表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mobius  作者: zろu
序←異戦現英縁剣魔神廻
3/6

始まりの終わり、そして始まりの始まり

みなさんこんにちはzろuです。

今回を持ちまして「序」と書きまして序章編の最終話となります。

長かった…流石に序章だけでここまで長くなるとは思っても見ませんでしたが書きたい物を書いた結果このような結果に相成りました、ここまでお付き合い頂いた方々に感謝申し上げます。

今回は前回までに投稿したお話よりも最多文字数となってると思います。

もしお暇な方は彼らの冒険を始まりを見届けて下さると嬉しいです。

それではまた後ほどお会い致しましょう。

  

 数十分前、星名の自宅アパート前。

 

「紘、早く来い」

 

 久瀬に急かされた紘は駆け足で久瀬を追って行く、2人を見送った三女市はスッときびすを返すと真由の手を握った。

 

「ヒメさん?」

 

「い、い、い、こっ…か」

 

「え?ここで待ってれば…」

 

「い、いか、か、ら」

 

 三女市はそのまま真由の手を引いて敷地を出た。

 三女市は周囲を警戒しながら敷地を出てすぐ隣にある狭い路地に入って行った。

 この地域は勾配になっており路地に入ってすぐ階段がある、そこを降りて路地を抜けるとアパートのちょうど裏手の道に出る。

 アパートの裏は3メートルほどのコンクリート塀になっており、その向かい側は用水路を挟んで他の民家の裏側が見えた。

 車も入って来れないほど狭いこの道は昼でも薄暗く不気味な雰囲気が漂う中、チャキン、チャキンと三女市のブーツに付いている拍車の金属音だけが響いていた。

 すると三女市はおもむろに塀に背をもたれてその場にしゃがみ込むと、リュックサックからチョコレート菓子を取り出して真由にこう言った。

 

「ね!た、た、べ…べよ?い、い、っしょ…に」

 

「え!?い、今ですか!?」

 

「うん!うん!」


 とまるで子供のようにニコニコとお菓子のパッケージを見せびらかして見せた。

 

(この人やっぱりすごい天真爛漫な人だなぁ)

 

 状況が状況だけに空気が緊迫している中、1人だけ自由気ままな彼女を見て若干気圧される真由だったが。

 

「はい!こ、これ!」

 

 と三女市はお構いなしに真由に個包装のお菓子を3つほど渡してきた。

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「こ、こ、こ、んなと、と、時…こそ、あ、あ、ままい…物〜♪」

 

 三女市はるんるん気分で吃音を利用して妙なリズムの歌を口ずさみながらお菓子の包装を切るとパクッと一つ口に入れた。

 アパートに残った紘達を心配したかったが三女市に押し負け真由もお菓子を一つ食べた。

 

「あ、おいしい…」

 

「ね!」

 

 武闘派極道組織「凶匣会」、その最高戦力の1人として恐れられている彼女だが、こうして話してみると彼女も何の変哲もない普通のお姉さんに見えた。

 

「あの、さっき久瀬さんが「ここの空気は吸うな」って言ってましたけど紘君あのまま行かせて大丈夫だったんですか?」

 

「んー………」

 

 三女市はちょっと間を置くと、モグモグとお菓子を咀嚼しながらおもむろにスマホを取り出してメモ機能を使って複雑な会話を始めた。

 

[ちょっと部屋に入るくらいは問題無いとは思うよ、ただどっちにしろ有害なのに変わりないから吸わないに越した事はないよ。それにあそこなんか溜まり場の気配がしたし、ああいう所に女の子が行くもんじゃないの!]

 

「でも紘くんは行っちゃいましたけど、やっぱり危ないんじゃ?」

 

[まぁそれはそうだけど、でも宇助の方にも人手が要るし、紘君と真由ちゃんにはしっかり私達が付いてなきゃ行けないから。ああ見えて宇助なりに2人の事考えてるんだよ?乱暴だけどね]

 

「そうですか…」

 

[宇助はスイッチ入ったら聞かないから、だけど紘くんの事なら大丈夫だよ。宇助が付いてるし紘くんも強い子だから]

 

「……はい」

 

 真由の問いに三女市は励ます様に返したが、それでも真由の不安は消えない様だった。

 しかしそれは無理もない、普通の高校生であるはずの紘と真由はヤクザとマフィアとの殺し合いの現場に放り出されているのだから。

 しかし不安そうな真由を見てもなお、三女市は絶対に守り切る自信からか、たくましく微笑んで、真由の頭に手を回すと身を寄せた。

 

「だ、だ、い、い、じょ…ぶ…だ、だよ」

 

 三女市は真由を安心させようと優しく声をかける、しかしその次の瞬間。

 

「…!!?」

 

 三女市が突然ガバッと真由を強く抱き寄せると、素早く隠し持っていたナイフを抜いた。

 

「え?え!?ヒメさん…!?」

 

「シーッ…」

 

 真由に静かにする様合図した三女市は静かに紘と久瀬がいる建物の方をジッと見つめる。

 真由も突然のことで驚いていた様だが素直に従ってくれた。

 三女市はスマホを取り出すと、どこかへ連絡をとり始め、2人は同じ体制のまま1分ほど経つと三女市のスマホに着信が来た。

 返信の内容を見た三女市はそっとナイフを収めて真由にかけていた手を解いた。

 

「あの、何かあったんですか?」

 

 真由が聞くと三女市は先程のスマホでのやり取りを真由に見せてくれた。

  

[銃声がしたよ?何かあったの?]

 

[チンピラの銃が暴発しただけだ、俺も紘も撃たれてない、大丈夫だ]

 

[助けに行こうか?]

 

[制圧した、こっちは心配ない]

 

 連絡の相手は久瀬だった。


「銃声が聞こえたって事ですか!?私は何も聞こえませんでしたけど…」

 

 真由の問いに三女市は再びスマホのメモ機能で返答する。

 

[そうだよ、音を抑えるパーツが使われてたから真由ちゃんには聞こえなかったかも知れないけど]

 

「…そうですか、だけど2人とも怪我とかしてないんですね?よかった〜」

 

 三女市もコクコクと頷いて返した。

 

 すると……。

 

 

 

 

 

 

「いやーホント危なかったよ〜、さっき僕見てたけどちょっとズレてたら…」

 

「……!!!?」

 

「……え?」

 

 

 突然謎の男がヌッと三女市のすぐ背後から音もなく現れた。

 真由は一瞬の出来事に理解が追いつかないが三女市は反射的に男が何か言い終わるよりも早く右手でナイフを抜いて男の首元目掛けて振り抜いた。

 

 ザクッ!!!

 

「!!!?」

 

 しかし三女市のナイフは男を捉える事は無く、逆に三女市は右手首に何かを深々と刺されてしまった。

 

「ウッ…!!!?」

 

 三女市は痛みから手を緩めてしまい、逆にナイフを取られてしまった。

 しかし無理にナイフを奪い返そうとはせず、リュックのグラブループに右腕を入れて持ち上げ、リュックを胸に抱えてバイタルゾーンを守りつつ、真由を背にして自分とリュックを盾にしながら後ろに数歩後退して男から距離を取った。

 

 ズキン!

