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Mobius  作者: zろu
序←異戦現英縁剣魔神廻
1/6

ディザスターボックス

初めまして!zuと申します! この度小説家になろうさんの方で初作品を投稿させていただこうと思います。 投稿はマイペースに自分の描きたいものを書いていこうと思っております! 暇な人は読んでいただけたら嬉しいです。



 ここはおとぎ話の世界、ある王国に魔王がやって来ました。


 魔王はお姫様を拐い、幾多の国民や兵士達の命を奪って、国は滅亡の危機に立たされました。

 しかしこの国の王子様が剣を取り、生き残った民たちや兵士たち、妖精たちと力を合わせて魔王を討ち取りました。

 

 こうしてこの国にはまた平和が訪れたのでした。

 

 めでたしめ






 

 ドーーーーーーーーーーン!!!!



「キャーーーー!!!」

 

「おい早く退け!動けねぇだろ!!」

 

「押すな!押すんじゃねぇよ!!」

 

「うわ〜ん!おかーさーん!」

 

 轟音と共に逃げ惑う国民達と悲鳴、兵士達が必死に彼らをを避難させようと右往左往している。

 

「こっちです、落ち着いて歩いて下さい!大丈夫です!」


「大丈夫、お兄さんと一緒にお母さんの所へ行こうね」

 

 兵士達が必死に誘導しているが彼らの不安を簡単に抑えることは出来ず、国民達も兵士達も正にパニック状態だ。

 

「まったく何がどうなっているんだ?一体誰がこんな事を?これだけの騒ぎになってるのになぜ敵の姿が見えない?」


「捜索隊が必死に捜索していますが未だ姿すら見付からないとの事です。隊長、こちらからも敵の捜索に加わる兵を出すべきでは?」


「…いや、敵の正体もわからぬまま迂闊にここを手薄に出来ん。まだ混乱しているが国民の避難は着々と進んでいる。今はまだ住民の避難を優先せよ!」


「ハッ!」

 

 すると、国の関所の方からの伝令兵が走って来た。

 

「隊長、大変です!!」

 

「…………!!?」

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 同時刻、王城 一室

 

 この部屋の窓からは城下にある街の風景がよくみえる。

 

 国の出入り口の門はここからかなり遠いところにあるが、そこで火の手が上がり空高くまで伸びている黒煙がここからでも見える。


 しかしお姫様には両手を結んで祈ることしか出来なかった。


「姫様、どうか避難を!」

 

 身長100センチ位の小さな女性の妖精が背中の羽をパタパタと羽ばたかせながらお姫様に必死に訴えかける。


「いいえアンドロメダ、私はこの国の姫として民を置いて逃げる訳には参りません」


「し、しかし…」

 

 気持ちは有難いが国家の一大事にこの場を動こうとしないお姫様にアンドロメダだけでなく家臣達まで困り果てていた。

 するとそこに騎士4人を引き連れた王子様が現れた。

 

「姫、攻撃されている街には俺達が参ります、どうか避難を」

 

「私もこの国の姫、戦う力はありませんがせめて国の…民の安全を最後まで祈らせて下さい!私も何か力になりたのです!」

 

「貴女の身に何かあってはそれこそ民に顔向け出来ません。それにこの城にも逃げて来た民達が居ます。国民全員とは行きませんが、せめて今居る者達にだけでも元気な顔を見せてあげて下さい」

 

 この言葉を聞いたそばに居たお姫様は妖精や家臣達の顔を見回し、その心配そうな顔を見てハッとしたお姫様は申し訳なさそうに俯いた。

 

「…分かりました、皆さんどうかお気をつけて」

 

 すると突然、息を切らした伝令の兵士が部屋に滑り込んで来た。

 

「ほ、報告します!先程我が国を襲撃したと思われる正体不明の男を王城付近の街中で発見!兵士達を次々倒して此方へ真っ直ぐ向かっているとの事です」

 

「もうそこまで来たか、数は?」

 

「現状敵は1人しか確認出来ておりません」

 

「1人?兵と国民への被害は?」

 

「現時点で兵士、国民共に死傷者は0名との事です!」

 

「死傷者0!?兵士は次々倒されているのではないのか?」

 

 状況を一切飲み込めない家臣達がどよめく中、王子が冷静口を開いた。

 

「状況は分からんがやるべき事は分かった。アンドロメダ、姫の事をよろしく頼む」

 

「わ、分かりました。お任せを王子」

 

「俺たちも街へ向かう、案内を頼む」

 

「ハッ!」

 

「王子様、お気をつけて、必ず無事に帰って来てくださいね」

 

「はい姫、必ず」

 

 お姫様達と別れて、兵士を連れ部屋を後にした王子様はふと天井を見上げた。

 

「行くぞアレス、魔王以来の強敵の予感だ、鈍ってないだろうな?」

 

 王子様が声を掛けた先にはアンドロメダと同じ小柄で背中小さな羽が生えている妖精がシャンデリアの上で寝転がって王子様達を見下げていた。

 

「俺様を誰だと思ってやがる、戦いの神アレス様だぞ!どこの馬の骨とも知らねぇ敵1人に遅れを取るかよ!」


 アンドロメダとは違い、今度は荒っぽい性格の男の妖精だ。

 

「よし!行くぞ!!」

 

 妖精は威勢よく王子様の背中に飛び乗ると、王子様と騎士達は戦場に向かって行った。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 王都 商店街



 

「アイツか、報告にあった男は?」


 伝令の報告を受けた隊長率いる兵達は急いで"例の男"が出現したと言う場所へ向かった。

 現場は避難して来た国民でごった返していたが、彼らに混じっている1人の男が兵士たちの目に留った。

 男は身長で細身、黒髪で耳や目元が隠れそうになるほど伸びている。

 白衣を着て更に黒地に白文字で「開封の儀」と書かれたTシャツというこの世界ではかなり目立つ服装をしていた。

 

「見たこともない格好をしているな、お陰で民衆の中でもよく目立つ」

 

「国民達に紛れて城に侵入でもしようとしてたんですかね?でも探す手間が省けてよかったです、しかしどうやって関所を抜けて国民達に紛れられたんだ?」

 

「なんでもいい、我々の任務はあの男の確保だ、お前達は周囲の警戒を怠るな」

 

 隊長がそう言うと剣を抜いた。

 

「おい!そこの白衣の男!止まれ!」

 

 隊長の声に男はこちらに気づいた、すると男は胸ポケットの万年筆を取り出すとキャップを外し、そのまま歩みを止めることなく歩いてくる

 

「止まれ!止まらんか!!」

 

 兵士の1人が男を取り押さえる為に近づいた、すると…

 

 ザクッ

 

 男が持っていた万年筆を兵士の腹部に突き刺した、万年筆は兵士の甲冑を貫通して黒い液体がポタポタと溢れている。

 

「うっ…グッ…」


 ガッ!!! ガッ!!!

 

 男は一瞬の躊躇いもなく万年筆を引き抜くと兵士の顔面を鷲掴みにして首、そしてこめかみを容赦なく突き刺す。

 夜闇の中、真っ黒な液体が飛沫を上げて飛び散り、兵士は倒れた。

 その光景を目の当たりにした国民達は瞬く間にパニックに陥り、悲鳴と共に一箇所に固まっていた人々が一気に散り散りに逃げ惑い出した。


「まずい!統制が!?」

 

「コイツ!?なんて事を!!」


「鎧が!?何だあの武器は!!?」

 

 男を止める為兵士達が次々と男に切り掛かる、しかし男は兵士の振り抜いた剣を半身でかわすと小手に万年筆を突き刺し、グリンと捻ると兵士はたまらず剣から手を離した。

 手のひらから貫通した万年筆をそのまま兵士の胸に複数回突き刺し、そのまま最後は首を切り裂いて倒した。

 次の兵士は大きく縦に大きく振り抜いた剣を筆の主軸で受け止め、膝を蹴って膝を突かせ、手首の関節を決めて剣を落とさせ一瞬の隙をついて下顎から万年筆を一気に突き刺して倒した。

 その次の兵士は果敢に剣を振るっていたが、隙をついて懐に入って脇の下を万年筆で一突。

 剣を落としたところに大外刈りで地面に叩きつけるとトドメに筆先で兵士の喉を掻っ切った。

 

「マズイ、このままでは…」


 次々と倒されて行く兵士達を見た隊長は近くにいた伝令の兵士を捕まえた。


「城内の兵に正門を閉めろと伝えろ、まだ避難していない市民達は裏門まで迂回させる、急いで兵の増援を城に向かわせろ!恐らく我々では止められん…」

 

「!!」

 

「…それと、"魔法使い様"達にも急いで連絡を頼む。もう動いていらっしゃると思うが…」

 

「わ、分かりました!」

 

 伝令を聞いた兵士は一目散に城内へと走り出したのを確認した隊長は今いる兵士達に向けて命令を下した

 

「この男をなんとしても城内に入れるな、せめて妖精使い様達が来るまで何としてもここで食い止める!!!」

 

「「「オーーーーーーーッ!!!」」」

 

 兵士達は怯むことなく男に切り掛かって行った。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 地下、隠し部屋


 身を隠す為に用意された隠し部屋にて、部屋の奥に用意された玉座に座っている国王様は、数名の護衛兵に囲まれながら外からの状況報告を静かに待っていた。


「チャドリック、外の様子はどうだ?」


「はい国王陛下、先程の報告によりますと王城直下のが街から襲撃犯とおぼしか男を1人確認、速やかに排除にかかるとの事です」


「もう中央にまで侵入されたのか!?しかもこれほどの短時間でたった1人でだと?」


「はい、国の兵を総動員して捜索しましたが1人しか見つからなかったとの事です」


「大丈夫であろうか…」


「心配には及びません、ここは侵入者を寄せ付けない地下迷宮となっております。行き止まりや即死トラップも多数存在しています。安全なルートはわたくしとここにいる護衛兵数名しか知りません。ここに侵入者がたどり着くことは絶対に…」


