…」
深呼吸した後、体を起こした紘は周囲を見回す。そこにあったのはただただ木、草、土、途方もない密林の檻だった。
「ハァ…、とにかく移動するか。ここが本当に異世界だとしたら何がいるか分からない…」
目的はあるがそこに辿り着くヒントが何も分からない紘はとりあえず遭難した時のセオリーに乗っ取り川に沿って下っていく事にした。
滑落して川に落ちるから逆に危険だと言う話もあるらしいが、今の紘にはこれくらいしか頼るものが無かった。
そしてそのまましばらく進んでいると…。
「おっと…」
紘が見つけたのは絶壁、高さは数十メートルくらいありこのまま降りるのは無理そうだ。
そしてそこから見渡す広大な森と山、更にその脇には。
ザ ァーーーーーーーーー!!!!!
川から勢いよく流れてきた大量の水が崖の下に向かって真っ逆さまに落ち続けている、大きな滝だ。
「やっぱりあったか…、本当に死ぬ所だったらしいなオレは」
想像するだけで肝が縮み上がるが、とりあえず今は無事に生きているので考えない事にした。
せっかく高台に来れたので紘は森の地形を確認する、すると遠くに煙の様なものが上がっているのが微かに見えた。
「山火事か?人里か…?ひとまずあれを目指して進むか、どれどれ?」
今度は真下から行く手にかけてのルートを確認する。
目の前に広がる広大な森と正面に聳え立つ丘が邪魔をして上がっている煙の火元は見えない、丘は特に高くは無さそうだが深い森は間違いなく行手を阻むだろう、楽なルートがあるとすれば。
「やはり川か」
イカダでも作って川を下るルートがおそらく1番楽、もしあの煙が人里から上がる物だとすれば川を下っていくのは合理的、だが問題は道具が一切ない事だ。
「泳いで下るのは論外、ならばイカダ製作の為の道具作りから始めなきゃ行けないのだが…」
そのために手頃な石を砕いて石器を作り、棒に括って工具を作りその工具でイカダを作る。
道具を使わず竹を蔓で縛った簡易的なイカダも作れない事はないだろうがおそらく長旅になる為耐久性は欲しい。
更に水や食料の調達、その為の水筒や狩の道具作りも必須、やる事はとてつもなく多い。
「めんどくせぇなぁ…」
小言を漏らしながら紘はぼーっと空を眺めた、そして何より紘が気になっていた事が。
「太陽の位置がさっき見た時とズレてる、あれが太陽系と同じ動きをしているのであれば日は確実に沈んでるな…」
紘は今の自分の姿を確認する、道具は一切無く服はびしょ濡れ、森の中でこのまま日が沈めば低体温症に襲われる可能性が極めて高い。
(とりあえずこの服乾かさないとマジで死ぬな…、いずれにせよこの滝からは下れねぇ、何とかして崖を降りて風雨をしながら場所を探さねぇと。あと火を起こして食料はひとまず後回しで先ずは飲み水…、湧き水でもありゃいいんだが…)
紘は必要事項の取捨選択を脳内で必死に行う。
「クソ!!何が異世界だ!森しかねぇじゃねぇかよ!!!」
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数時間後
時刻は不明だが日は完全に沈みあたりは動物の声と真っ暗闇に包まれていた。
何とか崖を降りてきた紘は崖下に偶然いい感じの洞窟を発見し、ひとまずここで夜を明かす事にした。
紘は大急ぎで落ちていた石を砕いて乾いた木と木の枝をかき集め、折った木の枝を石器で整え、曲がった木の棒と靴紐を解いて弓切りの道具を作ると死に物狂いで火を起こした。
そして火がつく頃には日が沈んで真っ暗になっていた。