 

「クッ………!!!」

 

 三女市は痛む右手を見ると一本の万年筆が深々と刺さり、血では無く真っ黒な液体がドクドクと溢れていた。

 

「……!!!?」

 

 三女市はすぐに万年筆を引き抜いて傍に捨てると左手で右手首を力一杯圧迫した。

 

「危ない危ない、こんな物無闇に人に向けちゃいけないよ」

 

 男は茶化す様な調子でそういうと三女市から取り上げたナイフを自分の背後にポイッと放り投げた。

 カランカラン…、とナイフが落ちる音が路地に響く、しかし三女市は男の姿を冷静にジッと見つめて相手を観察していた。

 男は身長180センチ程で細身、四角い黒縁メガネをかけ、髪は黒髪で目元や耳が隠れそうな位まで伸びている。

 白衣を着て、その下に「この回終わったら本編」と書かれた黒のTシャツを着ており、かなり変な服装をしていた。

 

「だ…大丈夫ですかヒメさん!?」

 

 真由が三女市に駆け寄って手を見ると、右手を押さえる左手の指の間から黒い液体が滴り落ちている。

 

「これ何!?……黒い…血???」

 

「おっとこれは失礼、ナイフを向けられるとは思わなかったもんでビックリしちゃってさ」

 

 男はこんな事を言いながら懐に手を入れ、ゆっくりとこちらに歩いてきた。

 

「!!?」

 

 銃などの武器を警戒した三女市は真由を背にしたまままた素早く数歩後ろに後退する。

 しかし男が懐から取り出したのは凶器などではなく一枚の紙切れだった。

 男は先程三女市が抜いた万年筆を拾うと万年筆にべっとりと付いているインクを紙切れで拭き始めた。

 

「そんなに警戒すんなよ、僕は銃やナイフなんて持っていないよ」

 

「な、何を…貴方!そのペンでヒメさんを刺したじゃないですか!」

 

 すると真由が強気に声を上げて返した。

 

「めッ!…ま、ま、ゆ…」

 

「銃やナイフじゃなくても人を刺したら犯罪です!警察呼びますから!」

 

 真由は怪我を負った三女市を庇う様に前に出ると大声で威嚇する。

 

「フッ、お嬢ちゃん真面目なんだね」

 

 男は低めの声でそう言うとインクを綺麗に拭き取った万年筆を胸ポケットに戻し、汚れた塵紙をグシャッと拳の中に包む様に握りしめた。

 

「友達が傷つけられると勇気が出るタイプだね、中々頼もしいけど今度から警察呼ぶ時は相手に気づかれない内に呼んだ方がいい…よッ!!?」

 

 ヒュッ!

 

 すると男は丸めた紙切れを握った手をおおきく振りかぶり、手の中にあったものを思い切り投げつけてきた。

 

「!!?」

 

 … バシィッ!!

 

 しかし真由の顔面を目掛けて飛んできたそれを三女市が真由の後ろから左手を伸ばし、すんでで受け止めた。

 

「……ッ!!?」

 

「僕みたいな得体の知れない奴相手に、警察が必ずしも脅しになるとは限らないからね」

 

 男が投げつけてきたのはソフトボールくらいの大きな石だった。

 つい数秒前まで男の手には塵紙しかなかったはず、加えて三女市が受け止めた石を見る限り拳を握って隠せる大きさでも無い。

 

「え………な、なんで!?」

 

 真由はこれが自分の頭目掛けて飛んできた事実にゾッと背筋が凍った。

 三女市が再び真由の前に出ると掴んでいる石をお返しとばかりに思い切り男に投げ返した。

 

 ビュッン!!!

 

「………」

 

 信じられないスピードで足が飛んでいく、しかし男はその石を首を傾げて皮一枚でかわした。

 

 コッ!コッ!ゴロゴロ……

 

 石が地面に落ちる重く鈍い音が路地に響き渡った。

 

「い、今の本物の石?……いつ入れ替わったの!?」

 

 実害を加えられそうになった真由は恐れ慄いて2、3歩後ずさった。

 すると男は突然両手を上げて声色を元に戻し、再びおちゃらけた様な口調で、

 

「でもまぁ、僕は犯罪者じゃなければ極道や半グレでも無いんだけどね」

 

 今更こんな事を言い出した。

 

「ちなみに、ゼパルの回し者でも無いから勘違いしないでくれよ?」

 

「!!?」

 

 この言葉を聞いた三女市は姿勢を低くして臨戦態勢をとった。

 

「おいおい、違うって言ってるのに」

 

 男はそう言うが、三女市にとってはこの突如湧いて出た謎の男の口から聞いても無いのに「ゼパル」の名前が出た時点で警戒するには十分だ。

 すると後ろからまたしても真由が口を開く。

 

「では……貴方は一体何者なんですか!?」

 

「よくぞ聞いてくれたァ!!!!」

 

「「!!!?」」

 

 すると男が突然両手を広げて路地にこだまする程の大声を張り上げて、驚く2人の反応を確認するとそのまま勢いよく言い放つ。

 

「僕はこの世界の神!!!この世界の全ては僕の手によって生み出された傀儡だ!君達の過去や現在、そして未来に至るまで、この世界の全てはこのボクの手のひらの中にある!」

 

「「!???」」


「僕はこの世界の創造主にしてこの世界の神!そしてこの世界の行末を…憂う者だ」

 

「………!?!?」

 

「………」

 

 ここまで上手く話せない三女市の代わりに得体の知れない男相手に勇気を出して会話をしてくれていた真由だったが、ついに理解が追いつかず完全に固まってしまうも、三女市は意外と冷静だった。

 彼女は過去にも怪しげなカルト宗教によって凶匣会のシマを脅かされそうになった経験もあり、こういう世迷言を言ってはばからない様な連中も沢山見てきた。

 なので三女市は心揺らぐ事なく敵を見る鋭い眼光を向け続けた。

 

「まぁ僕はまだ名前を名乗れないし、自己紹介としちゃこんなとこかな」

 

 男は満足そうにそういうと、困惑する2人の姿をジーッと眺めるとふとこんな事を言った。

 

 「ところでそっちの派手なお姉さん、その右手は一体どうしたのかな?怪我でもしたの?」

 

 男はずっと右手で三女市の右手を指差した。

 

「…?」


 初めは男の言ってる意味が分からない三女市だったが、男の言う通りふと自分の右手に目をやるとある違和感に気がついた。

 

「あ、あれ…?ヒメさん傷は!?」


「……!?」

 

 この違和感には真由も気づいていた、あれだけ深く突き刺されたにも関わらず出血が一切無い。

 三女市が気が付いた頃には痛みも一切無く、刺し傷があるはず場所のインクを拭ってみるも、そこには穴どころがわずかなかすり傷一つ付いていなかった。

 

「!!?」

 

「こ、これって…?」

 

「言っただろう?この世界は僕が作ったって…、どうかな?僕が神だって信じてもらえたかな?」

 

 すると男の背後から2人に向かってほんの少しそよ風が吹いた。

 

 コッ…コッコッ…

 

 すると男の背後から石が硬く鈍い音を立てて転がってきた。

 

(石が自分で転がってる!?いや、風に吹かれて転がってるの!?こんなそよ風に!?)

 

 石が男の脇を通り過ぎると、少し風の勢いが強まった。

 すると重いはずの石はふわりと浮き上がり三女市の顔目掛けて飛んできた。

 

「!?」

 

 三女市は反射的に手で顔をガードした次の瞬間。

 

 パァッ!パラパラパラ……

 

「!!!?」

 

「うわッ!!?」

 

 なんと石が弾け飛び大量の紙吹雪に変わってあたり一面に降り注いだ。

 

「この世界で起こる事象は全て僕の手のひらの上。ここには初めから傷も石も無い、あるのはただ紙とペンと本物みたいな偽物だけだ」

 

 先程まで薄暗いコンクリートとアスファルトだけだった路地裏が真っ白な紙吹雪によってまるで雪が積もった様に景色を変わった。

 

「これ…、一体何がどうなってるの…?」

 

「さて、挨拶はこのくらいにして本題に入ろう。これでも僕は今余裕が無くてね」

 

 そして男が2人の方に歩き出そうとしたその時。

 

 クシャ、クシャ…

 

「!?」

 

 男の背後から地面に落ちた紙を踏む足音がきこえた。

 

「??」

 

「…また今度は何?」

 

 男も足音のする方に振り返った。

 

「マジか、来たんだ…」

 

 男が少し厄介そうな顔で小言を漏らした。

 

 クシャ、クシャ

 

「……」

 

 そこにやって来たのはボサ髪の黒茶髪でショートヘアの少女だった。

 少女はボロボロのパーカーのポケットに手を入れ、暗く虚ろな表情で3人を見つめる。

 すると真由は彼女の顔を見るやハッと気がづいた。

 