「いや、余が案じているのは自分の安全なことではない。兵士も民も王子や姫でさえも国のために戦っておる。それなのに余だけ安全な所に隠れているのは民達に示しがつかぬのではないのか?」


「我々や民草への気遣い誠に痛み入ります。しかしながら国王陛下、陛下はこの国の象徴そのものなのです。陛下の御身に何かあればそれこそ我が国に大混乱が起こるでしょう」


「これも…王の勤めだと言うのか…」


「はい、ですからお辛いでしょうが今しばらくのご辛抱を」


 すると外からの偵察の兵が状況報告にやってきた。


「失礼致します!」 


「ご苦労、早速だが聞かせてくれ」


「報告致します!現在襲撃犯と思われる男を排除する為我が国の兵士を総動員しています。しかし敵は王城の眼前にまで進行、未知の能力に討伐は困難を極めています!」


「もう城の近くまでやってきたか…」


「妖精使い達はどうした?動いておらぬのか?」


「妖精使い様達は国民達の避難に尽力しておられましたが敵発見の報告を受けてホメロス班が応援に駆けつけて下さりました。王城にて敵を迎え撃つとの事です」


「うーむ…」


「それと、王子様ですが」


「!」


「先ほどアレスと直轄の騎士達を連れて襲撃犯の討伐に向かわれたとの事です。姫様の方も国民達が避難している城の地下広間に向かわれました。お陰で混乱していた国民達も落ち着きを取り戻した様です」


 報告を聞いた国王様は力が抜けた様にカクリとうつむくと頭を抱えて呟いた。


「あの時と同じか…かつて魔王が現れたあの時と」


「陛下?」


 チャドリックが声をかけると国王様は横目からチャドリックを見ると、遠い目でチャドリックの目を見ながら続ける。


「あの時も姫が攫われたと言うのに余はここに籠ったまま王子に全てを任せるしかできなかった。」


「……」


「結果あやつは魔王を倒し、若くして国を救った英雄としてある意味大きな重荷を背負わせてしまった。せめて余にもっと力があればあやつの重荷も少しは背負ってやれたろうに…」


「恐れながら国王陛下、それは違います」


「!」


「王子が姫が国民達が今日まで戦って来れたのは国王陛下、貴方のお陰なのです。陛下が如何なる時もこの国の未来を案じ続けてくださるからこそ、その背中を見て来た王子は立ち上がり、折れる事なく魔王討伐を成し遂げた。そしてその姿を見て国民達もまた立ち上がり思いは繋がって行くのです。決して無駄ではありません、国王陛下の存在こそ我が国の希望なのです!」


「チャドリック…」


 チャドリックの言葉に王様は俯いていた頭を上げて正面の兵士に告げた。


「総員並びに王子と妖精使い達にも伝えよ。民あってこその国である、この王城が決戦の舞台になるならば城などどうなっても構わなぬ。この国にあるあらゆる手段を用いて全身全霊を持って敵を排除し、民達を守れ」


「国王陛下…!」


 王様の力強い言葉に兵士は思わず下げていた頭を上げた。


「行け、これを至急皆に伝えよ。余にはもうこれくらいのことしか出来ぬ」


「うっ……くっ…」


 報告の兵士は国王様の寛大な言葉に心を打たれ嗚咽の声を漏らした。


「泣くな、戦いはまだ終わっておらぬ。早く皆に伝えるが良い」



 すると…………。




「申し訳ありません…………国王陛下…」


 ガチャ…


 すると突然報告の兵士が何かを取り出して国王様に向けられた。


(!!?)


 取り出されたのは現代の武器である拳銃だった。

 当然ここにいる全員はこんなものは見た事も聞いた事も無かった為反応が遅れてしまったが、チャドリックだけはいち早く危険に気づいて衛兵に指示を飛ばす


「衛兵!!国王陛下を守れ!!!!」


「申し訳……ありばぜん…………ッ!!!国王陛下ァァァァァ!!!!!!」


 ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!!


 報告の兵士は顔面を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしながら国王様に向かって複数回に渡って引き金を引いた


「うっ…………ッ!!!かは…………ッ!!!」


 チャドリックと衛兵が国王様の間に入るも銃弾の方が早く国王様の胸に数発銃弾が命中してしまった。


「うおおおおおおおおお!!!!!!!」


 ズバッ!!!!


 衛兵の1人が正面から報告の兵士を叩っ斬り、報告兵は血を吹き出しながら仰向けに倒れ込んだ。


「国王陛下!?」


「うっ…………ッチャ………ド…………ッ………」


「国王陛下ぁぁ!!!!」


 国王様は銃弾の一発が心臓に当たってしまっており大量に出血、すぐに意識を失ってしまった。


「このぉぉぉぉぉぉ!!!!」


「国王陛下になんたる事をオォォ!!!」


 衛兵は報告兵の持っていた銃を蹴飛ばすと数名で剣を胸に突き刺し息の根を止めにかかった、すると報告兵士が。


「すみ…………ッませ‥……逆らえ……ま…………せ………」


と一言言い残したのち息を引き取った。


「血を止めろ!!!!医者を連れてこい!!!」


 チャドリックが残りの衛兵と懸命に国王様の止血にかかるが一向に血は止まらない、一刻も早く医者に見せなければとチャドリックが衛兵に医者を呼ばせようと叫んだその時。








「医者ナラモウ居ナイ?私ガ先程殺シタ」







「「「!!!!?」」」


 男とも女とも思えぬ様なガラガラとした雑音の混じった様な不快な声が聞こえて来た。

 それと同時に部屋の出入り口からローブを深く被り、顔の見えない謎の人物が入って来た。


 「貴様ァ!!何も…」


 バシュッ!


「うっ!!?」


 バシュッ! バシュッ! バシュッ! バシュッ!


「うっ!!?」


「ガバァ!!!?」


「うわぁッ!!!」


 謎の人物が手に持っていたのは現代の武器であるアサルトライフルだった。

 隠密仕様にカスタムされたその銃は大きな音を出す事なく銃弾を発射し、拳銃と違い口径の大きな銃弾は武装している衛兵の甲冑を難なく貫通してその場にいた衛兵は呆気なく全滅させられてしまった。


「そ…そんな…」


 単独とは言え不意打ち、さらには圧倒的な武器の性能にただ1人生き残ったチャドリックはなす術もなくその場に腰を抜かしてしまった。

 すると謎の人物は持っていた銃をその場に投げ捨てると国王様を撃った報告兵の前に腰を下ろし、兵士の口に手を突っ込んで何かを引っ張り出した。


ベチャッ………


 報告兵の方から出たのは一枚の紙切れだった、血と唾液でぐしゃぐしゃになっていたが「洗脳」と書いてあった様に見えた。

 謎の人物はその場に紙を捨てると立ち上がり、今度は倒れている国王様の元に歩み寄り、横になった国王様を見下ろした。


「マサカ洗脳ガ解ケカケルトハナ…即死サセルツモリガマダ息ガ有ル」


「ま、待て!!国王陛下に………!!!」


 カチャッ、ドン!!!


 チャドリックが静止するも虚しく、謎の人物は袖から拳銃を取り出し容赦なく一発脳天を打ち抜き国王様にトドメを刺した

 

 「な、そんな…………国王陛下………」


ショックのあまりチャドリックは言葉を失い固まってしまう。

 謎の人物は振り返りチャドリックの前までやってくると拳銃をチャドリックの頭に突き付けた。


 「私も………殺すのか?」

 

 チャドリックの失意と憎しみに燃える瞳から涙が溢れている。


「私ノ洗脳ヲ解キカケルトハ、王ト家臣達トノ間二サゾ強イ絆ト信頼ガアッタノダロウ。オ前ノ王ハ王トシテノ大キナ器ト資質ヲ持ッタ素晴ラシイ王ダッタノダロウナ」


「何を……言っている……陛下を手にかけておいて、今更そんなおだてで貴様を許すとでも思ったのかァァァァァ!!!!」


「無論オ前二許シテ貰オウナドトハ思ッテイナイ。シカシ貴様ニハ生キテイテ貰オウト、今決メタ」


 すると謎の人物は突きつけていた銃を離すとマガジンとチャンバーの弾丸を抜いた。


「ココデノ仕事ハ終ッタ、私ハ別ノ用事ガ有ルノデ失礼スル」


 そう言うと謎の人物はチャドリックに背を向け、空になった拳銃を投げ捨てると部屋の出入り口に向かって歩き出した。


「ま、待て!!逃げるな!!!」


 チャドリックは落ちていた剣を拾って謎の人物を引き留めた。

 謎の人物も立ち止まり振り返る。


「国王陛下の仇も取れず生き延びるなど我が生涯の恥だ、私は騎士では無いが王家に支えて来た誇りがある!せめて貴様に一矢報いて死んでやる!!!」


「私ニハ分カル、オ前ニハソノ誇リガ有ルカラコソ自分サエモ殺ス事ハ出来ナイ。王ノ言伝ハ私ガ兵隊ヲ操ッテ伝エサセヨウ、王ノ死ハオ前ガ皆ニ伝エルガイイ」


 そう言うと謎の人物は部屋を出て行った。


「……………ッ!!!」


 チャドリックは結局その剣を振るうことも立ち向かうことすら出来ずに王様の仇をあっさり逃してしまった。

 チャドリックは場に力無く膝をつき、衛兵や国王様達の亡骸の前で自身の無力さを痛感し泣き崩れた。


「うわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 チャドリックの怒りの悲しみに包まれた絶叫が地下通路にこだました。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 王城、正門

 

 ドン!!ガーーーーーーン!!!!

 

(なんだ今の動きは?とても同じ人間とは思えん…、一体どうしたら?)

