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第153話【 上から目線? 】


 病室を出て、宮廷の中を散り散りに歩き回るエル達。


「迷子、まいご〜!」


と言いながら、病室から遠く離れた所でエルは大手を振って歩いている。

もちろん別の通路では、アルガロスもカルディアも同じ様に振る舞っている。


最初は見つからない様に歩き回り、その後は目立つ様に歩き回る。

そして敢えて衛兵に見つかり、怒られながら病室へと戻される。


それを何度か繰り返し行う事を、エル達は楽しんでいた。


そんな少年達の行動に、衛兵達は頭を捻る。


病室近くにも衛兵はいる。

別にエル達を見張っている訳では無く、彼等の仕事は外部からの侵入等を警戒する警備をしている。

なのに病室近くでは無く、遠く離れた所でエル達が歩き回っている姿が何度も確認出来ると言う事はどう言う事なのか…。



 ドヴェルグ宮廷の秘密諜報部部屋。

その部門長の部屋に、あの丸眼鏡のドワーフ、シグルズの姿がある。


シグルズの机の上には、部下からの報告書や宮廷からの調査依頼書など沢山の用紙が山積みとなっている。

その中でうつむき、頭を抱えながら険しい表情を作っていた。


いつもなら手際よく処理していくのだが、今日だけは何故かはかどらない。


その原因は……、シグルズ本人も分かっていた。


『アイツ等の事を考えると、何故か調子が狂うな…』


そんな事を考えている時、ドアから音が響いてくる。


<コンコンッ>


「隊長! いらっしゃいますか? 」


部下の衛兵だ。


「居るぞ! 入れ」


「失礼します。あのぉ…報告があるんですが……」


背を丸め、歯切れの悪い部下の言葉に違和感を覚えたシグルズは、嫌な予感が頭を過る。


「…どうした?」


「……、例の少年達が……」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 完全に日が沈んだドヴェルグの街。

鍛冶屋の煙も少なくなり、慌ただしい1日が終わろうとしている。


しかし、それに相反する様に慌ただしい部屋がある。


病室内に引き戻されたエル達は、シグルズの説教を笑顔(• •)で聞いていた。


罪人を取り逃す事無く確保出来た功績で、今は怪我を治す為に病室にいるが、ここは宮廷。

一般市民でも許可なくしては入れない所だ。

当然自由に歩き回ってはいけないし、それに今は病室で静養中だ。


退屈だからお散歩してたと彼等は言っているが…、そう簡単に済ましてはいけない事案。


しかし…シグルズは、彼等の笑顔から嘘は感じられない。やはりただのお散歩だったのか…。

そんな彼等の反応に、非常にやりにくそうなシグルズ。


「何でだろう…。全く調子が出ないんだが……。体調不良か?」


背を向けボソリ呟くシグルズの言葉をエルが拾い上げる。


「シグルズさんは体調不良じゃないよ! やりにくいって感じるのは俺達の洞察力の方がが上回ってるだけさ!!」


「はあ!?」


「それってシグルズさんのスキルが弱いからだよ」


「な、なにい!?」


短絡的な言葉しか出て来ない……。


魔力が低いクラスEFGの少年達に、(けな)されてる様でそうではない様な…。

図星で複雑な感覚が頭を過るが、何故かあまり腹ただしくならないのはどうしてなのか…。


頭を抱えそうになるも少年達の手前、弱々しい姿は見せられない。大人として、諜報部としての威厳を保たなければと必死に…、気丈に振る舞っていた。


が……、既にシグルズはエル達の手の中にある事に気付いていない。

いいように誘導されている事に……。


エルは、霊力魔法のVOICEでシグルズのステータスを事前に見ていて、それが発動しているかどうか試していたのだ。


「でも、とあるスキルを発動すれば大丈夫だよ!」


「え?? とあるスキルを発動!??」


どうやらエルは、とあるスキルが発動していない事を感じとっており、それを確認していたみたいだ。


興味をひきながら、少し核心を先延ばしする。

それをする事で、シグルズの頭から歩き回っていた事への問題が薄れかすれていく。

そして、興味を引く言葉へと。


「そう。シグルズさんは闇隠れ(• • •)のスキル持ってるでしょ!?」


「はあ〜?? 闇隠れ……?」


「そんなスキル……………、あっ!!!」


「そ、そう言えばそんなスキルがあった様な…」


思い出したみたいだ。祝福を受けた若き頃を。

当時、” 解析 “ と ” 捜査 “ と言う珍しい祝福を受け、魔力が小さくても訓練で直ぐ発動する様になり舞い上がっていた。

そのスキルのお陰で今、諜報部の隊長をしている。


しかしその中にもう一つ “ 闇隠れ “ のスキルもあったが、忘れていたのだ。


「そのスキルがまだ発動してないんだよ。秘密諜報部に在籍してるならあった方が良いと思うよ!」


「って言うか、魔力アップを怠ってるでしょ!!」


「……………」


言葉が出ないシグルズ。

思い返してみれば、捜査や諜報活動の訓練には力を入れていたが、自分の魔力アップには関心が無かった。


エルは超笑顔でゼブロスポーズをシグルズに向ける。


「まだまだ素質あるよ! シグルズさんには!!」


「はあ?」



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