第113話【 古の魔女、召喚 】
<ゴゴゴォウオオオ━━━━━━━━━ウゥ>
<バリバリバリッ>
霊力と魔力が激しくぶつかり合い、その摩擦からくる轟音と放電が電光となって暗黒の空へとのたうち回る。
手を広げる険しい表情の世界樹ドラ。
いつになく濃い霊力を身体にまとい、召喚魔法へと入っていく。
その状況を、離れた場所から見守るエル達や精霊達が、固唾をのんで見つめていた。
<ゴゴゴォウオオオ━━━━━━━━━━>
ドラは魔法を使う時はほとんど無詠唱だが、注意や慎重にならざるおえない時や、強度、精度を増したい時等は、正確に詠唱する様にしている。
オレンジ色の瞳が輝きを増し、さらに霊力が強まっていく。
そして、紫色でセミロングの髪が激しく暴れている。
< バリバリッ バリバリバリッ >
世界樹ドラが見下ろす地面に、白い霊力の渦が這いずる様に徐々に浮かび上がる。
その渦に向かって両手を伸ばした後、ドラの口が荒々しく揺れ動いた──────────。
【 霊違魔召 】
【 往古の根に憑く邪悪な影よ 】
【 締結に沿って導かれん 】
【 暗晦 】
【 往来 】
【 禁戒解禁 】
【 我が盾となり御の命を捧げよ 】
───白く輝く召喚魔法陣が大地に刻まれる───
【 號は古の魔女 マレフィキウム 】
【 喚!! 】
<バリバリバリバリバリバリバリバリバリッ>
白い魔法陣が一気に赤黒く染まり、激しく暴れる大気の波。
赤黒く染まるのは、喚び出されるモノが魔の力を持っているからだ。
そして、喚び出すモノの魔力が高ければ高い程、大気は激しく暴れる。
離れた所にいる精霊達は……、凄まじい勢いで暴れる大気にさらされ身体が痺れていく。
一部の精霊達は気絶する者もいて、仲間に支えられている程だ。
そして───────────────………。
赤黒い魔法陣の中央が、強い魔力によって漆黒に染まり渦を巻く。
そこから………。
<ゴポッ……ゴポゴポッ……………ゴポッ………>
と……、漆黒の塊が上へと膨らみ、徐々に形を変えていく。
獣の様な型から……、人型の様な………。
その漆黒の塊は、ユルリと……釣鐘型の袖の無いマントを羽織った若い妖艶な女性の姿へと変化していく……。
姿を現したのは古の魔女……。
マレフィキウム────────────。
特筆するのは、装飾品の数や豪華さ………。
深みのある黒を際立たせる煌びやかな色、色、色。
この装飾品には神秘的な魔力が蓄えられており………、彼女をほぼ不死へといざなっている根源……。
その身体が……、怪しく揺れている。
睨み警戒する世界樹のドラ………。
<………ユラリ……………ユラリ……………>
冷たい瞳が薄らと開く。
と同時に、瞳からは輝く魔力が溢れ流れていく。
邪悪な者……のはずなのに。
それを消し去る程の美しさに、心が引き込まれそうな感覚にさえ……。
そして、虚ろな表情でドラを見つけ、そちらにゆっくり歩き出した。
その表情は、かなり不機嫌そうだ。
【 優れん……。優れんわ……… 】
そうつぶやきながら古の魔女、マレフィキウムは片手で顔を押さえる。
【 霊力の渦を通るのは気持ちが悪いのじゃ…… 】
つぶやく声は、弱々しくもとれる。
強烈で濃度の濃い魔力をまといながら……、
時にはふらつき歩く姿は……、かなり弱っている様に見えた……………。
が、その時、この世のものとは思えない程の形相で不意に荒々しく奇声を上げる。
<<【 罪深き人間が居るではないか!!! 】>>
<ゴワッ>
瞬時に弱者を見つけ、カルディアに襲いかかる古の魔女、マレフィキウム。
その手がカルディアへと──────────。