「え?……あなた、もしかして記更ちゃん?記更ちゃんだよね!?」

 

 真由はやってた少女がなんと誘拐されたはずの小見川記更だというのだ。

 

「!!、ま、ま、ゆ…ほ、ホン…ト?」

 

「は、はい…髪も短くなってるし痩せて雰囲気も少し違うけど間違いありません!」

 

「……」

 

 記更は無言のまま男の数歩手前で足を止め、男の顔を上目でジッと見た後、すぐに真由と三女市の方を見て親しげに話しかけた。


「久しぶりだね、真由ちゃん。こんな所で会うなんて思わなかったんだよ…」

 

「!!」

 

 その声を聞いた真由は安堵と嬉しさの表情を浮かべた。

 

「…やっぱり記更ちゃんなんだね!?無事で良かった…、怪我とかしてない?」

 

「………うん。だけどちょっとだけ待っててね、私は今そこの不審者さんにお話があるんだよ」

 

 記更はそう言うと目の前の男と目を合わせた。

 

「いきなりやって来て人を不審者呼ばわりとは失礼な、僕は「神」だぞ!今まで君が相手してたような連中と一緒にしないでもらいたいもんだね」

 

「怖がってる女の子達に無理やり詰め寄るような人が不審者じゃなくて何だって言うんだよ?君こそ塵「紙」撒き散らして「神」がどうとか面白くないんだよ」

 

「あ?(ピキッ)」

 

 男は一瞬頭に血が上ったようだが直ぐにスッと一瞬で冷めるように冷静になった。

 そして男は一つのため息と共に真面目な顔になると記更の顔を見て話始める。

 

「ハァ…まぁいいよ、そういえば僕も君に聞きたい事があったんだよね…、記更」

 

「………」

 

 男は勿体ぶるように記更の顔を伺う。

 記更は虚な目を男に返す、それはまるでこの男が何を言うのかを知っているかのようだった。

 

「君…ゼパルに手を貸しているそうじゃないか」

 

「!!?」

 

「え…?今なんて!!?」

 

「……」

 

 真由と三女市はあまりにも唐突な展開に理解が追いつかない様子で立ち尽くす。

 というよりも言葉の意味こそ分かるがその真意が分からず半信半疑といった状態だ。

 男は2人に構わず続ける。

 

「あんな目に遭ったのに、あのクズ共の肩持つなんてどう言う風の吹き回しなのかな?」

 

「……」

 

「君は僕がここに居るのは分かった上で姿を見せたんだろ?何を言われるかも分かっていた筈なのに、ここに来てだんまりは無しだぜ?」

 

「……分かっていたなら何で聞くの?」

 

「…否定しないんだね?」

 

「……」

 

「ほ…本当、なの?記更ちゃん…嘘だよね?」

 

「………」

 

 突きつけられた事実に納得がいかない真由は記更に直接問いかけるも記更は俯くばかりで何も答えなかった。

 

「そんな…どうして…?」

 

 真由は悲しそうな顔を記更に向けた。

 その顔を見た記更はゆっくりと口を開いた。

 

「………ごめんね真由ちゃん、だけど私にはやるべき事があるから…まだ帰るわけにはいかないんだよ。だから今はもう少し待ってて、全部終わったら必ず戻ってくるから、約束なんだよ!…その時になったら全て話すから…」

 

「記更ちゃん…」

 

 すると男が突然真由と三女市の方を振り返り、2人の方に再び歩み始めた。

 

「さぁ記更の話は終わりだ!今度は僕の話を聞いてもらおう!」

 

「待つんだよ‼︎君は…ンムッ!!?」

 

 記更は男を制止しようとした瞬間、突然地面に落ちていた紙が数枚飛んできて記更の口を塞ぐ。

 

「むぅッ!むうう‼︎」

 

「君の話は終わりと言ったろう、あんまり僕の話をされても困るし」

 

 口の紙を剥がそうともがく記更を尻目に男は真由と三女市に歩いて近づく。

 

「!?」

 

 三女市が素早く真由を自分の背中に隠したが、男は2人に近づきながら右手を差し出した。

 

「ここは邪魔が多い、場所を変えようか真由」

 

「!!?」

 

 男が突然真由の名前を呼び、三女市が臨戦態勢をとった瞬間、男はスッと差し出した右手を振り上げた。

 

 サァァァ…………

 

 すると路地の中に強い風が吹き始め、あたりに散らばった紙吹雪が再び舞い上がる。

 

「キャー‼︎」

 

「まッ…!!?」

 

 ゴォォォォォ!!!

 

 風は瞬く間に息も出来ず目も開けられない程の強風に変わり、辺りは舞い上がった紙吹雪で視界も全て奪われた。

 

 サァァァ………

 

 しかし風は一瞬で収まった。

 三女市が目を開けると地面に蹲る記更の姿があった。

 

「…プハッ!ゴホッ!ゴホッ…」

 

 口に張り付いていた紙も無くなっており、更に辺り一面に散らばっていたはずの紙は全て無くなっていた。

 風で吹き飛ばされたというよりかは、始めから何も無かったかのように完全に消えて無くなっていた。

 そして…、

 

「…ま、ま…ゆ!?ま、ま、ま、まゆ!!」

 

 そこにいた筈の白衣の男と真由の姿も消えて無くなっていた。

 ーーーーーーーーーーーーーーー 

 謎の空間

 

「…………、ん?」

 

 真由が目を開けると、そこには一面無機質なコンクリート造りの何もない四角い部屋にいた。

 

「え…あれ?…ここどこ?記更ちゃん?ヒメさん!?」

 

 2人の名前を呼んでも2人に届く事はない、真由の声がコンクリートの壁に虚しく反響した。

 見た所広さは8〜15平方メートルと言ったところ。

 壁はもちろん天井から床に至るまで全てコンクリートの様な硬い材質で出来ており、家具的なものはおろか出入り口すら無い。

 唯一あるのは部屋の片側に3つ取り付けられた腰高窓だけだった。

 

「何なの?ここ…」

 

 真由は無作為に真ん中の窓から外を見た。すると…

 

「え?…嘘、これ…私がおかしいのかな?」

 

 窓の外の景色は一面空、下を見ても一向に地面が見えない文字通り空しか無かった。

 窓は開きそうだったので鍵を開けてガラガラッと窓を開けた。

 

 コォォォォォォ!

 

「………ッ!!」

 

 窓を開けた瞬間強い風が部屋に流れ込む、真由は恐る恐る顔を窓の外に出した。

 見えたのはやはり空だけ、下を見ても地面など欠片も見えない。

 息を呑むほどの高さに真由は言葉を失った。

 次に恐る恐る半身を出して窓の外から部屋の外壁を見回すと、やはり外もコンクリート造りの様で上にも下にも右にも左にもこの部屋の外壁以外は何も無く、見た限りこの部屋の自体が空に浮いている様にしか見えなかった。

 真由は体の力が抜けてペタッと床に尻餅をつくと、そのまま床に仰向けにゴロンと倒れ込んだ。

 

「………どういう事?…本当にここは何処なの?」

 

「近くにあった廃工場の会議室だよ」

 

「えッ…?うわぁぁぁぁぁ!!?」

 

 いつの間にか真由の頭のそばに路地裏にで会った白衣の男が立っていた。

 人生最大級に驚いた真由は腰を抜かしながらも起き上がり、這う様に全力で男から距離をとった。

 

「すごい悲鳴だねそんなに驚いた?とりあえず危ないから窓閉めとくよ?」

 

 男はそういうとガラガラと窓を閉めて鍵をかけた。

 

「な、何なんですか貴方は!?ここは何処なんですか!?」

 

「だから近くの廃工場の会議室だって」

 

「これの?…何処が?」

 

 パチン!

 

 男は突然指を鳴らした、すると。

 

 ガシャン!

