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第70話 【 女の子を襲う魔の手 】


 地下牢(• • •)への入口。


女の子は、黒い鍵を使い解錠する。

そして、重そうに鉄柵を開けた。


<ギギッギギー>


鉄が擦れる音が、牢屋がある部屋へと響き渡る。


<すうーっ>


女の子の後ろを生暖かい風が通っていくが、それに気付かない女の子は、消えたロウソクを交換し火をつける。


小さな光が、弱々しく部屋を照らす。鉄格子が並ぶ沢山の牢屋。其々の中に、複数人が入れられている。

 

「体調はどうですか?」

「変わり無いですか?」


と笑顔で声をかけながら、盆に乗せた簡易的な食事を配って行く。その女の子からすると、この時だけ気が許せる時間なのだろう。


何故なら……、この女の子同様みんな首に刻印された者だからだ。

しかし、返事は無い……。

牢屋に入ってる者達が喋ると、刻印が反応し激痛が身体を蝕む様になってるからだ。


牢屋に入っている身体の大きな男が、女の子の足を指差している。そして隣の牢屋の壁を<トントンッ>と叩き、何か合図を送っていた。


笑顔の女の子は、その身体の大きな男にペコリと頭を下げる。


「いつも気にかけてくれて有り難う御座います」


手を振る男を後にして隣の牢屋へ行くと、女性が手招きしている。

女の子は血の滲む足を、その女性へと出した。


<パァーン>


詠唱無しの回復呪文。詠唱無しでは回復力がかなり劣るが、これくらいの擦り傷なら難なく治癒出来る。

 

女の子は何度も何度も頭を下げて感謝の気持ちを表し、治癒魔法を掛けた女性は、優しい笑顔で手を振っている。


その時、


<パンッ>


突然小さな弾ける音と共に、怪しい黒い光が女の子を包んだ。

気を失いゆっくり倒れて行く女の子が、牢屋へ入れられた者達の目に映り込む。


彼等は驚き鋭い目つきで立ち上がり、鉄柵を掴むが何も出来ない……。


倒れゆく女の子の背後には、赤毛で劇場用の笑った仮面をかぶった怪しい男がユラリと立っていた。


<フオオオオー……>





 手にロウソクを持ちながら、とある部屋を物色しているアルガロスとカルディア。

何でもいいので、エインセルギルドに繋がる資料が無いか探しているのだ。


時折ロウソクの火が照らし出す物には、豪華な置物や土産品、本棚等がある。

どうやらグスタム子爵の個人的な部屋みたいだ。


カルディアは眉を下げながら腰に手をやった。


「いくつか部屋を探したけど、見つからないわね…」


「この部屋、子爵の部屋っぽいけど、こう薄暗くちゃ探しにくいぜ……」


そう言いながらアルガロスが豪華な机の引き出しを開けると、頑丈な鍵が付いたとある箱が出て来た。


「なんだ? この箱は」


とアルガロスは手刀を作り魔力の刃を鍵へと流し込む。


<パキンッ>


と鍵が弾け飛ぶ。


フタを開けて中を見ると多くの用紙が入っており、その用紙を見たアルガロスは、とても驚いた表情をしている。


「どしたの? アルガロス」


「こ……これ見てくれ」


エインセルギルドの人数やクラスが詳細に書かれた用紙が出て来たのだ。

別の用紙には、テリオスギルドと書かれており、ハンター5人の詳細が明記されている。

もう一枚、ロードル伯爵家衛兵とその娘と書かれた用紙も出て来た。


それ以外の多くの用紙にも、ギルド名や個人名が書かれているが、大きくバツ印が書かれていた。


其々律儀にグスタム子爵のサインがされており、囚人名簿と記されている。


「これって……、今までさらってきた人達の……」





 シモニアが、顔をゆっくり部屋の外へと向ける。

何かを感じ取っているのか、鋭い目つきで首を微かに傾けた。


『……、今までに無い魔力の気配が……』


グスタム子爵が何やら喋っているが、聞く様子も無く部屋の外へと集中している。


『………、何かが………』


シモニアはスクッと立ち上がり、グスタム子爵へと顔を向けた。


「私はコルディスコアを持って、パタラエ村へ行ってきます。他の者にもそう伝えて下さい」


「えっ? 今から?」


グスタム子爵は慌てた様子だが、シモニアは動じずそそくさと部屋を後にする。


外に出たシモニアは、馬に乗りながら一度振り返り、鋭い目つきで屋敷を睨んでいる。


『……俺の勘違いか……?』


そう思いながら、馬を走らせ屋敷を後にした。





 薄暗い牢屋の部屋。

気を失った女の子は、赤毛で劇場用の笑った仮面をかぶった男に抱きかかえられ、地面にうつ伏せで寝かされてしまう。


その動作の途中に感じたある魔力が、遠ざかって行く。


『!…、さっきの魔導師か……』


そしてまた女の子へと目線をやり、首へと手を当てた。


「やめろ!! 女の子は関係無いだろ」


その瞬間、声を上げた身体の大きな男が、ガクンと下へ沈む。


「うぐううぅっ」


刻印の呪いが発動したのだ。

激痛に顔が歪むが、守る事が出来ない女の子へと必死に手を伸ばしていた。


その時、何故か聞き慣れた声が笑った仮面から響いてくる。


「大丈夫だって! 刻印を解呪するだけさ!!」


「!!!?」


身体の大きな男の他に、囚われてる数人がその声に違和感を抱く。

隣の牢屋にいた女性も鉄柵を握り締めながら、少し驚いた表情をしていた。


身体の大きな男は、苦痛に耐えながらさらに口を動かしていく。


「……その声、君は……うグッ…もしかして、エ……」


その言葉に被せるように、笑った仮面の男は自身の立場を簡単に説明した。


俺達(• •)は盗賊だよ! 名前の無い盗賊。だからあなた達と登録している街とは無関係なんだ!」


「!!!?」


囚われているハンター達は、その内容を聞いて何かを察する。

笑った仮面の男はそう言いながら、女の子の首に触れた手のひらに魔力を流す。


<ズリュリュリュッ>


手のひらが淡く光ると、刻印から黒いモヤが出てきて空間へと消えていく。


「これで大丈夫!」


と、笑った仮面の男はゼブロスポーズを決めていた。




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