 

 兵士たちは粘っていたものの、侵入者の謎の男はついに王城の門を破って敷地内までやって来ていた。

 隊長率いる兵士達が何とか食い止めようとするが、男のあまりにも人間離れした身体能力に隊長も含めた兵士達は手も足も出ずにいた。

 前髪の隙間から覗く冷たい男の瞳がギロリと兵士達を突き刺す。

 

「「「ッ…!!!」」」

 

 怯えた兵士達は後退りする

 

「たった1人に…クソ…」

 

 隊長が泣き言を呟いたその時…

 

「…!」



 

 ドゴーーーーーーーーーン!!!!!

 

 

 と突如男が爆発した。

 

「…!!?」

 

 と言うよりかは大砲の様なものが男の目の前で爆発し、爆風に吹き飛ばされた男がドサっと地面に倒れ込んだ。

 兵士達が振り返ると城の方から男女3人が歩いて来た。

 

 

「うわー!!ホメロスさん!兵隊さんいっぱいいるとこ爆破しちゃダメじゃないっすか!?」

 

 するとその中の1人の甲冑も無く私服に剣だけ携えた若い青年が走って倒れた兵士の様子を見に来た。

 

「あれ嘘!?よく見てなかった!!大変だスノリ、怪我人いないか見てくれ!!?」

 

 その後ホメロスと呼ばれた小柄で露出高めな服装と赤髪ツインテール、両腰に大砲のような大きな銃を2丁携えた女性が冷や汗混じりに駆けてきた。

 

 その後スノリと呼ばれた金髪ロングで修道服のような格好で太陽を模した首飾りをつけた女性が兵士の容態を確認した。

 

「大丈夫、誰も巻き込んでません。運が良かったですね」

 

「あ、危なかったぁ〜…あ!ゴホンッ…やっぱりアタイの判断は間違っていなかったんだな!ハッハッハッ…」

 

「いやもうそう言うのいいっスから、脳筋で突っ走るの勘弁してもらえないっスか?」

 

「私とヘラで先に様子を見に行くと言ったのに「ヒーローは派手に登場する」とか何とか言って後先考えずに突き進むからこんな事になるのですよ?反省して下さい!」

 

「分かったよ…、けどみんなしてそんなにアタイのこと責め立てなくてもいいじゃ無いか…」

 

「まぁ反省してるならいいじゃないっスかスノリ」

 

 この騒がしい3人の登場で場の空気は一瞬冷めたような気がするが、これを機に兵士たちは一気に士気を取り戻した。

 

「よ、妖精使い様だ!妖精使い様達が来てくれたぞ!!」

 

「これで百人力だ!!」

 

 待ち望んだ妖精使いの登場に隊長もホッと胸を撫で下ろした。が…

 

「おや?それより兵隊の皆さん、例の男はどちらに?」




「「「………」」」

 



 スノリの一言に兵士達がハッとして周りを見回した。

 

「あ!あの男がいない!?」

 

「どうしてだ!?さっきまで確かにここに」

 

 突然男が消えてしまい、騒然となる。

 

 すると突然門から現れた3人のうちの若い男の背後から白髪に長い白髭をたくわえた妖精スッと現れた。

 

「おいストゥル、その男なら後ろにいるぞ?」

 

「え?嘘?」

 

 妖精の一言にその場にいた一同は正門の奥に目をやると、そこには兵士たちの包囲を抜け城に向かって一目散に走って行く男の姿があった。

 

「アイツ!」

 

 ホメロスが腰の銃を一丁抜いて男に銃口を向けた。

 

「おいそこのお前止まれ!!!」

 

 ホメロスの声に男は一瞬振り返るも構わず走り続ける、それを見たホメロスが即座に動いた。

 

「来い!ゼウス!!!」

 

「承知した」

 

 ホメロスが呼ぶと、ゼウスと呼ばれた白髭の妖精は白い光となってホメロスに取り込まれていく。

 するとホメロスの右目の瞳に白いリングが浮かび上がり、戦闘態勢が整ったホメロスが仕掛けた。

 

「私が撃たないとでも思ったか?舐めるなよ侵入者!!!」

 

 するとホメロスの銃口からキュイーンと青白いエネルギーが溜まっていき、バチバチバチと激しく電流が流れる。

 

 ドンッ!ドゴーーーーーーーン!!!

 

 と雷鳴のような轟音と共に光弾が発射され一瞬にして男のいる場所は大爆発した。

 

「ホメロス様!!?これでは城がめちゃくちゃになってしまいます!!?」

 

 あまりの銃の威力に兵士の隊長が問いかけるとスノリが。

 

「城内の避難は完了しています、目の前の建物にはもう誰もいません。王は建物よりも驚異の排除を最優先せよとのご命令です。私達もなるべく傷付けない様にはしますが、いざという時は容赦はしませんのでみなさんもそのつもりで」

 

「兵士の皆さんは避難した人々の警護をお願いしたいっス!」

 

「り、了解いたしました!!!」

 

 スノリとストゥルの指示で立ち尽くしていた兵士達が散り散りに動き始めた。

 そしてスノリとストゥルも動き出す。

 

「居るっスか?ポセイドン!!」

 

「ここだ、久しぶりに暴れるかストゥル」

 

 城の前に広がる広い庭園の木陰からフラッと現れた長い青髪青髭を蓄えた妖精も今度は青い光となってストゥルに取り込まれ、ストゥルの右目の瞳に青いリングが浮かぶ。

 

「ヘラ?こっちへ、お仕事の時間です」

 

 スノリが声をかけると兵士達の足の影から青い肌で角を生やした妖精の女の子がひょこっと顔を出した。

 

「…」

 

「さぁ、ヘラ?」

 

 スノリが優しく微笑みかけるとヘラと呼ばれたその女の子は恐る恐るあたりを見回すと、てってってっと一目散にスノリの元へ駆けていき黒いモヤのような姿に変化して憑依した。

 そして彼女の黄金色の瞳に紺色のリングが浮かぶ。



 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ………

 

 煙が晴れてると地面に突っ伏した男の姿があった。

 

「チッ…」

 

 ホメロスから大きな舌打ちが出ると同時に突然男がムクっと起き上がり、一瞬こちらを顧みるとてすぐさま再び慌てて逃げ出すかの様に走り出した。

 

「着弾跡が奴の足元にあった、外した…」

 

 キュイーン…ドーーーン!!ドーーン!!ドーーーーーン!!!

 

 ホメロスが続け様に光弾を連発、しかし光弾は男を避ける様に逸れて行ったり手前で爆発したりと、着弾の爆風でコケたりよろけたりはするものの一向に当たらない。

 

「まさか、ホメロスさんが…!?」

 

「うろたえるな!次だ!」

 

 一瞬うろたえを見せたストゥルを他所にホメロスは即座に次の手を打つ。

 ホメロスはチラッとスノリにアイコンタクトを送る、それを見たスノリは次の作戦を即座に理解した。

 

「ストゥル!」

 

「分かってますよ!大丈夫っス!」

 

「行きます!」

 

 ホメロスがストゥルに喝を入れつつスノリの合図で次の作戦に移行する。

 

 

 

 

 フッ…

 

「…!!?」

 

 ストゥルが男の背後に瞬間移動して来た、これには流石の男も反応が遅れた。 ストゥルが振りかざした剣を思い切り振り下ろす。

 ギリギリで反応した男は万年筆でどうにか受け止めるが今度はそこらの兵士とでは武器もパワーも違う。

 ストゥルの持っている剣はポセイドンが憑依した影響でより頑丈に強化され、形もポセイドンの矛のように三叉に変化する。

 

「……ッ!!?」

 

「そんな筆で戦おうなんて舐められたもんっス!!!」

 

 ヘシオドスはそのまま力で押し切り、万年筆の上から男の体を切り裂いた。

 

「……ッ!!?」

 

 今度は真っ赤な血飛沫が男の体と口から吹き出した。

 

「おい、よそ見するなよ」

 

 ホメロスがいつのまにか庭園の像の上に腰掛け、銃を構えていた、そしてホメロスは先程よりもさらに溜めたエネルギーの光弾を容赦なく発砲。

 至近距離から強烈な攻撃を食らった男は右肩が消し飛び、その体も数十メートル城と反対方向に吹っ飛んだ。

 それと同時にホメロスが男が吹き飛んだ先に待ち構えるように瞬間移動してくると転がるボールを止めるように足で男の体を踏み止めた。

 

「ある程度離れた距離からの攻撃は着弾ポイントをずらされるらしいな、どういう原理なのかは知らないが小賢しい事をする」

 

 ホメロスがそう言うと男の脳天に銃口を突きつけた。

 

「……」

 

「遺言は聞かないぞ?そう言う命令なんだ」

 

 ドンッ!ドンッ!

