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第65話【 強制された討伐 】


 メテリウム遺跡のオレンジダンジョン前。


灰色のフェイスマスクとローブで全身を隠した薄気味悪い男が、ニタニタ笑いながら5人のハンターを監視する様に立っている。

その足元には、頑丈そうな箱が<フワリフワリ>と浮かんでいた。


そしてオレンジダンジョンの前迄歩み寄り、魔力濃度を測っている。


「魔力濃度2064か。オレンジ成り立てのまま(• •)だな」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

レベルC:オレンジダンジョン

魔力濃度 2,001〜4,600

最低攻略人員:クラスBが3人。クラスCが4人

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


槍斧(そうふ)の男、準備が出来たら入って行けよ」


フェイスマスクの男は、40代半ばに見える槍斧(そうふ)を操る男にそう声を掛けた。


寄せ集めたハンターだからだろうか、フェイスマスクの男は彼等を名前で呼ばず、持っている武器で呼んでいるようだ。


槍斧(そうふ)の男、剣のリッサ

双剣の男、杖のコラース、弓の女、

と言う具合だ。

彼等も同じく、名も知らない仲間を武器名で呼ぶように指示されている。



槍斧(そうふ)の男は、魔力感知能力が高く、今回のメンバーのクラスもある程度予測出来る為、チラッと目線を後ろへやった。


『……今回のメンバーは、俺がA。双剣の男がB。

剣のリッサ()。弓の女がC。杖のコラース()か……』


『メテリウム遺跡では戦力不足だな……また死人が出るぞ……』


そう思いながら、苦悩の表情で唇を噛んだ。


指示されたダンジョンを、幾度となく討伐してきた  槍斧(そうふ)の男は、不安そうにオレンジダンジョンを見つめ、そのままダンジョンへと入って行った。


続いて剣のリッサもダンジョンへと入って行ったが、目はつむったままで何やら難しい表情でぶつぶつとつぶやいている。


『オーラの波を……速く、狭く、鋭く』


そうこれは、バルコリン近くの小川が流れる所で、エル達の訓練に同行した時に、彼等が良く口ずさんでいた事。


リッサはエル達から離れてからも、頻繁に身体の中(• • • •)の魔力の流れ、波を操る練習をしていたのだ。


すなわち、オーラ循環速度を上げれば、魔力が上がる事を意味する。


それは杖の男、コラースも同じだった。

リッサから、エインセルギルドのメンバー全員に練習する様に伝えていたのだ。



<フオゥ……>


槍斧(そうふ)の男が、<ピクリ>と何かに反応する。


オレンジダンジョンの中に吹く、冷やかな風に違和感を感じたからだ。それに微かに異臭も漂っている。


リッサも同じく違和感を抱いて目を開けた。


槍斧(そうふ)の男が歩きながら、横目でフェイスマスクの男の方に目線をやる。


「……このダンジョン、俺達が初めてじゃないな」


「黙って歩け! 愚民」


最後尾からみんなを監視しているフェイスマスクの男が、気だるそうに受け答えする。


「……このダンジョンの情報くらい教えてくれてもいいんじゃないか? 安全にコルディ(• • • •)スコア(• • •)を持ち帰りたいんだろ!」


その言葉を聞いたフェイスマスクの男が、突然短杖を持つ手を伸ばし、口早に詠唱した。


「アナテマ・ヴァルトス」


<ギュオンッ>


槍斧(そうふ)の男の首の後ろが赤黒く輝き、沼に引き込まれる様に地面へとひざまずく。


「うグッ…」


身体に激痛が走っているのか、苦痛に歪む槍斧(そうふ)の男の顔。


フェイスマスクの男が伸ばす腕には、無数の刻印模様が描かれており、威圧感さえ感じる程だ。


その男が唱えたのは、呪いの魔法。

この魔法は、あらかじめ対象となる人物に刻印しておけば、いかなる時も即時に発動する事が出来るのだ。


主にこれは、奴隷や犯罪者に刻印し、反発・反乱出来ない様にする為の魔法。その刻印が、リッサ達や他のハンター達にも刻まれているのだ。


「喋るな! お前達はただ魔物を倒せばいいんだよ」


リッサ達は現状を見守るしかなく、軽々しく動く事が出来ない。

何故なら……、この刻印だけでなく、反発すれば捕らえられ(• • • • •)てる仲間(• • • •)の命に関わるからだ。


すなわち、人質を取られ、呪いの刻印をされた状態でこの討伐に駆り出されているのだ。


ゆっくり立ち上がる槍斧(そうふ)の男。

フェイスマスクの男は呪いを解いたが、それでも肩が揺れ、苦しそうにしていた。


ゆっくり歩き出す槍斧(そうふ)の男は、険しく、悔しそうな表情で声なく進んで行く……。

リッサ含む他のハンター達も、暗く、険しい表情で歩いて行った。


少し歩くと……、ぬかるみになった地面にハンターが使ったとおぼしき武器が散乱している。

そして……見知らぬハンター達の遺体が………。


鼻に手や腕を付けるハンター達。腐乱した臭いが漂っているのだ。


腐乱した遺体にはいくつもの穴が空き、一部白骨化した死体が無惨に放置されていた。


フェイスマスクの男がニタッと笑う。


「力無きハンターはこうなるんだ。必死に戦えよ」


「アハハハハー」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 夕方のドラントスの街を歩くエル達の姿がある。


エルは忙しそうに、キョロキョロと何かを探してるようだ。

これからの事を気に掛けてるアルガロスは、ちょっぴりイライラモード。


「今晩潜入するんだろ!? こんなとこ歩いてていいのかよ?」


カルディアも同じく心配しており、今後の行動を話し合っておきたいのだ。


「ねぇエル。作戦練らなきゃ駄目なんじゃない?」


「あっ、あった!!」


アルガロスとカルディアの話しを全く気にせず、見つけたのはお土産屋。

そしてある物を指差した。


「これこれ!! 顔を隠せるだろ!」


それ(• •)を見て唖然とするアルガロスとカルディア。


指差す先には、目元を隠すアイマスクやフェイスマスクが並んでいたのだが……。

それは、お祭りやイベント用なので派手な物やウケを狙った物だらけ………。



「おいっ!!!!!」



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