表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/164

第59話【 巧みな誘導? 】


 林に面した古びた倉庫を眺め、回りを注意深く観察している。


『やっぱココだな…』


ヤブロスが契約書を片手に入って行くと、白髭を生やした老爺と40代位のおじさんが、滑車の付いた手動ウインチを使い、大型馬4頭立ての荷馬車に岩を積み込んでいる所だった。


この大型馬はペルシュロン種で、大きなものでは2メートルを超える。体重は1トンにもなり、サラブレッドの倍ほどになる。

性格はおとなしく鈍重だが、非常に力が強いので、重い荷物を運ぶのに適した馬なのだ。


それ以外に、1頭の普通の馬が倉庫手前の馬槽(うまぶね)で水を飲みくつろいでいる。


ヤブロスは、回りを注意深く観察しながら男2人に声を掛けた。


「あのう、依頼を受けて来たんですが」


そう声を掛けると、白髭を生やした老爺が振り向き、睨みながら空気の抜ける口調で話し出した。


「ああ、管理局 (フゥ)からだな。俺はイリアス(フゥ)、こっちがヤニス(フゥ)だ」


前歯が無いので息が抜けて聞き取りにくい……。


「ヤブロスです。宜しくお願いします…」


イリアスと言うその老爺は、倉庫の方を指差して眉間にシワを寄せながら早速指示を出す。


「ありゃーお(めえ)が乗る(フゥ)(フゥ)馬だ。餌でもやっとけ!」


「それと倉 (フゥ)庫内にエール(フゥ)やワインの荷物 (フゥ)持ちが居る(フゥ)から、もう(フゥ)す(フゥ)ぐ(フゥ)出 (フゥ)発 (フゥ)だと伝 (フゥ)えてこい」


息が抜けまくる言葉遣いに戸惑いや笑いが込み上げてくるも、ヤブロスは敏捷術戦士だ。顔に出すわけにはいかない。


「ハイ……」


『意味が……、多分超ぶっきらぼうだよな……』


ヤブロスがブツブツ言いながら、倉庫へ歩いて行くと、ちょうど中から人が出て来た。



『えっ!?』



一瞬自分の目を疑う。


こちらを見て笑顔で手を振っている見慣れた(• • • •)子供達(• • •)が3人………。

エル、アルガロス、カルディアだ。


『ハアッ?????』


「き、君たっ…」


とヤブロスが言いかけると、エルはすぐさま元気よく言葉を被せ(• •)てきた。


初めまして(• • • • •)、宜しくお願いします!」


『?……!!!』


もしかしたら彼等は……、“ 極秘 ” の内容を知っているのか!?……。と、ヤブロスは戸惑い悩んでいる。


何故……。“ 極秘 ” だからこそ理解しがたく確認したかったが、近くには花壇に水を撒く老婆がいるので聞かれたらまずい。


そう考えてるうちに、子供達はその老婆に近付き談笑している。

その話の流だろうか、老婆が腕を痛そうにしていたので、エルが様子を見、カルディアに治癒魔法をサラッと掛けてもらっていた。


笑顔になった老婆に手を振りながら、彼等は荷馬車の方へと歩いて行く。


ヤブロスは馬に餌を与えながら、彼等の背中を見て少し戸惑い呆然としている。


『……、ん━━━━━………』


『どう判断する…。どう行動するか……』


さすがのヤブロスでも、余りにも意表を突いた突然の出来事に、驚きと戸惑いが止まらない。

餌をやる馬が頭を<ゴツンッ>と当ててきて、ヤブロスは反動で仰け反りながらも…無言のままだ。


「おい、にーちゃん。まだか? 出発するぞ」


息子のヤニスから飛んできた言葉で気を取り戻し、いそいそと馬にまたがり、荷馬車の方へと近付いていった。




 野原をユックリ歩く大型馬の荷馬車。

重い岩を積んでいるので、人が歩くより少し速い位のスピードだ。

パタラエ村まで片道2時間程の道のりを、荷馬車、エル達、ヤブロスの順に進んでゆく。


『あの発言……。この子達も、エインセルギルドの情報を探しているのか?……』


馬にまたがるヤブロスは、荷物を背負うエル達の後ろ姿を眺めながら、やはり頭が回らない。

荷馬車の後ろに乗るイリアスと言う老爺は、暇なのだろうか、そんなエル達に向けて話し掛けてきた。


「お前達のク(フゥ)ラス(フゥ)は何だ?」


話すきっかけを向こうから作ってきたので、エル達はニコニコ顔だ。

カルディア、アルガロス、エルの順番で手を挙げながら答えていく。


「E、F、Gでーっす!」


「がファファファファッ。男どもは最弱 (フゥ)ク(フゥ)ラス(フゥ)じゃないか!」


息が抜けまくる笑い方としゃべり方で、エル達を煽るイリアス。


「もっと、(フゥ)訓練しなきゃ魔物に喰 (フゥ)われっちまう(フゥ)ぞ!」


「今、訓練中だもんねー!!」


と、エル達は顔を見合わせて白々しく頭を傾ける。

そんな彼等の姿を見ているヤブロスは、” エレティコス秘境 “ のイエローダンジョンの事を思い出しながら、超〜疑いモードだ。


『……多分…。いや、確実に俺より強いのに……』


エルは少し荷馬車に近付きながら、また言葉を交わしていく。


「イリアスさんはクラス何?」


「わしゃー、ク(フゥ)ラス(フゥ)Dのもと重 (フゥ)戦士じゃい。息子のヤニス(フゥ)もな!」


「へっえー、強いんだね! 魔物なんかもやっつけちゃったり!?」


「当たり前じゃ。これでも(フゥ)昔ゃーギル(フゥ)ドに所属 (フゥ)しとったんじゃぞ!」


イリアスはご機嫌なのか、腕をブンブン回している。そんなイリアスを見て、カルディアがさらにご機嫌になる様な話を振っていく。


「すっご〜い!! ね、ね! 力こぶ見せて!!」


「フンッ」


袖を捲り、力を入れるとこんもり盛り上がる力こぶ。イリアスはそれを見せびらかす様に、荷馬車から乗り出している。

そこにカルディアが近付いて、指でツンツンしている。


「うわあ! カッチカチ!! 凄い筋肉ですね! ハンター辞めたって言ってたけど、どうやって筋肉保ってるんですか? この運搬業で? 」


カルディアの言葉に少し詰まるイリアス。

急に真顔になったが、口は動いていく。


「…わしゃー採石屋じゃ……。今じゃあこんなやりたく(• • • •)ない(• •)運搬業もせな生活していけんがのぅ……」


「やりたくない? なんで??」


とエルが何気なく問い掛けると……。


グスタム(• • • •)のせいじゃ……」


顔を歪めながらそう答えるイリアスの言葉に、エル達やヤブロスが<ピクリ>と反応する。


しかし、御者をしている息子のヤニスから話を遮る様に言葉が飛んできた。



「オヤジッ、喋り過ぎだぞ!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