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第150話【 3連バカ 】


 「わああああ━━━━━━━っ」


突如銀髪ドワーフの直ぐ近くで叫び声がしたので、咄嗟に見上げると、さっきの少年達が既に頭上に落ちてきていて………。


しかも何故か…、超絶笑顔なのだ。


「えっ?」


<ドガア━━━━━━ッッン>


少年達が罪人ドワーフにぶつかった衝撃で、銀髪ドワーフの炎が爆炎となってその場で暴発する。


 <バフォウゴウオオオ━━━━ッ>


突然の爆炎で腕をかざしながら焦る衛兵達は、街が焼かれ無い様に防御魔法を展開する。

少年達の安否が気掛かりで直ぐ近付きたいが、熱風が邪魔してなかなか近付けない。


「くそっ」


赤い炎が黒煙となった所に、離れていたクラスAのドワーフ衛兵1人と、同じくクラスAのドワーフハンター2人、背の高い細身の男と片目に眼帯をしているガタイの良い男が血相を変えて駆け寄ってきた。


「罪人の奴等は!? 逃亡したのか?」


背の高いドワーフは衛兵の方をチラッと見た後、回りを注意深く観察している。

しかし、衛兵は困惑した表情で首を振る。


「い、いや、まだあの煙の中に居ると思います…」


「奴等が?」


「は、はい」


クラスAハンターである背の高いドワーフは、罪人の銀髪ドワーフが炎を作り出した原因だとは分かっている。

罪人の中で炎系の魔法を扱えるのは奴だけだからだ。

だから自殺行為ともとれる様な…、炎の中にいる筈がないのだ。


「…どう言う事だ?」


「それが…、あの崩れた建物の柱にぶら下がってた人間の少年2人が、力尽きて奴等の頭上に落ちたんです」


「な、なにぃ?!!!」


「それで奴の炎が暴発したかと……」


「クラスAの爆炎だぞ!? くそっ。原形があるかどうか……」


と言いながら背の高いドワーフは、崩れた建物の柱を見上げた。

黒煙の中心から6、7メートル程横にズレた上に崩れた柱がある。


「………」


『あの位置から落ちて当たった?……』


背の高いドワーフは手から風圧を出し、危なげな柱を誰も居ない下へと落とす。


黒煙から少し離れて、取り囲む様に衛兵達とクラスAの2人が陣取っている。

罪人達は大怪我をしているだろうが、取り逃さない様にと。


それに…、少年達の安否が気掛かりだ。

命があったとしても、その身体は………。


緩やかな微風が流れ徐々に黒煙が晴れてきた。

その中に、いくつもの影が有るのが分かる。


衛兵達とハンター2人が見守る中、やはり皆倒れており、動く気配すら感じない。

状況を確認し、近付こうとした時──────。


突然1人の人間の女の子が悲鳴を上げながら薄煙の中へと走り込んでいき、2つの影を抱きかかえた。


「エル、アルガロス━━━━━━━っ」


「誰か助けて!!!」


その悲痛な叫びに、背中を押される様にドワーフのクラスAハンター2人が衛兵達に指示を出しながら駆け寄っていく。


「罪人を確保してくれ。俺達は少年の様子を!」


背の高いドワーフが駆け寄った時、血だらけになった少年達が女の子に抱えられていた。

その傍らから見える腕や身体には大きな傷やただれた肌が見えている……。


重体……。

急を要する緊迫した状態だと簡単に理解出来た。


「俺はクラスA回復魔法士と再生魔法士を呼んでくる。ドヴェルグ宮の医務室へ運んどいてくれ」


そう片目に眼帯をしているガタイの良いドワーフに叫びながら指示を出す。


その指示を受け、片目に眼帯をしているドワーフは2人の少年を担ぎ上げ、カルディアと共に医務室へと走っていった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 中央防壁の中にはドヴェルグ宮廷がある。

巨大な岩山を削り、複雑に造られたドヴェルグの街のドワーフ達の城だ。

神秘的な造りで、一部分浮いている所もある。


城の中の医務室。

ベッドに横たわる少年達の近くには、呆れ顔で外を眺めるカルディアの姿がある。


「何なの本当に…。落ちると同時にカモミール(マレフィキウム)さんを通して指示を出すなんて……」


「呆れるわ…」


足を組み肘を付け、アゴ下に手を置き顔を支えながら、半ば怒り気味…と言うより完全に呆れ返ってる。


「考えがあるから魔法は使わずに悲しそうに叫んでくれ?」


「………バカよまったく………」


その言葉にモサミスケールもカルディアの頭の上で頷いている。


【 バカじゃな! 】


マレフィキウムもカルディアの首に巻き付いたまま同じ様に頷く。


【 バカじゃの! 】


ベッドの中で申し訳無さそうに <モソモソ> 動くエルとアルガロス。


「イテッ…」


「クラスAの再生魔法って完全じゃないんだな…」


ベッドから <ヒョコッ> と顔を出しながらそう呟くエルは、痛みに顔を歪めている。

アルガロスも顔を出しながらカルディアへと手を伸ばした。


「イテテッ」


「カルディア〜、完全再生してくれ〜」


「バカに付ける薬はないわよ!」


と、アルガロスの手を弾き、舌を出しながら顔を背ける。

そんなやり取りをよそに、モサミスケールの見立ては冷静そのもの。


【 まぁ宮廷側に恩を売った事になったから、色々聞きやすくはなるじゃろな。誰も知らない…… 】


(そう)(たくみ)の事を 】


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