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第43話【 彼等の力 】


 流れ落ちる淡い光に包まれながら現れたのは……アルガロスだった。


『……しょう…ねん………』


クラウディーはアルガロスの背中を見つめながら、何が起こったのか分からないこの現状を、只々眺めるしかなかった。


アルガロスは素早くクラウディーへと近付き、袋から ” 例のお団子 “ を取り出す。


「クラウディーさん、早くこの団子を食べて!!」


「さっきの魔物の攻撃で、後ろの岩が崩れて戻れなくなってるんだ」


「な!? なにぃ……」


足止めして後退しようと考えていたが……、それも出来なくなってしまった。


アルガロスはお団子を手渡そうとするが、クラウディーは何故かボーッと空間を眺めているだけ。

しかも、顔色が真っ青になっている。


「クラウディーさん! クラウディーさん!!」


どうやら状況が飲み込めず、思考が空回りしている様に見えた。

アルガロスはクラウディーを激しく揺すり、正気を取り戻してもらう為に、“ 超〜苦いお団子 ” を口へ突っ込んだ。


<ガブン>


「ん?」


<モグモグ、ごっくん……>


「にがっ!!!!!」


クラウディーは仰け反りその苦さから逃げようと悶えてるが……、もちろん逃げられない。

のたうち回りながらも、身体が回復していくのが実感出来る。それどころか魔力もほぼ全快していく。


怪我は治らないが、それ以外はほぼ全快なのだ。

その時、クラウディーの後ろから治癒魔法が飛んでくる。


パーフェクトヒール(完全回復)


<パァーン>


「えっ……」


怪我がたちまち治っていく。

振り向くと、そこには少年達の仲間のカルディアが手をかざしていた。


「クラウディーさん、みんな無事です! お団子を食べてもらったから!! 全員元気ですよ!」


カルディアの笑顔がクラウディーを勇気づけていく。その後ろには、立ち上がって来るいつものメンバー達が見えた。


「き……君達は………何なんだ………」


さっき迄、ほぼ全滅状態だったカークスギルドだが、今はみんなが元気に立っている。

驚きを隠せないクラウディーは、それ以上言葉が出てこなかった。


<コポコポ……>


トロールカレットの腕から異音がする。アルガロスの目に飛び込んできたのは、飛び散った魔光石の屑がトロールカレットの腕へと集まり、手を再生しようとしていたのだ。


「それよりアイツを見てくれ。俺が刻んだ腕が治っていくんだ……どうすればいい?」


ここでクラウディーはようやく現状に気付いた。血液が多く流れ出た影響で、頭が回らなかったのだ。

クラウディーの目に、再び生きた火が灯る。


「………君は、いや、アルガロスだったな!」


「うん!」


「後退出来ないって事は、アイツを倒さなければいけない……。が、アイツは再生能力を持っている。時間を掛ければ掛ける程、再生していくだろう」


「だから、あの硬い魔光石をアルガロスが砕いた後、即俺の火炎魔法で再生出来ない様に融解(• •)させる」


「ゆ、融解!?」


驚くアルガロス。融解とは溶かす事だと知っているが、そんな珍しい魔法は見たことが無いからだ。


「ああ。ピンポイントでな! 俺が融解させる時はちょっと(• • • •)熱くなるから、離れとけよ!」


そう伝えるクラウディーから笑顔がこぼれる。

完全回復した彼の笑顔から自信が溢れていた。


「分かった!」


アルガロスがそう答えると、クラウディーは後ろを振り向いて優しく指示を出す。


「カルディアちゃん! みんなにも近付かない様に言っといてくれ!」


「それと、ヘルンはいるか?」


クラウディーは、クラスCで補助魔法戦士のヘルンを呼んだ。


「ハイ、居ます!」


「俺とアルガロスに防御力アップの魔法を!!」


「はい!」


ヘルンは2人に素早く近付き、杖をかざして詠唱した。


アミナ インクリース(防御力増強)


<パァーン>


2人の身体が一瞬光に包まれる。

直後、クラウディーはアルガロスの方を向いてうなずぎ、肩に手をやった。


「頼むぞ、アルガロス!!」


「分かった!!」


お互いにゼブロスポーズをこれでもかと見せ合った後、アルガロスはトロールカレットの足元に飛び込んでいった。


<バシュンッ>


それを見たクラウディーは、躊躇のない彼の行動に只々驚いていた。


『凄く勇敢な奴だ……。無謀とかじゃ無く、ちゃんと弱点を見出して腕の無い方へと飛び込んでやがる!!』


『………戦いに慣れてる奴の判断だ………あんな子が………』


<ガキンッ>


硬い魔光石の外殻に弾かれるアルガロスの剣。

まだまだオーラの波をコントロールしている訓練中なので、完全ではないのだ。

悔しそうに口を噛みしめるアルガロス。


『もっと…もっと鋭く、速く、小さな波に!!』


<ガキンッ>


<キンッ…バズバズバババババズッ>


<ズパーンッ>


オーラの波を、小さく鋭く、速くなる様にコントロールして、アルガロスがトロールカレットの腕を斬り落とした。


魔光石の淡い光をプスプスと放出しながら、トロールカレットの腕が落ちて行く。


<ドスンッ>



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