第137話【 アルガロスと魔力の同期 】
エルは、” 煉獄の聖域 “ を展開した後、冷却と回折波を混合した魔法を心を込めて祈る様に詠唱した。
「ラピッドクーリング、マゲイア・ディフラクションウェイブ」
青と灰色に輝く光がアルガロスを包んでいく。
【 「 ぐギッ 」 】
動きが止まり、肌の色が徐々に戻り、漆黒の目も白くなっていく。
悪魔への心の等質化が一時的に遮断された証拠だ。
煉獄の聖域の影響もあり、回りから流れ来る魔力も遮断している様だ。
「カルディア今だ! 聖域の中に入ってくれ!! 」
エルの呼び掛けに頷き、素早く聖域の中へと突っ込むカルディア。
「エル! 急速冷却と回折波の魔法を解呪したら合図して! 直ぐに同期作業に入るから!」
『アルガロス、もう少し我慢しててね』
そう願いながら、カルディアはアルガロスの背後へと回り、肩に手を置いて杖を掲げた。
と同時に、青と灰色の光が消えていく。
急速冷却と回折波の魔法が解呪されたのだ。
「いいぞカルディア!」
エルから飛んできた合図を基に、カルディアは同期へと続く魔法を詠唱していく。
「アルガロスと私の魔力をエクストラクション」
<ブフオオオ━━━━━━━ッ>
アルガロスとカルディアの身体から光が発せられ、歪な模様の魔力型が浮かび上がる。
カルディアはその歪な模様を、赤黒い瞳で読み取っていく。
「分る! 分るわ!! 」
望んだとは言え奇しくも悪魔と同期し、呑み込んだ今のカルディアには理解出来てしまったのだ。
自身との違いを見つけ出し、互いの魔力型を同じ型に変換していく。
「オーラの波をホロモス、魔力をエノシ」
「そして……べバイオン!!!!! 」
<バフウッ>
力強く交差する互いの魔力。
<ブバババッ>
確信したカルディアは、詠唱を続ける。
「エパノルトーマアネシス」
2人の魔力が呼応し結合する。
そして………、
「べバイオン!!!」
<バフオオ━━━━━━━━ンッ>
アルガロスとカルディアを包む様に、魔力型の優しい光が渦を巻く。
続けてカルディアは、また口早に詠唱を続けた。
「新たな魔力としてパイノマイ、オーラ循環速度をエピ夕キンシ」
<ギュオオオオ━━━━━ン>
デーモナスヴロヒと同期し、悪魔であるリーゾックのコルディスコアを呑み込んだ圧倒的なカルディアの魔力は、アルガロスを呑み込もうとしていた悪魔のマヴロス・オーブの魔力を圧倒する。
<ギュォォォォ…………………ン………>
小さな振動を帯びながら一瞬魔力が激しく渦を巻いたが、直ぐ落ち着く様に静かになっていく。
アルガロスと魔力の同期が出来た証だ。
カルディアはエルに視線を送り、頷きながらアルガロスの肩から手を離していく。
カルディアは、アルガロスから少し離れたが、同期した2人の魔力は繋がった状態で淡く輝いていた。
それを見ていたドラとマレフィキウムは、願ってはいたが目の前で起こっている奇跡に驚きを隠せない。
【 ………、同期出来たのか……!? 】
【 こんな事が……、本当に出来るとは驚きじゃ…… 】
エルは、“ 煉獄の聖域 ” を解呪したが、アルガロスは止まったまま。
後は……、アルガロス自身が自分の意思、力で悪魔のマヴロス・オーブの魔力を呑み込まないといけないのだが……。
エルが全ての魔法や魔法陣を解呪しても止まった状態で動かない。
「アルガロス! 聞こえるか? 」
「アルガロス!?」
エルが呼び掛けるが返事は無い。
それ所か──────────。
<フォン………>
アルガロスの回りに漂う魔力が何故か動き出す。
同期以外の魔力が何処からか流れてきて……、アルガロスの足元から身体を這い上がる様に絡みつく。
予期せぬ現象………。
<ズオォオ━━━━━━━━ッッッ>