「ひ、ひどばずだずがっだ…」
紘は濡れていた服を全部干し、パンイチになった自分の体を震えながら焚き火と乾いた草を被って温め、どうにか命を繋ぎ止めていた。
「ここなら熱が籠るから朝には服も乾くだろ。腹減ったなぁ、イカダは一旦保留にして明日は水と食料を探しに行くか…」
かなり動いたが思いの外過ごしやすい気候だった為か脱水症状等の兆候は今のところ無い、しかしこれが続けば必ず限界が来る。
(食料はこの環境なら探せばありそうだ。水は煮沸の道具さえありゃ川の水汲んで飲めるのになぁ、ひとまず自分の命を最優先に…)
そんなことを考えていると、ふとキーが言った事を思い出していた。
(あなたの役目は異世界からの脱出を目指す事です)
ところが今自分がやっているのはどう考えても密林からの脱出だ。
今の紘が持ちうる知識なら頑張れば生き延びる事くらいは出来るだろうが、現状イカダを作って川を下るというフローチャートだけで一生を終えそうな気分だ。
ましてや世界からの脱出などどうやって…。
(キーが「ゲーム」の為に作った世界だ、だとしたら少なくとも最低限の文明を持つ人々くらいは居るはずだ、何とかして出会えたらこの状況も好転するといいんだが…)
「ふわ〜…」
体が温まってきた紘から一つあくびが出た、川に放られてからずっと動きっぱなしで流石に疲れた。
「寝るか」
紘は地面に草を敷いて横になった。
寝心地は控えめに言って地獄だったが、それでも今用意出来るもので1番快適なものは揃っているはずだ。
とにかく出来る限りの事をして明日への体力を温存しなければならない。
地面に寝るのは蛇やサソリが心配になるがそこは目の前の火と自分の悪運強さを信じるしかない。
紘が目を閉じる、そしてまたふとキーの言葉が頭をよぎった。
(私は!貴方が!嫌いだからです!)
「………」
紘はそのまま眠りについた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
洞窟、翌朝早朝
ガサッ…
「!?」
紘は何者かの足音で目が覚めた。
(マジかよ…)
紘は焚き火に薪を多めに焚べて、そばに置いていた長い棒を手に取ると、焚き火を挟んで洞窟入り口に向かって構える。
ナイフすら無い状態で森を彷徨っていた紘の武器は精々そこらへんに落ちてた木の棒くらいしか無い、この棒と火だけが頼りだ。
「頼む、無害な動物でいてくれ…、いっそ人で…出来れば話の分かる奴でいてくれ…」
紘は思いつく限りの生存ルートを心の中で必死に神に祈る。
カラン…ザッ、カラン…ザッ…
金属が軽くぶつかるような音と共に足音がゆっくり近づく。
(金属音…人か?)
そして洞窟の外から現れたのは…。
「ん?」
「?」
入って来たのは紘より肩下まで伸びた黒髪をうなじのあたりで結い、桜色の着物を着て帯に何やら鉄と輪っかを2つ携えた少女だった。
「子供?」
「ッ!?」
すると少女は紘の姿を見るなり、慌てて叫んだ。
カラン…
「//わぁ!きゃぁ!!ごごご、ごめんなさいぃ!!おおお男の人が裸でいるなんて思わなくて…//」
「…………」
少女は顔を手で隠し真っ赤な顔をしながら洞窟から走って出ていった。
「ハァ…よかった、どうやら害のない人みたいだ…」
その姿を見た紘は命の危険はないと直感的に安堵し、鉄棒を壁に立て掛けた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
数分後
乾いた服に着替えたた紘が洞窟から出て来た。
