表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

127/163

第127話【 漏れ出る記憶の音 】


 「な、何勝手に話を進めてるんだよ!? そんな事出来るわけないだろ!!」


その言葉に、精霊達の冷たい視線が突き刺さる。


必死に訴えるエルの言葉は……、精霊達の思いに流され冷たい魔力の風に掻き消されていく………。



<ヒュオオオォォォ━━━━━━━━……………>



マレフィキウムの冷たく、そして……悲しげな目が、エルの心を貫いていく。


【 このままでは確実に悪魔が生まれる。それを回避する術じゃ。お主も分かっておろうが 】



───── “ 確実に悪魔が生まれる ” ─────



分かっているが………。


現実を突き付けられるエルは、思いとは対極に進む現状にショックを隠せず、身体が痺れた様に震え放心状態となっていく。


二度と繰り返してはいけない、あの───悪夢。

守ると誓った────強い思い。


思えば思う程……、誓えば誓う程………。

真逆に進む現状に……、何も出来ない不甲斐なさに。


心が折れそうになるエルは、苦悶の表情で顔を下げてしまう…………………。


しかし──────────、


しかし───────────────!!!


それらを振り切って精一杯(• • •)首を振る。


「そ、そもそも悪魔のマブロス・オーブやコルディスコアは無いし、カルディアにそんな事は絶対させられない!!」


「アルガロスがこんな危険な状態なのに、自らカルディアまで同じ状態に巻き込む事なんてできな…」


そう言いかけた時、思わぬ所からエルの言葉を遮る様に言葉が飛んできた。




─────── 「有るわ!」 ───────




そう声を発したのは当のカルディア。

その目や表情は………、何故か決意に満ちていた。


「えっ??」


不可解な言葉に不意を突かれたエルは、固まってしまう。

カルディアは嘘を言う様な女の子では無い。

ましてやこの状況で、曖昧で不確かな事なんて言える筈が無いのだ。


「有るわよ。悪魔のコルディスコアが!」


しかしカルディアは、エルの目を真っ直ぐ見ながらハッキリと言い切っている。

その言葉には覚悟が滲み出ていた。


戸惑うエルは、詰まりながらも絞り出す様に声を出す。


「コ、コルディスコアが……? ど……、何処にそんな物が……?」


アペイロス(無限空間)の中に、” 混迷の魔術師リーゾック “ のコルディスコアが!!」


「あっ!!………」


エルの口から漏れ出る記憶の音。



──────────そう……。


エル達は悪魔と戦った事がある。不完全な再生途中の悪魔………。 *第38話〜第54話参照



“ 混迷の魔術師リーゾック ”



そのコルディスコアを、エルは結晶化した後の換金用素材としてアペイロス(無限空間)にしまっていたのだ。

アペイロス(無限空間)の中では、時が止まっているので入れた状態を維持している。




<ドックン>




激しく波打つ残忍で非(• • • •)道な魔力(• • • •)


何故かマレフィキウムが胸を押さえながら、倒れ込む様に膝をつく。



【 かハっ∻∹ッっッ∹⋰ 】



苦しそうに詰まる息を吐き出すマレフィキウムの異変。

地面に這いつくばる様に顔を近付け、その目は生気を失くした様に痙攣していた。


急変して、もがき苦しむマレフィキウムの事を心配し、ドラが近付き様子を伺っている。


【 ど、どうした? マレフィキウム 】


そう声を掛けられたマレフィキウムは、ドラでは無くカルディアへと顔を向け、驚愕した形相でその悪魔の名を聞き返す。


【 混迷の魔術師……、リーゾックじゃと!?? 】


「そ、そうだけど…」


マレフィキウムの鬼気迫る勢いに呑み込まれそうなカルディアは、たじろぎながらそう答えた。

何故マレフィキウムは混迷の魔術師リーゾックの名を聞いた途端、変貌した形相になったのか…。


それは……、苦悶、絶望を刷り込まれた遥か過去……、あの時、あの瞬間を思い出していたからだ。

まだ自身が罪深き愚かな人間だった最後(• •)の頃の事を………。


マレフィキウムは、噛み締める様に古の時を吐露していく。


【 奴は……、奴は……… 】


【 余を醜悪で残忍な魔女に仕立てた悪魔じゃぞ! 】



「ええっ!!!?」

【 何ぃ!?………………………… 】


衝撃の事実が彼等を深い闇に押し込める。

エル達が戦った相手が、魔女の女王を造った悪魔だったとは………。


さらに強制的に……、あの醜い姿を思い起こさせる言葉が続いていく。

凶悪な魔力で向かってくる……、あの異様な姿を……。


【 しかもただの悪魔ではない。厄災をもたらすと言われている堕天使ワームウッドに仕えるプロトス(第1)系譜 】


【 それに、絶対的な権力を有する ” アウトクラトール(自立した支配者) “ の称号を得た悪魔じゃ 】


エル達は思い出していた。

確かに同じ事をリーゾックは言っていた。

あの血生臭いダンジョンの中で………。


天を仰ぎ、今は無き刻印があった首を押さえるマレフィキウム……。



【………い、生きていたのか………】




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