 

「…!?」

 

 突然自分の体が重たくなるのを感じた真由は自分の体を見ると。

 

「な…何これ!」

 

 気づいたら自分の手、そして足に太い鎖が巻き付いていた。

 手足をよじって暴れて見るも、完全に絡まった鎖はジャラジャラと音を立てるばかりで解ける気配すらない。

 

「重い…」

 

 さらに鎖はかなり重く、強引に逃げることも叶わなそうだった。

 

「何をするんですか!?解いでください!」

 

 パチン!

 

 真由は鎖を解くよう要求すると男はまたパチンと指を鳴らす。

 

 ガタッ

 

 すると男は手品のように1つスタッキングチェアを出現させた。

 男は椅子を引っ張ってくると真由の前でガタッと腰掛け足を組んだ。

 

「何をする気なんですか?……やめて!やめてください!…これ解いて!助けて!!」

 

 命の危険を感じた真由は命乞いをしながら暴れてた。

 しかし無情にも鎖は解けることはなく、それを見た男がニヤリと笑って口を開いた。

 

「さてと、では今から僕と「話」をしようか…」

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 数十分後、星名宅アパート

 

「よし…、ここまですれば動けないだろ」

 

 紘は浅見の部屋に居た半グレ3人を部屋にあった紐やガムテープを使って逃げられないようガチガチに縛り終わり立ち上がって見回すと、久瀬がアパートのキーボックスを漁っているのか見えた。

 

「星名の部屋の鍵は……これか」

 

 久瀬が一本の鍵を取り出して立ち上がると、壁を背もたれにパイプを吸って陶酔している浅見を静かに見下ろした。

 

「なぁ久瀬、これヤバい薬なんだろ?こんなモン吸わせて平気なのかよ」

 

「まぁ大丈夫じゃねぇだろうな、ここに来て一目顔を見た時からかなり重篤の薬物中毒だろうとは思っていた」

 

「だったら…」

 

「俺は医者じゃねぇ、むしろ下手に暴れられるくらいならヤクに酔って大人しくしてもらう方が都合がいい、それに…」

 

「………何だよ?」

 

「俺も初めて見る…おそらくゼパルが作ったであろう新型薬物、コイツを吸っだ奴がどうなるのか興味もあったしな…」

 

「久瀬……お前……!?」

 

 久瀬の言葉に紘は自分の血の気が引いていくのを感じた、するとその時。

 

「ん…!?」

 

「?」

 

 久瀬が何かに気づいた。

 

「紘、今の聞こえたか?」

 

「?、いやオレは何も…」

 

「………」

 

「何か…」

 

「静かに!」

 

「……!」

 

 久瀬は静かに外の音に意識を集中させた。

 

「……間違いないこの音、ヒメの銃だ!しかもかなり遠くから…アイツ一体何やってんだ!?」

 

「は!?ヒメならここの裏で真由とオレ達を待ってるんじゃないのか!?何かあったんじゃ…!」

 

「紘、ここはもう十分だ!警察と救急車を今すぐここに呼べ!すぐズラかるぞ!」

 

「わ、分かった…!」

 

 紘はスマホを取り出すとすぐさま電話をかけた。

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 警視庁特殊事件捜査一課

 

 その頃警視庁では、鈴宮が三栗屋の取り調べの調書を眺めながら考え事をしていた。

 そしてその最中、鈴宮は隣のデスクで作業している男に声をかける。


「なぁ犬原、お前ゼパルって聞いた事あるか?」


「え?なんすか急に」


 涼宮の隣にいた小太りの冴えない顔をした男は犬原三也いぬはらみつや、警視庁特殊事件捜査一課に所属する刑事で主にインターネット等の情報系に精通しておりサイバーテロ等の対策の他、今回のような誘拐事件なども電脳の目を駆使して一課をサポートとしている。


「三栗屋が凶匣会の襲撃犯がゼパルだと言っていた。これ組織かなんかか?」


「組織です。ゼパルの名前は裏界隈じゃ有名ですよ、構成員は国籍や人種を問わず結成された場所も時期も、その実態のほとんどが謎に包まれているまさに世界を股にかける超大規模犯罪集団、俺が知ってるのはこれくらいですかね」


「そんな海外のマフィア組織が関わっていたのに今まで一切そう捜査線上に浮上しなかった、こんな事あり得ると思うか?」


「ゼパルはプロで活動していた殺し屋やエージェントも何人も抱えているそうですからあり得なくもないかもしれません。タダでさえ大規模組織で且つあらゆる人種が在籍していて神出鬼没、その中には当然日本人もいるでしょう、地元の半グレと結託して身を隠しながら凶匣会と抗争していた。と現状だとこんなところでしょうか」


「なるほど、よく分かった」


 話を聞き終えた鈴宮はその場でため息を一つ吐くと、頬杖を突いて再び調書に目を通した。


「にしてもアイツ等、暫く見ないと思ったらまたどんな連中と喧嘩やってんだか…」


「心配なんですか?凶匣会が」


「冗談じゃ無い、何で警察がヤクザの心配しなきゃならないんだ!」


「そんなムキにならないで下さいよ、凶匣会の話になるといつもコレなんだから…」


「大体アイツ等のせいでこっちは大迷惑だ今度久瀬の面見かけたらしょっぴいてやる!」


「いや、幾らヤクザ相手でも無闇やたらしょっぴいてたら犯罪っすよ…」

 

 すると…。


 バタン!


「鈴宮さぁーーーーん!!!」



「「!?」」

 

 すると高橋が血相を変えすごい勢いで本部に飛び込んで来た。


「鈴宮さん大変です!烏下の住宅街で銃乱射事件が発生したと近隣住民から通報が!!」

 

「「「!!!?」」」

 

 鈴宮は勿論その場にいた捜索一課の警官達も息を飲んだ。

 

「おんやまぁ、大変だこりゃ…」

 

「高橋、詳しく話せ」

 

「発生は今から20分ほど前、場所は烏下からすのしたの住宅街で犯人と見られるのは先ず10代後半から20前半と見られる女性との事です」

 

「わーおピッチピチの女の子じゃん?タカちゃんくらいの女の子?」

 

「黙れ犬」

 

「高橋、犯人の特徴はわかるか?」

 

 鈴宮は2人の小競り合いを流しつつ話を戻す。

 

「あ、はい!髪は首元まで伸びていて髪色は茶赤のツートンカラーになっている様で口元と耳にピアスが見えたそうです。

 更にカラフルなパーカーにヘソ出し、ショートパンツに太もも上部ほどの丈のハイソックスとショートブーツ。さらに靴に大きな金属パーツがついていて動く度にカチャカチャ音がなっているとか…」

 

「うわすげぇ…銃持ってる奴見かけても普通凝視する事なんか無いだろうにここまで特徴出てくるなんてよっぽど派手だったんでしょうね〜」

 

「……」

 

 鈴宮は少しの沈黙の後、ぼそっとある人物の名前を呟いた。

 

三女市妃邏みめいちひめぐ……」

 

「……やっぱりそう思いますよね?」

 

 鈴宮が挙げた人物に関してはどうやら高橋も同じ事を考えていた様だ。

 

「凶匣会武闘派のあの若い娘か…見た目は可愛らしいんすけどね〜。裏じゃ何人も殺しまくってるなんて有名な噂です、死体も何も出てないんで我々としちゃ何とも言えんのですが」

 

「更に三女市と見られる女は拳銃と小脇に女子中高生と見られる少女を抱えていたとの情報もありました」

 

「少女…まさかとは思うけど谷崖真由じゃないすか?だとすれば呉島紘も凶匣会に……」

 

「まだそうと決まった訳じゃないが、よりによってこんな市民が暮らす住宅地でこんな白昼堂々と…アイツら一体誰と戦っているんだ?」

 

「それが実はもう1人…こちらはよく分かっていないのですが、日本語の文字がプリントしてあるTシャツと白衣を纏っていたと…」

 

「白衣?」

 

