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第119話【 紡ぐ絆 】


 「アルガロスの魔力の文字、全く分からない……」


焦る様に言葉が漏れ出てくるカルディア。

一度は出来たはずの魔力の同期……。


あの頃より自信を持って臨んだが……、読み解く事が全く出来なくなっている事に焦りが滲み出てくる……。


カルディアは淡く輝く特殊な文字を見ながら、放心状態で固まった様に動けないでいた………。


【 全く?? 】


ドラの問いかけに対して恐る恐る小さく頷くカルディア。

理解出来ないドラは、困惑した表情でマレフィキウムの方を見た。


【 どう言う事だ?…… 】


マレフィキウムも顎に指を当てながら目を閉じ、古い記憶の中を彷徨いながら何かヒントがないか探していた。


<ヒュオオオ━━━━━━━━……>


【 個々の魔力型は唯一無二のモノで、変わる事はないのじゃが…… 】


ポツリと呟いた後、また押し黙り目を閉じてしまう。

少ししてうっすらと開くマレフィキウムの目からまた淡く光る魔力が漂い始めた。


【 もし……、何かに影響を受けて変化があったと仮定したなら……、やはり奴の悪魔との同一化が進んだと見るべきじゃないのかの 】


「じゃ、じゃあ悪魔特有の魔力型になったって事?」


カルディアの問いかけに、マレフィキウムは静かに頷く。

そして、アルガロスの回りをユックリ回る魔法式の文字を指差しながら、魔力が漂う目で眺めていた。


【 そうとしか考えられん…… 。魔女が扱う古の魔法式の文字は悪魔特有のモノ…。所々の文字に見覚えが有るからな 】


仮定の話しとは言え、的を得た内容に愕然とするエル……。

岩の上に置かれた小さくなったマヴロス・オーブへ目をやり、悪しきモノを見るかの様に険しい表情に変化していく。


<ブフゥ……>


エルの回りに…緩やかに渦巻く魔力の波。

痛みを伴っている様な悲しい表情で、決して晴れる事の無い暗黒の空を……赤く輝く瞳で眺めた。


『カサトス……、ラミラ……』


エルは………、亡くなった幼馴染の2人を思い出して魔力の波が徐々に強くなっていく。

アルガロスが悪魔に呑み込まれていく……。

どんな事があっても絶対に避けたい事なのに、何も出来ない苛立ちが、幼馴染を思い出させていたのだ。


異変に気付いたドラやマレフィキウムを含むみんなは、エルに視線を送るが何故か無意識に後退りしてしまう。


何故なら、普段みんなが触れている魔力とは異質なモノに感じたからだ。


【 ……な、何だ? この魔力は…… 】


ドラは異質な魔力に小さく手を広げ、みんなに近付くなとサインを送る。

何が起こるか分からないからだ。


エルから湧き出る黒い魔力が、青黒い色へと変わっていき、<ピリピリ>と微かに波打ちだした。


そこへ歩み寄る2つの足。


<ザッ> <ザッ>


【 近付くな! 何が起こるか… 】


ドラが止めに入った相手は、アルガロスとカルディアだったが、アルガロスが軽く手を上げた。


「大丈夫だドラ」


そう一言ポツリと呟き、2人はエルへと近付いていった。

青黒い魔力がゆるりと渦巻く中へと入って行った2人は、とても悲しい表情になる……。


<ポンッ>


2人はエルの肩に優しく手を置く。

そこから伝わって来たのは暖かい心の波。


マヴロス・オーブを見つめるエルは一度目を閉じ、何かを感じ取っているかの様にゆっくり目を開いた。


<ブフウゥゥ……………>


ピリピリと波打つ青黒い魔力の渦が、徐々に収まり消えていく。


「有り難うアルガロス、カルディア。大丈夫! コントロール出来てるから! 」


カルディアの頭に乗っていたモサミスケールが、<ポンッ>とエルの頭に帰ってきて目頭を下げる。

そして、何か想いにふける様に<ニコリ>と柔らかく微笑んだ。


『【 失くした絆は、新たな絆を紡ぐ…か 】』




理由は分からないが、異質な魔力が収まった事に安堵したドラは、少し頬を緩めたがまた直ぐ険しい表情になる。

その時マレフィキウムからカルディアへ、とある言葉が流れていく。


【 余の魔力型は出せるか? 】


「えっ? どして?? 」


突然発せられたマレフィキウムの言葉に困惑しているカルディアは、少し戸惑い気味にキョトンとしている。


【 余も遠いが悪魔の種類。奴と魔力型との共通点が有るのか無いのか見極めてみたいのじゃ 】


マレフィキウムの提案と内容に理解を示すカルディアは、一度ドラの方を見てその有無を確認した。

それに対して鋭い目つきで軽く頷くドラ。


「わ、分かった。やってみる…」


そう言い、再度杖を取り出したカルディアはマレフィキウムへと歩み寄り前から肩に手を置いた。


<フワァッ>


アルガロスの時と同じく、カルディアのオーラ循環速度が上がり、髪の毛や服がフワリと煽られる。

そして、再度腕を前に伸ばして杖を掲げた。


「マレフィキウムの魔力をエクストラクション(抽出)


<…………………………ヒュオォォォ………>


漂う大陸に吹く魔力の風の音だけが、遠くで響く様に聞こえるだけ……。


時が止まった様に何も起こらない空白な時間がただ過ぎて行く……。

不自然に感じたドラが、カルディアへ声を掛けるが…。


【 どうしたんだ? 】


何かにためらうカルディアの目は……、大きく開いたままだ……。



「な、何にも出てこない……!?」



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