表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/164

第47話【 追い込まれる命 】


 醜いモリンシゴーレムの群れが、後ろから迫ってくる。

逃げ場の無い状況に……、みんな不安な表情を浮かべるしかなかった。


その時、


<バッ>


前に出るクラウディー。


「炎で……蹴散らしてやる…」


唇を噛み締める様に言葉を絞り出す。

自信家で猪突猛進。今まではそうだった。


しかし何度も想像し得ない窮地に陥り、仲間達も同様に苦境に直面している今、クラウディーの心は “ ギルドマスター ” と言う肩書に押し出される様に責任感を果たそうとしていた。


そんなクラウディーにマイケルが近寄っていく。


「俺達は一心同体だ! とことん行こうぜ!!」


口を真一文字にしながら、マイケルはクラウディーの肩へ拳をあてた。

長い付き合い。彼等はお互いにそれぞれの心情が分かる間柄。


「ああ、何もしないよりましだからな」


<ボフウッ>


クラウディーの手に炎が灯りだす。

一刻を争う状況の中、クラウディーは既に戦闘態勢に入っていた。


「俺の炎でやられない様に、岩の影に隠れてろよ!!」


そうみんなに注意を促す。

クラウディーのその言葉で、幾つかの大きな岩陰に走るメンバー達。

そんな行き場の無い状況の中、ヤブロスが大きな岩の後に隠れた時、彼の髪が揺れた(• • •)


<ヒュオ……>


「!? 風?」


振り向くと後ろから……、奥まった所から()が吹いてくる。調べると2㍍四方の洞窟がひっそり佇んでいた。


『中から風が吹いて来る!?……、外に繋がってるんじゃ……!?』


ヤブロスが岩場から出て来て、大声で叫んだ。


「ここの大きな岩の横に2㍍四方の洞窟がある。中から風が吹いて来るんだ! 外に繋がってるんじゃないか!?」


<ドフッ>


ヤブロスの声と共に、クラウディーの炎の攻撃が始まった。


フレイム()ショット()


<ゴウオオオー、ドフッドフッドフッ>


炎を避けるモリンシゴーレム。

クラウディーは次の動作に入りながら叫んだ。


「そこに走り込め!! 行けーみんな!!」


「エクスプロ(爆破)ージョンフレイ(裂炎)ム」


<バゴウバババババババッ>


数体のモリンシゴーレムに直撃するが……、体液となり地面を流れ……また集まり出す………。


『………無理か……。しかし、足止めには!!』


「エクスプロ(爆破)ージョンフレイ(裂炎)ム」


<バゴゴゴゴッゴウオオオー>




 爆風と熱が吹き荒れる中、みんなはヤブロスの所に集まり、風吹く2㍍四方の洞窟を覗いていた。


「…この先が……あればいいんだがな」


ヤブロスは口早に、願う様にそう語った。


「行くぞ!!」


緩やかな下り坂になった洞窟に駆け込むメンバー達。

小さな魔光石が淡く光を放ち、行先を薄暗く照らす様に奥へと続いている。


マイケルだけが、まだ穴の手前に残っていた。

クラウディーの炎の爆風で、身体からチリチリと煙が上がるが、お構いなしに大岩の下を調べていた。

そして振り返る。


「クラウディー!! この大岩の下の石を中から爆破してくれ!!」


「!?」


「穴を塞ぐ事が出来るかもしれない」





 薄暗く、淡く光る洞窟の中。

走るメンバーの先から奇怪な音が響いて来る。

走りながらも、ヤブロスはその先に目を凝らしていた。


「何かいるぞ!!」


薄暗い洞窟内、岩で暗くなった闇にうごめく緑色の肌。そこに黄色やオレンジの模様が混ざっている。醜い容姿をさらに醜くしているのは……。


「ゴブリンデフォーム!」


ゴブリンデフォームが複数体現れたのだ。


<バッ>


アルガロスが飛び跳ねながら前に出る。

ヤブロスは止めようと手を伸ばすが……既に遠くへ。

アルガロスは鞘から剣を抜き………突っ込んでいく。


<ザザンッズババババババババッ>


狭い洞窟内。戦いにくい足場。不利な状況だが………ゴブリンデフォームの肉片が宙を舞う。

その戦い方にヤブロス含め、他のメンバーも………目を奪われていた。


「急所を狙い確実に一撃で仕留めてる………。そして、斬り刻んで後続の視界を奪う………何て奴だ……」


アルガロスが佇む後ろから……、狭い洞窟の奥から異様な音が響く。


<ゴリゴリジャリッ>


そして少ない光を反射しながら岩に手を掛け、狭い洞窟を塞ぐ様に魔光石をまとった太い腕が出て来た。


<ゴグリッジャリッ……>


<ゴリゴリジャリッ>


ヤブロスの表情がこわばっていく。


「ま、まさか……トロールカレットまで!!!?」


トロールカレットの身体の中の光が、勢い良く渦を巻きだした。

ヤブロスは前回の事を思い出し、声を張り上げる。


「みんな伏せろ!!!」


危険なその光の渦が、突如身体表面へと高速移動する………………前に、


<バフッ>


素早く動き、トロールカレットの懐に入り込むアルガロス。そして、躊躇無く剣を振りかざした。


「させるか━━━━━━━━━━━━!!!」


<バリバリバリバリッバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッ>


トロールカレットの指や腕が粉々になりながら……淡く輝きアルガロスを包んでいく。

そして……。


<バリバリバリバリッバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッバリバリバリバリバリバリバリバリッ>


<ズザンッ>


トロールカレットの胸の魔光石を斬り刻み、心臓と一緒にコルディスコアを……剣で突き刺した。


コルディスコアから噴き出る魔力。コルディスコアを割られては、魔物は生きて行けない。



アルガロスの力は……実践でまた上がっていたのだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