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第147話【 彷徨う目的 】


 【 魔女の紋章なら持っておるぞ! 】


と、意地悪っぽく笑い、胸からペンダントの様な首飾りを出した。

魔女の象徴であり、猟奇的で世界を混沌の世へと陥れた証を………。


エルとアルガロスは手で顔を覆い、カルディアは腰に手を当てホッペを膨らませる。


「もう…、絶対見せちゃ駄目!!」



当然……、マレフィキウムは何も持っていない。


魔女を造る魔女の女王マレフィキウム。

古の魔女の言い伝えは当然ドワーフの中でも伝承されており、残忍で非道な存在と頭に焼き付いている筈なのだ。


「どうしよう……」


カルディアが悩むその横で、エルとアルガロスはおちゃらけモードで顔を見合わせている。


「夜、こっそり侵入するか!!」


「駄目よ。堂々と防具屋さんを回りたいじゃない」


「それに……、カモミール(マレフィキウム)さんとも一緒に美味しいもの食べたいし!」


カルディアの純粋な心の言葉を聞いたマレフィキウムは、少し恥ずかしそうに <ニコリ> と微笑む。


【 ちょいと3人のハンターカードを見せてくれ 】


「ハンターカードを!? どうすんだ?」


エル達は訳が分からずも、ハンターカードを手渡した。


マレフィキウムは、カードの両面をマジマジと見つめ、魔力で機能と効果を見極めている。

その後、光る指先を回し、魔法で <プルン> と自分のカードを………偽装した。


【 これでどうじゃ!! 】


「すごい!! 本物そっくりじゃん!」


【 中身も本物じゃぞ! 】


名前はカモミール。出身地等はカルディアと同じにして、ハンタークラスはBに。何故クラスBにしたかと言うと、それ以上魔力を抑えられないからだ。

そして、調合魔法と予言魔法のスキルを明記。あえて非戦闘系スキルを表示した。


初めて訪れたハンターは、賢者の石の欠片を施した機器でカードの信憑性を調べる。

その後は見せるだけでOKだ。

今の世界では賢者の石の欠片とは通称で、本当はウーシア石の事を指す。(第17話参照)



 無事検問所を通り、街中へと入ったエル達は……、何故か視線を沢山感じる。


何故なら………、目立っているのだ。


古びた布を被っただけのエルとアルガロスのみすぼらしい格好もそうだが、マレフィキウムの姿がやけに目立つ。


綺羅びやか過ぎるのだ。それに……、美し過ぎる。


【 仕方あるまい。余は美しいからのぉ! 】


視線が集まってしまう理由が分かっているマレフィキウムは、そんな事お構い無しに平然と歩いている。

その後ろに並ぶエル達は、まるでお付き人の様だ。


ジロジロ見られながらもエルとアルガロスは鼻の穴を広げ、あるモノを探している。

モノと言うより、“ ニオイ ” だ。美味しそうなニオイを。


目的が何なのか……。

彼等の露骨で滑稽な表情を見たマレフィキウムは、少し心配になり顔をしかめる。


【 防具屋を探すのじゃろ? 】


「……うん。探してるよ?」


と言う2人の顔は…、どう見てもニオイ最優先にしか見えない。


「あっ! あっちにイイ店がある様な気がする!」


エルがそう言うと、アルガロスは超素早く相槌を打つ様に反応した。


「だな! 行こうぜ!!」


そんな様子を見ていたマレフィキウムは呆れ顔だ。

エル達の想像を絶する魔力に耐えうる防具を探しに来たと言うのに……。

そう思いながら、エルの頭に乗るモサミスケールに向って言葉を飛ばした。


⇆【 よいのか? こんな観光気分で… 】⇆


モサミスケールも半ば呆れ顔だが、彼等の行動はいつも通り変わりないので慣れたものだ。


⇆【 心の浄化は大切じゃ… 】⇆


その言葉に両手を上げるマレフィキウム……の手をカルディアは掴み、超笑顔で引っ張っていく。


「行こ! カモミール(マレフィキウム)さん!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 美味しい食事、たま〜に道具屋。

美味しい団子屋に、たま〜に雑貨屋。

珍しい建物を拝観しては、たま〜に防具屋。

カフェでお茶しては、たま〜に武器屋。

広い公園でくつろいでは、たま〜に鍛冶屋……。


防具の事を忘れて……無いのかも知れないが、行動の密度は観光三昧…………………。

そして既に日が暮れ始めている。この街に入ったのは朝方だというのに………。


「そろそろ宿屋探さなきゃね…」


エルのその言葉に我に返るアルガロス。


「そう言えば全く眼中に無かったなぁ……」


と顎に手を当て考えようとした時、カルディアから声が飛んで来た。


「見て! このチラシ!!」


「この宿屋、温泉が有るんだって!!」


と、満面の笑みを浮かべるカルディア。


カモミール(マレフィキウム)さんも、この宿屋が良いって言ってるし!!」


【 よ、余がか? 】


「ねっ!」


【 まぁ……、よかろう…… 】


少し強引ではあるが、寝床を確保するのは必須。

ただそれに、偶然 “ おまけ ” が付いていただけ…。


やはりカルディアは女の子。

そのおまけで、久しぶりに身体を綺麗に洗いたいのだ。


少し歩くと、街中だが小高い丘となった中腹に古くて老舗の貫禄をかもし出している大きな建物がある。

ここが、” おまけ “ 付きの宿屋。



今日泊まる “ 温泉付き ” 宿屋だ。



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