洞窟の手前にある丁度いい高さの岩に腰掛けると、昨日火おこしで使った靴紐を靴に結び直した。
「驚かせて悪かったな、いくら火があっても濡れた服を着たまま夜を明かしたら死ぬと思ってさ」
「//い、いえ、煙が出てるのが見えて火事かと思って…本当にごめんなさい//」
「いやオレの方こそ」
少女は恥ずかしそうに目を逸らしつつ横目で靴紐を結ぶ紘の姿を見ジロジロ見ていた。
「?」
「…どうした?オレの顔に何か付いてるか?」
「あ、いえ!そのわらじといい変わった着物だなと思って…もしかして王都から来た旅人さんか何かですか?」
確かに少女は江戸時代の日本を思わせるような質素なわらじや着物を着ている、これがこの世界のいわゆる庶民の格好なのだとしたら当然紐靴なんか無いだろうし、まして短ランにボンタンのままの紘の格好はさぞ目を引くだろう。
「あー…、うんまぁオレの格好は気になるだろうが気にしないでくれるとありがたいかな…。そう言えば言い忘れてたけど俺の名前は紘って言うんだ、君は?」
「あ!はい!結です!」
「結…(和名だ、しかも微妙に近代的な。それに何より日本語が通じている、服装といいもしかしてここは日本なのか?)」
「あの…何か?」
考えに浸っていた紘が結の声で我に帰った。
「あ、いや。いい名前だと思ってさ」
「そうですか?えへへ…」
結は照れくさそうに微笑んだ。
「それにしても紘さんはどうしてこんな所に?荷物とかは無いんですか?」
「無い。気がついたらこの崖の上にある川に叩き落とされててな、命からがら川から上がって大急ぎで下山してる内にそこの洞窟を見つけたんで、何とか火をつけて夜を明かしたんだ」
「無いって、水も食べ物も火おこしの道具も無しでこんな山奥に来たんですか!?」
「悪いがその話は一旦置いといて、オレは今人里を目指してるんだ。結は何処かの村か集落から来たんだろ?案内してくれないか?」
「うーん、そうですね………」
紘の申し出に結は少し手を口元に当てて何かを考える素振りを見せた。
そして何かを考えてついた結が紘にある提案をした。
「…わかりました、付いて来てください」
カラン…
結はそう言うと紘が夜を明かした洞窟の中へ入って行く、紘も言われるがまま彼女の後を付いて行った。
洞窟の奥まで行くとそこには南京錠がかかった物置部屋があった。
「へー、こんなのがあったのか、昨日は必死すぎて気付かなかった」
「ここは猟師をしている私のお爺さんが使っている物置部屋何でこの広い森の中に幾つかあるんです。私も小さい頃何度か来て道具も使った事があるんですよ」
結はそう言いながら物置の道具を物色するとかご、鎌、桑を取り出して紘に渡した。
「紘さん、これを」
「…なんだこれ?」
紘は訳が分からないまま道具を受け取った。
その後結が弓矢を取り出すと紘と真っ直ぐ向き合うとこう言った。
カラン…
「紘さん、あなたを街に案内します。その代わりに山菜採りを手伝って下さい!」
「…え?」
ーーーーーーーーーーーーーーー
森
洞窟を出た紘は鎌と桑が入ったカゴを背負って弓矢を持った結と山菜採りのため森の中を移動していた。
道中結がここに来た敬意を聞いた。
「普段山菜を採ってきてくれる猟師のおじさんが腰をやっちゃって、おばさん達から止められてたんですけど、どうしても今山菜が美味しいのでどうしても諦めきれなくて」
「君の街はここから10キロ以上離れてるって言ってたけどどいつ街を発ったの?数時間で来れる様な距離じゃないだろうし道中も危険だろ?」