 

 ホメロスの銃は心臓と頭を確実に吹き飛ばし、確実に男の息の根を止めた。

 

「ふぅ…」

 

「やりー!さすがホメロスさん!」


 遠くでストゥルがはしゃいで手を振っている。

 

「スノリ、テレポのタイミングナイスだったよ、ありがとう」

 

「ホメロス様とストゥルが完璧に合わせてくれたお陰ですよ」

 

「さてと…想定より損壊は少なかったな、避難してるみんなに状況を…つた…え…」

 

 ふとストゥルの方を見たホメロスが言葉を詰まらせた。

 

「ホメロス様?どうしました?……!!!」

 

 不思議に思ったスノリもストゥルの方へ向く、するとそこには……。

 

「ストゥル!!!後ろだ!!!!!」

 

「え?」

 

 ザクッ……

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 王都、商店街


「ヒッ!!?」

 

「これは…ひどいな」

 

 男が過ぎ去った後だろうか、城に向かう増援の兵士達が仲間達が蹂躙された現場に出くわした。

 

「これが例の侵入者の仕業だと言うのか?」

 

「見た所妖精もエモルも使った形跡がない。にも関わらずこれだけの兵を圧倒するとは…」

 

「見せてないだけかも知れん、敵の能力は未知数だ。用心しなくては…」

 

 すると増援の1人が倒れた兵士の観察をし始めた。

 

「この黒い液体は何だ?血では無さそうだが」

 

「おい!気になるだろうが今は城への増援が最優先…」

 

「うっ…、イテテ…」

 

「「!!?」」

 

 するとその兵士からうめき声が聞こえた。

 兵士達がその兵士の頬を叩いて意識のと呼吸を確認した。

 

「生きてる!彼はまだ生きてるぞ!」

 

「みんな来てくれ!生存者が!?」

 

 すると別の増援兵士が唖然と驚愕が混ざった様な口調で仲間達に声をかける。

 

「おい…周りを見ろ!皆んなが!」

 

 言われるまま周りを見回すと、なんと倒れていた兵士達が次々と起き上がって来たのだ。

 

「みんな生きてるのか?」

 

「この惨状で!?」

 

 増援の兵士たちは混乱しながらも急いで倒れた兵士達の元へ駆け寄る。

 

「お、お前達!!大丈夫か!!?」

 

「動くな!傷を見せろ」

 

「ゆっくり起こせ!」

 

 増援兵達が仲間の刺されたところをよく見ると真っ黒な液体がべっとりとこびり付いていた、傷の深さを見ようと液体がを拭うと、そこに傷跡などはどこにもなかった。

 

「どういう事だ?確かに頭を刺されたと思ったのに」

 

「これは…インク?」

 

 暗がりでよくは分からないが水には無い粘り気に墨と油っぽい独特な匂いからすぐにインクだと分かった。

 そして周りを見回すと別の兵士達も異変に気づき始めた。

 

「痛ッ…くない?痛みが消えた!」

 

「きっ、傷がない!?どうなっているんだ!俺は確かに…!?」

 

「これは…どうなっているんだ?彼らに一体何が?」

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 王城 庭園


「ガッ…カハッ…!?」


 ストゥル首に深々と刺さる万年筆、そしてその背後には確実に殺したはずのあの男が。

 

「何故!!?あの男の死体は確かにここに…」

 

 スノリの言う通りホメロスがトドメを刺した男の死体は確かに目の前にある。

 男はザクッと万年筆を引き抜き、持っていた剣を奪ってストゥルを突き飛ばした。

 

「ゔッ……痛ッテ……」

 

 ストゥルは首を押さえて痛みに耐えながらドサっと地面に転がって受け身を取った。

 刺された首から真っ黒な液体がドロドロと溢れる。

 

「大丈夫か!!?ストゥル!!!」


 ホメロスとスノリが瞬間移動してストゥルの元へ駆け寄った。

 

「これ……インクか?なるほど、死傷者0なんてありえないと思ってたけど…カラクリはこれっスね?」

 

 男はそのまま持っていたストゥルの剣をポイッと側にあった生垣の向こうに放り投げた。

 

「!!?」

 

 男の行動にスノリが一瞬動揺を見せた。

 

(ヘラのテレポーテーションは視界に届く範囲のみだと読まれた?そんな隙は無かったのに…偶然か?)

 

 ここから男の顔からは「もう油断しない」とばかりに男から漂うオーラが引き締まる。

 

「死ななくとも刺された瞬間に全身を走るこのリアルな痛み…そりゃ兵隊さんたちも戦いたくない訳っスね」

 

「ッ!、これは…」

 

「想像以上に厄介な敵かもしれませんね」

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 30分程前 王城、地下広間

 

「姫様!!!」

 

「みんな姫様が来られたぞ!!」

 

 お姫様が地下広間にやってくるとそこには避難してきた市民達がいた。

 とりあえずここにいる民達には一旦ここで夜を明かしてもらい、夜明けの状況によって今後の判断を検討すると言う事になった。

 

「皆様、ご無事でしたか?お怪我はありませんか?」

 

「今のところ死傷者は1人も報告されていません、皆無事です」

 

「そうですか、良かった…」

 

 お姫様はそっと胸を撫で下ろした、しかし同時に今上で戦っている兵士達や妖精使いとその妖精達、そして王子様の安否が余計に心配になってしまった。

 

 すると、

 

「お姫様!」

 

「わーいお姫様だ!」

 

「お姫様!あそぼー」

 

 子供達が駆け寄って来た、元々平民の出身でもあったお姫様は普段から国民達との交流を積極的に行なっていた事もあり、そこで仲良くなった子供達とも一緒に遊んであげる事もよくあった。

 

「こっ、こらもう夜も遅いのよやめなさい!」

 

「申し訳ありません姫様、子供達が…」

 

 子供達の両親達がはしゃぐ子供達を必死に大人しくさせている。

 非常事態だが両親も友達も無事だったのでホッとしているのだろう、子供達は無尽蔵とも思えるエネルギーを持て余している。

 いや、こんな非常事態だからこそいつも通りでいたいのかもしれない。

 

「良いのですよ、遊びたいのならば遊びましょう!ただし皆さんお疲れなのであんまり騒ぐのはダメですよ?端っこの方で静かに遊びましょうね?」

 

「おお…なんと寛大な!」

 

「本当に…ありがとうございます姫様!」

 

 こうして子供達を広間の端の方に誘導するとお姫様は側にいたアンドロメダに問いかける。

 

「アンドロメダ、何かあったかしら?」

 

「子供達の遊び道具になりそうな物は流石に…、紙と筆くらいなら何とかご用意出来るかと」

 

「いいですね!では皆んなでお絵描きでもしましょうか?」

 

 お姫様が子供達に問いかけると

 

「お絵描き?やるー!」

 

「ぼくもやるー!」

 

「わたしもー!」

 

 嬉しそうな返事が返ってきた、子供達の笑顔を見たお姫様はにっこり微笑んだ。

 

「ではアンドロメダ?よろしくお願いします」

 

「承知致しました、探して参ります」

 

 アンドロメダと侍女達は道具を探してその場を離れた。


 ガタガタガタガタガタッ!

 

 その時、部屋全体が音を立てて揺れ始め、人々は騒然となる。

 

「なんだ?地震?」

 

「怖いよー!お母さん!」

 

 お姫様も子供達に寄り添って優しく語りかけた。

 

「妖精使い様達が、王子様達が今まさに上で戦っておられるのです」

 

 不安がる子供達に力強い言葉をかけて元気づけるお姫様だったが、硬く握り締められた手は震えていた。


「大丈夫…、大丈夫ですよ…」

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 城内、庭園

 

 

 ドン!ドゴッ!!!

 

 

「グハァッ…!!!」

 

 吹き飛ばされたホメロスが庭園のベンチに叩きつけられる。

 

「ホメロス様!大丈夫ですか!?」

 

「クッソ、コイツもう7.8回は殺してるのにまだ…、このままじゃジリ貧っスよ!?」

 

 ガラガラっと瓦礫を押し退けて立ち上がるったホメロスは、額から流れるインクを拭って再び銃口を男に向ける。

 

「怯むな!コイツが本当に不死身なら遠距離攻撃無効の能力なんか必要ないはずだ!どこかに必ず弱点がある、今は耐えろ!!!」

 

 とは言え倒しても倒しても復活してしてくる敵を相手に完全にいたちごっこになってしまっている。

 

 3人が手をこまねいていたその時。

 

 ドーーーーーーーン!!!!

 

 ホメロスのすぐ横の庭園の生垣が一部が吹き飛んだ、そこから現れたのは?

 

「王子!!!」

 

 王子様達がついに戦場に現れた。

 

「待たせてすまない、3人ともよく持ち堪えたな!」

 

「指揮系統がめちゃくちゃです、敵の正確な位置を誰も知らないなんて。無駄に走りました…」

 

「敵はアイツか?なんだァ?随分ヘンテコなカッコしてやがるなぁ〜」


 王子様と相棒のアレス、そして騎士4名が応援に駆けつけた、この騎士達は"エモル"と呼ばれる感情に宿る力を使って剣に火や水を纏わせたり、通常の人間の何十倍もの身体能力を発揮できるなど特殊な能力を保有している王子様直属の精鋭だ。

 

「ハハハハハ!どうしたんだお前達その格好は?落書き大会でもしてたのか?」


 騎士の1人が黒いインクだらけの3人を見て冷かし混じりの質問を投げかける。


「あの筆だ、あれに刺されてもアタイ達は死なない、めちゃくちゃ痛いけどな」  


「敵の武器は筆か?武装すらしてないじゃないか、しかし刺しても死なない武器か…そんな奴に手こずってんのか?お前程の奴が」

 

「うっせ…」

 

 騎士達にからかわれたホメロスだったが緊張状態だった3人は少しだけ肩の力が抜けた様子だった。

 

「それで姉弟子、戦況は?」


 王子様はホメロスから指揮を変わって現状の把握と打開を図る。

 

「敵は見ての通りあのおかしな格好をした男1人です、あの手この手を尽くしましたが戦況は全くの膠着状態ですね。王子達が来なかったらジリ貧でしたよ」

 

「辺りに幾つか転がってるあの男のと同じ服装の死体は一体なんだ?」

 

「あれは俺たちが倒したっス。どういうわけか知らないっスけどあのアイツは倒しても倒しても新しいやつが永遠に湧いてくるんっスよ」

 

「さらにあの男はこちらの遠距離攻撃に対する妨害系の能力を使うので基本接近戦でしかダメージを与えられません。

 敵が本当に不死身なのであれば必要無い能力なので復活には回数制限があると言うことを祈りながら戦っていたのですが…」

 

 と王子様の質問にスノリとストゥルが補足説明をする、戦況を確認した王子様は。

 

「逆に復活が無限と仮定するならば先ずは無力化と捕縛だ、厄介な能力みたいだがこの戦力と人数差で攻めれば何とかなるはずだ」

 

「チッ!…」

 

 王子様の言葉を聞いたアレスが不機嫌そうに舌打ちをした。

 

「残念だったなアレス、こうなったらお前はもう戦力外だ…」

 

「ハッハッハ、今回お前誰よりもやる気あったのになぁ」

 

「悪いなアレス、今回お前を除け者にするのはお前の能力が強力過ぎるが故なんだどうか分かってくれ」

 

「……!!」

 

 騎士達が残念そうにするアレスに冷やかしを入れたりフォローを入れたりしていると。

 

「…アレス」


「「「!?」」」


 ここまでだんまりを決め込んでいた男がふと「アレス」の名前を口にした。



「なんだアンタ、口聞けたんスね?てっきり無口な人かと…」



「なんだなんだ?この俺様と戦いたいのか?仕方ねぇなぁなら俺様が…」


「おい!」


 ガッ!