「全くイメージ出来ないけど…もしやマッドサイエンティストの方とか?」

 

「しかもこの男マシンガンやライフルと言った様々な武器を複数所持しているとの事ですそれと…」

 

 高橋はそう言うと少し言いづらそうに言葉を濁したが、再び話し始めた。

 

「負傷者に関してですが近隣住民に人的被害はない模様です、先ほどの白衣の男は三女市と見られる女に銃撃されて倒れたとの事なのですが、不可解な事がその…」

 

「不可解?なんだ?」

 

 歯切れが悪い高橋に鈴宮が結論を急がせた。

 

「それが…この撃たれて倒れたと言う男なのですが、全く別々の場所で倒れているとの事らしいんです」

 

「?…、つまり白衣の男は複数人いると言うことか?」

 

「端的にいえばそうなのですが、不可解なのは別々の場所から全く同じ容姿、服装の男性が倒れていると言う内容の救急通報が複数件入っていると言うことです」

 

「へー、つまり霞ちゃんが言いたいのは分身とかクローン人間とかそう言う類の話ってこと?」

 

「ええ、通報内容を聞く限りは……」

 

「…………」


 高橋の話を聞いた捜査一課は唖然とするも、この手の話を本気にするものは流石におらず、さまざまな憶測が飛び交った。

 

「通報段階で細かな特徴などいちい説明するとは考えにくい、おおまかな特徴が偶々一致したと考えるのが普通では?」

 

「同じ服装という事は同じ組織である可能性がある、まさかと思うがこれがそのゼパルなのでは?」

 

 そんな様な意見が飛び交う中鈴宮が立ち上がって椅子に掛かっていた上着を取り出した。

 

「細かい事は後だ」

 

 そして鈴宮は部下達に速やかに指示を飛ばした。

 

「犬原、お前はゼパルに関する情報を調べてくれ」

 

「分かりました、了解です」

 

「ひとまずこの件に関しては追って情報を待つしか無い、皆んな速やかに対応できる様準備してくれ」

 

「「はい!」」

 

 鈴宮の指示で各々の作業に取り掛かり始めた。

 

「高橋、お前は俺と現場に向かう。もう何人か頼めるか?」

 

「!!?」

 

 鈴宮の呼びかけに反応した犬原は机に戻り掛けていた体をシュッとひるがえしたかと思うと鈴宮達の元へ戻って来るなり。

 

「じゃあタカちゃん?俺も一緒に…」

 

 高橋は犬原がいい終わるより先に無言で見下した様な眼光とピンと立った中指を犬原に向けた。

 

「おい犬、ハウス……」

 

「犬原、お前にはゼパルを調べろつったろ?」

 

「………はい」

 

 鈴宮の追撃もあり、しょんぼりと机に戻っていく犬原の向こうから2人の刑事がすれ違った。

 

「パトロール中の警察官も現場へ急行しています。近くの警官はもう到着している頃かと」

 

「よし、では俺たちも行くぞ」

 

 鈴宮は高橋を含めた3人の刑事を連れて一課の事務所を出た。

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 星名自宅アパート。

 

 バタン!

 

 浅見の部屋の扉が勢いよく開き、撤退の準備を整えた久瀬と紘が部屋から出て来た。

 

「どうだ久瀬、2人には繋がりそうか?」

 

 紘はスマホで電話を掛けている久瀬に話しかける。

 

「いや全然出ねぇ、銃声が聞こえたからそう遠くには居ない筈だが…お前はどうだ?」

 

「オレの方もだ、ずっとコールかけてるが全然……ッあ!繋がった!!」

 

「!!?」

 

 紘の携帯が真由と電話が繋がった。

 

「真由?真由!?無事なのか!!?お前等一体どこで何してんだ!ヒメは!?」

 

(ひ、紘くん…そ、それが!)

 

「紘変わってくれ、状況は俺が聞く」

 

「え!?」

 

 紘は驚きつつスマホを久瀬に渡した。

 紘は仕方なく久瀬のやり取りを聞いている事にした。

 

「真由か?紘に頼んで変わってもらった。状況は俺が聞く、説明出来るか?…」

 

「……」

 

「あぁ、……攫われた!お前が!?」

 

「攫われた!!?」

 

 「…あぁ、それで?ヒメが直ぐに助けに来たのか?………ではヒメもそこにいるんだな?…‼︎おい今の銃声か!?」

 

「銃声!?」

 

「……撃たれてる!?今戦闘中って事だな?相手はゼパルか?………分からない?…白衣を着た魔法使い!?おいおいこんな時に冗談は…」

 

「魔法使い!?」

 

 久瀬の発言でしか会話の内容を読み取れない紘は向こうがどんな状況にあるのかさっぱり分からず混乱していると。

 

 カタッ……

 

「?」

 

 紘が上の階から僅か物音と人の気配を感じて、ふと階段の方を見た。

 すると階段の手すりに手がかかる、そこに現れたのは髪を後ろで結った上下黒い服を着た青年が現れた。

 

「……!!!?」

 

 男は階段の上から静かに2人を見下ろすと、ゆっくりと階段を降り始めた。

 

「久瀬…おい久瀬!」

 

「今度は何だ!ちょっと待て今…」

 

 「…久瀬、アイツ星名の知り合いかなんかか?」

 

 久瀬はそのまま紘に言われた方を見た。

 

「……真由、緊急事態だ。ヒメがそこにいるなら後で合流するから何とかして振り切れって伝えとけ、また連絡する」

 

 ピッ…

 

 階段を降りる男を見た久瀬は真由にそう伝えると急いで電話を切って紘に携帯を返した。

 

「電話はもういいのか?凶匣会」

 

 ゾクゾクッ‼︎

 

 こちらに歩きながら放たれた男の声をは肝が凍りつく様な悪寒を覚え、威圧感のある低い声から感じる覇気そして暗く冷たいオーラは近くにいるだけで押しつぶされそうになる。

 彼は浅見の部屋にいた半グレ達とは明らかに違う、間違いなく只者でないと言う事は紘の目にも明らかだった。

 

「ん?」

 

「…ッ!」

 

 男に気圧された紘は無意識に一歩、二歩と後ずさっていた。

 久瀬の目の前までやってきた男はアパートの出口を遮るように立ち止まった。

 しかし久瀬は一切動揺を見せる事なく男に声をかける。

 

「悪ぃな兄ちゃん、どこの誰だか知らないが俺達今取り込んでんだ、さっさとおいとましたいんでそこ退いて貰えねぇか?」

 

「あんた、凶匣会の久瀬だろ?…」

 

「あ?」

 

 すると男は久瀬の顔をまじまじと覗き込むとニヤリと白い歯を見せて笑った。

 

「俺は〈ゼパル〉のつかさってもんだ」

 

「……」

 

「…ッな!!?」 

 

 士と名乗った男は自らあっさりとゼパルと名乗ったのだ。

 少なくとも裏社会の人間であろう事は紘でも薄々気づいていたがこれには紘も思わず声が出た。

 お互い敵対している組織同士、普通は互いに自分の正体は隠しておく方が都合がいいのは当然。

 それをこの士という男は真正面から堂々と現れたばかりか名前と組織の名前まであっさり明かしたのだ。

 

(自分から正体バラすなんて一体何考えてんだコイツ!?)

 

「…それで?ゼパルさんとこの士君がわざわざ俺達の前に何の用かな?もうすぐここにサツが来る、今は大人しく帰った方がお互いの為…」

 

「お前随分ぬるい事抜かすんだな、天下の凶匣会が聞いて呆れるぜ」

 

「何だと?」

 

 士は煽り口調で久瀬を挑発し始め、更に語気を強めて捲し立てるように続けた。

 

「お前らは親分にこう言われてんだろ?「ゼパルのクソ共の面見たら殺せ」ってよ」

 

「…」

 

「日本の"ヤクザ"って奴らはプライドが命なんだってな?宿敵が目の前に現れたんだ。凶匣会のメンツに賭けてお前は俺を無視できねぇ、そうだろ?久瀬」

 

 士の挑発に紘は先程から感じていた悪い予感がいよいよ現実味を帯びて来た。

 

(久瀬が前に言ってた…こういうタイプは大体戦いたくて戦いたくて仕方ながないような戦闘狂、最低でも戦闘に自信のある筋金入りの武闘派なのは間違いない。今は時間も無いしヒメと真由の事も…とにかく今は急いでここから逃げないと、何か手は…?)

