表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

109/163

第109話【 複雑な感情 】


 <ゴウオオオ━━━━━━━━━>


突然……、エルの近くで今までに無い……身震いする様な強烈な霊力の炎が上がった。


エルが見上げる先には………、破壊的な霊力の持ち主……、炎の巨人スルトの姿が……。


今のエルでも太刀打ち出来ない程の力の持ち主。

身震いする様な強烈な霊力を持つ精霊は数える程しか存在しておらず、その1人がスルトなのである。


「ま、待ってくれスルト。これから……」


と、スルトのアルガロスに対する以前の行動が頭を過ぎり、エルが焦りながら口早に言葉を漏らすと、スルトは背を向け精霊達の方へと身体を向けた。


【 ドラの指示が待てないのか? 】


そう言いながら、更に身震いする様な強烈な霊力を放った。

自分が感じた事に純粋なスルトは、精霊達を説得する様に言葉を放つ。


【 現時点でアルガロスが放つ魔力には悪意が感じられない。今のエルの魔力にも、悪意が感じられないだろ 】


先の……、自分の行動を戒める様に、そう精霊達に言ったのだ。

精霊の中でも何処にも属さず、唯一漂う大陸や下界を自由に旅する異端児スルトは、彼等の悪意(• •)を持った霊力を嫌ったのだ。


ざわつき出す精霊達。

漂う大陸から魔力を、魔物を必死に排除しようと闘っている彼等。

永遠に続く生死を伴う複雑な感情が、このざわつきに繋がっている。


そんな時、デックアールヴ(黒き闇のエルフ)のスノーリが、精霊達を背に前へ出て来た。


【 この地で彼等がエル達に手を出す事は無い。ただ……悪魔に対する複雑な感情が有る事だけは分かってもらいたい。その思いが、振る舞いとして出てしまっただけだ 】


デックアールヴ(黒き闇のエルフ)のスノーリは、漂う大陸で精霊達を率いる役目を担う精霊。

彼も、凍てつく様な強い霊力の持ち主だ。


其々の立場で、其々の感情が入り混じる大小の岩が転がる荒地。

そんな鬼気迫る状態を心配そうに見守るしかないカルディアが、願う様に両手を握っていた。


その横にいた世界樹のドラが、笑顔でカルディアの背中を<ポンッ>と叩く。


【 彼等は純粋なんだ! オレの指示無しには手を出さない。安心しろ!! 】


そう言いながらカルディアを落ち着かせ、精霊達の前へと歩み出た。


【 今から悪魔の膨大な魔力にオレの霊力を流し込んでみる。どの様な状態になるかその目で見届けろ 】


そう言って精霊達を落ち着かせた後、ドラはアルガロスにマヴロス・オーブを岩の上に乗せる様にと告げた。


アルガロスは素手で、麻袋から小さくなったマヴロス・オーブを取り出し岩の上へ置く。


【 一度、マヴロス・オーブに無に遷移しない程度の強い霊力を流してみる 】


そう言いながら、ドラはマヴロス・オーブへと手をかざした。

そして、霊力を流し込んでいく。


<ズズオオォ━━━━━………>


アルガロスの目が小さく開き、身体に痺れと言う異変が起きていく。

その異変に気付いたドラは、アルガロスを気遣い言葉を掛ける。


【 アルガロス、どうだ? 】


「痺れはあるけど、大丈夫そうだ…」


【 そうか。じゃあもう少し強めるぞ 】


そう言いながらドラは、先程より強い霊力をマヴロス・オーブへと流して行く。

すると────。


「ウグッ…グワアア━━━ッ」


アルガロスが悲鳴を上げはじめた。


「アルガロスッ!?」


エルとカルディアが心配そうにそう声を上げると、ドラは霊力を流すのをやめた。


と、同時にカルディアがアルガロスへと近寄り、パーフェクト・ヒール(完全回復)を掛け、心配そうに寄り添っている。


ドラはアルガロスの状態を観察し悩んでいる。


【 ……同一化したマヴロス・オーブにこれ以上霊力を流し込むのは危険だな……。どの時点でアルガロスの身体が無に遷移しだすか分からんからな……… 】


無に遷移すると、元に戻す事は誰も出来ない。

世界樹のユグ、ドラ、シルですら、無になった者、物を再生出来ないのだ。


【 ……やはり、魔力同士で進めないと…… 】


【 アルガロス、魔力を最大限高めてみろ 】


ドラの指示に頷くアルガロス。


「分かった」


そう言って、魔力の循環速度や濃度をさらに高めていく。


<ドゴゴオオオ━━━━ッ>


霊力で満たされた荒地に、アルガロスの魔力が吹き荒れる。

精霊達はその魔力に手をかざしながら忍んでいる。

しかし、アルガロスの人間とは思えない程の強い魔力でも全くマヴロス・オーブに変化が見られない。


世界樹のドラは、その状態を続ける様にと指示を出す。

回りのみんなも、少し落ち着いた状態でアルガロスを見守っていた。




<ゴゴォウ━━━━━━━━>


荒地に魔力と霊力の摩擦音が響く。

いつもと変わらぬ聞き慣れた音………。

見守るエル達や精霊達は、緊張はしているが寛解状態が続いていた。


すると異変は突然やって来る。

アルガロスの身体に刻まれた古の刻印が、小さく波打ち始めたのだ。


<ビリビリッ>


小さく……だが、痛みが伴う……。

アルガロスは心配になり、ドラへと顔を向ける。


「ドラ……この痺れは……?」


【 ……分からんが…、一旦魔力の放出を止めろ 】


ドラからそう言われ止めようとしたその時────、古の刻印が激しく波打ち……、アルガロスの身体を……、更に網の目の様に刻んでいく。


<ドドドドドッ>


アルガロスが放出する魔力が……、強制的に継続される。



「グオオオ━━━━━━━━━━ッ」


アルガロスの悲鳴が暗黒の空へと響き渡った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