「ぐえぇ!?」


 蚊帳の外にされかけてた所に自分の名前を呼ばれた事に嬉しくなったアレスがズカズカ前に出ようとするが、ストゥルに襟を引っ張られて引き戻された。


「何すんだストゥ!?」


「アレス君!自分の能力くらい分かるっスよね?頼むから大人しくしてて下さいって!」


 アレスが引き戻されると同時に騎士の1人がストゥルとアレスと男の間に入る様に立ち塞がる。


「アレスに変わって用事があるなら俺たちで聞いてる、言ってみろあんちゃんよ?え?」


「いや、それは結構。君らとは言葉を交わすだけ無駄だからね」


 男はそう言いながら懐から一冊の原稿用紙を取り出すと、万年筆の先でピッと外装のビニールを切ると1枚取り出して何かを描き始めた。


「いや〜にしても何か居ないなぁと思ったらすれ違いになってたのか、こうして会えたから良かったものの折角苦労してこんな雑兵掻き分けてやって来たのに出払ってるとか言われたら僕心折れちゃうよ〜」


 ドンッ!!!…グシャ!!


「あれ?心が折れた音?」


…ではなくホメロスが不意打ちで撃った弾丸が命中した音だった。

 何かを書いていた男の両手首から先は吹き飛び血飛沫と共に持っていた髪と万年筆が宙を舞う。


「王子、早いとこ押さえましょう。放っといたら何するか分かりません」


「流石姉弟子!ジャスパー!」


「御意!」


 王子様に呼応するようにジャスパーと呼ばれた騎士の1人が素早く剣を抜き切先を男に向ける。


「エモル解放!とう!」


 するとジャスパーの体からオレンジ色のエネルギーが溢れ始め、それが剣へと集まり始めた。


 キィンッ!…ズガッ!!


「!?」


 するとジャスパーの剣が鞭の様にしなり始めたかと思うと、小気味良い金属音と共に剣のブレードの部分が凄まじいスピードで伸びていき男の左膝を貫いた。


「痛…」


「定まれ!」


 ギィンッ!!キュルキュルキュル…ガシッ!!!


 ジャスパーが再び唱えると男の足を貫いた剣が再びグニャグニャに曲がり始めるとそのまま男の足に巻き付いた。

 刃の切れ味を保ったまま鞭の様に伸びて蛇の様に体に巻き付いた剣の隙間から男の真っ赤な血がドクドクと溢れ出す。

 この一瞬で他の騎士達は万が一の第二の敵や男の再びのリスポーンに警戒しつつ男に逃げられない位置に陣取り、ストゥルはどうやら男に狙われているアレスを連れて急いでその場を離れていた。


 ガッ!!


「あんちゃん?ちょっと後ろから失礼!」


 ボキボキボキィ!!!


 スノリのテレポーテーションで気づかれない様に接近してきた騎士の1人が後ろから男の両腕を掴んで一瞬で両手肘と左膝を逆に曲げた。


「ぐあああぁぁぁぁぁぁ!!!」


「ラスター!」


「あいよ王子!」


「クソ……フガッ!!?」


 王子様は男に一瞬で詰め寄ると、男を押し倒しながら自分の甲冑で守られた手首を男の口に突っ込んだ。


「姉弟子!」


「今縛ります、強くなられましたね王子」


 そう言うとホメロスは組み伏せられた男の体に縄を括り始める、捕縛は勿論だが男を失血死させない様両手首と右足もしっかりと縛る。


「俺は何もしてない、みんなが優秀だっただけだ」


「言葉を殆ど交わさず最小限のアイコンタクトだけで皆ここまでの連携をやってみせました。言わずとも意思が伝わる、これだけの信頼関係を築けるのは王子の強さです」


「……敬語は要らないと言っただろ姉弟子、俺たちはもう姉弟みたいなものじゃ無いか。今更…」


「いけませんよ王子、私が怒られてしまいます」


 ホメロスは何処か物悲しそうな表情で言った、そうこうしている内にホメロスが男を縛り上げた。

 両手両足潰れている上縄でガチガチに縛り上げ、念入りに舌を噛めない様口に布も縛りつけ先程の様に死んでリスポーンする危険も限界まで潰したところにスノリが小箱を持ってやって来た。

 

「さて仕上げだ、スノリ!」


「はい、準備は出来ています」


「出来そうか?」

 

「はい、これだけ体の自由を奪えば問題無いかと」


 スノリはそう言うと小箱を開けて男の前に置くと両手を組んで祈りを捧げるように俯いた。


「これより一度彼を封印します、離れていてください」


 王子様とホメロスはスノリの言う通り男のそばから離れると、スノリが詠唱を開始した。


「禍々しい闇の深淵に魂を捧げ、冥界の狭間にて封じ込めん。彼方の世界との絆を切り裂き、暗黒の力を具現とせん……」




 スノリの詠唱に呼応するように箱の蓋が開き、中から禍々しい闇の手がゆっくり男の元に伸びてゆく。


「!」



「……我が名は真名を失いし妖精使いスノリ、我が妖精ヘラの力を持ってかの者を暗き闇に沈めん……」




ゆっくりゆっくり伸びて来た闇の手は男の足首を力強く握った。

 すると手を包んでいる禍々しい闇が男の体を包み込み、そのまま小箱の中へ引っ張り始めた。


「ッ!?」



「……闇の渦に身を委ねし者たちに聞け、闇に引き摺り込み封印せよ!暗黒封印術、メラスティゴルニス!」



 力強く詠唱を完了すると箱の中の闇が一層濃くなると同時に箱の中から更に無数の手が飛び出し、男の体を掴み上げた。


「ッ!!ッー!!!」


 闇に体をがっしりつまれた男は縛られた体をくねらせて何とか抵抗するが闇の力には逆らえず箱の中へ吸い込まれていく。

 

「よし、詠唱が終わっちまえばこっちのもんだ」


「やはり時間が掛かるな、詠唱は長いし闇はトロいし…」


「スノリはこの手の専門じゃないから仕方ありません、ともかくスノリがいてくれて助りました。ホメロスから聞いた限りこの男の能力は私たちだけではどうしようもありませんでしたから」


 男は抵抗出来ずいよいよ小箱の闇の中へ引き摺り込まれようとしたその時。


 ドーーーーーーーーーーン!………


 バシュッ!!!


「「!!!?」」


 突然遠くから響いた破裂音、そしてその刹那封印間際だった男の頭から血飛沫が飛んだ。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 王城、屋根上


 王城の屋根上は1番上まで登ると庭園を一望する事ができる。

 ここから封印されかけていた謎の男を狙撃したローブを着た謎の人物は、屋根裏部屋の死角から伏せた状態でスコープを除いて庭園の様子を伺っている。

 

 「………」


 命中を確認した謎の人物はガチャリとコッキングレバーを引いて空薬莢を排出した。


「早クシロ遊ビ過ギダ、モウスグ時間ガ来ル…」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 王城、庭園


「何だ!どこから攻撃された!!?」


「フォーク!何も感じなかったのか!?」


「すみません、私の感知領域には何も…エモルも妖精の反応もありませんでした!」


「バカな!」


「お前ら!今はそんな事は後だ!奴を復活させてしまった!集中しろ!!」


 思わぬアクシデントに取り乱しかける騎士達に王子様は喝を飛ばす。

 すると騎士達の包囲の外に五体満足になった白衣の男がいつの間にか佇んでいた。


「遊びが過ぎたか、お前ら如きに追い詰められるとはな…」


 男は右手で自分の髪をかき乱しながら一つため息をつくと、ギロリと鋭い眼光を王子様達に向けた。

 すると男は先程ホメロスに打たれて落とした原稿用紙を取り出した、紙はぐしゃぐしゃに折れ曲がり土や埃でかなり汚れてしまっていたが、その紙には何と「王城、地下広間」と書かれていた。


 「…貴様!!?まさか!!!」


「本題だァ王子様!お前は僕と来てもらう、アレスも一緒にだ!」


 バッ!バラバラバラバラバラ!!!


