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第167話【 一方的な惨劇 】


 燃え盛る建物や林。


そんな中、急々と荷物を運ぶドワーフ達。

新たな建物をターゲットにしては金品や金目になりそうな道具や素材を奪っていき、大人子供関係なく一緒に火を着けて建物を焼いていく。


苦痛に縛られる村人の悲痛な叫びは、燃える音にかき消されながら弱っていく……。


惨状……そのものだ。


若い女性の悲鳴も時折響き、拘束しては荷馬車へと乗せていた。


薄暗い中でも比較的辺りを見回せる小高い丘の中腹に、歪な乗り物に乗る大柄なドワーフが足と腕を組みながらその光景を観察している。

カラフルで重厚感ある服には高価な飾りが散りばめられており、一目で司令塔、リーダーと分かる風貌だ。


遠くでフードを被った気味の悪いドワーフが、ハンドサインを出している。

2本指で方向を差し、サムズダウン(ブーイングのサイン)で敵がいる事を伝え、人差し指、中指、薬指の3本を伸ばして14人いる事を伝達してきた。


「ネズミが沸いてきたな。始末させろ」


「後5分でずらかるぞ!」


「へい(かしら)


そう返事するのはヒゲの長い小柄なドワーフ。

歪な乗り物の御者であり、伝令や(かしら)と呼ばれるリーダーの雑用事を担っている。


その小柄なドワーフは、望遠鏡代わりとなる自身の目を元に戻し、胸元から木で出来た何かの道具の様なモノを取り出して、毛むくじゃらな口へと当てた。


<ピッピッピッピッピッ>


甲高い音が小刻みに鳴る。作戦時間の指示だ。

そして、折りたたまれていたモノを木の道具先端に着けてまた吹いていく。


<バババ━━━━━━━ァン>


今度は高い音の2重音が、辺り一帯に鳴り響く。

これは迫ってくる敵を殺せという指示だ。




 盗賊団とは違う2つのグループが、林の中を駆け抜ける。

その影がお互いを確認すると、素早く左右へと分散していく。

近くで活動していた2つのギルドがこの騒ぎに集まり、アイコンタクトで其々の役割を確認した後、自分達が取るべき行動に入ったのだ。


2つのギルドクラスはトータルでクラスAが5人。

クラスBが7人。クラスCは2人で計14人。


十分過ぎる力を持っているのだが……。

二手に分かれた彼等が林を抜け、建物近くの草原へ飛び出た時、其々の足元から業火が噴き上がった。


<ドゴゴゴゴオウ━━━━━━━━━ウゥ>


強烈な炎に焼かれるハンターの影……。

数人は回避出来たが彼等を襲う魔の手はそれを分かっていたかの様に新たな攻撃を開始する。


幾つもの風の矢が業火を巻き込みながら、逃げ場を作らせず彼等を包む様に飛んでいく。


<ザクザクザクザクザクグゴ━━━━━━オォ>


回避する事も避ける事も出来ず……。

炎をまとった風の刃が幾重と身体に突き刺さっては炎が立ち上がる。

まさに地獄だ……。


二手に分かれたもう一つのギルドの人達も、少し離れた所で同じ状況になっていた。


後方から飛び出してきたギルド側の白いローブ姿のドワーフと、バフや弓使いの後方支援型ドワーフ達は、目の前の惨状に息を呑む。


生死が分からない状態の仲間が至る所に……。


しかし悩んでる暇は無い。

素早く手当たり次第だが回復魔法を掛けていく。

敵がいる状況では、安否確認をしていられないのだ。



 走り跳ぶエル達に伝わる悲鳴を上げる魔力。

弱りつつある魔力と、消えていく魔力があるのが分かる。


『交戦が始まって直ぐ…、ギルド側の魔力が薄れていく……』


走り跳ぶエル達と、交戦している場所まではもう少しだが……。その距離や時間差が致命傷と成り得る。


後少し……、後少しで林を抜ける。

そんな思い、願いが……エル達の瞳を赤黒くしていく。

今迄に感じた事の無い感覚と現象。

これはやはり……、例のモノが………。


エルは……、自分達の変化を感じ取り、すぐさまモサミスケールをシグルズに被せた。

シグルズは爆速で走り跳ぶ状況に必死に耐えている為、何をされても分からない状況だが。


⇄「モサミ、シグルズさんの保護を頼む」⇄


⇄【 分かった 】⇄


シグルズには分からないやり取りで、モサミスケールへと思いを飛ばす。

何故なら、魔力をまだ上げていないにも関わらず、

瞳の色が赤黒く変わってしまった……。


自分達の身体の状況が分からない状態では、シグルズが腐食する可能性は否めない。


<ババッ>


林を抜けた所で走り跳ぶ速度を落とし、シグルズから手を離した───。


すると……、視界に惨状が飛び込んでくる。


エル達が速度を落とした事により、シグルズの目にも惨状が飛び込んでくる。

と同時に敵、盗賊団の風貌や歪な乗り物。

それと、奴等のマークが目に飛び込んできた。


「最悪だ…。」


シグルズの瞳が恐怖に戦慄する。




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