「街を発ったのは3日前くらいのです、そこからさっきの洞窟にあったみたいな狩猟小屋を転々としながら来ました」
「その山菜ってそんな山奥まで来ないと取れないもんなのか?」
「いいえ、取ろうと思えばもっと近くでも取れますが先人達が築いた安全なルートと各地の狩猟小屋を使わないと流石に私の身が危険なので」
「オレが人里に下りる為の頼みだから当然付き合うがあんまり関心しないな。君みたいな小さな女の子がこんな危ない山奥に1人数日も過ごすなんて」
カラン…
「むー、子供扱いしないで下さい!私はこう見えてももうすぐ10歳なんです!弓だって使えます!」
「見た目通りの9歳だな、君の故郷で成人が何歳なのかは知らないが世話してくれる大人がいるならあんまり心配かけるもんじゃ無いぞ?」
「紘さんこそこんな危険な山奥に手ぶらでうろつくなんて私より危険じゃ無いですか!」
「オレは結と違って好き好んでこんなことしてるんじゃないの、さぁとっとと済ませよう、この森には何が出るか知らないがオレが1人いたところで出来ることはたかが知れてる」
「熊とか猪には気を付けたいですね、だけど大丈夫です、私に任せて下さい!」
その自信はどこから来るのか結はえっへんと胸を張ってみせた。
「ところで山菜って何が採れるのか聞いてもいいか?」
「ぜんまい、ふき、こごみ、うど、わらび…後きぐらげ、なめこ、えのきみたいなキノコがあったらいいですね!天ぷらや汁物に入れると美味しいんですよ!」
「……」
正直、昨日森を彷徨ってる時から薄々思っていたが熊だの猪だの生態系がかなり日本の山に近い、と言うよりまんま日本の山と言っても良い。
紘がイメージしていた異世界とはまるで違う、これは考えを改めなければならないかも知れないと思うと同時に結がこんな事を口にした。
「そうそう、気をつけると言えばやはり魔獣ですね」
「魔獣…、そういうのもいるのか…」
日本の生態系がどうのと言っていた矢先にこれだ、昨日は「生きるだけなら何とでも…」みたいな事を考えていた気がするが、このテンションのまま過ごしていたら間違いなく死んでいただろう。
正直この目で見てないので何とも言えないがこの一言で自分が今異世界にいるという実感が少し強まった。
「私は魔獣を見た事が無いので分かりませんがお爺さんが言うには野生動物が突然変異によって凶暴化したものなんだそうです」
(野生動物の突然変異?)
「姿をみたら見つからないようとにかく逃げろと教わりました、あと見つかったらなりふり構わず全力で逃げろと」
「まぁそうだなオレでもそうするわ」
「さて、もうすぐ着きますよ?」
2人が雑談している間に結が目指していた場所に到着した様だ、正直景色はさっきまでと特に変わっている様子はないがここから結テンションが跳ね上がった。
「うわぁ!紘さん見て下さい!」
「お、おい!」
結が突然駆け出していく、紘もその後を追う。
「うど、こごみ、わらび、せり、ぜんまい、きくらげもこんなに!…あ!このブナの倒木になめこが沢山生えてます!」
結は興奮冷めやらぬまま鎌を取り出すと一心不乱に採取を開始した。
「大当たりですよ紘さん!カゴお願いします!」
「ハァ…ああ、分かった…」
紘が息を切らしながら追いつくと山菜採取が始まった、結が山菜を見つけては採ってカゴに入れていく。
自然の恵みに溢れたこのエリアにはたくさんのキノコやタケノコなどが自生しており1.2時間程歩き回るだけでもカゴの半分は採れた。
(…………少し静か過ぎるな?)