 

 一刻も早くここから離脱する糸口を探す紘だったが、その思考はすぐに無為になる。

 

「なるほどな…海外マフィアなのに日本人がやってきたと思って大人しくしてりゃ好き勝手言いやがる」

 

 久瀬の醸す空気が一気に変わる、久瀬は手に持っていた刀袋の紐をピッと解いた。

 

「この街に無法者の跨ぐ敷居はねぇ、凶匣会舐めたらどうなるか教えてやるよクソガキ‼︎」

 

 そう言うと久瀬は刀袋から刀の柄を出すと勢いよく刀身を引き抜いた。

 

「おいウソだろ!?まさかやる気なのか久瀬!!?」

 

 挑発に乗った久瀬が闘志を剥き出しにして刀を構えた。

 よりによって久瀬がこんな挑発に乗るとは考えもしなかった紘は驚きと動揺が思わず口に出てしまう。

 すると久瀬が小声で紘に小声で話しかける。

 

「紘、合図したらアパートの裏へ走れ!分かったか!?」

 

「へ!?」

 

「案外ノリがいいんだな久瀬、やる気になってくれ嬉しいぜ!」

 

「最期に感じる喜びだ、今からたっぷり殺してやるから存分に噛み締めとけよ士!」

 

 そう言うと士もコンバットナイフを抜いて応戦の構えに出た。

 

「待ってくれ久瀬!!裏って何するんだ!?そんな急に…」

 

「いくぞ!!」

 

「え!?ちょ…!!!」

 

 紘が言い終わるより先に久瀬が士に向かって走り出した。

 こうなってはどうしようもないと直感で悟った紘は久瀬の指示通りアパート裏へ猛ダッシュで駆け出した。

 

「ウラァ!!死に晒せェ!!」

 

 久瀬は大げさに声を張り上げて勢いよく士を袈裟に斬り込んだ。

 

「当たるか!」

 

 しかし一撃は虚しく空を切る。


「ウラァァァァァァ!!!イャァァァァァ!!!ドリャァアアアア!!!!」

 

 雄叫びを上げながら続け様に振り回すも威勢だけが空回って士には擦りもしない。

 

「ウリヤァァァァァァ!!!セリャァアアアア!!!!」

 

 「何だそりゃ?大層なもん持ってる割に威勢だけか?」

 

「そう見えるか!?なら次はよく見とけよ!?」

 

 久瀬は勢いよく助走を付けて飛び上がり、刀を大きく振りかぶって斬りかかった次の瞬間。

  

 ピカッ!!

 

「!!?」

 

 刀を握った左手に隠し持っていたペンライトの光を士の眼球目掛けて照射した。

 

「ウッ!?」

 

「………」

 

 久瀬の不意打ちでまともに光を浴びた士の視界は一瞬にして真っ白になった。

 久瀬はそのまま真向斬り…と思いきや敢えてここでは斬りかからず、一瞬タイミングをずらした上で瞬時に下段の構えに切り替え、上を向かせてガラ空きになった脇腹目掛けて最速の横薙を繰り出した。

 先程の威勢任せの大振りからの静かに冷静に殺気すら消した最速の切り返し、緩急を駆使した完璧な不意打ちに思えた。

 

「甘ェ!この辺だろ!!」

 

 ガキンッ!!!

 

 しかし士は目を瞑ったまま直感だけで刀の軌道を読み切り、士の脇腹に刃が当たる瞬間ナイフを入れて刀を受け止めた。

 

「チッ…」

 

 ガッ!

 

「!!?」

 

 士は瞬時に刀の刀身を掴んで素早くナイフを外し逆袈裟に斬った。

 

「ウラァ!!」

 

 シュッ!!! ザッ!

 

「くッ…!」

 

 久瀬はナイフを身を引いて躱そうとするも、刀身を握られた事で躱し切れず右腕の前腕を切りつけられた。

 

「ッ!!」

 

 痛みを堪えながら久瀬は瞬時に、ナイフを躱そうと仰け反った体制になったのを利用して士に握られた刀身を思い切り引き抜いた。

 

 ザクッ!!!

 

「痛ッ!!」

 

 士はすぐに手を離したものの刀の刃を素手で握った手のひらはザックリと切れて血が溢れ出していた。

 同時に目が開き士の視界が戻った。

 

「!」

 

 すると久瀬はすかさず左手に持っていたペンライトをポケットの中に仕舞った。

 

「今のを防がれたか…、俺に堂々と喧嘩を売りに来るだけはある」

 

「雑魚のフリなんて小賢しいマネまでしたのに残念だったな、アンタがそれなりの"使い手"だってのは見りゃすぐ分かる。そう言う奴ほどあの状況でそいつが何をしてくるかも大体検討が付くのさ。刀を下手に振るのも技術が要る、覚えとくんだな」

 

「ハッ、ライトを見抜けなかった奴が抜かすな」

 

 と、返された士は傷を追った左手のちらを見た。

 傷からの出血で左手は血糊で真っ赤に染まりズキズキと鈍い痛みが走る。

 士は久瀬の言葉に納得したかの様にフッとうすら笑うと、拳をぎゅっと絞る様に握った。


「確かにそうだな…だがこれで大体分かった。次は読む、来い!」

 

「流石にこの程度じゃ引いてくれねぇか…」  

 

 久瀬はペンライトをしまったポケットに上から手を添えた。

 

(頼むぞ…)

 

 久瀬は緊張感と共に心の奥底の呟きかけた言葉を飲み込んだ。

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 一方、久瀬の合図でアパート裏に駆け込んだ紘はそこのアパートのコンクリートの囲いの前で立ち止まった。

 コンクリート塀は高さ2メートルはあるが頑張れば乗り越えられなくは無い。

 紘は塀に手をついて考え込んだ。

 

「クソッ…久瀬め、一体ここからどうしろってんだ!」

 

 このまま真っ直ぐ進んでも結局アパートを一周して元の場所に戻ってしまう、何かアクションを起こすならここしか無い。

 久瀬の意図は分からないが紘がその場にいたら足手纏いになってしまう相手だというのは間違い無い。

 

「久瀬が簡単に負けるとは思えないけどオレを先に離脱させたのはまさかオレに「単独で真由達を助けに行け」って意味じゃ無いだろうな…」

 

 凶匣会のメンバーと行動を共にしている紘はヒメの"強さ"はよく知っている。

 

(白衣…か…)

 

 そんなヒメを手こずらせているであろう「魔法使い」とやらを相手に紘が応援に行った所でどうにかなるもので無いのは明白だったが、紘の判断は早かった。

 

「どの道2人の元へは行かなきゃならない、久瀬が何考えてるか知らないが迷ってる時間はない!」

 

 こっちは久瀬に任せて自分は先に行くしか無いと判断し、塀の上に手を掛けどうにかよじ登り塀を跨いで反対側に飛び降りた。

 このアパートのある一帯は勾配がある為、降りる方が登る方よりは高さが数メートルほど高い。

 しかし紘はそれを分かっていた為、上手に受け身を取って難なく着地した。

 アパートで別れた後、真由と三女市の2人が向かった場所がおそらくここだ。

 とりあえずここから2人の足取りを追って……、

 

「!?」

 

 そう思った矢先、紘の行手に人影が立っていた。

 

「…!」

 

 紘に気付いた少女もゆっくりとこちらを振り返る。

 

「!」

 

「……お前、まさか!?」

 

 紘は少女が誰なのか直ぐに分かった。

 

「記更……なのか?」

 

