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第132話【 悪魔の唸り声 】


 【 「 あ“っ…ァッ… 」 】




 みんなが振り向いた先には、アルガロスが。

聞き慣れない音がアルガロスの口から響いてくる。


<ピリッ………ピリピリッ>


アルガロスの身体に……、凶悪な魔力の小さな閃光が時折走る。

揺れる身体と途切れる意識。

その目は既に、漆黒の如く深い闇に覆われていた……。


非常に切羽詰まった状況の中───────



始まってしまったのだ。


心の────不偏の等質(同一化)が……………。



【 「 ゲっ…ォゴ… 」 】


地面に膝を着き、背を丸めながら身体を抱え込むアルガロス。

その口から溢れ出る異音は、凶悪な魔力を含んだ悪魔の唸り声……。


マブロス・オーブがアルガロスの意識と心を呑み込もうと手を付けだしたのだ。

それは、完全な悪魔へと確実に近付いている疑いようの無い証拠。


<グワバッバチバチッババ━━━━━━━━━>


突如アルガロスを起点に凶悪な魔力が吹き荒れる。


「モサミ!!」


エルは咄嗟にそう叫ぶ。

モサミスケールはエルの意を理解し、無抵抗であるカルディアの近くへと即飛んで行き、防御魔法のトイコスを展開する。


他の精霊達は抵抗する術が無く、ジワリジワリと後へ下がっていく。


防御魔法を展開せず、悪魔の凶悪な魔力を肌身で感じ取ろうと、ドラは手だけで吹き荒れる凶悪な魔力から身を守っているが、時折血しぶきが上がっていた。


【 こ、これが悪魔の魔力か……… 】


凶悪な魔力にたじろぐドラ。

世界樹のドラとして有体を与えられ、漂う大陸へと降ろされた時から、この世界には悪魔など存在していなかった。


悪魔が発する魔力は魔物とは異質な魔力だった為、慣れぬ経験から違和感を抱き、少なからず身震いとなって表面化したのだ。


【 …身体内部を突き抜ける恐ろしい魔力だな…… 】


しかしマレフィキウムから出て来た言葉は、更に危機感を助長する。


【 いや、こんなものじゃない……。まだ悪魔の入口に手が届いただけの赤子の様なものじゃ…… 】


マレフィキウム程、悪魔の底しれぬ恐ろしさを知っている者はいない。

その言葉の重みにドラの顔は、軋み歪んでいく。



【 「 グっ…ァギッ… 」 】



険しいマレフィキウムの表情。

アルガロスを見つめるその美しい瞳からは、凶悪な魔力に抵抗する様に残忍で非道な魔力が流れ出ていた。


【 急激に進行しておる……。時間が無いぞ 】


その言葉に目をつむり、罪悪感を抱きながら首を振るカルディア。


「私のせいだわ……。デーモナスヴロヒの純粋な魔力がアルガロスへと流れて行ってる……」


自身の考え、行動が、アルガロスの悪魔化を助長してしまった事に罪悪感を抱いてしまうカルディア。

その動揺から迷いが生じ、急激に判断や行動が鈍くなる。


カルディアの頭に乗るモサミスケールは、心の変化を感じ迷いを吹き飛ばす様にダミ声でわざと叫んだ。


【 ためらうなカルディア! 今直ぐデーモナスヴロヒと同期じゃ!!! 】


迷う心には毅然と道を示す事が唯一の手段。

モサミスケールの言葉に我を取り戻すカルディアは、唇を噛み締めながら魔力の同期へと入っていく。


「わ、分かった!」


カルディアは杖を取り出し、魔力の純度、濃度、精度、制御、そして、オーラ循環速度を速めていく。


その間にモサミスケールはエルへと振り向き、口早に指示を出す。


【 エル! アルガロスの身体へ最大限の援護をするんじゃ!! 】


「最大限の援護??」


【 考えてる暇は無い! 何でもいいから良かれと思う事を全てやるんじゃ!!! 時間(• •)を稼げ!!! 】


モサミスケールの叫びに反応し、エルはアルガロスの元へと瞬時に近付く。


アルガロスの近くで腕を広げ、思い付く様々な魔法を試す為、オーラ循環速度を速めていく。


「ドラ、マレフィキウム! 今から多重複合の状態回復、維持魔法をランダムに唱えていくから、アルガロスの容態に少しでも変化があったら教えてくれ!!」


「それを重点的に唱える様にするから!!」


頷くドラとマレフィキウムは、アルガロスを挟む様に立ち位置を変える。


その瞬間、数多くの魔法陣がアルガロスを包み込むように浮き上がる。

赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、白、黒………、

ありとあらゆる虹色以上の魔法陣が展開される。


キラキラ輝き飛び交い流れ光る閃光が、暗黒の大地を広く染めていく。

それはまるで、幻想的な光景─────────。


全てを呑み込む程の光を放つ魔法陣に圧倒されたドラとマレフィキウムが、一瞬見惚れてしまう。


【 う………、美しい… 】


そしてエルは精度を上げる為、状態回復、維持魔法の上位部分だけ、口早に、しかし細かく確認する様に単発詠唱(• • • •)していく。


「状態」、「現状」、「状況」、「体調」、

「事態」、「動作」、「稼働」、「精神」、


「心」、「心理」、「意識」、「情勢」、

「環境」、「形成」、「維持」、「保持」、


「保護」、「保存」「変形」、「変化」、

「劣化」、「変質」、「損傷」、「腐食」、


「腐敗」、「具合」、「変色」、「回復」、

「冷却」、「熱波」、「周波」、「超音波」、


「苛波」、「回折波」、「波」、「波動」、

「音波」、「霊波」、「波濤」、「波及」、


「波状」、「光波」、「波長」、「波紋」


其々の魔法陣から多種多様な状態回復、維持魔法の光の帯がアルガロスを包み込む。

その影響で、外側の魔力が緩やかに渦巻いていく。


そんな中、エルは祈る様に魔法を繰り返し唱えていく。



『頼む。なにか引っ掛かってくれ………』


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