紘は採取中も周囲は警戒していたが魔獣とやらはおろか動物の気配すら一切無く、逆に異様とも言える空間に立たされている様な感覚に違和感を覚える。
そんなことを考えていると夢中で採取をしていた結が立ち上がった。
「うん。これだけあれば十分です、戻りましょう。あんまりここに長居しても危険ですし」
「そうか、それにしてもかなり多いがまさかこれ結1人で食べるのか?」
「違いますよ、私のお店で出すんです!」
「店?へー両親か誰かの手伝いか?」
「いいえ、私が1人でやってるお店です。常連さんも沢山いるんですよ」
「1人で!?そりゃすごいな…」
「へへ〜ん、関心しました?」
「ああ…」
カラン…
「……」
ここで話の途中だったが紘は聞くかどうか迷っていたがどうしても気になる事を聞いてみた。
「なぁ結」
「何ですか?」
「その帯に付けてる鉄の輪っかって…」
「あぁ、これですか?」
先程からずっとカラン、カラン、と鳴っていた金属音の正体、結が帯に身につけていた2つの鉄の輪を取り出した。
紘はその輪に見覚えがあった、輪は横に潰れた楕円形で輪の内側には人の指くらいの大きさの穴が四つ、その穴の上部は指穴に沿って波形になっている。
「拳鍔っていう打撃武器らしいですよ、ここに指をはめて相手を…!こうやって…!殴る…!たまに使うらしいです!」
「………」
結は説明しながら拳鍔を手にはめて虚空に向かって拳を振り回してみせた。
結が持っていた拳鍔、通称メリケンサックやナックルダスターとも呼ばれ、指にはめてパンチの打撃力を増大させる武器で、紘も凶匣会にいた頃は飽きるほど目にした物だ。
結も自覚している様だが素振りはおぼつかなく、とても使い慣れている様には見えない、人から譲り受けて本来の用途だけ教わった様な感じだった。
「あぁ、そう…」
どうしても気になったので聞いてみたが、何と言うか結のようないたいけな少女がこれを持っている姿を見ると胸が締め付けられるような感覚に襲われるので正直触れたくなかった。
親心と言ってはあれだが彼女の将来が一気に不安になったが、結は続けた。
「ハァ…ハァ…、まぁ私はこの通り使い方もよく知らなければ本来の使い方もした事はありません…。お肉を叩いて柔らかくするのに使ったり硬いクルミを割ったりとかです…」
「使い辛いだろそれ、どこで手に入れたんだそんな物?」
「これは死んでしまったお母さんがお父さんと旅していた時に使ってた物らしいです。小さくて軽くて便利な護身具だったんだとか」
「そ…そう、お母さんのなんだそれ…(お母さん怖ぇ…)けど魔獣とかがいるなら剣とかの方が良かったんじゃないのか?」
「さぁ、私は旅をした事が無いので実際のところは分かりません…。ただ、おばさん伝に聞いたお母さんが言うには魔獣よりも人間の方がよっぽど怖かったと言っていたらしいのでそういう物なのかも知れません」
「そうか…」
紘も魔獣を見た事はないが、この言葉は何となく共感出来た気がした。
そう言う理由なのであれば対人用の暗器を使う事も理解できな訳でもない。
「お父さんはどうしたんだ?一緒に旅をしてたんだろう?」
「お父さんは私が生まれてすぐ街を出て行きました。私を産んですぐお母さんが死んでしまったのでショックだったのかも知れません」
「そうだったのか…、悪い事を聞いたな」
「いえ。こうして形見もありますし、お父さんもきっと何処かで生きていますから」
「……」
「私、もしお父さんが帰って来たら目一杯おもてなししたいんです!ほら旅人さんは皆んな美味しいものが好きなので、私のお店も有名になったらきっとお父さんも帰って来てくれますから!」
「……ああ、そうだな」
両親に置き去りにされても尚前を向いて一生懸命に生きている結は、紘の目にはとても輝いて見えた。
こうして魔獣に遭遇することも無く、無事に山の幸を採って来た2人は先程2人が初めて会った洞窟まで戻って来た。
「だっはぁ!!!疲れた〜!」
紘はカゴを地面に置くとそのまま地面に倒れた。
今にして思えばこの世界に来てから大体丸一日、飲まず食わずで動いていた為流石に体が悲鳴を上げ出していた。
料理人である結がわざわざ危険を犯して採りに来るくらいなので今は山菜が旬の時期、であれば季節は春頃だろう。
この過ごしやすさが幸いして意外と長い間行動できたが流石に水くらいは欲しい。
すると鎌や鍬などのもう必要ない道具を片付けて戻って来た結が、慌てて水筒を差し出して来て言った。
「ごめんなさい!気が回らなくて、紘さんが何も持ってない事を知っていたのに…これ飲んで下さい」
「ああ、ありがとう!助かった…」
紘は水筒を受け取ると蓋を開けて一気に飲んだ。
「プハァ!美味ぇ!!水ってこんな美味い飲み物だったのか!!?」
「あとよかったらこれも食べて下さい」
すると結が笹の葉の包みを一つ紘に手渡した、包みを開くとそこには握り飯が二つ入っていた。
「いいのか?これ結のだろ?」
「これまで大変だったのは紘さんでしょ?それに私は紘さんのおかげで楽が出来たので、遠慮せずに食べて下さい」
結はそう微笑みながら言った。
「そっか、じゃお言葉に甘えて。いただきます!」
空腹だった紘は握り飯に齧り付いた。
「んッ!!?」
次の瞬間、紘はあまりの衝撃に言葉を失ってしまった。
(う、美味ぇ…!!?炊き立てみたいな粒が立ってふっくらとした米、具のほぐし鮭も絶妙な塩加減…)
紘は思わずもう一つの握り飯にも齧り付く。
(こっちはおかかだ、甘口の醤油タレで和えてあってこれも米と合う!!)