 そう言うと男は突然持っていた原稿用紙を束ごと空中へばら撒いたその次の瞬間、突風が吹き荒れ視界は一瞬原稿用紙で埋め尽くされた。

 

「何だ!紙が!!?」

  

「うお!?何だこの量は!!?」

 

 視界が立たれたのは3秒も無かったが、視界が開けた後辺りは大量の原稿用紙で埋め尽くされ、まるで別の場所に来たのでは無いかと一瞬錯覚する程真っ白になっていた。

 

「…み、みんな大丈夫っスか?」

 

「私は大丈夫です、皆さんは?」

 

「……お、王子が居ない!!!」

 

「何!?マズイ…すぐに探し出すぞ」

 

「しかしどこから…」

 

「城の地下広間です、もし違ったとしてもこうなった以上姫様は最優先に守らなきゃなりません、男の持っていた紙に書かれていた事も気になります。何にせよ城に侵入されているとしたら真っ先に向かうべきはそこでしょう」

 

「よし!我々騎士はそこに向かう、ホメロス達は城内とその周辺をしらみつぶしに当たってくれ、人ではこちらで動員する」

 

「了解した、スノリ!まずはアレスだ、ストゥルを追うぞ!!!」

 

「了解しました!」

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 数分前、王城、正面玄関


 王子様の判断で一度戦線を離脱して来たアレスとストゥルは玄関扉の影から、遠くに見える王子様達の戦闘の様子をこっそり伺っていた。


「どうだストゥ!苦戦してんだろ?アイツらは」


「いや、どうやら今のところはまだ順調そうっスよ?」


「何!?俺様が不在で泣き喚く姿が目に浮かんでたのに!」


「仮になったとしてもアレス君が居ないくらいで多分泣き喚きはしないっスね」


「で?どうなんだ?片付きそうなのか?」


「どうやら奴を拘束、封印まで持っていけてるようっスね思ったより順調っス、これなら………」



ドーーーーーーーーーーン!………



「「!!?」」


「何だ!?、破裂音?」


「この上で音がしたぞ?行ってみよう!」


「待ってアレス君!ちょっと勘弁してくしてくれよ…」


 アレスが1人で破裂音のした方へ突っ走って行く、ストゥルもそれをあってかけ出そうとしたその時。


「その必要は無いよ」


「「!!?」」


 突然誰も居なかったはずの背後から男が現れた。


「な!?お前…何故!!!」


「出やがったなクソ野郎!!!」


 男の声を聞いて速攻で引き返して来たアレスが男の顔面に向かって思い切り殴りかかった。


 ガシッ


 しかしアレスの渾身のパンチは男の顔面に届く事なく男の手のひらに収まる結果となった。


「な!?」


「アレス悪いが僕と一緒に来てもらう…」


「!?」


「させるか!!」


プス…


 その瞬間、ストゥルがアレスの背後の死角から素早く男の胸に剣を突き刺した、しかし…


「な!?(手応えが…!?)」


「どうしたストゥ!?」


 ストゥルが男に突き刺した剣からは張りぼてを突き刺したかのように手応えが全く無かった。

 すると突き刺された男がボソボソと2人に囁く。


「悪いがもう、遊んでいる時間は無いんでね…手段は選ばないよ…」


 パァーーーーン!バラバラバラ!!!!


「クッ!??」


「うお!?今度は何だ!?」


 その瞬間男の体が弾け飛び、大量の原稿用紙が空間を埋め尽くし、そして3秒も経たずに視界が再び開けた。


「…ん、アレス君?」


 ストゥルが目を開けて周りを見回すとあたり一面原稿用紙で真っ白になり、別の場所に来たと一瞬錯覚する程だった。

そしてストゥルは重大な事に気が付く。


「アレス君?アレス君!!?」


 するとその時、王城の玄関がバタンと開いた。


「ストゥル!無事か!?」


 ホメロスとスノリが助けに来た、そして王城の中を見たスノリが声を震わせながらホメロスに呟く。


「ホメロス様…ここにも紙が……」


「…ストゥル!アレスは?」


「す、すいませんホメロスさん……!?」


「クソ…遅かったか……!」

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 王城、地下広間

 

「おひめさま、みてー!わたしのおうちかいたー」

 

「ぼくはおとうさんとおかあさん」

 

 お絵描きをして遊んでいた子供達も殆どは疲れて眠ってしまっていたが、まだまだ元気が有り余ってる数名の子供達とのお絵描き大会はまだまだ続いていた。

 

「皆さん上手に描けましたね」

 

 絵は王宮で勉強していたが、子供達と思い思いの書きたい絵を描くのもいいものだ。

 とは思いつつ、その思いと裏腹にやはりお姫様にはずっと気がかりなことがある。

 

(王子様達、大丈夫でしょうか…)

 

 上の方から響いていたの物音や地響きは、ここ数十分ほどは何事も無かったかの様に静まり返っている。

 外の様子はどうなっているのか?脅威は排除されたのか?王子様達は無事なのだろうか?と、そんな事が頭から離れない。

 外からの情報はほぼ遮断状態の為、今何が起こってどうなっているのかも一切分からない状態だった。

 

「すごーい!おひめさまおえかきじょーず」

 

 そんな事を考えていると1人の女の子がお姫様の書いた絵に食いついて来た、お姫様の書いた絵は正門にある庭園にあった花を正確にデッサンしたものだった。

 女の子は本当に絵が好きなのだろう、お姫様が描いた絵を隅から隅まで食いつくように観察すると。

 

「もっとかいてかいて!」

 

 とねだってくる。

 

「はいはい、では次は何を書きましょうか?」

 

 そう言うとお姫様がまた新しい紙を取り出した、すると白紙しか無かった筈の紙に何故か文字が書かれていた。

 

    ––––見つけた–––– 

    

「!?」

 

 次の瞬間、密室のはずの地下広間から風が吹き荒れた。

 

「!!!!」

 

「何だ何だ!?」

 

「何が起こった!?」

 

 寝ていた市民達も飛び起きるほどの強風、そして舞い上がった紙と一緒に大量の原稿用紙が湧き出て来た。

 

「!!!」

 

「姫様!お下がり下さい!!」

 

 アンドロメダが子供達とお姫様を咄嗟に紙から遠ざけた。

 風は一瞬で止み、あたりには大量の紙が舞っている、その中心に現れたのは王子様とアレスだった。


「痛ってて…クソ〜あのモブ顔野郎!」

 

「アレス!?お前ストゥと撤退したんじゃ無かったのか?何でこんな所に!?」


「お、王子様?」

 

「姫様!!?何故…あれ?ここは…」

 

 王子様は周りを見回して、自分は今どう言うわけか元居た場所から移動して来た事を理解した。

 腰を落としていた王子様はすぐさま立ち上がってお姫様の元に駆け寄ると手を握った。


「姫!お怪我は!?」

 

「あ、ありません!私は…」

 

「一体何がどうなっているんだ!?」


「おい!姫様!あの気持ち悪いモブ面のヒョロガリ見なかったか!?」


「え?もぶ?ひ、ヒョロ?」


 すると出入り口の方から…。


「うわ!何だ…!!」


「ぐわぁ!!」


「ムグッ!!?」


 ドサ!ドサ!ドサ!


 出入り口に居た門番の兵士達が次々と倒れていった、殺された訳ではない様だが彼等の顔や体には何故か大量の原稿用紙が張り付いていた。


「モブ面のヒョロガリで悪かったな、この間抜けチビ妖精」


 すると出入り口から王子様達の聞き覚えのある声が聞こえて来たかと思うと、倒れた門番を跨いで侵入者の謎の白衣の男が堂々と入って来た。


「まさか…!もうここまで!!?」

 

「野郎!俺様達に何しやがっ…!!?」

 

 気が短いアレスは男の顔を見るや否や即座に殴り掛かろうとすると、突然アレスの顔に数枚の原稿用紙が飛んできて顔に張り付いた。


「僕だって納得いってないんだ!顔面くらい幾らでも盛れるけどあんまり美化し出したらなんか叩かれるかな?って思ったから仕方なくこういうデザインにしてるんだ!」

 

「ッー!!ッーーーー!!!」

 

「ア、アレス!大丈夫ですか!?」

 

 アンドロメダが急いでアレスに駆け寄り、紙を剥がそうとするが顔に張り付いた紙が何故かどうしても剥がれない。


「アレス!?貴様!アレスを離せ!!」


 王子様が剣を男に向ける。


「安心しなよ王子様、今アレスに死なれちゃ僕も困る」

 

 すると男はどこから持って来たのかティーポットを取り出すとティーカップに紅茶を注ぎ始めた。

 

「あ、貴方が侵入者ですね?」

 

「!」

 

 すると勇敢にもお姫様が男に話しかけた。


「私の名前はヘデラ、この国の姫です」


 お茶を注いだ男はゆっくりお茶を飲み始めた。

 

「姫様!?危険です!この男は魔王の手の者である可能性があるのですよ!?」

 

 王子様が止めに入るも、ヘデラは断固とした口調で続けた。

 

「国民の皆さんを不安と混乱に陥れて、子供達も怯えています!貴方はまだ誰も殺していないのでしょうが、この国の民達を無闇に混乱に陥れる事は私が許しません!」


 ヘデラの声がこの地下広間に反響する。


「……」

 

 すると男は近くに居た子供達をじっと見つめた、子供達は怖くて震えており泣き出す子達もいた。

 男はそんな子供達を尻目に近くにあった椅子に腰掛けて右足を高々と足を上げて左足の上に組んだ。


「その子達は出てっていいよ、他の人達も同様にね。ここにはそこの4人が残ってくれたらそれでいい」

 

 男はそう言うと王子様とお姫様のヘデラ、そしてアレスとアンドロメダの4人の方を見た。


「「「!?」」」


 ヘデラは王城様の方を向いて目で何かを訴えてかけた、それを見た王子様は小さく首を横に振って小声で返す。


「ここに最後に入って来たのは奴です、ここの出入り口は一箇所で一本道、兵士達は全員抑えられて直ぐに動けるのは城の使用人達と子供達を含めた国民達だけです。もし罠があっても彼らでは気付かず踏んでしまうかも…」


「ではどうしたら…」


「そんなもん無いよめんどくさい…」


 コソコソやり取りする2人に男が割って入ってきた。


「国をここまで混乱に陥れた奴の言葉を信じろと?」


 王子様は鋭く返した。


「信じられないなら別にそれでいいよ、どの道コイツ等には用はない。ただし、僕の邪魔をするなら子供でもちょっと大人しくしててもらわないと…」


 ギロリ…


 男は子供達の方に再び鋭い眼光を向けた。


 「「「……?!」」」


 子供達は大人達にくっついて震えている。


「……分かりました、貴方に危害は加えません。王子様、剣を下ろしてください」


「姫様!」


「民無くして国は無し、私たちが守らねばならないのはこの国です!1人でも多く民を救えるならそうするべきです!」


「ッ!……」


 ヘデラの言葉を聞いた王子様は渋々剣を下ろした。


 その後ベテランの使用人を先頭に子供、女性と年寄り、男性の順でこの地下広間を出て行った。

 子供達は退出間際、不安そうに振り返ってお姫様の事を気にかけている様子だったが「大丈夫、心配ありません」と心強い言葉で子供達を見送った。

 広間の外の様子は一切分からないが、ここから見ている限りは何事も無さそうだった。


「これでようやく静かになった、少し遊び過ぎてヒヤッとしたが計画は思ったより順調そうだ」

 

