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第22話【 オーラ循環速度 】


 切り立った岩壁近くの森の中で、少年達の会話の中にダミ声も混ざって聞こえてくる。


【 ほれっ、構えろ! 】


「ハイッ!!」


 考える暇を与えられずアルガロスは大きく返事をし、剣を取り出して身構えた。

考える事を強制的に排除され、半ば脅しの様なモサミスケールの指示に、身体が勝手に反応する。


それは恐怖に支配された奴隷の様に、抵抗する術なく従順になるしかなかったのだ。


激レアスキル……。長い人生の中で出会う事が稀なスキル。その中でも召喚魔法は魔物(• •)を扱う危険な魔法だ。


操る事が出来なければ召喚者自身や、回りの人達に甚大な被害が出る。


そんな魔法により召喚された魔物に………、アルガロスは命令されていると思い込ん(• • • •)でいる(• • •)


【 ホレ、利き手だけで剣を持って、目の前の枝を剣の重さだけで斬ってみろ 】


「えっ? はっ、ハイ!!」


モサミスケールの指示の意図は理解出来なかったが、その通り行動するしかない。指示通りにしなければ……何を(• •)されるか分からないからだ。


「こ、こうですか……?」


アルガロスは片手で、剣の重さだけで腕を振り下ろした。


<ガツッ>


枝に少しだけ食い込むアルガロスの剣。そらそうだろう。ほそい枝でも力を入れて剣を振り下ろさなければ斬れないのだから。


【 それがアルガロスの剣だけの斬れ味じゃ。次は枝を斬り落とす勢いで剣を振れ! 】


魔物の様な形相でアルガロスを睨むモサミスケール。当の本人は、至って普通の顔をしているのだが。

そんな二人をエルは笑顔で見守っていた。


「ハッ、ハイッ」


ドキドキ、オドオドしながら剣に力を入れて振り下ろすアルガロス。


<ガキッ>


アルガロスは力一杯剣を振り下ろしたが枝は斬れず、3分の2程食い込んだ所でとまっていた。


モサミスケールは、2年間ハンターとして頑張ってきた結果が……、この程度なのかと無い肩を落としている。


【 ……… 】


【 魔物の中でも弱いゴブリンじゃが、その肉はこの枝の様に硬く、そしてしなやかじゃ。そりゃあ倒せんわな…… 】


【 エル、腕の軽い振りだけでこの枝を切り落としてみるんじゃ 】


モサミスケールは、エルを見下ろしながらそう伝えた。

エルはモサミスケールを見上げながら、笑顔で返事をする。


「うん。分かった」


エルは短剣を取り出し枝に向かって軽く振り下ろした。


<サクッ>


「あっ……」


アルガロスの小さな声が響く中、簡単に斬り落とされた枝が宙を舞う。エルはそれに向けてまた短剣を軽く振りかざした。


<サクッサクサクサクッ>


アルガロスの目の前で細かく斬り刻まれていく木の枝。その破片がアルガロスの足元に転がって止まった。


「……ぇえっ…こっ、これは……?」


驚いた表情で足元に転がって来た破片を見つめている。アルガロスよりクラスの低いエルが、軽く振りかざした……、しかも短剣で枝を粉々に斬り刻んだのだから……。


【 これは力の差じゃなく、オーラ循環速度の違いじゃよ。】


「………」


口を開けたまま固まるアルガロス。

目の前で起こった “ 枝のみじん斬り ” を目の当たりにしてボー然としているのだ。


【 アルガロスのオーラの波は、ゆっくり(• • • •)で広い(• • •)。対してエルのオーラの波は、速くて狭い(• • • • •)。鋭い針の様なものじゃ 】


とエルの頭の上で、モサミスケールが身振り手振りで説明している。


【 ブレ無く速くて波の狭いオーラにする為に、今から訓練するぞ。先ずは自身のオーラを感じ取る事からじゃ 】


戸惑い溢れるアルガロスの表情を無視し、モサミスケールはズカズカと容赦無く指導しだした。


「……っあっ…あっ……ハイ」


【 ほれっ、目をつむって構えて、まずは身体の中を流れるオーラの波を感じるんじゃ。エルみたいに出来るまで街には帰れんからな! 】


「エエ━━━━━━━━━━━━━━!!!!!」


アルガロスの心からの大絶叫が、幾度となく近くの岩壁に響き反響していた。


<エエ━━━━━━━━━━>


  <エエ━━━━━━━━━━━>


    <エエ━━━━━━━━━━━>



◇◇◇◇◇◇◇



 バルコリン郊外にゴツゴツした岩壁が並んでいる。切り立った崖の下に洞穴が有り、その出入り口には…ゆっくり渦巻く魔力の渦……。


ダンジョン………。


洞窟等の出入り口付近は温度差があり、変化の有る所には魔力が溜まりやすくなる。滞留するとその力で渦となり、魔物を引き寄せてしまう。


魔力は魔物の力の源であり、その濃度に合った魔物が集まり居着く事も良くあるのだ。



<ゴオオオオー>


 風が当たり、唸りを上げる岩壁の近くに、ハンター達の姿が見える。


赤色の防具に身を包んだショートカットの女が、何気なく空を見上げた。


「………ざわついてる…」


「これから1週間程、街と岩壁を行き来しないといけないのか……」



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