表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/144

第72話【 無謀な頼み事? 】


 グスタム家の屋敷の近くの林の中で、エル達は其々の情報を交換している。

アルガロス達から話を聞いた後、エルは最大限ににんまりしていた。


「こっちも見つけたよ、エインセルギルド!!! 地下牢に監禁されてた」


「ええ━━━━━━━━━━っ!!!?」


アルガロスもカルディアも、それらしい魔力は感じ取っていたので何かあると思っていたが、既に会えていた事に驚きだった。


「や、やっぱり居たか!! 幾つか魔力があったからな!」


「みんな元気だった??」


眉を下げたカルディアは、みんなの事を気遣って自分でも何か役に立つ事が出来ないかとの思いでそう聞いた。


「うん、大丈夫。元気だよ! でも、複雑に貴族がからんでるって事で、取り敢えず今まで通り現状維持してもらってる」


「そっかー、良かった良かった!! はやく出してやりてーな!!」


アルガロスは今直ぐにでも屋敷に突入しそうな勢いで、握り拳を作りながら腕をバタバタ動かしている。

そんな中、少し表情が変わったエルは、彼等を心配して遠くを見つめた。


「ただ……、リッサ姉ちゃんとコラース兄ちゃん。それに他のハンターの人達が危ない討伐に駆り出されてるみたいなんだ」


「危ない討伐?」


「うん。少ない人数で強制的にやらされてるみたいだから、俺は今からリッサ姉ちゃんを探しに行ってくる」


そう言いながら、エルは腕に付けていたモサミスケールを頭へと被せた。

カルディアもエルと同じ様にエインセルギルドの事は心配なので、同行しようと声を掛けた。


「それなら私達も行くよ!?」


「いや、明日クラウディーさん達がロードル家に行くっていってたから、2人には必ず今日中にヤブロスさんを見つけて、その箱を渡してほしいんだ」


エルは、箱の中の情報をヤブロスに見てもらうと、少しでも有利に話を進めてくれるんではと考えているのだ。


「はぁ?? この広い街から見つけろってか??」


当然の反応だろう。

大きい街だから、数多くの魔力が複雑に交差している。その中から目当てとなる1つの魔力を探し出せって事に、大きな弊害がある事は安易に想像出来るからだ。


しかし、エルはいつも通り超笑顔……。


「アルガロスなら出来るよ! カルディアもいてるしね!」


と、あっけらかんと言い放つ。


「まーたそれか!? 根拠が無いんだよ。出来る出来るってなあ」


「ん? 出来ないの?」


キョトンとした、不思議そうな真顔……。

エルは、アルガロス達を心底頼りにしているっていう思いを、その顔で表現していた。


「なっ!!?」


挑戦的な言葉とは裏腹に、信頼しているという思いを直球で投げてくるエルに対して、言葉を失うアルガロス……。

そして、アルガロスの心を揺さぶる様に追い打ちをかけていく。


「成長著しいアルガロスなら、出来ると思うんだけどなぁ…」


そんな言葉を聞いて、モサミスケールも眉を下げている。あからさまにおだててる言葉……。

カルディアもそれを分かっており、口に手を当て肩をすくめていた。


しかし、当のアルガロスは……、


「………」


「や、やってやるよ! 探し出してやるよ!!」


おだてられてる事に気付かず、頼られてる事に使命感を覚えて1人高揚している。

そして、ガッツリゼブロスポーズだ!!


「俺に任せとけー!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 <ザザザザザッ>


 暗闇を背に、1人森の中を走るエルがいる。


強制討伐に駆り出されたリッサ達を探す為だ。


エルは、魔力探知を最大限にしている為、あらゆる魔力が視界に入ってくる。

魔物が活発になる夜、勿論遭遇するが………、


<ゴボウッ>

<ザザンッ>



一撃、瞬殺。



音が出る魔法等は使わず、出来るだけ隠密行動が出来る様に、短剣だけで魔物を砕いていく。


エルはその様にして一心不乱に、真剣な眼差しで森の中を突き進んでいた。


『……、幾ら力があっても近くにいなければ助けられない……』


そんな思いが、心から湧き出ているのだ。

と、不意に、ある懐かしい魔力が感じ取れる。


『!!!』


『リッサ姉ちゃん、コラース兄ちゃんの魔力!!』


<ザザッ…………………………>


エルは森の中で身を隠しながら、なだらかに下る砂利道を見ている。

すこしすると、その砂利道を進む荷馬車の影を捉えた。


少し近づいて様子を見る。


『やっぱりリッサ姉ちゃん達だ』


荷馬車を引く馬を操っているのが、コラース。

その後ろ、御者用の荷物置き場に座っているのがリッサだ。


荷馬車の中には、他のハンター達が荷物と一緒に座っている。


そして、少し離れて1人馬に乗る男がいる。

呪いの魔法を操るフェイスマスクの男だ。

エルはVOICE(ボイス)で相手のステータスを観察している。



『なるほど、こいつが呪い魔法を』



<ヒュオオオオ━━━━━━━━━━━………>




生暖かい風が彼等を包む。

すると荷馬車が進む前に、怪しい影が現れた。


コラースとリッサがその影に気付き、注意深く警戒しながら荷馬車を止めた。

魔物が活発になる時間帯だからだ。


リッサが他のハンター達に注意を促そうと、立ち上がった時、思わぬ光景を目にする。

それは………、


その影が……、マントを羽織り劇場用の笑った仮面を着けた赤毛の男が、元気よく手を振っているのだ。

そしてあろうことか、大声で……………………、


「リッサ姉ちゃーん、コラース兄ちゃーん!!!」


と………。


2人共その声を聞いて、エルだと確信する。


荷馬車に乗るハンター達も当然その声はハッキリ聞こえているので、何があったのかと身を乗り出してきた。


だが………、今は囚われの身。

後ろにはフェイスマスクの男………。


リッサは、エルは今の現状を把握出来ていないと考え、完全に間に合わないだろうが、手で大きくバッテン印を何度も何度もしていた。


「アハハハハー、バッテンバッテン!!」


劇場用の笑った仮面を着けた赤毛の男エルが、また大声で笑い、リッサと同じ仕草を……。


たまらずリッサは荷馬車から飛び降り、フェイスマスクの男にはもうバレてるだろうが、自分達の置かれた状況を小声で口早に伝えようと、エルに近付いた。


何故なら、逃げて欲しかったからだ。


しかし………、



「ジャジャーン!! 盗賊参上!!!」



と大声でマントを翻し、ポーズをとったのだ………。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