 男はそう言いながら胸のポケットから小瓶を取り出してピンッと親指で弾いて小瓶の蓋を開けると、飲みかけの紅茶の入ったティーカップに砂糖の小瓶をひっくり返して中身の砂糖を全てぶち込んだ。


「……お尋ねしてもよろしいですか?」


 お姫様は男に尋ねる。


「どうぞ?僕に答えられる事ならね」


「貴方の言う計画とは何なんですか?私たちをここに残した理由は?」


「全てを語る訳にはいかないけど、明かせる情報で簡潔に説明すると、これから君たち4人には異世界に転移してもらおう!ってそういう話さ」


「異世界…転移!?」


「まぁ厳密には4人じゃなくてもう何人か送るつもりなんだけどね。さっき心配になって確認したら、どうやら全員揃っているみたいで良かった良かった」


「待って下さい!どう言う事ですか!?」


「言葉の通りさ、君たちは今からこことは全く別の世界に転移させられる。そこから先どうなるかは僕にも分からない」


「ちょっと待て!言ってる意味が分からない!俺達に国を捨てて出て行けと言うのか!?」


「捨てろ…か、そこまで言うつもりは無いと言いたい所だけど…転移だからなぁ。またこの世界に戻れる保証は無いし、そう言う意味じゃこの世界は諦めて貰うしか無いかなぁ」


「そんな急に困ります!私達はこの国を離れる訳には参りません!な、何か別の…!」


「無理だね、災厄の箱(ディザスターボックス)は既に開かれようとしている。君たちには気の毒だがお前らみたいな作者の操り人形共に拒否権など無い、そう言う事だ」

 

 男はティーポットを手に取ると、砂糖の山になっているティーカップに滝の様に紅茶を注いだ。

 山になっていた砂糖は上から熱々の紅茶を注がれて少しずつ溶けて山が崩れて行く、紅茶はティーポットから溢れても注がれ続けた。

 

「作者?人形?貴様さっきから何を言っているんだ!分かる様に説明しろ!!!」

 

「申し訳ないが僕がこれ以上君たち語れる事はない、ネタバレってやつさ…」


 男は立ち上がると王子様達に背を向けて、手に持った紅茶をグイッと飲み干しながら出口に向かって歩き出した。

 

「おい!まて!話は終わっ……!!」

 

 ガシャン!!!

 

 王子様が男を引き止める為追いかけようとした矢先、男は空になったティーカップを思い切り地面に叩き割った、その次の瞬間。

 

 ドーーーーーン!!!!!

 

 すると突然地面が跳ね上がる様な衝撃が襲ってきた。

 突如襲って来た強い地震に壁や天井からヒビが入った。

 

「今度は何だ!!?」

 

「地震?!!」


「姫様、危険です!私の側へ!!!」

 

「ンッーーーー!ンッーーーーー!!」

 

 

 強烈な揺れで王子様を含む全員がその場を動けなくなってしまった。


「ではもしも次があったならまた会おう、君達の旅に幸が在らん事を願っているよ」


「ま、待て!!まだ話は終わってない!!」


男はそう言い残すと、王子様の言葉に一切耳を傾ける事なく、この揺れの中何事も無かったかの様に颯爽と地下広間を後にして行った。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 城内、廊下

 

「どうだ?何か異常はあったか?」

 

「ありませんホメロス様、あの男はやはり騎士様達の言う通り地下に向かったのかと…」

 

 そこへストゥルも息を切らしながらこちらへ走って来た。

 

「ハァ、ハァ…み、みんななんかあったっスか…?」

 

「いやこっちは何も、お前は随分ヘトヘトになって何かあったのか?」

 

 するとストゥルが窓を指差した。

 

「空が!空がなんかおかしいんスよ!」


「空?」

 

 ストゥルに言われるがまま2人は空を見上げると。

 

「おいおい、なんだありゃ…」

 

 夜でも分かるほどに真っ黒な黒雲が城の上空に出来ている、その雲は稲光でピカピカと光りながらどんどん大きくなっていっている。

 

「最初見つけた時はあんなじゃなかったんスけどどんどん大きくなって、ここに来る頃にはあんな大きさに…」

 

「雨雲…と言う感じでは明らかに無いですね、あそこまで黒い雲は見た事がありません…」

 

 すると突然、

 

 ピカッ!!!!!

 

 ドーーーーーン!!!!ゴロゴロ!!

 

 と強烈な稲妻と共に風が吹き始めた、そして黒雲は城の上で渦を巻き始め、渦の中心は稲光で禍々しく光っている。

 

 風は更に強くなり城の窓や壁や天井にヒビが入り始めた。

 

「こ、これは絶対何かおかしいぞ!なんとか地下の皆んなに連絡を…」

 

 その時、

 

 バギギギギギギギ!!!

 

「な!?」


「!!?」


「おいおいおいおい!!!!」


 っと大きな音を立てて城の天井が破壊され、空が露わになった。

 壊れた城の瓦礫は下に落ちるどころか、空に浮かび上がり渦を巻いている黒雲の中心にどんどん吸い込まれていく。

 

「うわああぁ!風強ッ、動けない!!」

 

「一体何が起きているのですか、この世界に!?」

 

「おいあれ!!!」

 

 ホメロスが横の建物に目を向けた、そこは城の別館が無情にも崩れ去る光景だった。

 

「姫様達がいる地下広間ってあそこの真下っスよね!?ヤバいんじゃ!?」

 

「ヤバいですよ!ホメロス様、助けに行かないと!!!」

 

 しかしその時、突然ホメロス達3人の体が急に光り始め、ポン!と憑依していた妖精達が出てきた。

 

「あれ!?憑依が!!」

 

「なんで!?憑依は解いてないのに!」

 

 次の瞬間3人についていた3人の妖精は空に吸い込まれ始めた。

 

「うお!!?」

 

「!!!」

 

「なんじゃ!!?」

 

「ヤバい!!!」

 

 ホメロスが咄嗟にめちゃくちゃになった家具や壁のヒビを足場にして飛び上がり、間一髪ポセイドンの腕を掴んだ。

 ポセイドンの体にゼウスとヘラも必死にしがみついた。

 

「みんな!大丈夫だ、すぐ引っ張り出すからな!!!」

 

 しかしホメロスが掴んでいた足場が無情にも崩れてしまった。

 

「ヤバ…」

 

「ホメロスさん!!!」

 

「ホメロス様!!!」

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 王城、地下広間

 

 地下にあるはずの子の地下広間は、天井が空に吸い込まれ、地下では見れないはずの大空が見える様になっていた。

 しかも見たこともないほどの黒雲と稲妻が轟き、最早この世の物とは思えない光景だった。

 するとヘデラ姫と王子様、そしてアレスとアンドロメダの体が風にさらわれて空に吸われて体が宙に浮き始めた。

 

「キャ!!!」

 

「姫様!!!」

 

「ンッーーー!!!ンッーーー!!!」

 

「姫!アレス!アンドロメダ!」

 

 ヘデラ姫ははアレスとアンドロメダをなんとか捕まえ、王子様はヘデラ姫腰に手を回す形でしがみついた。

 するとそこへフォークとジャスパーがタイミングよく広間に到着した。

 

「何だこれは!?天井が!!!」


「危ない姫!王子!手を!!」


「うおおおおおおお!!!」


 ガシッ!!!


 王子様が全力で伸ばした手をジャスパーとフォークが何とか掴んだ。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 王城、廊下

 

 ホメロスと妖精達が空に攫われそうになる間一髪、スノリとストゥルがホメロスの足にしがみつき、なんとか地上に留めた。

 

「ゼウス!ヘラ!ポセイドン!大丈夫だ、必ず助ける!!!」

 

「うお!!?重ッ!!」

 

「凄い力…私たちまで持っていかれそうです…!!」

 

 するとホメロスが足元の2人に大声で訴えかける。

 

「ストゥル!アタイのお尻のポーチに短剣とロープが入ってるから、それを壁か床に引っ掛けて何とか引っ張ってくれ!!」

 

「//お、お尻!?いやいや…ダメっすよホメロスさん…全くそう言うことは軽々しく男に頼むもんじゃないっスよ…そんなセクハラ俺には出来ま…//」

 

「//そう言うのを「セクハラ」と言うんじゃ早よ取れこの変態!!!//」


 ドガッ!

 

「グヘッ!」


 ホメロスが下のストゥルに制裁キックを喰らわせるとバランスが崩れて一瞬グラっと体が持って行かれそうになった。

 

「「「ウオォォッ!!!!」」」

 

「ちょっと2人とも!?状況分かってますか!?真面目にやって下さい本当に死んじゃいますよ!!!?」

 

「\\ではストゥルの代わりにワシがホメロスのお尻に行くというのはどうじゃ?ホメロスや\\」

 

(……ピキ)

 

 ギリギリギリギリ…!