あまりの美味しさに二つもあった握り飯は一瞬にして無くなってしまった。
紘自身の空腹だったのも相まって人生で食べた握り飯の中で間違い無く1番美味しかった。
(結の腕を疑っていた訳では無かったがここまでの物とは思わなかった…信じられねぇこれが9歳が作った料理か!?)
握り飯を2つ食べただけだが、結の料理人としてのとてつもない素質が垣間見える素晴らしい料理だった。
「良い食べっぷりですね〜、料理人冥利に尽きますよ」
「こんな美味いおにぎり初めて食べたよ!ありがとう結」
「えへへ、お粗末さまでした!」
結は得意げな笑顔を見せた、そして勢いよく立ち上がると。
「じゃあ行きましょう!約束通り私の街、和へ」
z「新企画![mobius設定資料集]!!!」
キャー!イェーイ!
鍵(台本)「どんどんぱふぱふ〜」
z「改めまして皆さんこんにちはzろuです」
鍵「こんにちはキーです」
z「始まりました新企画[mobius設定資料集]。このコーナーでは本作「mobius」の各登場人物の情報や裏設定などを紹介し、各キャラクターのことをもっと知ってもらおうと言う企画です」
鍵(台本)「さーてこんかいしょうかいするきゃらくたーは?」
z「こちら!!!」
コトッ(フリップ)
[呉島 紘]
ドドン!
鍵(台本)「と言うわけで今回紹介するキャラクターは本作のメインキャラクターである「呉島紘」です」
z「9月04日生まれ17歳の高校2年生。趣味は読書と作文、特技はイラスト。
元軍人である父方の叔父から格闘技やサバイバル術などの知識を教えられ、喧嘩も強く同級生のヤンキー程度では相手にならないほどの戦闘力があります」
鍵(台本)「えー、幼馴染の小見川記更と共にオリジナルゲーム「ディザスターボックス」を制作しキャラデザ、背景、脚本を担当。ゲームのプレイ人数は制作した2人を除いては1人しか居ないので面白いかどうかは当人達しか分かりませんが相方の小見川さんからは彼の絵はかなり好評だったそうです」
おー!!わいわい!ガヤガヤ!
z「初登場時は金髪に短ランにボンタンといったヤンキー姿でしたが普段は短髪黒髪とどこにでもいる普通の男子高校生の容姿をしています。
そんなギャップも魅力的な紘君なのですが彼には一つ秘密があるんです」
鍵(台本)「ひみつ〜?」
z「メビウスポイーンツ!」
ババン!
z「実は紘君は幼少期に両親から教育虐待が原因で精神疾患を患っています」
鍵(台本)「なるほど、では序編2話であった入院していた病院と言うのは…?」
z「そう、彼が入院していたのは精神病院だったというわけですねぇ」
ざわざわざわ…
z「ふっふっふ…そんな彼が今後この物語にどんな影響を及ぼすのか気になりますねぇ?」
鍵「というわけで以上「mobius設定資料集」のコーナーでした」
z「もしよろしければ次回のお話もお楽しみ下さい」
z、鍵「またねー!」