「紘兄!?どうしてこんな所に…?」

 

 紘の目の前に居た少女はゼパルに拉致された筈の小見川記更だった。

 服はボロボロ、頬はこけて髪はかなり短くなり無理矢理切られたのか毛先からかなり傷んでボサボサになっており袖や裾から覗く肌には薄っすら痣も見えた。

 

「…随分辛い目に遭った見たいだな、髪の毛も…とにかく無事で良かった」

 

「…紘兄こそどうしたの?全然…似合って無いよ…?その金髪…」

 

 記更は言葉を詰まらせながら言葉を返した。

 

「お前、…泣いているのか!?」

 

 紘の目に映ったのは目から大粒の涙を溢す記更の顔だった。

 記更は溢れる涙を拭いもせず穏やかな微笑みと共にこの涙を見せつける様に真っ直ぐ紘の目を見つめていた。

 

「そうか……乗り越えられたのか、お前は」

 

「紘兄、私ね…?」

 

「記更すまない!」

 

「!」

 

 記更は紘に何か伝えたい事があったようだが紘はあえてそれを切った。

 

「積もる話もあるんだろうがその前に、お前に聞いておかなきゃならない事がある」

 

「……」

 

「ゼパルに手を貸しているって言うのは本当なのか?」

  

 記更の目線が下に落ちる、あまり聞かれたくない質問の様だったが聞かれることは承知の上だった様な反応だった。

 記更は顔を俯かせると哀愁を纏った微笑みと一つのため息と共に記更は言いづらそうに言葉を返す。

 

「誰から聞いたの?そんな事」

 

「答えられないか?」

 

「ごめんね、出来れば…この話はしたくないんだよ。特に紘兄には…」

 

「!、………」

 

 記更の表情がまた暗い顔をする。

 紘はそんな彼女の顔をまるで別人を見る様な目で見つめた。

 

「お願い紘兄、これだけは…」

 

「………」

 

 しばしの沈黙の後、紘は話題を変えて優しく寄り添う様な口調で話し始めた。

 

「…本当にやっと…「人間」になれたみたいだな記更」

 

「!?」

 

「お前が…「先」だったのは悔しいが、お前の勝ちだ記更、だから約束通りその願いを聞くよ」

 

「……!」

 

 紘の言葉を聞いた記更はほんの少し表情が柔らかくなった。

 そして今度は少し不満そうにぷくっ頬を膨らませ。

 

「……そういうところがずるいんだよ紘兄」

 

 記更が軽口を叩くと、紘がゆっくりと語り始めた。

 

「「誰から聞いたか?」だったな?そいつは自分を……「神」と、そう名乗ったんだ」

 

「…!」

 

 紘は先ほどの記更の質問にこう答えた。それを聞いた記更は一瞬ハッとするが、少し考えて合点がいったのか真面目な表情で紘に向き直る。

 

「頭おかしいって思うだろうが、そいつは…」

 

「そいつは白衣を着たダサいシャツと黒眼鏡でやたら胡散臭い男の人でしょ?」

 

「知ってるのか!?」

 

「私も良くは知らないけど、たびたび現れては紙撒き散らしながら意味わからない話をして来るおかしな人なんだよ」

 

「そうか。…しかし改めてまさかお前の口から人の悪口を聞く日が来るなんてな」

 

「それともう一つ、私その人とついさっきも会ったんだよ」

 

「何!!?」

 

 驚愕する紘を見ながら、記更は後ろ手を組むと、落ちていた小石をポンと壁の方に蹴飛ばした。

 

「そこには凶匣会の女の人と真由ちゃんも居てね、真由ちゃんはそいつに連れ去られちゃったんだよ」

 

「連れ去られた!?マズイ!今すぐ助けにいかないと!記更そいつは何処に行った!!?」

 

「ごめんなさい、正確には分からないんだよ。突然紙吹雪と共に消えたから…でも大丈夫、凶匣会の女の人が…」

 

 

 

 ドサッ!!!

 

「痛ッ!!?」

 

 すると突然誰かがアパートの塀を乗り越えて降りてきた。

 

「くッ、久瀬!!?」

 

 降りてきたのは士を撒いて来た久瀬だった。

 久瀬は紘の顔を見るなり怒鳴りつける。

 

「紘…!?、テメェ何こんな所で油売ってやがる!ヒメ達は…どうした?!」

 

「久瀬、記更だ!記更が生きてたんだ!」

 

「は…?」

 

 久瀬は紘の奥にいる記更に目をやった。

 

「記更は真由を連れ去った奴を知ってる見たいだ、けど突然消えて行方が分からないって…」

 

 すると久瀬は紘の胸ぐらを掴んだ。

 

「ふざけんなよ…テメェ…、なんで俺が…ハァ、ハァ、苦労して時間を…稼いで…」

 

「久瀬…?どうした、大丈夫か!?」

 

 そう言いつつ胸ぐらを掴む拳に力は無く、息も絶え絶えになっていた久瀬に紘が彼の体を支えながら心配の言葉をかける。

 久瀬のよく見ると顔は真っ青になっており、体の力もどんどん入らなくなってきている、そして次の瞬間ついに地面に膝をついてしまった。

 

「クッ……」

 

「おい久瀬!?しっかりしろ!!」

 

 すると記更はある事に気づく。

 

「この匂い…」

 

 微かに漂う不快な甘い匂い、記更は即座に久瀬が乗り越えてきた塀の方を見た。

 するとアパートの方から微かに桃色がかった煙が上がっているのが見えた。

 

「あれは…もしかしてピースの塊に火をつけたの?」

 

「ピース?…あぁ浅見さんの部屋にあった樹脂の塊みたいなやつか!?」

 

「あれはゼパルの"ある派閥"が開発したアヘンを元にした新型の違法薬物。効果は基本的に依存と幻覚、加えてより強く、より少量で、より長く効果が持続する様に改良されている。と言ってもあれはまだ試作品だけどね」

 

「より少量で強く改良…?って事はあの煙の量は…!?」

 

「普通は煙管の小さな皿に削った粉を少量入れて下から炙って出た煙を吸うんだけど、あの煙は一呼吸だけでも致死量致死量相当だと思う」

 

「嘘だろ…」

 

 謎の魔法使い出現、真由の誘拐、三女市の離脱、加えて久瀬まで活動不能に陥ってしまった。

 怒涛の出来事の連続で紘の頭がパニック状態だった。

 

(警察と救急車がもうすぐ来る…、けどそんなことしたらこの抗争は…!?久瀬はまだこの戦いに必要だ、けど救急車で病院に連れてったらその後警察が来て逮捕されるのはほぼ確実……落ち着け、考えろ……!!)

 

 しかし落ち着いて考えようとすればするほど気持ちは焦り、余計に考えが纏まらない。

 しかしそんな紘を他所にもう1人紘の背後からやってくる人物がいた。

 

「ハァ…ハァ…」

 

「!!?」

 

 ドタドタと騒がしい足音を立てながらやって来たのは士だった。

 

「ハァ……いや〜死ぬかと思ったマジで…!」

 

 士は煙で久瀬を直接追えず、一回表から出て走って路地を回って追いついて来た様だ。

 

 

「士…!」

 

「よぉ、さっきは挨拶も無しに悪かったなぁ。さっきはよく確認しなかったがお前が呉島紘…で合ってるよな?」

 

「……は?」

 

 士は初めて会った時とは違って今度は友好的な態度で紘に話しかける。

 パニック状態だった事もあり紘は言葉が出なかったが、後ろにいる記更が代わりに答えた。

 

「そうだよ、士が紘兄をここに来るよう誘導したの?」

 

「あぁ、誤算はあったが思ったより上手く行った。ゆっくり話せたか?」

 

「話せないよ!士も命を狙われる身でなんて無茶を!」

 

「お前はコイツともう一度会って話し合うべきだと思ったからだ、どんな話でもいい。家族に会えるのはこれが最期になるかも知れないんだ、お前のやろうとしてる事は…」

 