 

「痛い痛い痛いィィィ!!!やめんかゼウスやそういうこと言うの!!?手首が、手首が潰れるゥ!!!離してホメロスーー!!」

 

「\\……\\」

 

 ゼウスのセクハラ発言にホメロスが掴んでいるポセイドンの腕が潰されんばかに握られた。

 ヘラは顔を真っ赤にして黙り込んでいる。

 

「あなた達!本当にまじめにやって下さい!!!ほんとにこの手離しますよ!?この場の全員殺しますよ!!!?」


「オレが悪かったっス!冗談!冗談っすから!2人とも手離したらダメっスからね?絶対っスよ!?」

 

「茶番が長いんじゃ馬鹿共!!!いいからはよやれ!!!」


 ポセイドンのツッコミもありつつなんとか状況を立て直し、ヘシオドスがホメロスのポーチから短剣とロープを取り出した。

 

「スノリ、ちょっと手貸して…」

 

「わかりました!」

 

 ホメロスを離せないスノリとストゥルがなんとか2人で協力してロープを短剣に縛り付ける事が出来た。

 

「コイツをどっかに引っかければ…、よしあの柱にするか…」

 

 崩壊したこの城ならナイフが引っかかりそうな場所は幾らでもある。

 ストゥルはバランスを保ちながら、短剣を投げて、うまい具合にむき出しの柱に引っ掛ける事に成功した。

 

「…よし、うまく引っ掛かった!コイツを引っ張るっスよスノリ!」

 

「息を合わせて下さいね、行きますよ?」

 

「「せーーーの!!」」

 

 みんなで息を合わせて引っ張って、どうにかホメロスの体をしっかり掴める位置まで引っ張ってくる事に成功した。

 

「よし、あと一息だ!」

 

「もう少しっスよ!頑張って3人とも!」

 

「最後の一息行きますよ?」

 

「「「せーーーーーーの!!!!」」」

 

 グググッ、とホメロスの体を引っ張り少しずつゼウス達が手の届く範囲まで降りて来た。

 

「よし、みんな手を!」

 

 助けられた、と思ったその時。

 

 

 

 


 グサッ!!!

 

 

 

「ッ!!!!!!?」

 

 ホメロスの右手の甲に、深々と万年筆が刺さり、痛みでホメロスはポセイドンの手を離してしまった。



「「「うわあああああ!!!」」」



 ゼウス、ポセイドン、ヘラの3人は一瞬にして空の黒雲に飲み込まれて行った。

 

「みんな!!!!」

 

「ゼウス!ヘラ!ポセイドン!」

 

 スノリとストゥルが必死に呼び止めても3人は戻って来ない。

 グリグリと万年筆はホメロスの腕を抉り、ドクドクと黒いインクが溢れ出す、ホメロスは万年筆を握っている男の顔をゆっくり見上げた。

 

 崩れた城の壁に悠々と座り、こちらを見下す冷たい瞳に嘲笑する様に吊り上がった口角、ホメロスの男を見る目が血走った。

 

「貴様………」

 

「お前は要らねぇんだホメロス、ここから先は物語の邪魔だ」

 

「貴様アアァァァァァァァ!!!!!!」


 ズシャ!!


 ホメロスは手の痛みも忘れて思い切り腕を引いて突き刺さった万年筆を力任せに抜いた。


 ブォーン…!


 そして体制を立て直して飛び上がると、手についたインクが指の隙間から溢れ出す程、力の限り拳を握りしめて男の頭上から拳を振りかぶると、ホメロスの拳からは青い波動の様なものが出現し、拳を中心にホメロスの右腕を包んでいる。

 

「ホメロス様!!!?」


 その時、ホメロスの背中を見ていたストゥルがホメロスの頬から一粒の涙が溢れているのが見えた。


「あれは…まずい!!!スノリ!離れろ!!!」


「え!?」


 ホメロスの涙を見て何かを察したストゥルがスノリを抱き抱えて壊れた壁を乗り越えて下の庭園に避難した。


 キィィィーーーーーーーーーーン!!!


 拳の波動は瞬く間に強くなり、中心にある拳は青く眩く強い光を放っている。


「邪魔はお前だろうがァァァァァ!!!!!!」


「フッ」


 何が可笑しかったか男の口角が更に上がる、その次の瞬間ホメロスの振り下ろした拳が男の顔面を直撃し、膨大なエネルギーの波動が男を飲み込んだ。


 ドゴォォォォーーーーーーーーン!!!!!


 次の瞬間、波動エネルギーが大爆発を起こし、衝撃波が城の外壁を破って粉々に吹き飛ばした。

 拳をまともに受けた男も波動に飲み込まれ、塵と化して消え去った。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 地下広間


 空に吸い込まれかけていた王子様達の腕を何とか掴んで持ち堪えていたジャスパーとフォークは何とか王子様達を引き戻そうと奮闘している。


「姫!王子!もう少しの辛抱です!頑張って!」


「フォーク、このまま何とか扉まで移動しよう!俺が剣を伸ばして引っ張る!」


「おいジャスパー!フォーク!ニフィルスとラスターはどうした!?」


 王子様はここに来ていない2人の騎士の事を尋ねる。


「ここへ来る途中避難してきた国民達に会ったので2人は彼らの護衛に付きました!それが何か!?」


「お前達2人は使用人達や国民達以外とはすれ違っていないのか!?」


「?、ええ、私達が会ったのは彼らだけですが!?」


「ッ!!」


 繰り返しだがこの広間から外へ出る道は一本しかなく、反対側からやって来た騎士達は4人全員男の顔を知っている。

 つまり男が普通に出て行ったのなら男は彼らを素通りしてここを出られる筈はないのだ。


(また奴が消えた…)


「ジャスパー!フォーク!」


 ヘデラ姫が叫んだ。


「!?」


 呼ばれた2人はヘデラ姫の顔を見る。


「2人ともよく聞いて下さい!ここには先程までこの国を混乱に陥れた侵入者が居ました!!!」


「!!?」


「何ですって!!?」


「侵入者は私達を罠に嵌め、貴方達騎士の目を掻い潜りここを出て行きました!あの者は危険です!何としても排除しなくてはなりません!!!」


 するとヘデラ姫は王子様の方を見ると力強く言った。


「私を離しなさい!王子様!!」


「「!!!!!?」」


「何をバカな!!?貴方を守るのが俺の役目ですよ!!そんな事…!?」


「王子様!!」


「!!?」


その刹那、王子様の目にヘデラ姫の優しくも力強く、轟々と燃える炎の様な赤い瞳が映った、彼女ははまだ諦めていなかった。


「言ったでしょう?1人でも多く民を包み守る、それが国のあるべき姿。1人でも多くの民を救えるなら私はこの命に変えてもこの国を守りたい!!」


「姫様…」


 するとヘデラ姫は両手に抱えているアレスとアンドロメダの顔を見た。


「ごめんなさいアンドロメダ、アレス。私の我儘に巻き込んでしまって…」


「いいえ姫様!貴女の側に居れるなら私は何処までもお供致します!」


「ンーーーッ!!!ンーーーーッ!!!(ちょっ待て!嫌だ!!俺様は助けろ!!!)」


 ヘデラ姫は2人をぎゅっと力強く抱きしめると、2人王子様の方を向いて言った。


「王子様!!魔王の手からこの国を、世界を救った貴方の力なら誰が相手でもきっと敵いましょう!どうか…どうかこの国を、民達をお願いします!!!」


「姫!…そんな!!」


 パーーーーーン!!!!


「「「!!!?」」」


 すると突然の発砲音と共にスッとジャスパーの手が緩んだ、そして4人を支えきれなくなったフォークの手も無情にも王子様の手を滑って抜けてしまった。


「ッ!!?ジャ、ジャスパーさん!!?」


 ドサッ!


 フォークがジャスパーに声を掛けるとジャスパーがその場に倒れ込んでしまった。


「ジャスパーァァァ!!!」


 王子様が叫ぶ、2人の手が離れてしまった王子様は再び空に吸い込まれ始めた。


「スマナイガ、オ前達ダケハ連レテ行カネバコレマデノ犠牲ト釣リ合ワナイ」


「!!!」


 するとジャスパーとフォークの背後からローブを深々と被り、顔を隠した謎の人物がいつの間にか拳銃を構えながら立っていた。


「うわァァァァァ!!!!」


「キャーーーー!!!!」


「姫様ァァァ!!!!」


「ンーーーーーー!!!(助けてえぇぇぇぇ!!!!)」


 4人はそのまま漆黒の雲に吸い込まれて消えてしまった。


「あ、ああ…」


 主を失ったフォークはその場に力無く膝を付く。


「奴ハ我先ニ逃ゲ出シタカ…マァイイ」


 すると謎の人物は懐から一通の封筒を取り出すと。


「コレデ目的ハ果タサレタ…」


謎の人物はそう言うと封筒から手を離した、封筒は風に攫われ、そのまま漆黒の雲に吸い込まれて登っていく。


「貴様…」


 するとフォークが立ち上がり、懐から短い杖を取り出すと、杖の先から赤い炎が出た。


「逃がさんぞ…仲間を傷つけられ、主君を奪われたままでは終わらん!!!」


「流石ニ王子直属。コノママ膝ヲ付イテイテ貰イタカッタガ、ヤハリソノ程度ノ器デハナイカ…」



 混乱に混乱を極めた王国の空に一通の封筒が舞う、封筒は漆黒の雲目掛けてどんどん登ってゆく。


 封筒には宛先が書かれていた。



          


          「Mobius」


zろu「皆さんこんにちは作者のzろuです」


??「〇〇です」


zろu「いやー「Mobius」始まりましたが何事も初めての緊張感て言うのはいかんともしがたいものが有りますよね。〇〇さん何か感想あります?」


??「長い」


zろu「え?」


??「初投稿一発目に何万字書いてんすか?これは初っ端読者に切られちゃいますよ?」


zろu「か、覚悟の上だ…それでも僕は描きたいもの書いて…」


??「大体大事な1話目に主人公不在とか舐めてんすか?呉島のくの字も出てませんけど大丈夫です?」


zろu「うぐ…それは…」


??「幾ら何でもあらすじ詐欺にも程があるんじゃないですか?」


zろu「グハァ!(吐血)」


??「これはコメント欄は非難の嵐ですね、まぁこんな小説読んで文句言ってくれる人が居るだけ幸せだろうなって言うのが私の感想ですね」


zろu「ありがとうございます。痛み入るり過ぎて本当に心が痛いですねぇ、こんな感じで読んで感じた事はコメントでどんどん書いてもらえれば嬉しいです」


??「それでは叶うならまた次回のお話でお会い致しましょう」


zろu、??「またね!」

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