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第159話【 流れ来る憎悪と慈愛 】


 ヨウン博士は、何かを探す様に、すがる様に改めてエル達を見つめた。


「石達がざわつき、導かれる様に君達がココに呼ばれたのは何か意味がある筈じゃ。何か感じんか? 小さな事でも違和感でもいい。」



「何か……、普段とは違う何かを………」



ヨウン博士の言葉に静まり返る ” 記憶の間 “ 。

エル達自身も、ヨウン博士が煽る様に、何故自分達がこの空間に入れたのかなんて分からない…。


ただ…、他のみんなと違いがあるとすれば、やはり堕天使と悪魔の力を宿している事があげられるが、人間やドワーフとは相反する存在のはず……。


彼等が持つ力に悪意が無いと言っても、ドワーフには余りにも危険な力……。

拒否や拒絶。否定や反発をされてもおかしくない存在なのに招き入れるとは考えにくい。


その力に岩達が共鳴した………?。

何故記憶の間は─────────。


そこには…、彼等が理解出来る情報は一切ある筈がない………。

そんな不思議な空間をただ……、眺めるしか出来なかった。


<………チ……>


口を真一文字にしているエルの目に、薄っすらと微かに映る小さな岩。

現れたり消えたりを繰り返す様に、不思議な現象が起こっている所がある。



<チラリチラリ……>




「…………………ん?」


「あ…、あれは……」


不明確な現象に、エルは戸惑いの声を漏らす。

ヨウン博士はその声に小さく反応する。


「どうしたんじゃ?」


「ほら、あれ見て! 何だろう……」


エルに促される様に、ヨウン博士達はその先に目を凝らしながら近寄って行く。

すると、不思議な現象がハッキリ確認出来る。

目の前で現れたり消えたりする小さな岩を……。


「他の光る壁とは造りが違うみたいじゃの…」


そう言いながらヨウン博士が手を触れてみると、微振動しながら光が岩表面を走り、そして何事も無かった様に淡く消えていく……。

繰り返し手をかざすも、同じ現象が起こるだけで進展は無い……。


エルもアルガロス、シグルズも恐る恐る触るが起こる現象は同じもの……。、


<フォン───────────>


岩山の中だが、虚しく…ゆるりと風が吹く。


「………」


皆の中に、また行き詰まった感覚が滲み出てくる。

それは……、固まった様に深く身動きの取れない底無し沼にハマった様に………。


そんな時──────────。



⇄【 カルディア…… 】⇄



その声は、カルディアの首飾りと化しているマレフィキウム。

ヨウン博士とシグルズに感づかれない様に、彼女がカルディアの頭に直接声をかけた。


カルディアがマレフィキウムに促され、<チラリ>出現しては消える不思議な岩に手をかざすと……。


<バフォ━━━━━━━━━ン>


突然赤い閃光が、強烈に岩から放たれる。


<グアオオオ━━━━━━━━━━━ッ>


赤い閃光が荒れ狂いながら彼等を─────。


「うわあああ━━━━━っ」


岩が、石が…悲しく振動しだしたと感じた途端、皆はその閃光と共に記憶の間から強制的にお墓のある岩山へと吐き出される様に引き戻されてしまった。


何が起こったのか……。皆驚いた表情をしているが、独り悲しそうな表情をしているカルディアが <ポツリ> 言葉を漏らす。




モノケロス(ユニコーン)を………」


「探せ、呼べ、連れてこい」


「岩が……、悲痛な叫びでそう言ってる」




その言葉にヨウン博士は驚いた表情を浮かべながら短い両腕をバタつかせる。


モノケロス(ユニコーン)とは何じゃ?」


「い、岩と意思疎通出来るのか?」


少し沈黙するカルディアだが、また悲しそうな表情で顔を振る。


モノケロス(ユニコーン)とは(そう)(たくみ)の事…みたい……」


この名称は以前、マレフィキウムがエル達に伝えた事柄だ。

〜第145話参照〜


(そう)(たくみ)の事じゃと!!?」


「うん…。それと意思疎通じゃなくて一方的だったわ……。岩の不思議な力……記憶の断片が…ちょっとだけ流れ込んで来たの……」


そして言葉を選び絞り出す様に、直感的に感じた小さな岩の感情を吐露していく。


「怒りと周愛……。憎悪と慈愛が入り混じった感覚だけど……、声無き祈りや願いともとれる感覚だった………」


カルディアは空の様な天井を見上げながら、<ギュッ> と手を握る。



「それが……、探せ、呼べ、連れてこい……なの」


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