「最期だと…!?」

 

「うわああああああああ!!!!!あああぁぁぁ!ああああああああ!!」

 

「!!?」

 

 すると突然久瀬が頭を抱えて発狂し始めた。

 

「久瀬!?落ち着け!どうしたんだ!?」

 

 紘はなんとか久瀬を介抱しようとするが、そこに士が近づいてきて久瀬の様子を見るなりこう言った。

 

「幻覚症状だな、重度の中毒症状に陥った奴はみんな悪夢にうなされながら脳を溶かされて死んでいく」

 

「た、助けるにはどうしたらいい!?」

 

「さぁな。コイツを作った奴の目的も分からないし、治療薬も存在しない。ただ久瀬は煙を吸った時、その場に倒れずここまで来れたという事はかなり高い耐性は持ってるのかもしれない。とは言えこの有様じゃ運良く死ななかったとしても今後人間らしい生き方は出来ないだろうがな」

 

 すると後ろで聞いていた記更が険しい表情を浮かべながら士に問いかける

 

「士、確かにあなたにとって凶匣会は敵かもしれない、だけど不必要な戦いを挑んだ挙句ピースの塊に火をつけるなんて一体何考えてるの!?ここに住んでる人達に何かあったら…!!」

 

「俺じゃねぇよ。そこにいる久瀬が自分で着けたんだ、着火の瞬間さえ俺に悟らせずにな。だがピースは毒ガスじゃねぇ、毒の粒子は重くて気流に乗りずらいし幸この付近に住んでる人間も居ないらしい。もうすぐ警察が来るならすぐに規制線も張られる筈だ」

 

 すると士は片膝を着いて介抱で座り込んでいる紘と目線を合わせると。

 

「すまなかったな」

 

 と、真っ直ぐ紘の目を見ながら言った。

 

「………え?」

 

 紘は呆然とは士の目の真っ直ぐな目を見返すしか無かった。

 士は再び立ち上がると、2人の横を素通りして記更の方へ歩いて行く。

 

「記更、もう行こう。ここは危ねぇ」

 

「士、その…」

 

「この2人か…、確かに俺達の今後を考えたらコイツは消しといたほうが良いとも思ったが。凶匣会は既にゼパル本体に本部を襲撃され大勢の組員が死んでいる。今更コイツ等の生き死にで凶匣会の大義名分は無くなりはしない」

 

「そう…良かった」

 

 記更がそう言うと士は記更の横を抜けて先を歩いて行った。

 

「紘兄…」

 

「…!?」

 

「私達、まだゆっくりお話出来なかったけど、全部終わらせたら絶対……会いに行くから…」

 

 記更はそう言い残すと紘に背中を向け、士の背中を追って歩いて行く。

 

「………」

 

 何も出来なかった…。

 海覇達と別れたあの時、久瀬に向かって啖呵切った癖に、結局何も出来ないまま真由達は消え、久瀬も倒れた。

 

(クソッ…‼︎なんで、なんでオレは…決意固めた気になって…ここまで我儘通した挙句、このザマかよ…!)

 

「ウッ、ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!ッヴヴゥ…」

 

(久瀬…、オレは…)

 

 紘は依然として泡を吹きながら幻覚にうなされる久瀬の胸にふと手を置いた。

 

 カチャリ…

 

「…!」

 

 その時、久瀬の懐に何か固い物が入っている事に気がついた。

 紘には直ぐに分かった、これは拳銃だ。

 

(俺たちの前で命賭けると言ったからには久瀬達もお前を一々守ってはくれねぇ、鉄火場に一歩でも踏み入ったら頼れるのは己の腕っぷしだけだ。そこだけは覚えとけよ?)

 

「あぁ、分かってるよ……」

 

 紘は久瀬の懐に手を入れ、一丁の拳銃を取り出した。

 カチャリとスライドを引き、弾丸が薬室に入っている事を確かめた。

 

(士程の奴だ、仕留められればゼパル側の戦力は大幅に減衰する筈…)

 

 カチャ

 

 そのままスライドを静かに戻し、安全装置をカチャっと解除する。

 

(記更がまだ生きていて、今まだ目の前に居る。今ここで士さえ仕留めれられればもう人質の心配はもう無い‼︎)

 

 ドクン!ドクン!

 

 極限の緊張の中、心臓の鼓動が高鳴る。

 

(出来るはずだ、オレなら!もう、死ぬ事なんか恐れないって決めたんだ。殺れる!この一瞬で全て!!!)

 

 ドクン!ドクン!ドクンドクン!ドクン!

 

 バッ!!!

 

 紘は極限まで気配を消し音も立ず最速で振り返り、一瞬で士に照準を…。

 

 ガキィン!!!

 

 ガチャッ、チャ…

 

 カラランッ…

 

 

 

 

 

「!!?」

 

 一瞬だった、紘が振り返った頃には既に何かが紘の手元に向かって飛んで来て、手元に当たり、銃が弾き飛ばされた。

 

「…な!?」

 

「…………」

 

 一瞬、何が起きたから理解出来なかった。

 紘が横目で銃がとんで行った方を見ると銃と一緒に小さなペティナイフのような物が落ちていた、どうやら投げられたのはこれのようだ。

 そしてこれを投げたのは士だった、士は30メートルほど先からナイフを投げて来た様だ。

 あり得なかった、銃弾より遥かに遅いナイフを当てるには銃の発砲よりも先に投げるしか無い、それこそ紘が振り返る為の予備動作よりも前から。

 銃があったのがバレていたとしても紘が振り返るタイミングまで予測した上でナイフを命中させるのは正に神業だった。

 

 ガチャ…

 

 今度は士が銃を抜いた。

 

「士!」

 

「記更、これで分かっただろう!コイツはもはや人を殺す事になんの躊躇いも無い。お前が知っている「呉島紘」はもう居ないんだ」

 

「……………」

 

 記更は無言のまま哀れみの目を紘に向けたまま立ち尽くしていた。

 

(しくじった…クソッ!)

 

「士!待っ…!!」

 

「じゃあな紘、お前に恨みは無いが悪く思わないでくれ…」

  

 パァーーーーーーン!!!!!

 

 

 

 路地裏に、一発の銃声がこだました。

?「みなさんこんにちは〇〇です!」


z「あれ今日そっちから挨拶すんの?こんにちはzろuです」


?「〇〇!〇〇ー!!〇〇ーーー!!!」


z「やめときなよ、あなたの名前はまだ出せないからモザイクが…」


?「〇〇〇!!〇〇〇ーー!!!〇〇〇!!!!」


z「こらこら、どさくさに紛れて変な事言わない!それ禁句のやつだから!センシティブのやつだから!モザイク越しでもあんまり言ったら…」


?「S〇〇ーーー!!!!」


z「あーーーー!!!!オイコラァ!!!」


? 「冗談はこれくらいにして、今回でやっとあらすじ詐欺終了ですね。何か謝罪コメントあります?」


z「まぁ僕は書きたいものを書いてるだけなんで特に謝罪する事は無いっすね」


?「急に開き直んな、初回の丸腰キャラはどこ行った?」


z「どーせこんなその場のテンションでやってるだけのエンディングトークなんかキャラブレしてるくらいが丁度いいんだよ」


?「もうめちゃくちゃじゃないですか、続くんですか?エンディングトークこんなんで」


z「知らね、飽きたらやらなくなるかも知んないし、まぁ本編続けてればなんとかるっしょ」


?「そんな無責任な…」


z「無理してちゃんとしたトーク考えるよりいつ終わってもいいやくらいの軽い気持ちでやる位がむしろ自分らしい気がするし気楽でいいや。だから〇〇ももっと自分出して行けばいいと思うよ!」


?「いや私は自分どころか名前すら出してもらえていないのですが…」


z「と言うわけで今回はここまで」


?「終わるんだ、適当すぎだろ」


z.?「それではまた次回のお話でお会い致しましょう!さよなら〜!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